善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 予測不可能な君

善徳F4とトンマンのカップルは、自分で思いついたと言っておきながら、いざ書こうとすると「どうしたもんかな……ドラマ無視だよなこの内容…」と言うメンツが約半数なので(笑)、シチュエーションだけドラマからお借りして、のIFものにすることにしました。
と言うわけで、アルチョンとトンマンのSSです。主従じゃなく、恋愛色があるのでご注意下さい。ネタは、「もしアルチョンがトンマンの男装を知ったら…?」です。


***

 アルチョンの予想に反して、トンマンは酒飲みだった。

「ったく、嫌になりますよ本当に!」

 強かに杯を卓に置いたトンマンは、目を据わらせながらアルチョンの杯に酒を注いだ。

「仕方ないだろう。お前は見た目がか弱い上に、遊花と戯れているところも見たことがない。誤解されるのも無理はない」

 アルチョンは可笑しさが堪えきれないのか、ふっと笑みを零したが、トンマンは口を尖らせてアルチョンの言葉に反駁した。アルチョン郎だって、遊花とイチャついてないのに、と。
 子供のようにぶすったれているトンマンの様子が妙に愛らしくて、益々アルチョンは可笑しくなった。確かにアルチョン自身、遊花と人前で戯れるような真似はしないが、かと言って、ユシンのように女を近付けないと言うわけでもない。アルチョンとて真っ当な男なのだから、遊花に触ったこともない、と言うようなトンマンと一緒にされては堪らなかった。
 けれどもアルチョンはそれをトンマンに告げるつもりはなかった。何せ、先程不在のユシンの代わりにトンマンを誘った時も、「女に縁がない者同士、飲むか」と口にしたのだ。その時のトンマンの恐れ知らずな態度を思い出して、アルチョンは小さくこそばゆい息を吐いた。

「ユシン郎みたいに酒に弱いんだったらお断りします。私は強いから」

 全く可愛げのない答えだったが、そんなトンマンを好ましく感じているアルチョンは、ならば飲み比べをしようとトンマンの負けん気を刺激した。
 ユシンに「策略に長けている」と評される割にはこんなところでは単純なトンマンは、アルチョンと杯を重ねながら管を巻いていた。曰く、何故自分は男に見られないのか、いつまで経っても女々しい女々しいと言われるのか、と。
 アルチョンからすれば、確かにトンマンの性格はどこも女らしくはなかったが、何せ外見が花郎の中にいても目立つほどに華奢でつるんとしているのだ。髭もないように見える。ソクプムのしつこさにはアルチョンも眉を顰めてはいるが、ある程度は仕方ないことだとも思う。……口にすればトンマンがまた饒舌に反論してくるだろうから、アルチョンも適当にあしらって、話題をすり替えたが。

**

 そうして散々アルチョンの部屋で飲んだ二人は、いつの間にやらどちらからともなく寝こけていた。腕組みしたまま俯いて眠っていたアルチョンは、はたと目覚めてズキズキ痛む頭を押さえた。
 ――……まさかトンマンがここまで酒豪だとは、考えていなかった。完全に、飲み過ぎだ。
 これからはユシンのことをとやかく言えない。アルチョンも、彼の目の前で卓に突っ伏して寝ているトンマンも。

「トンマン、起きろ。宿舎に戻らねばユシン郎が案じるぞ」

 アルチョンも今すぐに寝台に倒れ込んで眠ってしまいたかったが、飲み比べに誘ったのは彼自身なのだから、トンマンをこのままにはしておけない。夜の内に宿舎に帰さなければ、親友のユシンに申し訳ない。
 しかしトンマンは目覚めてからもしぶとく卓にへばりついていた。

「気持ち悪い……」
「飲み過ぎたからだ」

 とにかく二人とも、今すぐに胃の中を洗い流す必要があった。
 アルチョンにしては珍しく、若干崩れた姿勢で水甕から水を汲むと、それを一息に飲んでから、今度はトンマンにそれを差し出した。

「飲め。少しは良くなる」
「はい……」

 ところが相当気分が悪いのか、トンマンは少し飲んだだけで手を滑らせ、残りを全て溢してしまっていた。おまけにそのまままた眠ろうとするものだから、慌ててアルチョンはトンマンの襟を引き掴んだ。

「だらしないぞ。郎徒らしくしっかり身を起こせ」
「うっ……」

 そんなこと言われても、とでも言いたげに眉を歪めて、トンマンはアルチョンの腕を掴んだ。

「アルチョン郎、寝れば……良く、なりますから……」

 放っておいて下さい、と項垂れたトンマンに思いっきり顔を顰めたアルチョンは、ふと見下ろしたトンマンの胸元にある布を見て眉を上げた。白い肌に幾重にも巻かれた白い布など初めて見る。アルチョンは、椅子から立ち上がれずに再び眠り始めたトンマンを乱暴に揺さぶった。

「このような布を巻いている為に、臓腑が圧迫され、苦しくなるのだ。寝る前にこれを外しておけ」
「大丈夫ですって……」
「馬鹿を言え。このようにきつく締めていれば筋肉の動きも阻害され、良いことなど一つもない」

 手を貸してやる、と上着を脱がせたアルチョンは、現れた肩や腕の貧弱さに目眩を覚えた。弱々しい体躯だと思ってはきたが、まさかここまでとは。おまけにこの薄っぺらい肩の持ち主に自分は諭され助けられたのかと思うと、様はなかった。
 とにもかくにも、こんなにも武芸に向かない体格の郎徒は他にいまい、とさらしに手をかけたアルチョンは、ようやく何かがおかしいことに気付いた。

「……ん?」

 手を離してトンマンのさらしを眺めること、数拍。アルチョンはやっと、その『おかしい何か』に目をとめた。

「……………………なんだこれは?」

 筋肉も脂肪もない身体の真ん中で膨らんでいる、二つの小山……いや、丘。胸筋と言うにはあまりに形の悪いそれに、アルチョンはぺたっと触れた。彼らしく、躊躇いなく。
 ――その丘もどきにぐにゃりと沈んだ我が手を見て、小豆のような目を見開いたアルチョンは、脱がせた上着をトンマンの肩にかけ直し、その場に跪いた。壁にもたれ掛かったまま項垂れて目覚めないトンマンの腕を掴み、本気で揺さぶる。

「トンマン、まさかお前は女なのか」

 波立つ視界に朦朧としながらも、トンマンははっきりと頷いた。

「はい……。でも……それより、気持ち悪い……です」

 厠はどこですか、と呻き声を上げるトンマンの顔を、アルチョンは彼にしては珍しく、間の抜けた顔で見つめることとなった。
 ――トンマンは、女の身体を持つ、女であった。





 トンマンを厠まできちんと送り届けたアルチョンは、ついでにそのままそこら辺で寝そうな彼女を、少しの躊躇いの後、横抱きにして持ち上げた。勿論そんな姿を誰かに見られては一大事である。急ぎ飛天之徒の自室まで戻ると、アルチョンは寝台がないので仕方なく寝椅子にトンマンを寝かせてやってから、彼女の鉢巻きを外し、髪を解いた。

「……女に見えぬことはないな」

 アルチョンにとって、女と言うものは長い裳の裾をひらひらはためかせ、甲高い声でわけのわからないことを捲し立てる生き物だった。トンマンはそのどちらにも当てはまらないからこそ、女と知って狼狽した。けれど。

(……愛らしく見えるのも、女の特徴であった)

 今、惨めに酔い潰れていると言う事実は兎も角として、眠るトンマンは可愛かった。そう、確かにトンマンは元々小憎たらしいところのある快活で可愛い郎徒だったが、女として見ても……十分に美貌ではないだろうか。
 その瞬間、アルチョンは自分が汗を掻き始めたことを感じて立ち上がった。
 ――いけない。親しくしている郎徒が女だと……それも可愛くて、綺麗な女だとわかった途端に不埒な考えが頭を過るなどと、トンマンにも、ユシンにも申し訳ない。そう言えば、最近はユシンと飲むのが面白かったからと、ずっと女に触れていない。そうか。だからこのような邪念が湧くのだ。よし、女に触れよう――。

「ん……」

 そこでちょうど良くトンマンが悩ましい吐息を漏らした為に、アルチョンは今度は赤くなった。
 ――駄目だ。もし血迷ってしまったら、友を失うことになる。
 ユシンとの友情も、命の恩人であるトンマンからの尊敬も、失いたくなかった。どちらも大切なものだ。こんな、一時の衝動では失えない。

「トンマン。トンマン、起きろ」

 が、このまま朝まで待てるかどうかも自信がなくなってきていた。かと言って、何も言わずに見過ごすわけにもいかない。

「アルチョン郎、何――」
「ユシン郎に女だと告げるべきだ」

 先程よりは意識のはっきりしているトンマンに、アルチョンは鋭く切り込んだ。ぼんやりとしていたトンマンの目が、丸く見開かれた。

「あ、アルチョン郎、何を……」

 一気に酔いも醒めたのか、トンマンの顔色は蒼白に近くなった。しかしアルチョンは怯むことも声を荒げることもなく、内心の動揺は押し殺したまま敢えて淡々と続けた。

「今はまだ上手く隠せているようだが、この先何があるかわからない。だからこそ、ユシン郎にだけは話をしておくべきだ」
「……女は、郎徒になれません」
「その通りだ。だからこそ、ユシン郎に事情を話せ。郎徒でいなければならない逼迫した事情があるのなら、それを花郎に隠すことはならない。嘘があれば、いずれ主従の関係に支障を来す」
「アルチョン郎、私は郎徒でいたいんです」
「それを決めるのはユシン郎だ」

 私はお前の花郎ではない、と眦を歪めたアルチョンの腕にトンマンは縋った。

「アルチョン郎、ユシン郎は嘘が吐けません。ユシン郎は私が女だと知れば、郎徒から追い出します!」
「だがお前を見捨てはしない」
「アルチョン郎! 私は確かに腕っぷしは弱いです。でも、それを補う根性はあります。…………それに、アルチョン郎は私に命の借りがある。そうでしょう……?」

 徐々に声が強張るのと同時に、トンマンの愛らしい瞳には不穏な煌めきが見え隠れし始めた。

「トンマン」
「アルチョン郎、お願いします。私は郎徒でいたいんです」

 やっと築き上げた誇りも絆も、郎徒でなくなれは、女と知れれば失うことになってしまうのかもしれない。それだけは嫌だった。何年もかかってやっと手にしたもの達を、失いたくはない――。
 トンマンの悲痛な叫びは確かにアルチョンの胸を打った。それに、アルチョン自身にもトンマンを惜しむ気持ちはあった。戦場で見たトンマンの気迫や機知は、紛れもなく彼女が如何に郎徒として、将として優れているかを示していた。

「……だが、いつまでも郎徒ではいられない」

 トンマンの才覚を惜しむ気持ちがそうさせるのか、アルチョンの言葉が僅かに変わったことを敏感に感じ取ったトンマンは、この機を逃すまいとアルチョンの腕を掴む手に力を込めた。

「アルチョン郎」
「ユシン郎に真実を告げられないなら、せめて徐羅伐を離れろ。また戦があれば……」
「アルチョン郎、お願いです」
「…………」

 さらに強く腕を掴まれたアルチョンは、ふとトンマンがとんでもなく頑固であることを思い出して、重い溜め息をついた。……トンマンに借りがあるのも事実で、郎徒としてのトンマンを好ましく思っているのもまた事実だ。それなら……取るべき道は一つではないか。

「いずれ、必ず露見する時が来る。その時私は庇ってはやらない。それでも良いな」
「はい!」

 ぱっと明るく華やかな笑顔を浮かべて頷くと、トンマンはアルチョンから手を離して深くお辞儀をした。

「これで我らの間に貸し借りはないな」
「はい」

 離れていった手を寂しく感じた自分を戒めるように再び表情を引き締めると、アルチョンはまるで任務を告げるかのように凛とした様子で言葉を紡いだ。

「トンマン、もう一つ話がある」
「なんですか」
「実は、お前が女だとわかった先程から、心臓が煩い」
「驚かせてしまって、すみません」
「それもあるが、それだけではない。お前は郎徒として生きたいようだが、女としても十分綺麗だ」
「は……?」

 なんかアルチョン郎が変なこと言ってる、とトンマンが首を傾げた瞬間、アルチョンは更なる『奇行』に走った。

「どうやら私は、女としてのお前も好ましく思っているようだ。お前を抱きしめたいが、そうしても構わないか?」

 肯定以外は有り得ないと言わんばかりに堂々と訊ねるアルチョンを前にして、電光石火の告白をやっと理解したトンマンは、再び酔いが回ったかのように赤くなるのだった。



****

もしトンマンの男装をアルチョンが知ったら…と言う、アルチョンファンのイタイ妄想でした(笑)
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  1. 2010.08.18(水) _01:05:32
  2. SS(ドラマ設定IFもの)
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  1. 2010/08/21(土) 23:23:57 
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