善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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将臣オジサンの育児日記

……とまではいかなかったのですが、例の『パパ』な将臣くんと知望夫婦のSSです。
長男は将臣くん似、長女は敦盛さん似、の設定ですー。



* *


 以前は「牛車ってなんかゆっくり過ぎて苦手なんだよね」と苦笑いで言っていた望美は、その考えを数年で改めた。
 ゴトゴトと音を立てて進む牛車の中、重ねが二枚だけの小袿と袴と言う、権中納言の奥方の外出着としては随分と軽装で座っている望美は、幼子を膝に抱えてぐーすか寝こけていた。そしてその幼子は、ちょうど望美の対の位置に座り、薄紫の髪をした赤子を抱えている将臣と全く同じ髪色をしている。
 まだ幼いので見分けはつきにくいが、どうやら幼子は男子、赤子は女子であるらしいことが着ているものからわかる。
 紅梅色の衣に包まれた赤子を抱いている将臣は、その子を適当にあやしつつ、爆睡している幼馴染であり、その夫が言うには「義妹……だろう」と言う望美を起こしにかかった。

「おい望美、寝るなって。牛車から落ちたらどうすんだよ」
「ん~……落ちない……もん」
「そりゃ、天下無敵の戦神子のお前はな。俺が心配してんのはそっちだよ」

 そっち、と将臣が指差したのは、青い髪をした幼子だ。望美の膝に乗っかり、その胸に背を預けて眠っているその子は、事情を知らない者が見れば誤解しそうなほどに、将臣にそっくりな顔をしている。

「大丈夫~。『マサ』くんは運動神経いいから……」
「二歳児に無茶言うなお前」
「無茶じゃないもん……こないだ渡殿からジャンプして庭に下りてたし……」
「はっ!?」

 望美が安心させようと思って告げた一言は、将臣の逆鱗に触れるものであったらしい。将臣はゴンッと望美の頭を叩き、強制的に眠りから目覚めさせた。

「渡殿から二歳児が飛び降りるのを傍観するなーっ!!」
「だってその時は知盛が傍にいたはずだし……」
「あいつに父親業を期待するのはいい加減に諦めろ! 大体、あいつが傍に来ると未だに泣くじゃねえか、こいつら」

 その「こいつら」と称された子供達は、それでも目覚めない。
 どうやら実の父親が傍に寄ってきただけで泣き出す子供達は、将臣が怒鳴ることに対しては非常に寛容であるらしい。これも日頃の面倒見の良さが幸いしてのことであろうか。
 そしてやっと目覚めたらしい望美は、寝ぼけて腫れぼったい瞼をゴシゴシと擦りつつ、首を捻った。

「本当に、なんで泣くんだろうねえ? 知盛はお父さんだし、結構顔も合わせてるはずなのにー」
「……お前、俺のこと『パパ』って呼ばせてるくせに、よく言うよな……。ってか、知盛はわかってんのか? 『パパ』の意味」
「わかってないと思うよ」
「…………そうかよ」

 全く、女は怖い。って言うか、望美が恐ろしいのか?
 将臣は母になってから一層逞しくなった幼馴染を何とも言えない視線で眺めた。
 その幼馴染は、さすがに座りっ放しで足が痺れたのか、息子を落とさないように気をつけつつ、もぞもぞ動いている。そのせいで袴やら小袿やらが着崩れてきているのだが、果たして気付いているのやら。
 はーっと溜め息を零した将臣は、末頼もしいどころか末恐ろしい望美から視線を外し、腕の中の愛らしい赤子を見た。
 敦盛と望美の髪色を足して割ったような藤色の髪をした赤子は、すでに十分美人の素質を備えている。睫毛が長く、瞳が大きく、色白で、柔らかい髪を持っていて。多分敦盛に似たのだろうが、出来るなら外見だけでなく、中身も敦盛に似てくれることを祈りつつ、将臣はもう一度向かいに座る幼子に視線を戻した。
 くーくーと眠るその子は、将臣の勘が正しければ、無鉄砲なところは望美に似、面倒見の良いところは自分に似、スリルを楽しむところは知盛に似ていた。……要するに、憎めないけれども、とんでもなく厄介な子供になりつつあった。



「知盛ただいま~。元気にしてた?」

 邸に帰還した望美は牛車で送ってくれた将臣と別れた後、娘を胸に抱え、息子と手を繋いで知盛の元へ向かった。
 が、知盛が見たのは、何やら泣きそうな雰囲気の娘と、望美だけだった。すでに息子は、牛車の中で眠って元気になったことが原因か、望美の手から逃れて広い庭に遊びに出てしまったらしい。
 加えて、先ほどまでは機嫌よく瞬きをしていた娘まで泣き始めて乳母に連れて行かれたものだから、結局知盛がまともに帰宅を祝えたのは望美だけだった。

「将臣くんも言ってたけど……なんで知盛見ると泣くんだろうねぇ?」
「さぁ……な」
「パパの将臣くんには愛想がいいのに。……やっぱ、将臣くんは遊んでくれるからかな? 御湿も変えてくれるし」

 それを聞いて、そんなことをしなければ子に懐かれないと言うなら、一生懐かれなくても構わんな……と知盛は思ったが、賢明にもそれは口に出さず、ただ望美を自分の前に座らせ、その肩にのしっと体重をかけた。
 知盛なりに甘えているのだが、それに望美は気付いているやらいないやら、「お父さんに慣れよう計画」をブツクサ考えている。

「もう少ししたら、男の子は剣の練習とかできっと知盛を見直すようになるだろうけど……女の子はどこで知盛を見直すのかな」
「……望美は」
「うーん……舞が出来て、敬語が使えるってわかった時……かな」

 それは正確には違う時空で出会った知盛に対しての感想で、それに知盛も気付いたが、敢えて何も言わなかった。
 違う知盛への嫉妬はたまに湧き起こるが、それを言えば、お互い様だ。それに嫉妬と言う妙薬は、男女の間では時折不可欠になると感じている。

「クッ……ならば、娘の為に舞ってやろうか」

 しかし、せっかくの知盛の申し出に望美は首を捻った。

「ん~……だって、まだ赤ちゃんだし……わかるのかなあ? 舞とか。綺麗って言うのはわかるかもしれないけど」
「『ぱぱ』が、情操教育とやらに良い……と言っていた」
「えっ、ホント?……って言うか、何の話してるの二人で」
「さぁ、な」
「ねえねえ、ひょっとして、他にも色々将臣くんから聞いてたりするの?」
「…………」

 知盛は何も答えなかったが、答えは明確だった。
 なんだか妙に嬉しくなって、望美はにこにこ笑った。

「じゃあ、今度あたしもちゃんと練習するから、一緒に舞おうよ」
「さて……? 子が出来て以来、お前が舞うところなど見た覚えがないが……」
「ぐっ! だ、だって剣の練習はしてるけど、それ以外は、なかなかこう……難しいの!」
「……別に、構わんさ。一度なら……教えてやる」

 どの時空であろうと、知盛は知盛。厳しさと優しさの加減は変わらない。
 けれども口ではなんだかんだ厳しいことを言いつつも、結局はちゃんと助けてくれることを知っているので、安心して望美は知盛に背を預けた。





***

なんだかんだ言いつつラブラブ夫婦。ちなみに知盛は『パパ』の意味を「乳母」と教えられています、あしからず。


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  1. 2009.10.02(金) _18:07:11
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