善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

もうずっと以前に頂いていたのに、更新が遅れすぎましたリレー連載です。sakiさん申し訳ありません!!(滝汗)

SSはまずこのリレー連載の続きを目指して頑張ります!(・∀・)


* *


砂嵐に遭ったトンマンを見つけてから2日。ザズは東の砂漠に足を向けていた。
供はいつの間にか戻って来ていたピダムの駱駝だ。手綱を握り防砂のための外套を目深に被る姿はいつかのトンマンのようでもある。
しかしながら目的はもちろん客引きではない。泊めるべき宿も燃えてしまっているのだから当然だ。

「はぁ~。にしても、あいつの昼寝場所ってこんなに遠かったけか?そろそろ半日は経つぞ。」

射すような砂漠の陽射しに片手をかざしながらザズはぼやくが大小様々な岩の群れが点から確かな形へと正しく彼の目に映り始めていた。
正しくはオアシスに戻れないとき用の仮宿なのだがザズからみれば似たようなものらしい。
そう彼が今まさに目指しているのは、あの日ピダムが集合場所にとトンマンに指定した東の岩窟だった。
トンマンを砂漠から連れ帰ったカターンとザズたちは茫然自失とした少女の口からそれまでのあらましを断片的にだが聞いていた。
混乱と消失の影響が甚だしくその断片を繋ぎ合わせるのも一苦労であったが、おおよその見当がたつとアサドを始め居合わせた全員の意見が合致した。
これ以上はこの件で騒ぐな、と。それは少女を慮んばかっての言葉だったのかもしれない。
そしてそのトンマンは最初の手当てを受けてから彼女たち家族が使っていた部屋にひとり閉じこもったままだ。
誰の声にも応えず心配して運ばれる食事にも一切手をつけていないありさまで、けれどそうなるのも無理もないとザズは思う。
理由も意味も判らぬままに追われ逃げ、自身の命を拾いはしたが家族という無二の存在を失ったのだ。それもほんの数刻前まで親しくしていた相手によってだ。
カターンたちは『父親の元へと連れていく』とチルスクから聞いたらしいが、彼が正しく父親からの使いだったのかはひどく怪しいものだとザズは考えている。
それは父のアサドも同じでおそらく理由を知っていたのは2人の母であるソファだけだったろうとも言っていた。
つまりは真実を知りたいと思っても術は既にないのである。
ザズを乗せた駱駝の足が砂の粒にかわりそこかしこに転がる小さな岩を踏みはじめた。目的地が程近い事を迷いのない駱駝の足からザズも悟る。
やがて大小夥しい岩山の中ほどでその足が止まるとザズは駱駝の背から飛び降りた。
一休みとばかりに膝を折り、首を身体に添わせるように曲げしばらくは動きそうにない駱駝をおいてザズは周りの岩穴を順に調べていく。

「お~、あった。あった。」

時間にして四半刻。数えで十ほどの洞穴を覗いてザズは探し物を見つける事が出来た。
確かに人がいた事が分かる焚火の跡。うっすらと砂上に遺る足跡が洞の中を行ったり来たりしている。
大きさから判断して2、3人の人間がここにいたのは間違いなさそうだった。ザズは日の届ききらない崩れた焚火の向こう側に置き忘れられた物を拾いあげた。
ざっと中身を確認すると見覚えのある帯飾りが目に入った。ピダムが妹のご機嫌とりにと買ったものだ。ただし成果はあまりかんばしくなかったことを思い出した。

「よし。任務完了!あいつらの大事な財産だからな。無くなってなくて良かったぜ、ほんと。」

仮に他の人間がこの場に居合わせたとしたら明るげな口調に反した彼の表情を指摘することが出来ただろうか。

+++

手付かずのままの食事にアルはシャーリーンを見上げる。

「困ったわねぇ。これといった怪我がないのは良かったんだけど・・・・・・・ずっとこの調子じゃ餓死しちゃうし。」

固く閉ざされた扉は開かれない。外から窺おうにも遮幕が邪魔でちっとも中の様子がわからなくて身軽いアルにもさすがにお手上げだった。
もしや後追いなんて事をしてはいないかしらとアルは心配なのだがシャーリーンはいつもと変わらぬ半分寝ているいるような表情でちっとも困っているようには見えない。

「ん~。そうだ。扉、壊しちゃおうかしら?」

しかしそれでも普段以上に物騒な事をさらりと告げてくるあたり姉の焦りを否応にも感じずにはいられなかった。
そして物音一つ窺い知れない現状に姉弟して同じ光景を思い浮かべている事を互いの瞳に理解した姉の両の手が打ち合わされる。

「よし。そうと決まれば、アル。父さん達を連れて来ましょう。」

出来る事があるならば行動は早い方がいい。何も知らず、出来ず、知らされず。大事だと思う者にこれ以上勝手にいなくなられるのは嫌だった。

+++

くらい・・・・暗い・・・・・闇い。
何も見えない。何も聞こえない。何も判らない。
けれど微かに遠く誰かが呼んでいる気がする。でもそれだけだ。声を返そうとは思えない。考えつきもしない。
虚ろな瞳のまま涙を覚えることもなく少女は・・・・・・トンマンはただ大切な2人の名だけを呟き続けている。
やがて陽が隠れ、星が瞬き、月が照らすほどに時間が経ってもトンマンは全く動かず、それどころか一睡さえしていない。
彫像の様に動かぬ姿は全てを・・・・・ただ生きる事をすら拒否していた。一体どれほどそうしていたのか。時の経過などに彼女にとって最早なんの意味もない。
どこにいるとも解らなかった自分を探しわざわざ砂漠から連れ帰ってくれたカターンには悪いが何故あのまま砂に埋もれさせてくれなかったのかと怨みさえする。
そして今はただ少しでも早く己の息が絶える事だけをトンマンは願っていた。

(・・・意味・・ない・・・・・・・・私、だけじゃ・・・・淋・しいよ・・・哀しいよ・・
 ・・・母さん・・・早く迎えに来てよぉ・・・・・ひとりは、嫌だ・・・・兄さん・・・おいてかないで・・・)

けれど砂漠の夜を思わせるほどにまで冷たく凍凝ったその手を温めているナニカがある。それもひどく覚えのある温もりにトンマンは漸くゆるゆると視線を上げた。
ぎしりと錆び付いた蝶番ような音が身の内から響き少女の耳に入る。壊れたブリキの玩具のようだと動かない頭の片隅でトンマンは思った。
しかしそれよりも扉には誰も入れないように閂をかけたのだからここには自分だけのはずと訝しむ。そして霞む視界が辛うじて人の像を結んだ。

「・・・・・・か、あさん?」

それはもう会う事が叶わない人。たとえどんなに望んだとしても。

「どうしたの?トンマン。」

嗚呼。それなのに。確かに目の前の人はその人で。
手を伸ばせないトンマンの代わりに優しく優しく微笑んで彼女は娘の凍凝った手を温める。トンマンの頬を透明な雫が一筋流れ落ちた。

「か、あさん。かあさん。母さん。」

次々と関をきったかのように流れる涙を母にそっと拭われしゃくりあげるトンマンの耳に今度はひどく焦った兄の声が聞こえた。

「トンマン!?どうした!?何かされたのか!?言われたのか!?どこのどいつだ!今すぐぶん殴ってくるからそいつの名前教えろ!」
「に、いさん。」

これもいつの間に現れたのか母の直ぐ後ろに立つ兄は言葉どうり今にも飛び出していきそうで。

「ち・・・がう、よぉ。いない・・・んだ。・・・兄、さんと・・・・・か、あさん・・・が、いな・・・くて。だ、から・・・だから・・・。」
「俺と母さんがいないって・・・、んなわけあるかよ。ほら、ちゃんとここにいるだろう?大丈夫だ!お前をひとりになんてさせねえ。だから、ほら、泣き止め。な?」
「そうよ、トンマン。私たちはちゃんと貴女の側にいるわ。だから、ほら、いつもみたいに笑っていてね。砂漠では涙を--------」

わかっている。これは都合の良い夢で幻だ。手からこぼれた砂は戻らない。
それでも。嗚呼、それでも。大好きで大切な2人がそう望むなら、私は。


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  1. 2012.11.06(火) _19:58:17
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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