善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SSS 冬のはじまり

何も出来ていませんが、久々に湧いた衝動のままに。



***


木桶の水面も凍りつく宵。立ったまま外の様子を見つめるトンマンの後ろ姿に、ピダムはどうしても心が騒ぐのを止められなかった。それは勿論、彼が

(トンマンがああしている時は、大概もの思うことがある時だ……)

と知っているからだが、今日はそれだけではない。凍てつく冬の訪れたこの日、彼にとってトンマンの後ろ姿はとてつもない意味があった。

ーーきっと、あなたは憶えていないが。

だが、今日で、ちょうど一年だった。一年前の凍てつくあの夜、彼は初めて女王の涙に向きあうことを許された。この上ない歓びと哀れみというとんでもない宝物を彼が受け取った、初めての夜なのだ。
と、そこまで思い至った時、突然その宝物が振り返った。

「ピダム」

そしてその宝物は彼の名を呼ぶと、その瞳を仄かに揺らめかせた。何か、動揺するような心配事が発生したらしい。
すぐにそれを察知したピダムは、感傷は引っ込めて素早く彼女に近寄った。

「何かありましたか?」

が、トンマンからはなかなか返答がない。
ところが、それほどの重大事かとピダムの眼差しも鋭くなった瞬間、ふっくらとした唇がようやく開いた。

「……ありがとう、と、言っていなかったな」
「え?」

一体なんのことだろう。昨日の鶏鍋の御礼だろうか?
思わずピダムが首を傾げると、彼の宝物はほんの少しだけ挑戦的な瞳で彼を見上げた。

「あの時、手を握ってくれてありがとう……と言ってなかったと思い出したんだが、わからないならいい」

わざわざ「手を握って」と言った意味。それがわからないほど鈍感ではないピダムは、驚きに瞠目しながらもサッと繊手を握りしめた。手加減を忘れかけたそれに、勢い、トンマンは彼の懐に飛び込んでしまう。

「ピダム、乱暴になったな」

それでも微笑むトンマンに返す言葉は、そう幾つもない。そしてその全てに不可の印を捺したピダムは、足りない言葉を秘めた唇を幾度も交わすことで、ひたすらに思いの丈を伝えたのだった。




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  1. 2014.12.18(木) _23:46:57
  2. 隠居連載『蕾の開く頃』
  3.  コメント:3
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  1. 2014/12/21(日) 19:07:17 
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いつも拝見しています

  1. 2014/12/31(水) 21:54:10 
  2. URL 
  3. もち 
  4. [ 編集 ] 
善徳女王が最終回を迎えてかなり年数が立ちましたが、私は今日ようやく本編を見て、ピダムの最後をきちんと見届けることができました。
話には聞いて知ってはいたのですが、あまりに悲しく哀れすぎる最後でした。

ふたりのことを考えると胸が痛いです。
ピダムは最後まで信じることに臆病だったと個人的に感想を持ちました。

こちらのブログ掲載の作品群を見ていると、しあわせそうなトンマンとピダムに本当に心が安らぎます。
とりとめもない文章ですみません。失礼いたします。


承認待ちコメント

  1. 2015/04/29(水) 15:41:16 
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