善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 浄土へと誘う風4

※本日二本目の記事です。

これにて「浄土~」完結です。
次は、アルチョンのお話か、あるいはユシンのお話になりそうです。アルチョンのは…ベタな恋愛物になりそうな予感が(笑)
ふっと書いてて気付いたのですが、ユシンはツンツンでたまにヘタレなんですよね。デレがないんです。ヤンはありそうなので、ユシンはヤンツンなのか…!?(どんな新ジャンル)
あ、トンマンはツンデレで、ピダムはヤンデレっぽい気がします。


****

 トンマンはそんな過去の自分を苦々しく思っているようだったが、ピダムにとっては、トンマンが羅刹でも地獄の鬼でも御仏でも、何でも良かった。彼にとって大事なのは、どんなトンマンであれ、彼を理解し、愛し、抱いてくれるかどうかだ。
 静かに細い肩を撫でる手に促されるかのように、トンマンは続けた。

「だから……王女になった後、お前がそれを心から喜んでくれた時、私は安堵するだけでなく、こう決意した。次は、私自身が虎穴に入るべきだと。他の誰でもなく、自分が入らなければ、何かあった時に取り返しがつかなくなる。誰が認めようと、私自身が認められない。…………だがまあ、それはあまり恋慕とは関係がないな」

 一体いつそれが恋心に化けたんだろう、とドキドキと待っていたピダムは、トンマンの言葉にがくっと肩を落とした。……トンマンは彼を極楽浄土へと導く御仏のようでもあり、彼を奈落の底へと引き落とす地獄の鬼のようでもある。

「考えてみると、初めてお前のことを男として意識したのは…………ときめく、と言われた時かもしれない」

 「かもしれないって何!」と抗議したいところをグッと堪えて、ピダムは大人しく先を待った。辛抱強く待てば、必ず狂喜する瞬間が来るだろう。

「でもあの時は、落ち込んでいる私を慰める為の冗談かな、とすぐに切り替えた。いつも慰めてもらっていたし……そうされるのが、当たり前のような気になっていた。あんなことはユシン郎やアルチョン郎にやらせればいいんです、なんて言ってくれたのは、お前だけだったし」
「だって、あなたに剣を奪われるなんて、ユシンは風月主失格だろ。それにもし村人達がその気になれば、あなたに斬りかかる奴だっていたかもしれない。ユシンやアルチョンが何人か殴り飛ばすなり斬るなりしておけば、あいつらだって大人しく従って、あなたが傷つくこともなかったのに……」

 なんともピダムらしい考え方で、ふっとトンマンは笑った。こんなピダムを、世の人は残酷だと言うことはよく知っている。だが結局、統治にはその残酷さも必要だと言うことを、トンマンはわかっていた。ユシンやアルチョンのやり方も、忘れてはいけないものではあるのだが。

「ただ……やっぱりあの時までは……お前の出生を知ったあの時までは、私の中でピダムと言う存在は、飼い………………優しい友達だった」

 正確には、「飼い犬のような存在」だったのだが、さすがにそれは口にしては不味かろうとトンマンは飛び出しそうになった言葉を飲み込んだ。優しい友達、と言うのも間違いではない。
 ピダムは「かい」でトンマンが一瞬口を閉ざしたことに少し疑念を抱いたようだったが、辛抱辛抱、と再び自分に言い聞かせていた。

「お前が私と同じ辛さを……いや、もっと辛い気持ちを抱えていたことに、私は本当に驚いたし、そんなお前に気付かなかった自分が悔しかったんだ。いつもいつも慰めてもらっていたから、ピダムには辛いことなんてあまりないのかな、と安易に考えていた自分が恥ずかしかった。お前が一人でどれほど苦しんだのかと……泣いていたのかと思うと、胸が締めつけられるようだった」

 再びその感情が蘇ったのか、もぞもぞと身体をずらしたトンマンがピダムの懐に入り込んだ。

「……それからだ。ユシンが傍にいなくても、ピダムがいればいいと…………いや、ピダムの傍に居たい、と思うようになったのは」

 ちょうど同じ頃にユシンに子供が生まれたこともあって、トンマンのユシンへの恋慕は薄まり、ピダムへの気持ちは大きく膨らんだ。二つの要因が重なって、女としてのトンマンの心は一気にピダムへと傾いたのだ。
 思えば、運命とはそんなものかもしれない。チョンミョンと出会ったこと、彼女によってユシンの部下になったこと……戦場でユシンを助け、彼に助けられたこと、アルチョンに認められたこと。自分の素性がわかった時、すでにユシンに女だと気付かれていたこと、彼の恋慕に助けられたこと。……その恋慕が実る前に、チョンミョンが死んでしまったこと。
 しかしこれまで、一度たりともトンマンは自分の恋慕を最優先にして行動したことはなかった。ユシンともそうだったし、ピダムともそうだった。ピダムの傍に居たいと思うのと同じくらい、彼女は彼の政治家としての才能を利用するつもりだった。

「ただ……即位して、お前を司量部令としてからは……色々と変わった。私とお前が親しいのを見て、臣下達がやれ色供だの国婚だのと騒ぐようになって…………優しい顔ばかり、親しい顔ばかりしていてはいけないと感じた。お前が女王を誑かして高官になったと言われるのも嫌だったし……私がお前を傍に置くのは色供の為だと言われるのも遣る瀬無かった」

 即位してからも、暫くの間はトンマンもピダムもそれまでと同じように……いや、一層親しく仕事を分かち合った。ピダムの司量部は出来たばかりの部署だった為に女王との二人三脚での運営を余儀なくされたし、それだけでなく、二人で庭園や楼台で談笑することも間々あった。
 けれども女王となったトンマンに衆目が集まらないわけもなく、女王の婿について議論を続けていた貴族にとって、時に侍衛府や侍女を遠ざけて会話を楽しむ二人は格好の的となったのだろう。ピダムの血筋が秘密裏に明かされたこともあり、聖骨に近い真骨の血を持つピダムに対する目は変わった。
 ピダム自身、ユシンの伽耶勢力に対抗する為には、ミシルが取り込んでいた貴族勢力を我が物としなければならないことをよく知っていた為に、彼らを無下には扱えなかった。それに何より、女王の唯一の男であると言われることは、悪いことでもなかった。実しやかに囁かれるうちに、その噂が本物になれば良いのだと放っていた。

「私は……婚姻しない、子供は作らないと決めていた。姉上に代わって今の立場を得たのだから、次代はチュンチュに、と考えていた。それに、もし婚姻して、その相手が愛おしくなってしまったら……チュンチュよりも大切に思えてしまったら、私はきっとチュンチュを裏切らずにはいられないとわかっていた」

 ヒョンジョンを産んで、身に沁みた。ずっとチュンチュを可愛い、愛おしいと思ってきたけれども、腹を痛めて産んだ子にはやはり遠く及ばなかった。生まれてすぐの息子は肌は真っ赤で目の焦点さえ合っていない状態だったのに、この世で最も美しい存在だと感じたものだった。そして今でも、その通りだと考えている。このような状態では、理性ではチュンチュを王に、と思っていても、なかなか身体がそれに従おうとはしてくれなかったかもしれない。
 それはピダムも同じだった。もし、我が子が――トンマンとの子が出来たなら、その子供にこそ王座をやりたかった。両親の愛情をたっぷり受けて育った我が子に、失った王座を与えてやりたかった。
 だがそれも、遠い昔のことだ。……野望と権力に毒され、絢爛豪華な夢を見ていた頃のことだ。
 今の二人には、ヒョンジョンは宝物ではあったが、彼を王座に据えたいとは思わなかった。息子が望むなら目指すのは勝手だが、それは両親が決めることではない。ただ……もし王座を目指すと言うなら、両親の存在が足枷になることは事実だった。トンマンもピダムも、自らの身分を明かせる立場ではない。今は息子の前でも気楽に名前を呼び合っているが、いつか……それを慎まなければならなくなるのかもしれないのだ。

「……チュンチュは幸せ者だな」

 黙りこくってしまったトンマンの代わりに、低い声でピダムが呟いた。その声に我に返ったトンマンが顔を上げれば、なんだか凶悪な顔をしている。

「ピダム、まだチュンチュが嫌いなのか」
「別に……嫌いって言うわけじゃないけど」

 ただ、また布団で包んで、ボッコボコに殴り倒してやりたくなっただけ、と声に出さずに付け加えて、ピダムは小さく息を吐いた。

「それで? 結局、いつから好きになってくれたの?」

 トンマンとしては切々とこれまでの想いを語ったつもりだったが、ピダムからしてみれば心を抉られるような時間を過ごしただけだったらしい。先程までの優しい風情はどこへやら、つんけんとした口調で迫るピダムに、トンマンは思いっきり言ってやりたかった。
 ――お前がそんな風に狭量だから、なかなか受け入れる気にならなかったんだ!……と。
 ピダムに負けず劣らずムッとしたトンマンは、冷たい声で答えた。

「お前のことを愛していると自覚したのは、この家に来てかなり経ってからだ」
「……………………………………え?」

 数秒経ってようやくトンマンの言葉を理解したピダムは、ヒョンジョンがいることも忘れて声を大きくした。

「じゃあ、あの霊廟での夜も、指輪をくれた時も、愛してなかったってこと!?」
「……」
「それなら……それなら、私が乱を起こしたのだって当然じゃないか!!」

 そこでとうとう、ヒョンジョンがむくっと起きて、ぐしゃぐしゃにした顔を左右へと動かし……大きな布団の塊を発見した。――ヒョンジョンの泣き声が部屋中に轟いたのは、それからすぐだった。

「うわああん……おかあさぁああんどこ~!!」

 もう歩けるどころか走り回れると言うのに、その場で棒立ちになって泣き喚く息子を察知したトンマンは、とんでもない力でピダムを押し退けた。数秒で服を着て、手馴れた様子でヒョンジョンを宥めにかかる。
 しかし、泣きたいのはピダムも同じだ。トンマンが抜け出した後も、ピダムは布団の中で突っ伏して耳を塞いだ。
 ――こんな酷い話があるだろうか。ずっとこれまで、トンマンの愛を信じられなかった自分を責め続けてきたと言うのに、その間違いを犯した時、彼女は自分を愛していなかったと言う!
 ヨムジョンに罵られて我を失ったあの時の絶望と屈辱を返せ、とピダムは声を大にして叫びたかった。……叫ばなかったのは、それでも今は愛されていると言う幸福感の方が大きいからだ。冷たく睨まれ、拒まれた日々の記憶は薄れ、太陽のように眩しい笑顔で彼を「愛している」と抱きしめて、口付けてくれるあの感覚が肌に刻み込まれているからだ。
 でも、とピダムは布団の中で歯を食い縛った。……こればっかりは、トンマンが悪いと確信出来た。
 ややあって、ヒョンジョンの泣き声が止まり、ぺたぺたぺたと愛らしい足音が軽やかにピダムへと近付いた。

「おとうさん、ねる?」
「…………」

 容赦のない息子は、ピダムが返事をしなかったにも関わらず、その小さい身体からは想像もつかないような強い力で布団ごとピダムを揺さ振った。どうやら遊び盛りの息子は、少し昼寝をしただけで、もう元気一杯になったらしい。

「あそぶの!」

 それを見て、苦笑しているらしいトンマンの声まで聞こえて、ピダムは益々心がささくれ立つ感覚を覚えるのと同時に、わあっと布団を跳ね除けて、ヒョンジョンを驚かせて遊んでやりたい気持ちでいっぱいになった。
 そして誰よりもピダムを理解しているトンマンは、そんな彼の様子を悟ってピダムの服を拾った。

「ヒョンジョン」
「?」
「お父さんがね、かくれんぼをしようって。この部屋の中で、隠れよう」
「うん!」

 ヒョンジョンの為に、その部屋には極力危ないものは置いていなかった。それでも何かあってはいけないからとヒョンジョンと一緒に隠れ場所を探してそこにヒョンジョンを入れてやると、トンマンは静かにピダムの篭城する布団の塊へと戻った。

「ピダム、起きて着替えて。ヒョンジョンが待ってる」
「…………提案があるんだけど」
「? いきなり何だ」

 布団の中から、ピダムは苛々とした様子で話した。

「これから毎日、最低でも一日一回は「ピダム、愛している」って言って」
「……それをして、私に何の利益があるんだ?」
「利益はないよ。十年も尽くした司量部令を弄んだ女王陛下への罰だから」
「ピダム!」

 誰が弄んだと言うんだ、とさすがに怒りを露わにしたトンマンに、やっと起き上がったピダムも負けじと言い返した。

「だってそうじゃないか。私がずっとあなたのことを愛してるって知っていながら、私の力が必要だからって国婚しようとしたんだろ。こんなに酷い話がある!?」
「……ピダム」
「何」
「わかった、お前の提案を呑む。ただしその代わり、お前がその罰を撤廃するまで、私はお前と一緒に寝ない。愛されている実感が湧けば、それで十分だろう?」

 氷の女王さながらに冷酷に宣告したトンマンに、ようやくピダムは自分が言い過ぎたと言うことを悟って顔を凍りつかせた。

「ト、トンマン、ごめん、そんなつもりじゃ……」
「ピダム、愛している」

 にこりともせず、真顔で告げられた愛の告白にピダムは真っ青になった。……違う。こんな感覚が欲しいのではない。
 ぽいっと彼に服を投げて後ろを向いたトンマンを追い掛けるように、ピダムは慌てて服を着た。司量部令だった頃に嫌になるほど見た、冷たい背中。けれどもその時とは違って勢いよくその背に抱きついて、ピダムは謝罪の言葉を重ねた。

「ごめん、本当にごめん。怒らせるつもりじゃなかったんだ。だから、一緒に寝ないなんて言わないで」
「…………ピダム」
「うん、何?」
「さっき、愛してると自覚したのは、と前置きをつけただろう。それをつけないなら、答えはこうだ。お前を抱きしめたあの時から、私はお前を愛している。……私は、愛していない男を抱きしめるほど寛容じゃない」
「………………え?」
「いいから早くヒョンジョンを探せ。待ちぼうけを食ったら、きっとまた泣く。可哀想だろう」
「あ、うん……」

 上手くトンマンの言葉を消化出来ずに立ち上がったピダムは、雲の上を歩いているかのようにフラフラと部屋の中をさ迷った。あちこち覗いて、戸棚の中で丸くなっているヒョンジョンを見つけたピダムは、息子を持ち上げてぐるぐる回しながら呆然と考えた。
 そうして、息子と戯れること暫く、ようやく彼女の言葉を理解したピダムは、ヒョンジョンごとトンマンを抱きしめ、叫んだ。

「トンマン! 愛してる!!」


****
最後らへん、浄土とは全く関係ないですね(笑)
トンマンとピダムのそれぞれへの愛の芽生えですが、管理人的にはこのお話の中で語っているような感じです。二人とも愛を自覚するかなり前から、愛していたのではないかと思います。(何せ、恋愛や愛情に関してはユシンよりも不器用な二人なので。)
トンマンの愛に関しては異論があるかもしれませんが、私の考えるトンマンは、砂漠時代はともかく、女性となった王女時代や女王時代には、愛していない男を抱きしめたり、そんな男の抱擁に悩むことはないと思います。相手が、どんなに可哀想な境遇でも。
ちっちき様、saki様、リクエストありがとうございました! 書き終わる前は影響されるのが怖くて聞けませんでしたが、お二人の考えるトンマン、ピダム自覚の瞬間も改めて聞いてみたい気がします…v(笑)
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  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
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