善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS チルスク

ソファに引き続き、中年チーム代表チルスクSSです。
どうも鶏林に戻ってきた辺りから、チルスクを見るたびに「かわいそうに……」と同情しきりの管理人。ちょっとはいい思いさせてあげたいな、とこんなSSを捏造。ま、まあ色々あったっていいですよね(汗)


***

 砂漠の夜は、刃で身を切られるような錯覚を覚えるほどに寒かった。これまでどんな過酷な戦場で生き残ってきたチルスクにも、その厳しさが応えるほどに。
 身体中に疲労が溜まっているはずなのにどうしても寝付けず、幾度か眉を顰めた後、チルスクは腕を組み直した。その拍子に、鞘が擦れる金属質な音が鳴り、やっとのことで見つけた小さな家の中に響く。それと同時に、彼は後方でビクッとソファが震えるのを感じた。
 一緒に旅をするようになって、すぐにわかった。ソファは宮中での噂通り愚かで、おっちょこちょいで、怖がりで。15年、顔を忘れまいとミシルを想うのと同じくらい思い出していたと言うのに、皮肉なことに二人の女はどこも似ていなかった。
 背も高く、腕も立ち、何よりいつまでも若々しく美しくて肉惑的なミシルと、小さくて、剣の一つもまともに使えない上に、長年の苦労がそうさせるのか、乾いた肌と身体を持ったソファ。腹を痛めて産んだ子を惜しげもなく捨てたミシルと、押し付けられただけの子を命懸けで守り通したソファ。二人はあまりに違い過ぎて……違い過ぎて、チルスクはソファを殺せなかった。ソファは、チルスクが殺してきたどんな人間よりも弱い生き物だった。そして、刃以外のものでチルスクを刺した、初めての人間だった。
 また、ソファが蠢いた。話せない口では何も伝わるはずはないのに、不思議と今度は恐れからではなく、寒くて動いたのだろうと言うことがチルスクにもわかった。
 旅をし始めて数日の間は、ソファが口を利けないことがチルスクには有り難かった。チルスクにとってソファの声は、悲鳴でしかなかった。連れて歩くのに、悲鳴を出されては叶わなかった。どう言う訳だか、ソファを砂漠に捨てていくと言う選択肢は、彼女に息を吹き込んだ時に失われて以来、戻らなかった。
 また、ソファが動いた。

「…………寒いのか」

 無骨な低音が、その身体の大きさとは裏腹に、小さくソファの耳に届く。
 けれどもソファは、またびくりと震えるだけ。何の答えもなかった。あるわけもなかった。もう、ソファの心はトンマンを喪った時に壊れてしまったのだと、チルスクですらわかっていた。
 答えを求めない代わりに、チルスクは身体を起こして、自身の身体に巻いていた大きな布を乱暴にソファに掛けた。チルスク自身、寒さで凍えていたが、ソファの震えの方がより切実だと思われたのだ。このままでは朝が来る前に死んでしまうのではないかと思えるほどに。

「……あ……」

 言葉にならない呻きがソファから漏れた。恐々振り返った彼女は、チルスクが着ている服以外何も掛けずに横になっていることに気付いた。……チルスクよりも砂漠での暮らしがずっと長い彼女には、その格好はあまりに無防備で、愚かで、無鉄砲に見えた。
 暫し迷ったソファは、少しだけ、少しだけチルスクの傍に寄ると、彼に背を向けたまま横になった。砂漠に暮らした長い年月、夜は少しでも寒くないように、トンマンと体温を分け合って眠ったものだった。砂漠の夜は、どうしても人の温もりがいるほど寒いことを、彼女はよく知っていた。

「……」

 近寄った気配に、背中越しに仄かに感じる女の気配に、チルスクは視線をさ迷わせた。これまで彼が手を差し伸べるたび、怯えるばかりだったソファが、自分から近付いてきた。そのことに、何故だか身体の芯が温かくなった。
 相変わらず二人の間には冷気が澱んでいたが、それでも少し、温もりが近くなった。もうずっと忘れていた温もりが。……まもなく、チルスクは穏やかに眠りについた。


****
現実的なことを言うと(笑)、ずっと誰かと触れ合っていないなんてことはなく、チルスクはチルスクで、彼なりに遊女なりなんなりに触れることもあったとは思うのですが、故国が同じ、境遇が同じ、何年も探していた相手……全ての要因が絡み合って、ソファは特別なんだろうなと。また、背中合わせの図がよく似合うように感じたので、このようになりました。ソファに引き続き、お楽しみ頂ければ幸いですーv
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  1. 2010.05.30(日) _00:10:22
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:1
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はじめまして

  1. 2010/06/09(水) 11:40:25 
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  4. [ 編集 ] 
 先日、拍手を「みさ」の名前で送らせて頂いた詩織と申します。
 善徳女王、特にピダムが大好きなので、毎回楽しみに拝見してます。
 実は、最近、チルスクとソファの関係も気になっていたので、大喜びでこのSSも拝見しました。
 ドラマの中ではこの間まで命を狙っていたはずなのに、共に旅をするうちにチルスクがソファを好きになっちゃったのかな?位にしか思っていなかったのですが、こちらのSSを読ませて頂いて、そういうこともあったのかも……と何度も頷いてしまいました。
 これからも素敵な作品、楽しみにしています^^


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