善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 居候生活

書き始めたら止まらない!家族ものの番外編第三弾です。
頑張れアルチョン!
あ、トンマンが怖いお母さんですみません(笑)でもトンマンが子育てするとこを想像すると、まず間違いなく子供が悪いことをしたらお説教、酷ければビンタ、あるいは一晩倉庫に閉じ込めるくらいはするのではないかと(笑) ただ、トンマンはムンノのように物を使って叩くことはないと思います。怒る時も誉める時も慰める時も、ちゃんと相手に触れている、それがトンマンの温かさだと思うので。


***

「ほら」

 今月も月が変わったその日に迷いなく差し出された手を見て、アルチョンは暫し逡巡した後、腕を組んだままピダムを睨み付けた。

「また取る気か」
「当たり前だろ。これでも養わなきゃなんない妻と子がいるんでね」

 懐に余裕のある居候からは家賃を頂くに決まってるだろ、とトンマンの前では見せない嫌な笑みを浮かべると、ピダムはアルチョンを急かしにかかった。

「手元に金がないなら、代わりに剣でも預かるかな」
「金はある。私が問うているのは、何故毎月毎月私から大金をせしめるのかと言うことだ!」
「大金? とんでもない!」

 ピダムは噛み付くように反論すると、かつて野に暮らしていた頃そのままの粗雑な身振りで首を掻きながら言葉を継いだ。

「大体、お前この家に来てから薪割り以外に何か貢献したことある?」
「陛下を警護し、ヒョンジョンの面倒を見ている」
「それはお前の趣味だろ。そうじゃなくて、夕飯のおかずを用意したり、洗濯したり、鶏に餌やったり、掃除したり、繕い物したり、なんか物を売って金を稼いできたり。そう言うのやったことあるかって聞いてるんだ」
「…………。それはないが」
「だろ。アルチョンお前、今のとこ、鶏の世話だけはするヒョンジョンより稼いでないんだぜ。ここじゃ、いい年して稼ぎのない男ってのは、役立たずって意味だからな」
「やっ……」

 ――役立たず!?
 それは、アルチョンの人生五十年にして初めて与えられた、屈辱の称号であった。ぶるぶる震えるアルチョンの肩を組んで、再びピダムは彼に掌を差し出した。

「衣食住全部面倒見てやってるんだから、家賃ぐらいちゃんと払え!」



 家賃と言うには随分と多い金額をふんだくられたアルチョンは、軽くなった懐を通る隙間風に一抹の寂しさを抱えつつ、離れへの道をのろのろ歩いた。

「アルチョン殿」

 けれども破れかかっていたアルチョンの忠心は、落ち着いたトンマンの声を耳にした瞬間、きっちり縫い合わされていった。「はっ」と即座に振り返って一礼したアルチョンにふっと微笑んだトンマンは、きょろきょろ周囲を見回した後、彼を傍にある倉庫に引っ張り込んだ。

「陛下!?」
「しっ! それと、いい加減その呼び方は止めて下さい」

 おかげで子供達が私のことを「女王様」とからかいます、と顔を顰めて、トンマンは倉庫の戸を閉めた。
 妙な事態に、アルチョンの鼓動が忙しくなった。トンマンと二人きりでいることには慣れているし、恐らく秘密の命令があってこのような形を取っているのであろうことはわかる。が、もしこの場にピダムが現れたら、確実に面倒なことになるだろう。ヒョンジョンが来ても、同じことだ。
 くるりとアルチョンの方へ身体を回したトンマンは、声を落として話し始めた。

「アルチョン殿、ひょっとして、ヒョンジョンから何か聞いていませんか。例えば……私への不満とか」
「…………はい?」
「その、ヒョンジョンがアルチョン殿と休むようになって二ヶ月が経ちましたが、その間、一度も母屋で寝ようとしないでしょう? ヒョンジョンは少し前まで毎晩私が寝かしつけないと寝ないような子供だったのに、急にどうしたのかと……。アルチョン殿は何か相談されたりしていませんか」

 まず、ヒョンジョンはピダムへの文句なら山ほどあるだろう。しかしそれは、ここ二ヶ月だなんて根の浅いものではないように思われる。よって、不満があるとしたら、トンマンへの不満のはず。
 何度か相談してみたものの全く役に立たない夫に、そもそも(トンマンが自分以外に関心を向けていると言うだけでぎゃあぎゃあ騒ぐ)あの夫に他の者のことを相談した自分が間違っていた、と考え直したトンマンは、自ら問題の解決に乗り出していた。
 アルチョンもトンマンからの頼みとあって、真剣に考え始めた。……が、何度思い返してみても、ヒョンジョンは夜毎布団に入らなければならない時間ギリギリまで母屋にいてトンマンにベタベタ甘えていたし、その反面、離れに来て一刻以内には確実に寝ていた。アルチョンへの言葉と言えば、「おやすみなさい」とか、「明日は隣の子と虎を探しに行くんだ」とか……とにかく、深刻な悩みは一度も聞いた覚えがない。

「…………いえ、ヒョンジョンが陛……。…………夫人に、不満があるとは思えませんが……」

 陛下、と言い掛け睨まれたアルチョンは静かに呼び名を訂正して、質問に答えた。

「じゃあ……ただ、アルチョン殿が良いのでしょうか」
「特に私は何もしてやってはいませんが……」

 せいぜい、風邪をひかないように手を打ってやっているぐらいだろうか。しかしそれだって、ヒョンジョンが気付いているとは思えない。初めて掛け布団で簀巻きにして眠らせた翌朝、ごろごろ転がされて起きたヒョンジョンの第一声は、「もっかいやって!」だった。高速回転が面白かったようだ。

「……子供心と言うものは難しいものですね」

 トンマンの呟きに、陛下も十分難解です、と心の中で突っ込んだアルチョンは、その時、彼女が急に倉庫の隅に置いてある藁を退けにかかったので、慌てて手伝った。トンマンは藁の下に見える泥だらけの布を摘んで首を傾げていた。

「……?」
「陛……夫人、私がします」
「いえ、大した仕事ではないですし……それより、これは何でしょう。ここには布地はしまっていないはず……」

 ――そうして藁を退けて現れた泥と草と土に塗れたボロボロの布団を発見した瞬間、アルチョンは、瞬時に全てを察したトンマンの背後に燃え盛る炎を見た。気がした。

**

 その日も日が沈む頃になってようやく帰ってきたヒョンジョンは、玄関で布団と共に待ち構えていた母を見た瞬間、踵を返して逃げた。……しかしそこはトンマンも然る者で、物陰に潜ませていたアルチョンにヒョンジョンを捕らえさせると、布団を指差して、一言命令した。

「洗いなさい」

 千の小言よりも恐ろしい一言に、ヒョンジョンは小さくなって俯いたまま、「はい」と返事をして布団を抱えた。トンマンはそれ以上何も言わなかったが、洗い終わるまでご飯が出ないことをよく心得ているヒョンジョンは、ぱたぱた洗い場へ向かい、そこにある井戸水を布団にぶちまけた。
 見張り役としてヒョンジョンの後を追ったアルチョンは、ごしごし布団を洗い始めたヒョンジョンを見て、果たしてこの子供は気付いているのだろうかと腕を組んだ。手を貸さないのは、手伝わずにただ見張って下さい、と言うのがトンマンの命令だからだ。
 トンマンは、こと躾に関しては手厳しかった。けれどもアルチョンは知っていた。見張っていろと言うのは、怪我をしそうだと思ったら助けろと言うことで、ついでに、洗い場にちゃんと水が置いてあるのは、ヒョンジョンが帰ってくる前に、トンマンとアルチョンと二人を発見したピダムが、三人で井戸から水を汲んでおいたからだと言うことを。
 なんだかんだ言いつつも、やはりトンマンも我が子には甘いところがあるのだろう。
 数日後、ボロボロだった布団がきちんと繕われてヒョンジョンに戻された時、アルチョンは改めてそう確信した。

***

 おまけ。

「ねえトンマン、もうそれでいいんじゃない?」
「駄目だ。こう言うのは思い立った時にやらないと、いつまでも終わらない」
「でももう遅いから、明日にしたら」
「うん。まだ掛かりそうだし、ピダム、今日は先に寝てくれ」
「いやそうじゃなくて、それ、別に今日中に終わらせなくてもいいじゃない」
「それはそうだけど」

 話をしながらも一度も布団から目を離さないトンマンにムッと顔を顰めたピダムは、背後から彼女のお腹に手を回して抱きしめた。が、それでもトンマンは全く動じない。

「疲れているんだろう? 眠っていいぞ」
「……だから、そうじゃなくて……」

 ――この時間はヒョンジョンの時間じゃなくて私の時間!!
 そう主張するように悪戯し始めたピダムと、それを鬱陶しいと斬り捨てたトンマンの勝負は、結局本格的に邪険にされた為に拗ねたピダムに少し申し訳なくなったトンマンが、途中で布団を繕うのを止めた為に引き分けに終わったのだった。


****
アルチョンはこんな毎日がきっと目新しいんじゃないだろうか……と。
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  1. 2010.06.08(火) _00:01:31
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
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