善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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連載 蕾の開く頃10

フジテレビツーの善徳女王完全版もとうとう20話まで来ました。トンマンの正体が判明、チルスクは視力を取り戻し、トンマンは命を狙われるように…頑張ってトンマン!ユシン&アルチョン、しっかり守ってやってくれー。
と、見ていてふと気付いたのですが、ユシン、わんわん泣くトンマンは陰ながら見ていることしか出来ませんでしたが、泣き崩れるチョンミョンは慰めようと肩を掴んであげていたんですね。あの仕草が後々のピダムとリンクして、不思議な気がしました。

話変わって、スンマンは、トンマンより年下で、チュンチュより年上です。


***

 トンマンの長い睫で煌いている涙の雫をそっと指の先ですくってから、ピダムは熱っぽい掌でまだ息の荒いトンマンの肩を、背を撫で下ろした。
 それを、トンマンもまた、恥ずかしがりながらも受け入れている。愛を分かち合った後にだけ味わうことの出来る、幸せと温もりがたっぷりとつまったその手が、すでに待ち遠しいほどに恋しいことをトンマンは悟った。
 ――ただ快楽の為だけでなく、このような一時がある為に、恋慕する男女と言うものは、身体を混ぜるのだろう。多くの人々と接する中で、恋慕する誰かのその肌に触れたいと思うのは、触れ合うことで、言葉にならない愛しさが互いの心に流れ込むからだろう。そしてそれが、時に言葉よりも心を揺さ振り、ときめかせるからだろう。
 ピダムの深い吐息が掠めるのを感じるトンマンの唇は、愛らしく弧を描いていた。

「どこも痛くないですか」
「……うん」

 睡魔に襲われているのか、艶やかなその身体とは裏腹に、幼子のように愛らしい声。その声を掬うようにピダムはトンマンの布団を直しながら、微かに汗で湿った黒髪を何度も撫でた。掌からピダムの愛情が伝わってきて、それに安心したトンマンの瞼がどんどん重くなっていく。

「寝てしまうぞ、ピダム……」
「眠って下さい。湯の用意が出来たら起こしますから」
「私も……手伝う……」
「だめ」

 軽やかに笑って、ピダムはさらに本格的にトンマンを寝かしつけにかかった。

「ピダム……」
「……ゆっくり休んで、トンマン」

 ピダムの囁きに誘われるようにすぐに小さな寝息を立てて眠ったトンマンを見て柔らかな微笑を浮かべると、その襟首に挨拶をするようにもう一度顔を埋めてから、外気が入らないようにピダムは布団から抜け出した。出てみるとやはり離れがたさを感じたが、あれこれしなければいけないことがあるのも本当のことだ。

「…………明日は丸一日起き上がらなくてもなんとかなるように、今夜はご飯をここに持ってきてから寝るか」

 しかし、それはつまり明朝冷め切ったご飯をトンマンに食べさせると言うことで、そんなことは許し難いピダムは、諦めの吐息をついて渋々表に出た。何せ、ヨンチュンが来た為に(そしてその後あれやこれやで時間を送ってしまった為に)、まだ鶏にも餌をやっておらず、薬草に水もやっていない上に、湯の用意もしていないのだ。
 それでも沸々と浮かび上がってくるトンマンの可愛らしい一瞬を思い出しながらピダムは機嫌良く仕事を始めた。湯を沸かして、水を撒いたピダムは、鶏達に餌をやる傍ら、白い毛に埋まったような一羽をひょいと掴み上げた。なんと、その鶏の足には、指が五本もある。――鶏ではなく、烏骨鶏であった。

「朝は鶏だったし……今日は、お前だな」

 ピダムはこの烏骨鶏よりも鶏の方が好きではあったが、身体に良いのは烏骨鶏であることは知っている。これまでは鶏ばかりだったが、これからは烏骨鶏を中心にすべきかもしれない。気分の良いピダムは、そんなことを考えながら小屋から出ると、餌を置いて剣を取った。
 手にした烏骨鶏を空高く投げ上げ、一閃。白い羽毛が宙を舞う中、目にも止まらぬ速さで烏骨鶏の首は落ち、ピダムの手にはその身体がしっかりと握られていた。返り血すら浴びぬ、まさに神業と言ってよい剣捌きだった。

「キャア!」

 ところがそこへ、耳に覚えのない悲鳴が木霊する。何事かと振り返れば、息を切らした小さな子供が二人、ピダムを見て怯えていた。

「……?」

 なんだろう、と子供の視線を辿っていけば、自分の頬に辿り着く。何か付いているのかと手の甲で拭うと、生暖かい鮮血が少しだけ付着した。どうやら、そこにだけ血が飛んでしまったようだ。
 だが、それだけだった。第一、鶏の始末など見慣れているだろうに、どうしてこの子供達は震えているのだろうか。おまけに、一体どこの子供だろう。
 刹那の思考の後、ようやくトンマンが話していた『客人』のことを思い出したピダムは一歩、彼らへと踏み出した。もしその子供達だとしたら、一言言っておかねばならない。勝手に入り込んだ挙句、疲れて眠ってしまうまで世話を焼かせるな、と今現在そのトンマンが誰のせいで転寝を楽しんでいるのかは棚に上げて、ピダムは大人気なく子供達を叱り飛ばすつもりでいた。

「おい、お前達――」
「……!」

 ところがその子供達はピダムが二歩目を踏み出す前に、つむじ風を立てて再び森の中へと消えていった。何がなにやらさっぱりわけのわからないピダムは、それを呆然と見送ってから、すぐにぷつんと視線を切った。

(……そろそろトンマンが起きたかも)

 わけのわからない子供達に怯えられることよりも、トンマンが目覚めの瞬間に傍にいることの方が、ピダムにはよっぽど大事だった。よってピダムは、子供達のことなどすぐに忘れて烏骨鶏を台所へ置きに行った。……それが、後々とんでもない問題を引き起こすことになるなど、露知らず。

**

「う……ん」

 小さく唸って瞼を上げたトンマンは、赤みを帯びる陽光に、ぼんやりと顔を顰めた。
 規則正しい生活を送ってきた彼女にとって、このような時刻に昼寝をすることはやはり、なかなか慣れるものではない。長らく、眠りにつく時も目覚める時も日の光などない、と言う忙しない暮らしを送ってきたのだ。
 少しずつ頭の中の霞を払い除けると、トンマンは状況を認識し始めた。

(そうだった、今日はヨンチュン公が来て……それで……………………)

 が、その後のことは思い出すだに照れ臭いやら恥ずかしいやら、嫌な汗を掻いてしまいそうで、ぎゅっと目を瞑ってトンマンは首を振った。……しっかりしなければ。今頃ピダムは色々と立ち働いているだろうに、いつまでも布団に潜り込んでいる場合ではない。
 起き上がって素早く身支度を整えると、トンマンは箪笥を開けて、ごそごそ中身を漁った。だいぶ温かくなったとは言え、夕刻になれば風も冷たくなるだろう。手伝いに行くついでに、ピダムに上着を持って行ってやろうと思ったのだ。
 まずはピダムの分の衣を出し、次に自分の分を出そうとして……その時、ぴたりとトンマンの手が止まった。その双眸は、本日新たに仲間入りをした箱と包みをしっかり捉えている。恐らくチュンチュが用意したのだろう、この田舎の小さな邸には相応しくない、流麗な細工が施されていた。
 その細工を辿るように指を滑らせてから、トンマンはピダムがその部屋にいないことを何度も確認して、恐る恐る箱を開けた。トンマン自身が頼んで用意してもらった、紅と白粉と……酒。それらがきっちり入っているのを確かめ、トンマンは重い溜息を漏らした。
 ……一体、どうしたものだろう。
 兎にも角にもピダムに知られないように仕舞っておこう、どうするかはいつかまた考えれば良い、と気を取り直したトンマンの手は、しかし、今度は箱と一緒にヨンチュンが持ってきた包みを見た途端にまた止まった。

「……頼んだものは、全部あったはずだが」

 じゃあ、この包みは何なのだろう? あの三つ以外に何かを頼んだ覚えは全くないのだが。

「…………」

 まさか、手違いと言うことはないだろう。ヨンチュン自ら、持ってきたではないか。スンマンとチュンチュからの贈り物だと。そう、スンマンと、チュンチュからの……。

「スンマンと……チュンチュ……」

 ……なんだか物凄く背筋が寒くなってきたのは、気のせいだろうか。
 お互いに上手くやってはいるだろうけれども、決して仲が良いとは言えないあの二人が、わざわざ連名で贈ってきた代物。可愛い従姉妹と甥からの、贈り物。……知り得る限り相当喰えない人物であるあの二人からの、贈り物。
 とてつもなく嫌な予感がしたが、気付いた時にはトンマンはその包みを解いていた。生来持ち合わせている好奇心が、悪寒よりも勝ってしまったのだ。
 ――そうして包みを開けたトンマンだったが、出てきたものは、存外普通のものだった。

「布と……本?」

 それも、相当薄っぺらい、向こうが透けて見えそうな薄絹と、何の変哲もない表紙の本。敢えて言うなら、可笑しいのはその布が目の覚めるような紅い色をしているところと、本の表紙に何も書いていないところだろうか。訳がわからず、とりあえず布を広げてみたトンマンは、それがただの布などではなく、精巧に織られた装束であることに気付いて目を丸くした。
 タクラマカンにいた頃は西方の珍しい品々を、王女となり、女王に即位してからは、贅を尽くした数々の品をその目で見、触れてきたトンマンだったが、こんな作りの装束は見たことも着たこともない。夏に着る装束だとて、これよりは厚いだろう。恐々それを腕にかけてみると、恐ろしいことにその薄い衣越しに自身の腕が朧げに、それでも輪郭はわかるほどにははっきりと見えた。その衣の所々に施されている繊細な刺繍などを除けば、如何にもチュクパンなどが喜びそうな、品のない作りだった。

(な、なんなのだこれは!!)

 トンマンは狼狽して衣を投げ捨てると、驚きのあまり爆発しそうな胸に手を添えた。
 まさか。まさか、実は二人とも無責任にも王座を捨てたトンマンに恨みを抱いて、彼女が衝撃のあまり死にそうなこの装束を寄越したのだろうか。そんな、埒もないことを考えながらも、気付いた時にはトンマンは今度は本へと手を伸ばしていた。
 先ほどは何ともなかったのっぺりとした表紙が、今は何故だかおどろおどろしく見えるのは気のせいではないだろう。それで我が身が傷つけられるとは思わないし、第一信じていないが、もし呪いの書などであったら嫌だ。呪いの書なんて、出来ればもらいたくはないものだ。怨念の言葉は、気持ち良いものではない。

「…………よし、開けるぞ」

 膝の上に本を置き、一呼吸。
 トンマンは勢いよく本を開いた。

「――」

 開いて、また一呼吸。

(…………………………スンマン! チュンチュ!!)

 やっとのことでそれが何であるかを認識した瞬間、我を忘れてトンマンは天を貫かんばかりの怒声を上げた。……本当は声に出したかったが、最後の理性でもって、心の中に留めて。

**

「くしゅっ!」
「っすん!」

 狙ったように同時にくしゃみをしたスンマンとチュンチュは、これまた計ったように互いを見た。

「……気付いたようだな」
「そうですね」

 そうして、片やケラケラと、片やクスクスと笑い出した二人を、燻しをかけた黄金の鎧を纏うユシンが、不思議そうに見ている。しかし勿論、そこで何の話かを自ら語る二人ではない。疑問は疑問のまま御前会議を終えたユシンは、一緒に表へ出たアルチョンの様子が可笑しいことに気付いて、眉を顰めた。

「どうした」
「……いや、なかなかこのような立場に慣れなくてな。我ながら不甲斐ない」
「そのようなことはないだろう。宮中を取り纏める上大等には、戦場とは違う苦労が多いだろう」

 彼らしく、誠実な様子で呟くユシンにアルチョンは顔を上げて彼を見た。何も、上大等としての弱音を吐こうとしたのではないのだ。ただ、先王と比べると相当喰えない現王と次期王の最側近であることによって付随する、二人の子供のような悪巧みを間近で見るのが疲れるだけで。誓ってそれだけで、執務にはなんら不満はない。

「それよりもユシン、お前こそ苦労が多いだろう。今や、兵部令も兼ねる身だ」

 ユシンの父ソヒョンは、ミシル一派を掃討したことに安堵したのか、近頃身体が優れず、大将軍となったユシンは父の仕事も肩代わりしている状況だった。

「お互い様か」

 肩の力を抜いて微笑むユシンにつられるようにアルチョンも微笑むと、心の中で先王に叩頭して謝り倒した。
 スンマンとチュンチュが楽しそうに用意した『格別の品』が何であるか知っているにも拘らず――おまけに、それを受け取った時の先王の反応もわかっているにも拘らず、あの二人の悪戯を止められない罪を必死で詫び、改めて、為すべきことをし終えた時には、誠心誠意、先王を守って生きようとその決意を新たにしたのだった。

 ちなみに。

「ぶくしょっ!!」

 スンマンとチュンチュがくしゃみを炸裂させていた頃、二人の贈り物に一役買ったとある人物も、洟を啜っていた。宮中に勤めるようになってもう随分になるが、市井での暮らしが長過ぎたのか、未だに宮中の作法に慣れない男――チュクパンだ。

「あ~……この空気、どこかで感じた覚えが……」

 正確には、空気と言うより、怒気や殺気と言った方が正しいかもしれない、そんな苛烈な気。有無を言わせず彼を従わせてきたその気は、どこか懐かしくて、可愛くて……。

「いつだったかな」

 まさかチュンチュからの依頼がトンマンに通じているとは思いもしないチュクパンは、これも年のせいだろうか、と重い肩を自ら揉み解した。


****
わりかしユシン&アルチョンコンビが好きです。アルチョンが、ユシンといる時は同世代の友達らしい会話をするので(笑)
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  1. 2010.05.24(月) _00:00:35
  2. 隠居連載『蕾の開く頃』
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