善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 元・王族の華麗なる庶民生活

家族もの第七弾! 「推火郡にやってきたアルチョンの多難の日々の始まり」です。

トンマンとアルチョン01

上の画像は善徳女王公式HPよりー。(この時の二人の笑顔がなんか似ていて笑えます(笑)) 大体隠居生活もこんな格好でしてくれてたら良いな、と思い、貼ってみました。


***

 数十度の嘆願の末にやっと唯一の主であるトンマンに以前の通り仕えることを許されたアルチョンは、推火郡に到着早々、トンマンとその愛息ヒョンジョンに出迎えられ、ピダムにさり気なく数回足払いをかけられながら、興奮と希望と安堵に満ち満ちた一日を終えていた。
 夜半、嬉しそうなトンマンと詰まらなそうなピダムと懐かしい話を終え、離れで床に就いたアルチョンは、昼間、彼に村の中を案内したヒョンジョンの聡明そうな面差しを思い出して、ふっと口元を緩めた。
 ――ああ、これこそが私が長らく待ち望んだ日々だったのだ。
 すっかり血色の良くなったトンマンの顔を思い浮かべてさらに笑みを深めたアルチョンは、明日も精一杯陛下にお仕えしようと気合を入れて目蓋を閉じた。



「…………あの……」

 さて、そのアルチョンは、現在かつて幾度となく生死の境をさ迷った戦場においてですら感じたことのない混乱と焦燥が渦巻く中、丸太のように突っ立っていた。
 ――なんなのだろうか、これは。私は……私は、一体何を見ているのか!?

「アルチョン殿、少し横に避けてくれますか」
「はっ……はい」

 かろうじてトンマンの命令ともつかぬ頼みに反応してギクシャクと横に退いたアルチョンに満足げに頷くと、トンマンはまたさっさと腕を伸ばして、よく乾いた洗濯物を物干し竿から外していった。十年前には洗濯物に触れることすらなかったかつての女王は、手馴れた様子で軽く洗濯物を畳んでは、これまたちょうど良い位置に置いてある篭にホイホイそれを投げ入れていく。あまりに鮮やかなその手並みは、完全にアルチョンの度肝を抜いていた。
 そうして次々と本日(も大量に出されたほぼ男物)の洗濯物を取り込んだトンマンは、大きい方の篭をアルチョンに渡し、残った篭を自分で抱えると、もう何でもないように母屋へと足を向けている。……そこでやっと物事が理解の範疇に収まったアルチョンは、慌ててトンマンの前に立ちはだかった。

「陛下! そのようなことは下々の者が致します! 陛下、直ちにその篭を――」

 『洗濯物を取り込む』と言う作業自体には、それに全く携わったことのない為にワケもわからず取り残されてしまったアルチョンだったが、篭を運ぶことが決して女王にさせて良いことでないことはわかる。トンマンの進路に立ったアルチョンは、そのようなことをトンマンにさせておいて外に出ているピダムを頭の中で百回は殴り飛ばした後、このような事態を受け入れている陛下も陛下だと憤慨した。
 ところがトンマンは、そんなアルチョンに吃驚したように目を丸くした。

「アルチョン殿……」
「陛下、下働きの者を今すぐにでも入れるべきでございます。相応しき者がおらねば、私の家の者を……!」
「――アルチョン殿」

 今度は、意気込んだアルチョンを冷静に、たしなめるように呼ぶと、トンマンはふっと爽やかな笑みを浮かべた。

「もうずっと、こうやって家事もこなしてきたのです。今さら下働きの者を入れるつもりはありません」
「陛下……!」
「どうしても私が洗濯をするのが気に入らないなら……」

 トンマンは悪戯っ子のような笑みを浮かべたままアルチョンに一歩近付くと、手にしている篭でドンとアルチョンの持つ篭を小突いた。

「アルチョン殿が代わりに洗濯をしてくれますか? 毎日毎日、朝、ヒョンジョンと山に修練に行く前にたっぷり汚れた洗濯物を洗って、晴れた日には日が沈む前に、雨が降りそうな日には雨が降る前に洗濯物を取り込んで、一つ一つ綺麗に畳んで決まった位置にしまってくれますか?」

 ……その、アルチョンにはよく意味のわからない謎の単語と文を並べて彼を凍りつかせたトンマンは、またしても何も言えずに口をぱくぱくと開閉させるアルチョンの袖を指先で引っ張って、彼を誘導した。

「アルチョン殿、アルチョン殿が洗濯をしてくれなくても、アルチョン殿がいるおかげで家事に集中出来ますし、こうして荷物持ちはやってもらえますし、私は助かっています」
「もったいないお言葉です」

 うっかり反射的に応じてトンマンの後に従ったアルチョンがハッと我に返ったのは、トンマンがアルチョンの篭を取り上げた時だった。

「……これはそろそろ破れそうですね……」
「………………」

 そしてその後も、衣服を畳んだことのないアルチョンは、何かしなければと思いつつも、あまりに手際が良い上に、「これは繕った方が良さそう」と宮殿では全く耳にしたことのない庶民の言葉をぶつぶつと漏らすトンマンのやることなすこと、その全てに眩暈を覚えて横槍を入れることすら出来なかった。
 そうしてただ唖然として洗濯物の山が家のあちこちに吸い込まれていくのを目にしたアルチョンは、その時初めて、トンマンの「人の暮らしをしたい」と言う言葉の正しい意味を悟ったのだった。

 しかしこの時のアルチョンは、まだ知らなかった。
 かつては女王と上大等と呼ばれたこともあった夫婦の現実を彼が思い知ったのは、前夜とは違って、すでにアルチョンを客人扱いしなくなったピダムとヒョンジョンが、いつもより多い鶏肉料理を巡って醜いおかず戦争を繰り広げ、それにトンマンが雷鳴のような怒号を轟かせた瞬間と、あまりの衝撃に寝付けなかった彼が深更になってから水を求めて母屋を訪れた際に耳にした、男の甘ったれた愚痴と女のひそやかな嬌声が一体何を指し示しているのか理解した瞬間であった。
 ……その日何回目かの眩暈を覚えたアルチョンは床に座り込み、黙然と考えた。
 ――おかしい。自分が考えた陛下の隠居生活と言うものは、このようなものではなかったはず。陛下は四季を楽しまれ、何の憂いもなく優雅にお暮らしになっているはずではなかったのか。
 それが現実と来たら、同じように手のかかる夫と息子を抱え、民草のように家事に追われて夜遅くまで心安らぐ暇もない。これでは女王時代と何も変わらないのではないか。いや、変わらないどころか、とんでもなく悪化しているのではないか。
 そのように煩悶したアルチョンは、それから暫くの間、事あるごとにピダムを呼び立て現状をどうにかすべきだと叱り飛ばし、トンマンに対してもどうか考え直すよう迫ったが、結局彼も、気が付いた時にはトンマンに頼まれ市場へお使いに行くようになってしまったのだった。


****
トンマンとピダムが一緒に暮らした時の長所の一つは、彼らの根っこにある金銭感覚が多分ほとんど変わらないことじゃないかと思うんですよねー。(まあムンノはお金稼いでる雰囲気がないのでちょっとそこら辺が微妙ですが、少なくともボロボロの格好をしてますし、一般市民のような生活をしていたのではないかと)
なので、きっとアルチョンは門番しに来た当初は家事はやるわ家計はやりくりするわのトンマンと、親子で戦いまくるピダムとヒョンジョンと、さらにはいい年して未だに若者みたいにイチャイチャしてるトンマンとピダムに仰天して、(トンマンの教育(と言うか洗脳?)が完了するまでは)苦悩の日々が続くことかと思われます(笑)
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  1. 2010.06.20(日) _00:28:23
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