善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 正真正銘珍現象・下

おお、やっとこさチュンチュがドラマに登場しましたね!ミセンもたくさん出たしアルチョンはカッコいいし、楽しい回でしたv 不満は……トンマンの衣装が……変わらないことですかね……。チュンチュでさえ今日だけで二着着てたのに……(ぶつぶつ)

家族もの外伝第六弾、「トンマン嫉妬する」後編です。
今回はイチャイチャした表現がありますので、ご注意をー。


***


 もやもやとした思いを抱えたピダムが我が家の門をくぐるやいなや目にしたのは、この世の終わりのような顔をして鶏を抱きしめ踞っているヒョンジョンだった。

「ヒョンジョン、どうした!」
「おとーさぁん……」

 大慌てで駆け寄ったピダムを涙でボロボロになった顔で見上げると、ヒョンジョンはぐしぐし嗚咽を漏らしながら訊ねた。

「おかあさん……病気なの?」
「え?」
「さっき……お薬のんで、苦しそうだったの」

 思いもよらぬヒョンジョンの言葉は、とりあえず一時その身を凍らせるほどの衝撃をピダムに与えた。――病気。トンマンが、トンマンが、病気だと!
 けれども危うく飛び散りそうになった理性を留めたのもまた、ヒョンジョンだった。ピダムは鶏を力一杯抱きしめるヒョンジョンの腕からギャアギャア騒ぐそれを取り上げると、代わりに自らの懐にその小さな身体を引き寄せた。

「……お母さんは、病気じゃないよ」
「でも……お薬……」
「多分、変わった茶を作ろうとして失敗しちゃったんだ。大丈夫、お母さんの身体は毎日お父さんが診てるから。お母さんは元気だよ」
「ほんと……?」
「うん。今日だって、ヒョンジョンと一緒にじいのお見舞いに行ったんだろう?」
「……うん……」

 ヒョンジョンを宥めながら、ピダムは自分を落ち着かせようと必死になってヒョンジョンに話した言葉を心の中で繰り返した。そうだ。毎夜毎夜、トンマンが眠っている間に脈を診てきたではないか。だと言うのに、トンマンの身体の不調をこの自分が見逃すものか。
 しかし、ヒョンジョンの言うことに引っ掛かる点があるのも確かだった。ヒョンジョンは賢い子供だ。薬を他の物と見間違えたりはしないだろう。恐らくトンマンは、ピダムに隠れて薬を飲もうとしたのに違いないのだ。
 そこで、ピダムははたと気付いた。

(昼間の……あの時か?)

 いつもは冷えるからとあまり薬坊には行かないトンマンが、今日に限ってあの場所にいた。しかも、明らかに様子がおかしかった。
 暫く時間をかけてヒョンジョンを落ち着かせ、泣き止ませたピダムは、お母さんが病気だと思ったことは二人だけの秘密だぞ、と約束してから、トンマンのいる台所へ声をかけ、そのまま風呂場へ向かった。すっかり涙で腫れてしまったヒョンジョンの目元を冷やしてやりながら、やはりトンマンに事の真相を訊かなければならない、と決意したピダムは、泣き疲れたのか船を漕ぎ始めた息子を抱いて母屋に戻った。



 ヒョンジョンを抱いたピダムが声をかけただけで風呂場へ行ってしまったのをなす術もなく見送ったトンマンは、力なく座り込んだ。
 あの後、大丈夫だと何度もヒョンジョンに言い聞かせたが、やはり怖かったのだろう。いつもは大人しくピダムに抱かれることのないヒョンジョンが静かにピダムの腕に収まっているのを見て、トンマンの身を申し訳なさが襲った。

(今日の私はどうかしている。朝から胸は痛むし、昼間はピダムから逃げたし……おまけに薬が苦かったからと言ってあんなに狼狽するなんて、まるで……まるで、子供のようだ)

 母親がこんな状態では、ヒョンジョンも不安で仕方ないだろう。しっかりしなければ。ピダムもきちんと医師として働いているのだ。せめてヒョンジョンとこの家くらいは、守り通さなければ。
 ……しかし、そこで昼間に見たピダムの仕事振りを思い出した途端に、またトンマンの胸は針の筵に晒されたかのように苦しくなった。
 可愛らしい娘や、美しい女がいた。それも、一人や二人ではなかった。いつもは草臥れた顔をしているのに、ピダムが脈を診て、その身体に触れるたびに彼女達の頬にさっと朱が走る様が、トンマンの脳裏に生々しく蘇った。……それは、かつて宮医が診療をしていた頃には見ない光景だったような気がした。

(ピダムのおかげで彼女達が元気になっているんだ。良いことじゃないか。そう、良いことだ。ピダムだって、御礼の品をもらったと喜んでいたのだし……)

 ……だと言うのに、どうして「御礼の品をもらった」と喜ぶピダムの顔を思い出すたびに、そのヘラヘラ弛んだ横っ面を力一杯張り倒してやりたくなるのだろう?
 トンマンは無意識のうちに鶏抜きの鶏汁を夕飯のおかずとして用意しながら、薬を飲んでもまだ痛む胸をぎゅっと押さえた。

**

 ヒョンジョンが産まれてからと言うもの、夫婦の時間と言えば、まずヒョンジョンが眠っている時である。
 よってその夜も、ピダムとトンマンはまだ不安げなヒョンジョンを二人がかりで眠らせてから、彼らの部屋へ入った。が、いつもなら二人きりになった途端に縮まる距離が、今夜ばかりはなかなか縮まらない。
 それでもピダムはトンマンの手を握ると、寝台に彼女を座らせ、自らは床に膝立ちになって、その白玉のような美貌を見詰めた。まずは、事の真相を確かめねばならない。

「トンマン」

 ピダムが呼び掛けると、トンマンはぴくりと肩を微動させた。だが示した反応と言えばそれだけで、ピダムから視線も逸らしたままだ。かつてない素っ気なさに、ピダムは心の奥底が澱むような感覚を覚えた。

「トンマン……どうしたの?」

 他の者に対する時とは打って変わって、頼りなささえ感じる声音でピダムが問う。それにはさすがに無関心ではいられなくなったトンマンが、困惑したまま彼を見た。――ピダムの瞳には、ヒョンジョンよりずっと深刻な影が宿っていた。

「私が何かした? 薬は……どうして?」

 か細いピダムの声に、トンマンは首を横に振るしかなかった。事実、ピダムが何かしたわけではない。

「その…………」

 やっと一声絞り出したトンマンは、思い切って続けた。

「昨夜から……胸が、痛むんだ」
「胸が?」

 すぐにピダムはトンマンの袖を捲って脈を見ると、眉根を寄せて唸った。

「昨日診た時も大丈夫だったし、今も脈におかしなところはないけど……手足が冷えてる。……いつから痛くなったか、正確に覚えてる?」
「昨夜……お前と荷物を解いてる途中で痛くなった」
「今日は? いつ痛んだの?」
「朝、昨夜の荷物を一人で整理している時と……昼間、お前が診療しているのを見た時と……その様子を思い出した時……かな」

 そう答えながら、ふとトンマンは気付いた。
 今、口にしたのは、要するに……ピダムが患者(可愛らしい娘や美しい女)と一緒にいる時や、恐らく彼女達からもらい受けたのであろう品に接している時ではないか? そして、それが意味するのは、つまり――。

「なんだろう。診療所の空気が悪いのかな? だったら……」
「――治った!」
「えっ?」

 自分の胸がちくちく痛む理由がなんであるのかわかったその瞬間、思わずトンマンは叫んでしまっていた。
 ――恥ずかしい。なんて恥ずかしいことだ。恥ずかしくて恥ずかしくて、とても『病』の理由はピダムには言えない……!

「も、もうどこも痛くない。だから大丈夫だ。心配しなくていい、ピダム」
「そう言うわけにはいかないよ。何か見過ごしているとしたら大変だ」

 だから大人しくしてて、と珍しく厳しい顔つきで告げるピダムを見て、トンマンは必死で知恵を絞った。誤魔化さなければ。ピダムに、自身は健康であると言うことを、今日一日の不審な行動が全て吹き飛ばされるくらい強烈な方法で示さなければならない!

「そうだ。明日、宮医にも聞いてみよう。医術で食ってきたんだから、私が知らないことも知ってるはずだし」

 宮医! 宮医にまで知れ渡ったら、それ則ち徐羅伐に筒抜けになると言うことだ。ピダムにこの感情――嫉妬心を知られるのも恥ずかしかったが、徐羅伐となれば、もはや恥ずかしいを通り越して、どうにかなってしまいそうだ。
 ぎゅっと目を瞑って奥歯を噛みしめると、トンマンは咄嗟に二つの『恥』を天秤にかけた。

「ピダム!」

 そうして軽い方の『恥』を算出すると、トンマンは自棄になってピダムを大声で呼んだ。

「はいっ? トンマン、な――」

 思わず「はい」と答えて顔を上げた瞬間、ピダムは目の前で起きている事態を図りかねて目を丸くした。
 ピダムの顔を捕らえたトンマンは、前触れなくその顔を引き寄せると、その紅い唇をピダムのそれにぶつけていた。
 ピダムが瞬くことを思い出したのは、それから間もなく、トンマンの舌が拙く彼の口腔を蹂躙しにかかった時だった。――しかもその夜のトンマンは、それだけでは終わらなかった。

「……ピダム……」

 どうせやるなら徹底的に『恥』を貫こうと決めたトンマンは、いつもピダムがそうしたように甘ったるい声でピダムを呼ぶと、彼を立ち上がらせた。そして、これまたいつも彼がそうしたように、腰の辺りを擦り寄せながら片手で彼の首を抱いてまた唇を合わせ、もう片方の手で彼の帯を解きにかかる。
 少しもたつくところが如何にも彼女らしかったが、それでも、ピダムがたまにそうするように身体で誤魔化す『恥』を選んだトンマンは、いつしか『恥』を忘れてピダムを抱いて貪った。
 脳裏に浮かぶのは、昼間の愛らしい女達や丁重な御礼の品だ。まさかピダムが他の女を口説いたり、女に襲われるとは思わないし、考えたくもなかったが、それらを思い浮かべるたびにどうしようもなく悔しくなって、また胸が痛んだ。
 元々女らしいことを好む性質ではなかったが、それにしても十五の年からずっと普通の女達とは一線を画す生活を送ってきたトンマンは、さすがに自分が女らしさと言う点では新羅中の女人と比べても最下層であることをよく自覚していた。ピダムが女らしさで彼女を好きになったわけではないこともよくわかっていたが、それでもただ見過ごすことは出来ない。……女王の座を捨ててまで一緒に生きようとした、たった一人の男なのだ。
 何が何でも、出来る限りのことをしてピダムを私に夢中にさせてみせる――と、聞く者が聞けば「今さら?」と呆気に取られそうな決意と持ち前の負けん気にその身を焦がしたトンマンは、ミシル顔負けの魅惑的な妖艶さで切なく熱い夜を主導した。――つもりであった。

「トンマン……」

 しかし、ミシルの血でその半身を象るピダムは、かつてない事態に暫し目を白黒させたものの、あっと言う間に覚醒すると、先程までの不安げな頼りない風情はどこへやら、凄まじい逆襲を開始した。
 理由も理屈もどうでも良かった。ただ無我夢中でトンマンが自分を求めてくれている、と確信した瞬間、ピダムの全身が火達磨のように熱くなった。春先だと言うのに、雪をも蕩かす熱を帯びた気だるい空気を纏ったピダムは、トンマンに魅了されただけ、彼女も彼の虜にした。
 春の淡雪がしんしんと降り積もる夜、乱れた吐息がいつまでも部屋を支配していた。



 ……そのように大変濃密で満足のいく一夜を送った二人だったが、おかげでトンマンは今度こそ正真正銘の体調不良になって、朝が来ても起き上がれず、目も覚まさなかった。
 ヒョンジョンはそんなトンマンを見てまた泣き出しそうになったが、今度はピダムが何故だか確信を持って「大丈夫だ」と太鼓判を捺すので、朝から彼に連れられて診療所へ向かった。

 やがて、昼下がりになってようやく目覚めたトンマンは、ピダムの残した置き手紙を見てホッと息を吐くと、湯を使おうとなんとか起き上がった。けれどもいざ身体を動かすと、まるで大量に砂袋でもぶら下げているかのように腰が重く、身体はだるい。

(わ、若くない者がすることではなかった……)

 よたよた上着を羽織ったトンマンは、ふと例の『御礼の品』に目を留めた。

(薪を取りに行くのは寒いし………………衣なら、薪の代わりによく燃えそうだな)

 刹那、トンマンの愛らしい瞳に不穏な光が煌めいた。



 その日の夕刻、ピダムとヒョンジョンが帰ってきた時には、『御礼の品』は、ヒョンジョンの玩具と食べ物以外、全て消えてなくなっていた。
 しかし物事の優先順位が少しばかりずれている父子は、部屋の一角を占領していた荷物がなくなっていることには全く気付かずに、ただ世界で一番愛しい人が、昨夜とは違って晴れやかな笑顔で出迎えてくれたことに大喜びした。……どうやらトンマンの胸の痛みは、煙と共に空へと消えてしまったようだった。


****
以上、トンマン嫉妬編でしたー。
実は最後の『(ピダム宛ての)御礼の品』を灰にするトンマンが書きたかっただけなのですが、珍しく長くなってしまいました。
おまけに、トンマンがおかしい原因は嫉妬だと言うことにピダムが気付かないまま終わりましたね(笑) ピダムは単に「あー最高だった!」で全部片付けてそうな…(そんなキャラか!?)
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  1. 2010/06/19(土) 20:37:19 
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