善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

このお話は、管理人が当ブログに来て下さる方とリレー形式で連載していきます。
第一部の砂漠編はsaki様と二人三脚での連載となりますが、もし他にも「参加してみたい」と言う方がおられましたら、サイトの有無や経験の有無に関わらず、第二部から一緒に連載して頂けたらなあと考えておりますv(ちなみにペースや文章の雰囲気などはそれぞれの自由ですー。字数も、一話辺り3000字から5000字以上と、かなりバラつきが出ると思います。ただ、句読点以外の記号(♪やv)のご使用はナシ、と言うことで^^;)
ちなみに設定は、「もしソファがピダムも連れて行ってくれていたら」と言うものです。詳しくは続きから始まる第一話にて!
ちなみに第一部砂漠編では、『SIDE-S』がsaki様、『SIDE-H』が緋翠です。なので今回のお話はsaki様執筆となります!(都合により、改行のみ緋翠が弄らせて頂きました)
大筋は決めていますが、細かいところはほとんど決めずに連載していく予定なので、「こんなのは?」と言うのがありましたら、どうぞ連載にご参加下さいv ご意見ご感想もお待ちしております!


***

ソファは途方に暮れていた。
腕の中には王から預けれた赤子の王女。
足元には彼女を、いや、その腕の中の赤子をじっと見上げている幼子。
ムンノは外の様子を見てくると一時彼女たちを置いて小屋の外に出ているので今はいなかった。
本当にムンノは何を考えているのかソファには分らなかった。王の娘とその政敵である宮主の息子を将来一緒にさせようだなんて。それが2人の運命で新羅の為であるというけれどソファにはどう考えてもそれはありえない。否、あってはならないことだった。
宮主は新羅の王室を混乱させ、その実権を握りソファの主である王と王妃を苦しませている張本人だ。その息子が何故国仙であるムンノと共にいるのか。ムンノはチンジ王から預けられたといったがそれははたして本当なのだろうか。
それとも助けられたと思ったのは偽りで実は彼も宮主の手の者だというのだろうか。そして今彼はチルスクやソルォンといった宮主の手先をここに連れてこようとしているのではと考えれば考えるほどに空恐ろしくなったソファは王女を抱く腕にいっそう力を込めた。
逃げなければ。逃げなければ。あぁ、でも一体どこに。ムンノが紹介してくれた長安の知人の所へなどもう恐ろしくて行けるはずもない。考えも纏まらぬままソファは小屋から出ようと足を踏み出した。
その時、彼女の後ろから聞こえた幼い声にソファはビクリと肩を跳ねさせた。ここにいるのは王女と自分、そしてピダムと呼ばれていた幼子だけだ。
となればその声が誰のものであるかなど分かりきっていた。
ソファはオズオズと視線を下ろした。 自分を見てくれたことが嬉しいのかニコニコ笑う幼子にソファは言葉が出なかった。宮主の息子でさえなければその様はとても愛らしく黒く大きな目は利発そうな光を宿していて、おそらくソファもこの幼子に対して好意を持っただろう。
そこでソファはハタと思い至った。一緒にさせたくないのならムンノのいない今この時にこの幼子をどうにかしてしまえばった良いのではないかと。いくら力の無い女とはいえ相手は何もできないただの幼子だ。抵抗されることもなくきっと簡単に事は終わるだろう。ソファはゴクリと生唾を飲み込んで、そっと腕の中の王女を敷藁の上に下ろすと幼子に手を伸ばした。
けれど幼子はそんなソファから床に下ろされた赤子に興味が移ったのかトテトテと王女の側によると愛らしい赤子の頭を撫で始める。赤子はまだ生まれたばかりでその円らな瞳が何を映しているのかソファには分らなかったが、それまできょときょと宙を彷徨っていた赤子の視線が幼子に止まったのは確かだった。不思議そうに幼子をオクルミの中から見上げる王女は次の瞬間ふわりと花のように笑った。そして幼子へとその小さな手を懸命に伸ばそうとする。ソファはヘタリとその場に力なく座り込んでしまった。
自分は何をしようとしていたのだろう。いくら宮主の息子とはいえ自分が何であるかも分かっていない幼子に。ましてやソファが許せないのは幼子と王女が将来一緒になることであって幼子が生きていることではないのだ。
何も知らぬ者が見れば可愛らしい兄妹のようにしか見えない幼子と赤子を前にソファは真実どうしようもなくなってしまった。ただそれでも逃げなければならないという脅迫じみた思いにソファはもう何も考えられず目の前の幼子と赤子の2人を抱え込むと小雨が降り出した未だ明けぬ闇の中へ飛び出していってしまった。

+++++++++++++++++++

あの夜から15年。
ソファはタクラマカンの砂漠で2人の子どもと宿を営んでいた。
あの時は幼子は17に、赤子は15になろうとしている。この小さなオアシスの中でちょっとした兄妹として。
兄妹。そうソファがあの夜赤子と共に連れだしてしまった幼子だ。
自分の腕の中で赤子と共に船を漕いでいる幼子に恐慌状態を抜け出したソファは腰を抜かしそうなほどに驚いてついで己の失態を呪ったのだ。
何故に幼子までを連れてきてしまったのかと。かといってムンノのいるだろう小屋まで戻る気にもなれずこのまま捨てることにも流石に抵抗を覚えたソファはとりあえず何処か村か町に着くまではと結局幼子も連れて歩くことにしたのだ。
その時は確かにそれまでの連れ会いだと思う事にして。
しかしどうしたことだろう。一体何の因果か縁があったのか幼子は今もこうしてソファたちと一緒にいる。
共にいるうちに情が移ったのか初めの内にこそ幾度となく幼子の首に伸ばしたソファの手はいつしか幼子の手を包むようになっていた。
それは幼子が彼女を母と呼ぶようになったからなのか。それとも赤子が幼子を兄と慕うようようになったからなのか。
幼子は素直だった。ソファの言いつけを守る素直すぎる子だった。
一度何処かの村の宿に置き去りにしかけた事がある。2度と戻る気もなく幼子に大人しく待っていろと告げたことがある。
腕の中で眠っていた赤子が幼子の不在に火がついたように泣きだしたのは村を出てすぐだった。すぐといっても既に陽は中点を過ぎ戻るとすればゆうに夜半を過ぎるだろう。
そして村に戻った彼女を迎えたのは置き去りにしたときと寸分変わらぬ場所で座り込んでいる幼子だった。
その目は判然と宙を彷徨いソファの姿を認めるまでは酷く頼りない光を宿していた。そして彼女の姿に幼子は何故と疑問と安堵の色を向けたのだ。
ソファは認めざるをえなかった。幼子は理由は分からずとも自分が疎んじられているのを既に気付いているのだと。
だからソファに愛情を貰おうと関心を得ようと彼女の言葉を必死に守っていたのかもしれない。幼子の世界は酷く狭いものであったのだ。
ソファと赤子。旅をする中で幼子の視界にある変わらぬ世界は2人だけだったのだから。
たとえどのような感情がそこにあったのだとしても。

+++++++++++++++++++

「お帰りなさい。兄さん。ずいぶん早いお帰りで。」

時は夕刻。旅人たちは各々に宿を決め荷を下ろし、食事と酒を楽しみ、あるいは旅の途中の話に花をさかせていた。
その中で砂埃を連れて古びた扉が軋んだ音を立てる。太陽が照りつける砂漠の住人たちの中でも特に色の濃い肌とターバンからはみ出した真っ黒い髪。
それとは対照的なまでに白い歯をした少年は自分が開けた扉の前でお玉を片手に仁王立ちで待ち構えていた少女にへらりと笑いかけた。
それは少年が何かを隠したり誤魔化したりするときに浮かべるもので、その事をよく知っている少女は目を眇める。

「・・・兄さん。また客引きにも行かないで岩屋で昼寝してたんでしょ?!」
「いや。誤解だ。今日はしてない。」
「今・日・は?!」
「あ!いや、落ち着け、トンマン。いつもだ!いつもしていない!!」
「嘘つかない。昼寝でなくても客引きサボってたのは同じじゃないか。こんなことならやっぱりあたしが客引きにいく。」
「まて!!それはダメだ!!」

一体何事かと新しく宿をとった数人の客たちが食事をする手を止め扉の前の兄妹に視線を向け、長らくこの宿に留まっている他の客たちは既に見慣れた光景に互いに苦笑をこぼしあった。
ソファもまた料理を運ぶ手をとめ2人のやり取りをみやう。2人が互いを兄妹と信じて疑っていない事を彼女は知っていた。
だからこそ彼女は2人と笑いあいながらここで暮らす事ができた。誰から見ても、ソファから見ても2人は兄妹で、そしてソファとは母子だった。

「トンマン。ピダム。今は仕事をしてね。お客を待たせちゃダメよ~。」
「は~い、母さん。兄さんはマントの砂を払ったら厨房に入る!客引きの話は後でするからね。」
「俺は引かんぞ。それと母さん、皿持ったまままた転ぶなよ。あ、トンマン。ちょっと待て。」

厨房に戻るため背を向けた妹の手をとりピダムは固いコロンとしたものを握らせる。瑠璃色をした小石がトンマンの手のひらに収まっていた。

「土産だ。砂漠で拾った。」

にこにこと悪気なく笑う兄はまず間違いなく宿の手伝いを放棄していたことを微塵も悪いと思っていなかった。
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  1. 2010.07.04(日) _09:52:37
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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