善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SSS呪い

おっっ久し振りでございます!生きてます緋翠です。
お詫びの代わりにもなりませんが、トンマンのお話を…。アルチョンも出張ってます。

※スマホ書きなので、空白とかがいつもと違います。





***


「お前には礼を言わねばならない」

トンマンが霞を帯びた声で切り出したのは、マンミョン夫人を下がらせ、アルチョンと二人きりになってからだった。

「陛下?礼とは……」

アルチョンとしては何よりも女王の身体が気掛かりではあったが、三日も目覚めなかった主の澱みなき物言いには思わず喰いついてしまっていた。直ちに話を打ち切り、薬を飲ませて横にならせるべきだと頭ではわかっていても、主の眼差しにはあくまで彼を服従させるものがある。
そうとわかってやっているのかいないのか、最後には彼女の言葉を聞き届ける律儀な盾にほんの少し眦を緩ませて、トンマンは語った。

「アルチョン公。もう昔のことになるかもしれないが……あなたは、私の願いを叶えてくれた。今も、叶えてくれている。……そのことに、礼を言っておきたかった」
「願い?」

女王の願い。それなら、あらゆる者が叶えんとし、また、叶えてきたはずだ。何もアルチョンだけに当てはまることではない。
何のことやらさっぱりわからず眉根を寄せると、その反応すらも思惑通りであったのか、女王は綻ぶように微笑んだ。

「朕の願いではない。まだ何者でもなかったトンマンの願いを、叶えてくれただろう」

ーーまだ何者でもなかった、トンマンの願い?
ということは、即位以前の……いや、公主ですらなかった頃の願いということだろうか。しかし、そうなると益々覚えがない。とびきりの貸しは返してやったが、まさか今更になってあのことに対して礼を言うというのか。
狐につままれたように言葉のないアルチョンを、しかし、女王は咎めなかった。ただ、誰にともなく言葉を紡いでゆく。

「同じ願いを、多くの者にぶつけてきた。姉さん、シヨル、母さん、璽主……。だが、誰も叶えてはくれなかった。今となっては……アルチョン公だけが、叶えてくれたようだ」
「……」

その瞬間、アルチョンにも女王の、いや、トンマンの言いたかったことが、僅かながらも感じられたように思われた。彼女が口にした人々と、アルチョンの違い。それは……。
トンマンは、はぐらかさなかった。残された稀少な時を一瞬でも無駄にしないとでも言うように、彼を瞳の真ん中に据えた。

「アルチョン公。……生き抜いてくれて、礼を言う。あの時から……ずっと、生きてくれていることに、深く感謝している」
「……」

何故だろう。その時、アルチョンの中には彼女の真実がすんなりと入ってきた。

ーー死んでは、駄目だ。

そうだった。この人は……トンマンは、アルチョンからすれば、本当に生き意地の汚い郎徒だった。名誉の死などには欠片も感動せず、ただひたすら生きて生きて生き続けることだけを目標に突き進んでいた。あの腐敗した泥沼の地獄から、そうやって彼を救い出した。自決しようとする度に、図々しくそれを阻んだ。……阻むことの出来た、唯一の人だった。
だが、トンマンからすれば、アルチョンなどは他の誰とも変わらない存在だったのだろう。アルチョンだけに生きていて欲しかったわけではなく、彼女は常に周りの者にそう要求していた。生きろ、生きていろと、叫んでいた。……ただ、誰もその通りにはならなかった。もしかしたら、ユシンやチュンチュは彼女の望みを叶えていたのかもしれないが、そもそもあの二人はアルチョンから見ても簡単に死のうとする人間ではなかった。むしろ、トンマンが願わなくとも、彼らは彼らで生き抜くことを望んでいた。少なくとも、郎粧決意をするような類の人物ではない。
つまり。

(陛下が言いたいのは……一度は生きることを諦めた者で、今も生きているのは私だけだと……そういうことか?)

果たしてアルチョンの考えが正しいのか、それとも他に意図があるのか、トンマンの表情からは何も読み取れない。いや、読み取らすことを許さぬ何かが、その微笑にはあった。

そして、アルチョンがトンマンの想いの一端に辿り着いた時、すでに答えを知るその人は土に還っていた。
アルチョンはただ一人、主の望みを叶えながら、彼女に問う。
彼女が口にしなかったその名。生きていて欲しいと、そのように願い、彼女はそれを最期の願いとしただろうに、叶えはしなかった残酷な名。叶えなかったどころか、あれほど生き意地の汚かった主をも地獄の淵に引き摺り込んだその名。
しかし、その名より許せぬものが、アルチョンにはある。

(陛下。老いぼれた私は、あなたに心底恨み言をぶつけてやりたい)

あなたのせいで、まだ死ねない。戦場に赴くどころか、政務からも離れ、老いさらばえ、それでもまだこの命は生きている。いつかの誰かのように、傷を負い、病を得、命を狙われても、死はいつも遠ざかってゆく。

(陛下。あなたは呪いをかける相手を間違えわれた)

彼を最初の部下に選んだから、こんなことになってしまった。よりにもよって、全身全霊で生きろと呪った唯一の相手は、彼女にしてみればこんなにも長命とは考えもしなかったであろうアルチョンだった。

(因果なものだ)

だから、アルチョンはこの命が尽きるまで、こんなとんでもない呪いをかけてくれた相手の墓に居座ってやろうと思っている。静かに、安らかに眠らせなどしない。もはや全ての宿命から解き放たれたと自由を満喫しているであろう主に、三韓統一の行く末を語り聞かせてやると、アルチョンは今日も今日とて墓参りに赴いたのだった。









***********


トンマンに対する感じ方はその時々によって変化するのですが、今の管理人的には、トンマンはこんな感じです。自分にも周囲にも、悪く言えば生き意地が悪い。でもそれに応えてくれる人は、本当に少なかったんだなーと…。

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  1. 2015.08.03(月) _23:42:27
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:3
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comment

感謝です

  1. 2015/08/05(水) 02:06:29 
  2. URL 
  3. ヤオン 
  4. [ 編集 ] 
執筆復活とても嬉しく思います。
私も翡翠さまのssやブログに救われた1人です。
近々のBS朝日の放送でソンドク熱に火が点いた私なので、まだまだ新米ファンですが、ご挨拶させていただきたかったので、勇気を出してコメントしました。
といいますのも、妄想熱に浮かされ過ぎてしまい、とうとう妄想ssを書き始めました。
皆さまに比べたらお恥ずかしいレベルなんですが、どこかに吐き出さないとどうしようもないくらいハマってしまっています(恥)。
復活ありがとうございます。
こちらの訪問が今の私の生きる糧です。これを楽しみに一日を頑張ります。

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  1. 2015/08/05(水) 14:34:51 
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  1. 2015/08/19(水) 21:39:07 
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