善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS はじめまして、花嫁様4

お気付きの方も多いとは思いますが、『はじめまして、花嫁様』ではドラマ本編のパロディーのような場面がたくさん登場します。「これ、どっかで見たような話だな…」と思ったら、ぜひぜひどのシーンのパロディーなのか考えてみて下さいませv

今日は日本とパラグアイ戦! 眠いですが、最後まで見ようと思いますー。


***

 それから間もなく、すらりとした美少年に続いて先程の乳母が出てきた時、ヒョンジョンは思わず小躍りしそうになった。

(インミョンって、まさに私の好みそのものの顔に体つきじゃないか!! それに、乳母一人なら撒くのは朝飯前だ)

 浚う目的が徐々に変わっていきつつあることをわかっているのかいないのか、ヒョンジョンは舌舐りしてインミョンと乳母の後を追った。
 一方、完全に獲物を狙う獣の眼になっているヒョンジョンに気付く様子もない二人は、色々な国の者で賑わう宿へと入った。徐羅伐からさほど遠くないこの城は、どうやら西方からの商人達が徐羅伐に入る前に泊まる、最後の宿であるらしい。インミョンはキョロキョロと辺りを見回すと、その中の一人に向かって手を振った。

「カターンおじさん!」
「トンマン!」

 ――トンマン?
 ヒョンジョンは首を捻ったが、すぐに彼はそれどころではない光景を目にして、歯軋りした。

「おじさん、手紙をありがとう。もうすぐこの城を発つことになっているんだけど、最後におじさんに会えて良かった!」
「聞いたよ。徐羅伐に行って結婚するんだってね。寂しくなる」

 悲しそうに眉を下げたカターンは一層強く、トンマンと名乗るインミョンを抱きしめた。ローマ式のその挨拶にはインミョンもすっかり慣れているのか、彼女もぎゅっとカターンに抱きついている。……それを見ているヒョンジョンは、ちょうど手元にあった器をカターンの栗色の頭目掛けて投げたい衝動を懸命に抑えた。まだ。まだ、殴り飛ばすには早い。

「そうだ。おじさん、神国の言葉がまた上手くなったのね!」
「ああ。トンマンがローマの言葉を勉強してどんどん上達しているのに、負けていられないだろ?」
「でもおじさんは他の言葉もたくさん喋れるじゃない。私なんて、神国の言葉も含めて三つだけ」
「その年で三つも喋れたら、私ぐらいの年の頃には十は喋れるようになっているかもしれないよ」
「本当? じゃあ、次に会う時にはおじさんを驚かせるぐらいにたくさん喋れるようになっておくね!」
「ああ!」

 そこでまた幸せそうに抱き合った二人は、気付いていなかった。すでに悪魔――もとい、早くも嫉妬に駆られた性悪太子の罠が、仕掛けられたことに。

「姫――トンマン!」

 最初に異変を感じ取ったのは、乳母のソファだった。彼女は店の中に異様な白煙が満ちていくのを覚った瞬間、インミョンを外に出そうと足を縺れさせながらもインミョンに駆け寄ろうとした。……しかし彼女は、インミョンに辿り着く前に、背後から忍び寄った悪魔により気を失った。

「ソファ!?」
「トンマン、いけない! 外に――」

 続いてカターンも、こちらは強烈な鳩尾への一撃によりその場に倒れた。白煙で視界が真っ白に塗り固められる中、インミョンは袖で鼻と口を覆って乳母を探そうと一歩踏み出した。
 ところがその彼女の手を掴む者がいる。

「インミョン」
「何者っ……!」

 突然の事故に狼狽していたインミョンは、本名を呼ばれたことに違和感を覚える前に、ソヨプ刀に手を掛けようとしたものの、呆気なくソヨプ刀を弾かれ、口元に布を当てられてしまった。霞んでいくインミョンの視界に唐突に誰かの真っ黒な顔が現れたのは、その時だった。

「――はじめまして、私の花嫁様」

 その言葉と、闇夜のように黒々とした瞳の記憶を最後に、インミョンの身体は崩れ落ちた。
 それを軽々と抱き上げたヒョンジョンは、一目散に店の外へ出て、叫んだ。

「火事だ!! 火事だぞ!」

 その一声に、一斉に周囲の者達が慌てふためき、騒ぎ出す。もはや最初に火事だと言い放った少年と、彼に抱き抱えられている少女のように愛らしい少年になど目もくれない。
 そんな喧騒の中、ヒョンジョンは悠々とインミョンを背負って馬を隠しておいた場所へと向かい、あっさりと城門を突破して森へと消えていった。



 森の奥深く、人影など全く見えない川沿いを上流へと向かったヒョンジョンは、かつてムンノと修行に出た折に一夜の宿とした滝と洞窟を見つけると、嬉々として馬を降りた。荷物を背負い、次いでインミョンを抱えると、洞窟へと入っていく。徐羅伐に帰ってからも何度か使っていたその洞窟には、ヒョンジョンが寝床代わりにしていた筵や毛皮に、石で作った小さな炉まで用意されている。
 インミョンを丁寧に寝床に寝かせて、冷えないように持ってきた上着までかけてやってから、笑み崩れる口元を隠しもせず、ヒョンジョンは外に出て愛馬の鬣を撫でた。

「女は優しい男が好きだって言うから、まずは私が神国一親切で心優しい男だって知ってもらわないとな」

 聞き覚えのない言葉に愛馬が目をパチパチと瞬かせているのにも構わず、ヒョンジョンはドンと馬の腹を叩いて命令した。

「ここを発つのは明日の朝になるから、それまでは自由にしていろ。狭い徐羅伐には飽きてたんだろ?」

 轡を外してやれば、あっと言う間に黒馬は楽しそうに森へと消えていく。それを見届けてから、ヒョンジョンもにんまりと笑みを深めた。

「私も、姫様への贈り物を探さないとな!」

**

 その頃、昏々と眠るインミョンは夢を見ていた。不思議なことにその夢は、姉のチョンミョンと別れた夜を彼女の眼下に見せている。まるで雲上人にでもなったかのように、インミョンは姉と自分の頭を眺めた。

 王后ミシルの招聘により姉のチョンミョンが徐羅伐に出立する前夜、インミョンは姉の室に遊びに行き、姉の冥加を喜ぶと同時に悲しんだ。

「姉上、次に会う時は太子妃様なのね。姉上が未来の王后様かと思うととても誇らしいけれど……姉上がいなくなってしまうのは寂しいな」

 その言葉に驚いたのは、チョンミョンだ。彼女は比才の客として呼ばれただけ、太子妃などと寝耳に水である。そんな姉に、インミョンは円らな瞳を不思議そうに転がした。

「姉上ったら、知らないの? 最近徐羅伐では、太子様の花嫁選びで貴族達が大わらわなんだって。きっと姉上も花嫁候補に選ばれたのよ!」
「インミョン……私には、そんな、太子妃なんて大役は務まらないわ」
「何言ってるの! 姉上はこの城で一番綺麗で、優しいんだもの。姉上みたいな人が太子妃になったら、皆王后様じゃなく、姉上を好きになるわ」
「まあ! インミョン、なんてことを! 王后様を出し抜くなんて、恐ろしいこと言わないで」

 幼い頃から、両親や侍女達からそれとなく王后の恐ろしさは聞かされている。ふるりと小さく震えると、チョンミョンは妹に向かって首を横に振った。

「いい、インミョン。私達は王后様に目をつけられてはいけないのよ。例え今回の比才が太子様とのお見合いだとしても……私は太子様とは婚姻しないわ。嫌が応でも王后様と顔を合わせなければならなくなるもの」
「……太子様がどんな人でも?」
「え?」

 愛らしく口を尖らせ、インミョンは詰まった。

「だって、幾ら王后様が恐ろしくても、王后様はもう不惑をとっくに超えていらっしゃるのよ。だったら、もし太子様を見て、素晴らしい太子様だったら……結婚するべきだわ」
「インミョンったら、野心家ね」

 柔らかく微笑んで妹の手を取ると、チョンミョンはそっと妹の耳元で囁いた。

「……実はね、私が徐羅伐で楽しみにしているのは、ヨンス王子様と会うことなの」
「えっ?」

 驚いて振り返ったインミョンに、チョンミョンはぽっと頬を染めて幸せそうな笑みを浮かべた。

「誰にも言っては駄目よ? 実は私……三年前に、ヨンス様に愛を打ち明けたの」

 三年前と言えば、まだ十二歳の頃だ。インミョンは愛どころか、両親の目を盗んでは近くの山々へ清遊と称して馬を走らせに行き、魚やら蛇やら何か捕まえては市場で売って、そのお金で本を買っていた。……同じ時に生まれた姉妹だと言うのに、なんと言う差であろう。

「その時、ヨンス様が仰ったの。『チョンミョン、君はまだ小さいから、今君が抱いている気持ちが愛なのかどうか、わからないだろう。だから、三年経ってもまだ私のお嫁さんになりたいと思えたら……その時はまた徐羅伐においで』……と」

 それって詐欺で使われる常套文句よ姉上、とインミョンは青くなったが、チョンミョンは一人照れて、何を言わせるのよもう、と可愛くペシペシ妹の腕を叩いている。
 ――結局インミョンは、幸せいっぱいの姉を前にしては言えなかった。……ヨンス王子に騙されているんじゃないかな、とは。そしてそれから間もなく、インミョンは姉が正しかったことを知って、愛の難解さを痛感した。……愛と言うものは、彼女が読む書物にある武人や商人達の話とは、だいぶ違うようだった。

 さてそんなインミョンにも、縁談が……いや、婚姻命令が舞い込んだ。相手はインミョンの予想した通り、太子である。姉が駄目なら妹、そんなものよね、と至ってサバサバとインミョンはその命令を受け入れた。
 ……生憎と、インミョンは愛によって夫を選ぶつもりは毛頭なかった。彼女が愛してやまないのは、書物の中に息づく英雄達だった。インミョンは常に、私が彼らだったら……あるいは、せめて彼らの妻だったら、と考えていた。そんな彼女にとって、太子は容易く英雄になりうる地位に生まれた、非常に魅力的な存在だった。あとはもし太子が王后のような大きな器の主だったら……考えるのはそればかりだ。――さらに、両親が太子は「優れた容貌」だと太鼓判を捺してくれたことも、インミョンの期待を高めた。

「真興大帝によく似ておられるんだ、きっと!」

 特に、真興大帝を知る父がそう言ってくれたことが、インミョンには心強かった。
 そうと決まれば、インミョンがしなければならないことは一つである。英雄の卵たる太子に相応しい妃となるべく、さらに自らの知識を増やすのだ。

「乳母。明日、乳母の家に行ってもいい?」

 縁談を告げられてから一夜が明け、すっかり落ち着いたインミョンは、彼女とは対照的に、未だに縁談を断れないかと渋る乳母のソファに明るい笑顔を向けた。

**

 少しずつ意識を浮上させたインミョンは、今しがた見た夢を訝しんで眉を寄せた。……夢は時折見るけれども、今のような夢は珍しかった。特に、姉との別れだけでなく、昨夜の乳母とのやり取りまで夢に見るとは。そう、乳母との――。
 そこでようやく白煙に消えた乳母のことを思い出したインミョンは、カッと目を見開いて、文字通り飛び起きた。

「ソファ! ソファ……!?」

 ところがいつもなら彼女の隣にいて、一声掛ければ転びそうになりながらも駆けつけてくれる乳母の気配はない。おまけに見慣れぬ景色が辺りには広がっていて、インミョンは呆然と呟いた。

「ここ、は……」
「私の秘密の洞窟」

 さらに、いきなりどこからか男の声までして、インミョンは咄嗟に声とは反対側の壁に飛び退いた。
 そんなインミョンを満面の笑みで見詰めている男は、未だにぼんやりする頭に残っている記憶が確かなら、気を失う直前に、煙の中で彼女の腕を掴んだ男であるようだった。耳に心地好い声に、漆黒の瞳、浅黒い肌。洞窟の中である為か、膝を抱えて小さくなってはいたが、それでも彼女より長く大きい手足を見て、インミョンは落ち着こうと唾を飲み込んだ。

「……さっきの白煙は、あなたの仕業?」
「うん」

 ちゃんと疑問には答えて、親切だと言うことを見せようとするヒョンジョンに対して、あまりにあっけらかんとしている男に少しばかり興味と恐怖を覚えたインミョンは、恐る恐る訊ねた。

「……あなた、誰? 何者なの……?」

 彼女をインミョンだと知っているのなら、彼女を浚えばどんな目に遭うのかもわかっているはず。狂人にも見えないのに、怯える様子もなく鶏肉を火で炙っている男に、インミョンは持ち前の好奇心を抑えられなくなっていた。考えてみれば、人生初の誘拐ではないか!
 片や、男はインミョンの質問に待ってましたと言わんばかりに胸を張って答えた。

「私はヒョンジョン。もうすぐあなたの夫になる予定の、太子だ」

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  1. 2010.06.29(火) _19:28:54
  2. SS(パラレル系列)
  3.  コメント:2
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comment

懐かしのカターンおじさん

  1. 2010/09/02(木) 23:14:48 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
緋翠さま今晩はー。うわ~懐かしいですこの場面。ややイチロー似のカターンおじさん!けどおじさんまで嫉妬の標的に・・・(笑)!全てのものに嫉妬、がお約束とはいえまだ知り合ってもいないのに勝手すぎるというか何と言うか。続編ではヒョンジョン太子もおじさんに紹介されて、挨拶ついでに抱擁されて、腰だか尻だかグッとつかまれるといいと思いますv

しかしヒョンジョンの行動、理屈は通ってないわ、行き当たりばったりすぎるわで、呆れを通り越してもはや感心です。そういう所がまた興味本位で自分の行動を決めてた初期ピダムっぽくて(ウィンクしなかったのがちょっと残念でしたー!)。しかし浚われて悲鳴もあげずに「人生初の誘拐」と心躍らせるインミョンも全く負けてはいませんね。ズレ具合がうまくはまれば相当(色んな意味で)度を越したカップルになってくれると期待が高まります・・・!

りば様へ

  1. 2010/09/03(金) 19:20:55 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
りば様こんばんは~v
イチロー似!(爆笑) 確かに…確かに似てますね! なんで気付かなかったんでしょうw おじさんには本当にすみませんって感じです。と言うかあのお店にいた人皆すみません…!(笑)
この話は、何せリクエスト内容が「皆捨てられてなくて幸せ」だったので、わりとフリーと言うか、キャラクター設定だけして、あとはキャラクターの動くまま、行き当たりばったりに書いた気が…。とにかく、ヒョンジョン太子がトラブルメーカーで、最低だなーと書きながら思いましたw 物語の主人公としては動かしやすくて助かりますが(笑)
ウインク、書いてませんでしたか!? あれ、煙の中で会った時にしてたはず……(読み返す)……ああ、書いてないっ!!(汗) う、うっかり…!! 瞳が印象的、にウインクも加味して下さい…っ。(コラ!) 罰として、続編で、ヒョンジョン太子のお尻をおじさんに鷲掴みして頂こうかと思います(えぇえ)
ヒョンジョンは確かに初期ピダムに似てますね! 初期ピダムから、ムンノの顔色を窺う部分を取り除いた感じが近いかと。
インミョンは、ヒョンジョンと良い子なんだけど、周囲の人と感性ズレまくってる感じにしたかったので、全く負けてないと言って頂けて嬉しいです(笑) あの二人が国王夫妻だなんて、周辺の皆様の苦労は並大抵ではないと思いますが(笑)、企画リクエストが終わったら続編を幾つか書きたいなーと考えていますv
りば様嬉しいコメントをありがとうございます!


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