善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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SS 将望

リハビリ!


例えるなら、ドラマで見たあの光景に似ている。留置所で、無実の罪を着せられている人が家族と面会する、あの場面。薄いガラスの壁があって、小さな穴を通して声は伝わるけれど、どこか遠く感じてしまう、あの感覚。
ちなみにこの場合、罪人は将臣で面会に来たのが望美だ。将臣はどうして自分がガラス越しでしか望美と話が出来ないかをわかっていて、望美はどうして将臣との間にガラスがあるのかわからない。
――将臣くん、何があったの。どうしてそんなところにいるの。
ドラマ流に言うなら、そんなところか。
しかもここにはいるのは、警察官や弁護士のような詳しいことを聞き出そうにも限られた情報しか与えてくれない者達ばかり。
遠い。
その気になれば叩き割ることも出来るだろうと考えていたガラスは想像よりもずっと硬くて、中に入っている人はさらに頑なだ。

「将臣くん」
「ん?」

振り返った顔は(多少老けたけれども)同じ顔なのに、その瞳は望美を見ているようで、見ていないようで。どこを見ているのか、望美にはわからないところを見詰めている。
喋る時も、どこか、一体どこまで『正直に』話すべきか、探りながら話している。元から何かと秘密の多い……と言うよりは自分のことを語らないのが将臣だったが、それにしても何かが変だった。
そこでふと望美は思い出した。……今と同じようなことを、ちょうど中学に入った頃にも考えていた。
あの時も、それまで当たり前のように一緒に登校していた譲と通学路が違ってしまって、将臣と望美の二人で学校に通うようになって。将臣は時たま一人で学校に行ってしまうようになったし、『なんとなく』一緒にいた時間がどんどん減っていった。

(……大人になってる、ってことなのかな)

――その時、ぱちんと額を弾かれて望美はやっと自分がぼうっとしていたことに気付いた。

「立ったまま寝るなって」
「寝てないよ、ちょっと考え事してただけで」
「そうか? えらい間延びした顔してたぜ」

聞き慣れた声よりも少し深みを帯びた声でくつくつと笑う将臣に舌を出して、望美は軽やかに少し遅れた彼女を心配する朔のところへ走って行った。
それを眺めて、将臣は望美の額を弾いた指を眺めた。

……まだ。まだ、大丈夫。まだ、望美の疑惑は確かなものにはなっていない。もう彼女の幼馴染だった高校生はいなくて、代わりにいるのは幼馴染の皮を被った還内府であることに気付いてはいない。額を弾く時、力加減がわからなくて怖々触れたことに気付いてはいない。
だが、いつまで騙せるのやら。
賢いわけでも敏いわけでもないけれど、誰よりも彼の傍にいたのは、望美だから。誰よりも彼を見て、後を追いかけてきて、将臣の心を占めていたのは彼女だから。
だから、気付くとしたら望美、多分お前が一番に気付くだろう。
……もう、『有川将臣』はいないと言うことに、気付くのは。


**
一度目の熊野。

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  1. 2010.03.17(水) _18:29:40
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