善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 女官は見た! ~陛下の御手編~

いい夫婦の日です……でしたね~!(;´∀`)←コラ

思ったよりなかなか更新もお返事も進まず、すみません…(汗)
ただいま同時進行でSSを書くリハビリ中なのですが、やっとまとまったSSが書けたので、「いい夫婦の日記念!」と言うことで、女王時代のトン&ピを更新します。ちゃ、ちゃんとトン&ピになっていますように…!!


* *


 更衣も終わり、否応なく寒さの増す冬霜月の夕暮れ時。陛下付きの女官のうち、陛下の寝所に入ることを許されている上級女官八名は、彼女達の控えの間――通称『男子禁制・女官を覗けばムチ打ち刑の間』に参集していた。
 これは、今夜のとある業務の担当者が突然高熱を出した為に、急遽代理を立てる必要が生じたからだ。そして、女官達の間ではその業務は大人気だった。ゆえに、こうして揃いも揃って出陣前の兵部の兵さながらに覇気に満ち満ちた顔つきをしている。
 張りつめた沈黙の中、互いを睨み合って間合いをはかること暫し、上席の女官がゆったり咳払いをした。

「では。本日の議題をお話ししましょう。女官長からは、女官長が陪膳をなさっている間に担当者を決めるよう申し付けられておりますので、皆さま、ゆめゆめお忘れなく……。陛下をお待たせすることがあってはなりません」
「はい」

 一同、殊勝にお辞儀をし――闘いが始まった。

「畏れながら申し上げます」
「聞きましょう」
「はい、では申し上げます。元々、本日の担当者はわたくしと同室の女官でございました。此度のことは、昨夜のうちに病と気付かなかったわたくしの落ち度でもあります。それを、他の方々に替わって頂くなど、申し訳もございません。皆さま方、本日の担当は、何卒わたくしめにお命じくださいませ」

 まだ若い女官は、滅多にないことに些か緊張気味らしく、最後は若干声が上擦っている。対して、ベテランの女官は落ち着き払った様子で頷いた。

「なるほど、一理あります。では……」
「お待ちください!」

 しかし、敵は数多いる。真っ先に名乗りを上げたのは、中堅女官だった。

「どうしました」
「同室と言うことは、もし流行り病などであれば、陛下にお移ししかねません。わたくしどもは納得致しかねます」
「なるほど。確かに、これは陛下のお身体に携わる任務、病の疑いがある者には任せられませんね」
「ごもっとも!」
「わたくしはこの一年、風邪もひいておりません。わたくしにお任せを」
「わたくしは、この中で一番体温が高いです。お任せを!」

 こうして、少しずつ遠慮が消えてきたのか、おしとやかかつ冷静沈着な振る舞いに定評のある女官達がやいのやいのと騒ぎ出し、室内が異様な熱気に包まれた、次の瞬間。
 すっと戸が開かれ、冷たい一筋の外気と共に、陛下の夕餉の陪膳を終えた女官長がにこやかに現れた。

「このように遅い刻限まで会議とは、仕事熱心で何よりです」
「じょ、女官長!」
「ですが、本日は勿体なくも陛下より早く休むようにとの仰せがありましたので、もう休みなさい。そのぶん、明日はより一層、良くお仕え申し上げるように!」
「はい!」

 と、いつもの癖で返事をした後、女官達は我に返った。
 ――いや待て、あの任務はどうなった?

「女官長、お待ちください」

 そして、その気持ちを誰よりも早く表現したのは、上席の女官だった。

「ん? 何かしら」

 もしかしたら、ゆったりと振り返った女官長の満足げな笑顔を見て、女官達は気がつくべきだったのかもしれない。今は、もう昔とは違うのだと。
 けれども、十年もの長きに渡って陛下にお仕えしてきたと言う彼女達は、なかなかその変化を受け入れられなかった。

「本日の『陛下の冷え性を解消させ申し上げる係』が、まだ参上しておりません」
「ああ、それですか。それなら、案ずるには及びません」

 と、女官長が語った内容に、女官達は一喜する者あり、一憂する者ありで、陛下が多忙な女官達にご褒美を与えたのだとはなかなか気付けなかったと言う。



 さて、同じ頃、陛下ことトンマンは、漆黒の私服でやって来た上大等こと夫のピダムを見上げて、頬を綻ばせていた。

「早かったな」
「陛下がお待ちかと存じまして」

 本当に待ちかねていたのはどちらなのか判別しかねるほど、歓喜に満ちた眼差しでトンマンを見下ろしたピダムは、いつものようにトンマンの手を握って引き寄せようとした。ところが、その手が常にも増して氷のようだった為に、彼の眉間には皺が寄った。

「ピダム?」
「陛下、今までどちらにいらしたのですか」
「ここにいたぞ?」
「それなのに、こんなに冷えてしまっているんですか?」
「そんなに冷えているか?」

 言われて、掌を頬にあてながら、トンマンは小さく首を傾げた。確かに冷たかったが、いつも通りの冷たさなのだ。ピダムが食いつくほど異様に冷たいのだとは思えない。
 一方、ピダムは椅子に座って、しっかりとトンマンの手を確かめ始めた。

「こんなに冷たいのは初めてです。何か……ありましたか?」
「何もない」
「心配ごとを隠しておられるんじゃないですか」
「今までだって、何でもかんでも話したりはしていない」
「……まあ、そうですね」

 明らかに「これからも、何もかも話すつもりはないぞ」と言わんばかりにあっけらかんと言い放つトンマンにピダムは肩を落としたが、彼もまた、何でもかんでも話したりはしない性格だ。にも関わらず、少しばかり恨めしげに黒い瞳がつぶらな瞳を見つめた時、そのつぶらな瞳がぱっと煌めいた。

「そう言えば、今日は女官に揉んでもらっていないな」
「は?」
「ああ、冬になると、いつも寝る前に女官が来て、手や肩をほぐしてくれるんだ。伝統だと言うから、わざわざ途絶えさせることもないかと思って私もしてもらっている。暖まるしな」
「そんな……伝統があったのですか」

 危うく、「そんな美味しい任務があったのか!」と叫びかけたピダムは、なんとか平静を保った。女官とは恐ろしい存在である、と言うことだけは肝に命じつつ。
 そして、冷静になると、一つ疑問が浮かんだ。

「それは毎日なさることなのですか?」
「うん? そうだな、毎日してもらっているが……」
「でも、今日はしてもらっていないのですね」
「そうだな。早く休むように言ってしまったし……」

 ――と言うことは!
 と、ピダムの眼の色が変わったことに気がついていないトンマンは、毛皮のついた分厚い上着を引き寄せようとしている。目の前の夫に暖めてもらおうと言う考えはないらしい。
 ピダムもはじめからそんなことは有り得ないとわかっているので、いつものように、さっさとトンマンの手を掴んだ。

「ピダム?」

 微かに驚いて見つめる瞳には、やっと彼を微笑ませるあどけなさがあって、思わずピダムは背後から冷えた身体を抱きしめた。そのまま細い両の手を握って強く懐に引き寄せると、豪奢な衣に包まれた身体にはほとんど厚みが感じられなかった。

「本当に冷えきってますね」
「そうかな?」
「はい」

 洗ったばかりなのか、艶やかな黒髪はまだ仄かに湿っていて、湯に浮かんでいたのだろう花の馨りばかりが鼻につく。ピダムには、それが勿体なく、また淋しく思えた。せっかくトンマンの甘い馨りを楽しめると思ったのに、何故余計な馨りを足すのだろう。女官の陰謀か。
 しかし、そうやって悶々と悩んでいるせいで、ピダムは肝心のトンマンが胸を高鳴らせていることに全く感づいていなかった。

「ピダム……」
「? はい」
「……あったかい」

 女官の卓越した手腕で冷えを解消してもらうことも、勿論有り難いことだと思うし、感謝もしている。女官達の技術に感心することも多い。けれども、やはり他の誰でもない、ピダムが暖めようとしてくれることが、トンマンの心を何よりもあたたかくしてくれるのだ。

「いいえ、まだ冷たいですよ」
「でも、あったかい」

 寒空に綻ぶ梅の花のようにトンマンは微笑むと、彼女の言いたいことをわかっていなくても、ただ彼女が一番嬉しいと思うことを惜しみなく贈ってくれるピダムの肩に頭を預けた。
 すると、ややあって、こめかみに遠慮がちに唇が触れて、微かな震動をトンマンに伝えた。

「……トンマン」

 はっきりと聴こえたわけではなかったが、きっとそう呟いたのだろうとトンマンは瞼を閉じた。もう、このまま眠ってしまいたいくらい、心地好い――。

「……御寝なさいますか?」
「……うん」

 それをきちんとピダムが汲み取ってくれたことにさらに気分を良くして頷くと、ふと背を暖めていた熱が消えて、頬にかたい指がそっと触れ……間もなく唇に熱を受け止めていた。
 暫くそうしていた後だろうか、ふと熱を感じなくなって瞼を上げた時、トンマンはピダムの背に手を回していた。瞳を上向かせれば、ピダムも眼を細めて口の端を上げている。

「……ピダム」
「はい……?」
「なんだか……本当に眠くなってきた」
「……は?」
「お前がいると、なんだか眠くなるんだ。不思議だな」
「はあ……」

 ――これは、喜ぶべきか?
 今、ピダムが望むのは、ときめきだ。トンマンにときめきを感じて欲しいのだ。眠気では、ときめきとは正反対ではないか。

「陛下」

 危機感に襲われたピダムは、おっとりのんびりとした雰囲気をもう少し胸の高鳴るものにすべく、頑張ることにした。

「まだ、他に私が出来ることはありませんか……?」
「――」

 ふいに深くなった声にトンマンが瞳を大きくしているうちに、ピダムは今度は強く彼女を引き寄せた。背がしなって、自然と上がった唇を逃さず捕らえれば、先刻とは趣の違う抱擁がトンマンを襲う。少し強引で、けれども決して苦しくはならないよう力を加減しながらの抱擁は、すぐにトンマンの鼓動をはね上がらせた。

「ピダム……!」
「もう眠くないでしょう」

 困り顔でやんわり睨まれても、細い指が彼にしがみついている以上、ピダムには恐れるものなどない。そして、ピダムが心底嬉しそうに微笑んだ時、トンマンにはもう他に選択肢がなかった。

「………………眠くない」

 ピダムの願いを叶えて、もっともっと幸せそうなピダムの笑顔が見たい、と言う以外には。



 そんなわけで、ピダムの頑張りを受け止め、トンマンの願いを叶えた結果、ピダムは満足げにトンマンの手を玩んでいた。

「ピダム……? さっきから、なんなんだ……?」

 トンマンの瞼はさらに重くなってしまっていて、もう半ば瞼は落ちていたものの、ピダムにこう手を取られていては、気になって眠れない。特に、毀れ物を扱うようにするか、あるいはあくまで務めを果たす為に触れる女官と違って、ピダムの触れ方は予測がつかないので、なかなか無視することが出来なかった。
 対するピダムは、何やら不穏な――もとい、悪戯小僧のように得意気な笑みを湛えて、トンマンを見下ろした。

「冷えがなくなりました」

 が、そう言われても、ぼんやりした頭を抱えるトンマンには、咄嗟には何のことやらさっぱりわからない。
 とは言え、元が回転の速い女王陛下であるので、トンマンは間もなく解答を弾き出した。

「まさか……さっき言っていた、手が冷えているとか言う話か?」
「そうです。ほら、本当にあたたかくなったでしょう?」
「う……ん」

 確かにそんな気もするが、手が……と言うより、全身が火照っているように感じている今のトンマンは、はっきりとした返事は出来ない。勿論、身体がほかほかしているおかげか、頭痛が消えたり、眠くて仕方がないことはわかっているのだけれども。

「女官より、私の方が陛下の冷えを解消するのは上手いようですね」

 そして、どこからその自信が出てくるんだ!……と女官達が聞いたら思わず噛みつきそうな言葉も、彼女達の主にとってはどうやらただその滑らかな頬を鮮やかに紅潮させる力しか持たないらしい。

「明日もまた、陛下の御手をあたために参上します」
「……」

 すでに決定事項であるかのように話す上大等を前に、女王は暫し口ごもった。女官の仕事を奪ってよいものかと悩んだのだ。
 しかし、いくら真剣に悩もうとしても、目の前にいる夫の喜ぶ顔が大好きな女王陛下には、どうしたって答えは一つしか見つからないのだった。

「……私も、お前がいい」

 と言う、女官達を悔し涙の海に沈めそうな愛らしい答えしか。



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  1. 2012.11.25(日) _23:33:21
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:4
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  1. 2012/11/26(月) 22:23:52 
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  1. 2012/12/28(金) 19:32:46 
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ゆい様へ

  1. 2013/01/22(火) 00:02:41 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
ゆい様、新年のご挨拶も出来ないくらいお返事が遅くなって、申し訳ありませんー!
改めまして、お久し振りです、こんばんは~vv

今更な感じですが(汗)、あれから元気に過ごしています(*´∇`*) 雪の日は年甲斐もなく雪かきや雪だるま作りを楽しみ(笑)、おまけにこの冬もインフルエンザとは無縁で、丈夫に産んでくれた両親に感謝しきりです。

とは言え、寒いものは寒い!と言うわけで、冬場はついついトンマンとピダムのほのぼのしたお話が書きたくなるみたいです(笑)(そして、どうも、トンマンは冷え性で、ピダムは体温が余っていると言うイメージが離れませんw)
ちゃんとトン&ピになっていると太鼓判をおして頂けて、ホッとしました!ありがとうございます~vv

ユシンとピダムのホウレンソウ話は、私自身の体験はそんなに大したものではないので(笑)、やっぱりドラマの脚本が凄かったんだなーと言う気がします。

> 同じ人間でも、仕事がうまくできるようになってくると(うまくできるようになったと思ってしまうと)

これは、ミシル陣営でもあることでしたよねー。
『善徳女王』では、誰の部下であれ、必ず主に対して「これだけは言わない」と心に決めている秘密があって、それがその人の弱点でもあり、強みでもある……と言う一面があって、だから、なんでも言えばいいと言うわけではなく、かと言って言わなきゃ大問題になる場合もあり、そのややこしさが『ホウレンソウ』の醍醐味なのかなぁと、ゆい様のコメントを読んで改めて感じました。自分一人では見つけられない道をパッと示されたようなこの感じは、たまらないですねー!(*´艸`)(笑)

最後に、すでに御言葉に甘えてゆっくりまったりしている私が言うのもなんですが(ノ∀`)、きっと私より繊細なお体をお持ちであろうゆい様こそ、この寒さと乾燥に悩まされる時期を無事に終えられますように! そして、息子さんが早く「チャングム」の次段階として『善徳女王』のトンマンがいつも「面倒なことに巻き込まれる→知恵と根性で解決する」にはまってくれますようにー(笑)

げんさんへ

  1. 2013/02/17(日) 20:32:59 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
げんさん、あけましておめ……の挨拶には遅すぎますね!(;´∇`) めちゃめちゃお久し振りです、お待たせしてすみません(土下座) 寒中お見舞い申し上げます~!
去年は、げんさんのブログが凄く嬉しい一年でした(*´∀`) げんさんが『善徳女王』のどこに注目してるのかとか、他には何を見てるのかとか、コメント欄のやり取りだけではわからない色んなげんさんを見れたーわ~いvv……と、ストー●ーな感想ですみません(爆)

改めまして、げんさんこんばんは~vv
げんさんの予想通り、元気にしています(*´∇`*) 今年も丈夫な一年になりそうですw
ただ、

> 「善徳女王」の世界をやりきったという達成感を得たところを、モチベーションをさらに上げ上げ!するのには時間がかかるのかもしれないですね…

これが困り者です(ノд`;) 相変わらず毎日のように『善徳女王』ネタは浮かんで考えているんですが、まとまらない&燃え上がらないのが…!(ぐぬぬ)

あ、でも、『根の深い木』は、久々に見応えのあるドラマに出会えたーと言う気がしています。同じ脚本家さんなので、やっぱり『善徳女王』と通じるところがあって、『善徳女王』の新たな見方が見つかりそうです(・∀・) 私の勝手な思い込みなんですけどw、「脚本家さん、女王時代をもっと書きたかったんだろうなー」と思いながら観てます(爆)

別ジャンルは……どうでしょう…。何にせよ歴史系ですね!w(ノ∀`)

先頭を突っ走っている…と言うか、たまたま一番乗りだった上に、暑苦しいブログだよなーと我ながら思いますw そして、今日も『根の深い木』を見て、『根の深い木』がどんなに面白くても、やっぱり一番大好き…なんて言葉では足りないくらい(笑)、『善徳女王』に惚れ込んでるんだなぁと実感しています(*´∀`*)
そんなわけで、今年もどうかよろしくお願いいたします…!
なんだかノロの他にも伝染病も流行っているそうですし、あと少しの冬をげんさんが健康に、楽しく、ついでに素敵なヨウォンさんネタと一緒に過ごせますようにvvv


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