善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS はじめまして、花嫁様1

※本日二本目の記事です。

リクエストで頂いた「双子が不吉ではなく、皆が幸せに暮らしている話」です。
ほぼオールスターでお送りしますが、主役はインミョン(トンマンの本名)とヒョンジョン(ピダムの本名)です。二人のお話なので、この組み合わせが苦手な方はご注意下さい。


***

 神国一の鉄の女――もとい、神国随一の美貌と知性を誇る王后ミシルは、その日も夫と息子の尻拭いに追われていた。
 王クムニュンの三男を生み、その知謀で彼の正室に納まり、長年の夢であった王后の座を得たミシルの日常は、しかし、夢見た日々とはまるで違っていたのだ。名ばかりとは言え夫であるクムニュンは王としての資質に欠けるほどではなかったが、三韓一統など夢にも思わぬ凡夫で、死に物狂いで異母兄二人を押し退け太子の座に据えてやった息子はと言えば――。
 そこで、長きに渡る息子の所業を脳裏に思い浮かべた途端に、ミシルが手にしている茶器にひびが入った。それを見た礼部令ミセンは姉の鬱憤と激怒を敏感に感じ取り、思わず仰け反っている。

「あ、姉上、怖いですよ……」
「…………あの馬鹿息子を、どうしてくれようかしら」

 彼女の先夫でもあり、今でも彼女を支える上大等セジョンや、宮廷中が知る彼女の情夫ソルォンもいない姉弟の席らしく、器が割れそうなことなど気にもせずに茶を煽り、ミシルは唸った。そんな姉の姿に怯えながらも、自慢の孔雀の扇を揺らしながらミセンはそろそろと顔を寄せた。

「しかし姉上、もう徐羅伐の妓楼でその美を称えられる妓女は全て送り込みましたし……おまけに、それならばと見合いをさせてみたら、あの有様です」
「あれが見合い? あれは、比才だったのよ。そしてその比才の優勝者にはチョンミョンが花を与える、とした。……ヒョンジョンが負ける理由は、一つもなかった!」
「確かに太子は、徐羅伐十花郎をも敵わぬ腕の持ち主です。ヨンス如きが倒せる相手ではなかったんですが……」
「そう。だからこそ比才をわざわざ見合いの場としたのに…………愚かにも、あれはこの私の目の前で八百長をしてくれた。太子が八百長をしたなどと、私からは口が裂けても言えまいと踏んだ上で! おかげでチョンミョンは、すっかりヨンスに惚れ込んで、私が手を打つ暇もなく婚姻してしまったわ」

 忌々しげな口調とは裏腹に、すっかり興奮したミシルの瞳はきらきらと輝いていた。
 ……実は、意のままにならぬヒョンジョンに業を煮やしつつも、どこかでその攻防を楽しんでいる姉がいることをミセンは知っていた。徐羅伐一の性悪母子は、その人並み外れて優れた容姿や才能だけでなく、そんなところまでそっくりなのだ。ついでに、負けず嫌いなところまで。

「凝った見合いは嫌だと言うなら、今度は正攻法で攻めてみては?」

 気付いた時には、うんざりしたような口調でミセンは提案していた。

「正攻法?」
「そうです。太子は徐羅伐の女は嫌だと言ってはいましたが、全ての女が嫌だと言ったわけではないのでしょう?……都合の良いことに、チョンミョン娘主の双子の妹は未婚で、その上徐羅伐とは縁も所縁もない田舎で育ちました」
「その娘は美しいの? 馬鹿息子は神国一番の美女でなければ結婚しないと豪語しているけど」
「チョンミョンの妹ですから、美しくないと言うことはないでしょう。何、あとはこのミセンがちょっと手を加えてやれば、どんな女でも神国一の美女になろうと言うものです」
「……ふうん」

 少しは怒りも静まったのか、ひび割れた茶器を置いて頬杖をついたミシルは、しゃらりしゃらりと耳飾りを鳴らしながら、「じゃあ」と口を開いた。

「ミセン、明日にでもペクチョンの城へ行って、そのインミョンとやらを見てきて。ペクチョンとマヤの娘なら血筋は申し分ないけど、あんまり馬鹿でも醜くても困るわ」
「…………。え?」

 唐突な命令に凍りついたミセンに鬱陶しそうに眉を顰めると、ただ一人の弟以外の者の前では決して見せない皮肉な笑みを浮かべて、ミシルは片目を軽く瞑ってみせた。

「女のことにかけては神国一のミセン公の御眼鏡に適うような女であれば、そのインミョンに婚姻を命じるわ」

 ――拒否権などあるわけもないその命令に、生まれてこの方ずっと姉の尻に敷かれて生きてきたミセンが逆らえるわけもなかった。



 突然の地方巡察命令は、華やかな徐羅伐の貴族社会に君臨するミセンに多大な打撃を与えたが、それでも彼は「酷いですよ」と一言文句とも愚痴ともつかぬ言葉を漏らしただけで、ただちに支度を整えた。
 勅命よりも恐ろしい王后命令を引っ提げ、双子姉妹の父であり、王の甥でもあるペクチョンの暮らす郡へやって来たミセンは、その夜、早速その城下で一番の酒を出すと言う店に赴き情報収集に当たった。そしてどうやら決して失敗などしたことのないその調査方法は今回も的を得ていたらしく、翌朝にはすっかり彼は城下でのインミョンの評判を収集し終えていた。
 あとは、実際にそのインミョンとやらに会って、彼の食指が動く程度の美しさならば問題はない。ヒョンジョンの言うような絶世の美女である必要など、元よりないのだ。彼の姉とて、その美貌だけでなく、その卓越した演技力と嬌態の為に『絶世』の名を欲しいままにしたのだ。
 その日のうちにインミョンにも会って品定めを終えたミセンは、とんぼ返りで徐羅伐に戻り、ミシルに巡察による収穫を報告した。……幾ばくか、彼なりの希望的観測を含めて。
 ミシルが王にヒョンジョンとインミョンの婚姻が『決定』したことを報告したのは、その三日後だった。

**

 さて、そのインミョンに両親から『婚姻命令』が伝えられたのは、なんと、それからさらに一月も後の話だった。
 さすがに立て続けに娘達を徐羅伐に奪われては堪らない、とペクチョン、マヤ夫妻が検討した結果がその一月の猶予ではあったが、勿論、猶予であるだけだ。その間に徐羅伐に赴きインミョンは太子妃には相応しくないと必死で懇願したペクチョンだったが、すでにインミョンについての調査を終えているミシルが彼の言葉を聞いてやるわけもなかった。おかげで、駆け落ちをして王宮から追放された異父妹マンミョンの息子ユシンと娘達のどちらかを婚姻させ、マンミョン一家の地位を回復させようと思っていたペクチョンの目論見は脆くも崩れ去った。
 どうやら王后となったミシルは、今でもペクチョンこそが王位に相応しいとする一部貴族達の扱いに手を焼いているようだ。チョンミョンでもインミョンでも良いから嫁に欲しいと言わんばかりの強引なミシルの手にうんざりしたように、ペクチョンは憔悴した顔を静かに座っているインミョンへと向けた。

「インミョン…………お前に縁談がある。相手は徐羅伐にいる太子様だ」
「太子様と言うと……ヒョンジョン王子ですか?」

 ところが悲しげな両親とは対照的に、インミョンはあっさりと問い返す。

「そうだ。長らく太子妃が決まらず徐羅伐中の者が気を揉んでいたと言うが……どうやら、お前に白羽の矢が立ってしまったようだ」
「父上。それは陛下のご命令ですか? それとも王后様のご命令ですか?」
「勅命ではあるが……王后の命令と考えて良い」
「では、父上はお断り出来ないと言うことですね」

 政治情勢にも鋭いインミョンは、現在神国の舵を本当に取っているのは王后であると言うことをよく知っていた。
 が、それよりも、彼女の両親はあまりに淡々とした娘の様子が気掛かりだった。ずっと変わった子だとは思ってきたが、それにしてもあまりに普通の娘と反応が違い過ぎるのではないだろうか? 雪のように白く、水晶のように透き通った肌には、乙女らしい恥じらいや戸惑いは微塵も感じられなかった。

「父上、お許し頂けるなら、一つお訊ねしても宜しいですか」
「なんだ……?」
「太子様は、優れた容貌をお持ちですか?」
「何?」
「インミョン、何を……」

 茫然とする両親に微笑むこともせず、インミョンは固い顔のまま重ねて訊ねた。

「お願い致します。父上、母上、私は太子様のお姿を拝見したことがありません。どうか、それだけ教えては下さいませんか」

 珍しく切実な様子のインミョンを見て、彼女の両親はしみじみとこの一風変わった次女が哀れに思えた。
 幾ら名誉ある太子妃の座とは言え、姑はあのミシルであり、おまけに夫は、徐羅伐でも名の知れた『愚か者』だ。チョンミョンとは違って結婚を夢見るような少女ではなかったとは言え、顔も知らぬ相手との突然の縁組には怖れこそあれ、嬉しさなど少しもないだろう。思わず感情が昂ぶったマヤは、席を立ってインミョンの華奢な肩をそっと抱き寄せた。
 ――いや。嫌なことばかりの婚姻ではあったが、一つだけ救いはある。
 もしインミョンが最も気にすることが結婚相手の顔の良し悪しだと言うなら……顔が良い夫ならどんな苦労でも厭わないと言うなら、彼女の夫となる青年が、美貌を歌われるミシルに良く似た整った容姿を持つことは、せめてもの慰めになるだろう。

「太子様は王后に似て、とても優れた容姿をお持ちだ。安心しなさい、インミョン……」
「…………そうですか」

 そこで初めてインミョンの口元に薄っすらと笑みが浮かんだ。

「では、インミョンは太子様に嫁ぎます。……父上、母上。これまで……本当に、お世話になりました」
「インミョン……」

 しおらしく床に膝をついて礼を取るインミョンを見て、ペクチョンとマヤの瞳に涙が浮かんだ。……ああ、なんと言うことだろう。娘がこのようにあっと言う間に、二人とも嫁いでしまうとは。
 ――しかしはらはらと落涙する彼らは、この時まだ気付いてはいなかった。インミョンの問いの、真の意味に。

**

「太子、喜んで下さい。来月、太子は婚姻します」

 婚礼は神国を挙げて盛大に執り行いましょう、と滑らかに笑う母を前に、太子ヒョンジョンは苦虫を噛み潰し、それを味わいつくしたかのような酷い顔をしていた。むすっと顰められたその顔は、とてものこと「顔だけなら」徐羅伐一の色男、と影で呼ばれている美貌の名残すらない。
 持って生まれた天賦の才を思う存分殺している息子にミシルは尚も艶然とした笑みを湛えたまま、続けた。

「お相手はペクチョン公の次女インミョン。この間ヨンスと婚姻したチョンミョンの、双子の妹です」

 滔々と流れるように言葉を継いでいくミシルにヒョンジョンが待ったをかけたのは、その時だった。

「母上。私は妃は自分で選ぶと決めています。もう何度も申し上げているのに、どうしてわからないのですか。泣く子も黙る神国の鬼王后らしくもない」
「……母を鬼呼ばわりした罪は後ほど問いましょう。ヒョンジョン、あなたももう十七、妃を持つべきなのです。早くこの母に孫を見せてあげようと言う気持ちがないのですか?」
「孫ならハジョン兄上がこさえるでしょう。私には関係ありません。第一、私の孫を母上に抱かせるつもりはありませんよ。ろくに赤ん坊の面倒も見たことのない母上に預けて、赤ん坊の頸が折れたら大変ですから」
「ハハハ! 鶏の尻ばかり追い掛けて、未だに女の一人も抱いたことのない父親に比べれば、片手では足りぬ数の子をこの腹を痛めて産んだ祖母の方が、よほど赤ん坊の扱いにも長けていると思いますよ」
「アハハハハ」

 その瞬間、そっくりな微笑を浮かべる母子の間に、荒波がうねり、雷鳴が轟いた。

「……その女とは婚姻しません。私は、私の選んだ女と結婚します。インミョンだかアンニョンだか知りませんが、母上の選んだ女など、お断りです!」

 どうやらヒョンジョンは本気で抵抗する構えのようだ。
 がしかし、ミシルとてこんなことはもう数え切れないほどに経験している。これまでも、何であれ、この息子が彼女の言うことに従うことなど、ほとんど皆無に近かったのだ。
 そも、剣の師匠ですら、彼女が選ぶ前に勝手に選び、修行に出てしまったヒョンジョンだ。その師匠がムンノであった為に胸を撫で下ろしたこともあったが、ムンノ仕込みの剣法を駆使するヒョンジョンは、今では手のつけられない困った息子に育ってしまっていた。

「そうですか。では太子、十日後にはインミョンが徐羅伐に来ますから、かねてより用意してあった太子妃の宮に彼女を迎えて下さい」

 そしてミシルもまた、息子の言うことになど全く耳を傾けない、強権を振りかざす母となっている。

「…………母上の用意した相手とは、婚姻しません」
「婚礼の支度は礼部令のミセン公がします。太子にとっては叔父でもあるのですから、これ以上の人選はないでしょう」

 ぎりぎりと臆面もなく歯軋りする息子にミシルは小さく口の端を片方だけ上げると、手にしていた書物に再び視線を落とした。

「――もう話は済みました。邪魔です。出て行きなさい」

 まるで明日の晩餐でも決めるかのように簡単に婚姻を押し付けられたヒョンジョンは、あまりの悔しさに王后の宮を荒々しく飛び出した。


****
「もし双子が不吉ではなく、皆が幸せに徐羅伐で暮らしていたら?」と言う設定で書かせて頂きました。
ただし、幸せかどうかは……わかりません(笑) 皆が徐羅伐で暮らしている状態と言うと、ピダムが捨てられないようにしないといけなかったので、真智王がミシルを王后(ガイドブックに従い、王妃でなく王后としました)にして、ピダムことヒョンジョンが三男ながら太子となっている、と言う状態です。
またペクチョン(真平王)は、徐羅伐からあまり遠くない城で領主をしています。トンマンことインミョンも、そこで暮らしている設定です。
今回は登場人物が多いので、完結まで二、三話はかかりそうです。最後までお付き合い頂ければ幸せですv
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  1. 2010.06.25(金) _22:12:17
  2. SS(パラレル系列)
  3.  コメント:1
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<<SS はじめまして、花嫁様2 | BLOG TOP | 6月23日と24日に頂いたコメントへの返信>>

comment

  1. 2010/08/19(木) 00:32:51 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
バイキング会場にてどの料理から手をつければいいか目移りしすぎて分かりません!てな訳でお話が書かれた時系列で追っております、ゆえに(←善徳吹替え版ぽく)、一人ずれた場所から緋翠さま今晩は~。

幸せな設定だけに、ミシルまでも安心して読めます。ていうかのけぞるミセンの表情が目に見えるようで・・・!ドラマでもミシルとミセンの二人きりだとちょっとリラックスしてて、この二人子供の時からず~っとこうして悪巧みしてきたんだろうな~てムードがあり、このssの二人のやり取りからもそれが感じ取られて楽しいです!

インミョンの「優れた容貌」の意味、親子の間ですごくすれ違っている気がw娘にしてみれば英雄にふさわしい帝王の風格とかそういう意味で、決して美形とかそういう意味ではないようなのに、親の方ではせめてもイケメンだから心配するなと答えてるところが、ドラマほどではないにしろここでも親子間のコミュニケーション不全を感じます。ていうかインミョンが変わり者すぎ?

ヒョンジョンとミシルの掛け合いもめっさ楽しいです!鬼王后と呼ばれた後の「・・・・」の沈黙が怖い!きっと顔は笑って眼は笑わずのミシル。泣く子も黙るどころかタクラマカンまで逃げると思われます。さてドラマではこの親子、回廊ですれ違う度やりあってますがあれも少なくともミシルは楽しんでるっぽいので、もしピダムがミシルの手元で育っていたらこういうムードだったんかな~と。幸せムード通り越してギャグ風味なとこも実に大好きですw


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