善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

※本日二本目の記事です。

リレー連載三話目、saki様のターンです!
これは私の勝手な感想ですが、saki様の書かれるお話が楽しくて仕方ないですvv 間に私の話が混ざるのが勿体無いですね…!!!
あ、saki様宛てのご感想がございましたら、ぜひぜひ拍手またはコメントからどうぞ! 管理人からsaki様に責任を持って転送させて頂きますv 最初に「saki様宛てです」と一言書いて頂けましたら、管理人、そのコメントは見ずにそのまま転送しますので~^^/
リレー連載に参加をご希望される方も引き続きお待ちしております。よろしくお願い致します!


***

わずかな不安は平凡で幸せな日々に紛れ込んでいる。
ソファは古く色褪せた箱を慎重に棚の奥から取り出すと恭しい動作で箱の蓋を開ける。
緻密な細工も美しい小刀と砂漠の風土に少々傷んだ手紙がそこに納まっていた。
分かっている。分かってはいるのだ。
2人のことを思うのならばこれらは手放すなり燃やすなりするべきものなのだということは。けれど、それができないのは彼女の中にある未練のためだ。いや郷愁と言ったほうが近いかもしれない感情のためだった。
ソファは箱から小刀を取り出すとその向こうに見える彼女の主とその地に住まう懐かしき人々を想った。
無事であるだろうか。健やかにあろうか。あの地の風は。土は。水は。今も穏やかにあの国を育んでいるだろうかと。
しかしそれと同時に頭をもたげる不安にソファはかぶりを振った。この砂漠にあの女の影は無い。あれから幾年が過ぎたと思う。疾うに死んだものともはや追手も無いに違いないのに。

「・・・・・・・大丈夫。大丈夫。」

ソファは自分にそう言い聞かせると小刀を箱に戻し入れ再び誰の目にも触れさせないようにと棚の奥へ奥へとしまう。
トタタっと誰かが階段を駆け上る音が聞こえ、暫くすると空になった洗濯かごを抱えたトンマンが勢いよくソファのいる部屋の扉を開けた。

「母さん。って何してるの?探し物?そこの棚にあるのって確か重いものばっかじゃなかった?」

兄さんがいるうちに頼めばよかったのにとトンマンが言えばソファは苦笑してパタンと棚の扉を閉めた。

「逆よ。最近使わなくなったものを片づけていたの。重いものでもなかったし大丈夫よ。それより、あなたこそ何か用があったんじゃないの?」
「あ。そうそう。洗濯は終わったから市場まで行こうと思ってさ。料理に使う香辛料が幾つか切れかけてたから。」
「市場って。一人で行くきなの?」
「あたしだってもう15だよ?市場くらい行くって。まったく兄さんも母さんも変なとこで過保護だよね。」

何でもないことのようにトンマンはいうがここは様々な人や物が行き交う交易の町だ。そう全ての商人が善人ということもない。中には商団に紛れてとんだ厄介事を持ち込む輩もいるのだから。

「だってあなた女の子だし。それに例え男の子だったとしてもトンマンのことだから。」
「はいはい。どうせあたしは兄さんと違って喧嘩もできませんから。」
「喧嘩って、トンマン。あの子怪我でもするようなことしてるの?」
「してなくはないんじゃないかな。でも大丈夫だよ、兄さんだし。それに母さんが心配するようなことはしてない。それより他に無くなりかけてたものってない?一緒に買ってきちゃうからさ。」

からからと笑うトンマンをソファは少々疑い深く見やってからまだ日もだいぶ高いしと足りなくなっていたものを思い浮かべた。


宿の前でトンマンを送り出すとソファはふぅと息を吐いた。思い浮かぶのはトンマンとピダム。子どもたちのことだ。
トンマンは人懐っこい性格で宿に逗留する人たちともすぐに打ち解け何くれとかわいがられている。数年前に紅茶葉の買い付けにきたローマの商人カターン。彼もまたトンマンを娘のように思っていたようだ。数冊の本を置き土産にとトンマンに渡していたのを覚えている。
ピダムも彼ら商団の護衛たちによくからかわれていた。いや遊ばれていたというのか。どうやらピダムは剣などの筋が良いらしく彼らにとって弟のような存在だったらしい。仕事の合間に木剣を手に剣術の稽古のようなことをしていた。結局は最後まで彼らから一本取ることは叶わなかったようだが。
そう2人は何てことのない町の子どもだった。この砂漠の民だった。
ソファは空を仰ぎ見た。どこまでも高く蒼い空だった。

(どうか、どうかこの平穏で穏やかな日々を誰も壊すことのないように・・・。)


+++++


(・・・まいったなぁ。)

市場の中、数ある露店のひとつ。その店の中でトンマンは息をついていた。店の中といってもトンマンが今現在座り込んでいるのは客側ではなく店主がいるべき内側だった。恐る恐ると商品の並べられた山の隙間から通りを窺う。そこではソファの心配が当たったのかちょっとした乱闘が起こっていた。トンマンは店の胡桃や杏といった干し物を見比べていたのだが顔馴染みの店主に乱闘が始まるやいなや猫のように襟首を掴まれてひょっいと店の中に避難させられたのだ。
とはいえ、ただの乱闘ではない。町の勇士による自警団と商団に紛れてきたゴロツキたちだ。双方ともそう数は多くない。自警団の人間は皆どこか腕に覚えがある人たちで中には元々どこかの商団護衛だったという人までいる。昔、この町の住人と恋仲になりそのまま居ついてしまったとかなんとか。兎にも角にもトンマンもよく知っている顔馴染みが多いので双方の区別には困らなかった。しかしその中でもトンマンがよく知りすぎている少年がひとり。ひらりと相手の拳を避けて相手がたたらを踏んだところを後ろから思い切りよく突き飛ばしている。
ターバンから零れた真っ黒い髪に口の端に笑みを浮かべたピダムだった。ソファに心配するようなことはしていないといった手前どうにも頭が痛くなってくる光景だ。

「おぉ、やるじゃないか。ピダムの小僧も。」

同じように顔を覗かせていたこの露店の店主にトンマンは胡乱げな視線を向ける。

「おじさん。なんで兄さんがあそこにいるの?」
「うん?小僧が何でかはしらんが自警団の連中のとこに出入りしてたのは知ってるよな?」

もちろん知っている。もう一ついうならばその理由もトンマンは知っていた。次に会うときには絶対に負けんと今よりも少し幼い兄がカターンの商団護衛相手に息巻いていたのを傍で見ていたので。閑話休題。
店主の言葉に頷いてトンマンは先を促す。

「まぁ、今日もそんなとこだろう。一緒にいるのは。ちょうど見廻りの頃合いでもあるしな。向こうの通りから姿が見えたんだが、お前さん干し物の品定めに夢中だったらからなぁ。これは小僧の方が先に気付くかと思ってたんだが・・・。」
「おじさん、話し逸れてる。」
「あぁ、すまん。そしたら、ほら。あれだ。斜向かいの反物屋あるだろ。そこであいつらがいちゃもんつけ出したんだよ。」

見れば確かに他の露店と比べて置かれた品物が乱雑に倒れたり散らばったりしている。中には立派な毛織物だろうと思われる反物までが砂に汚れていてトンマンは思わず眉をしかめた。

「連中が止めに入ったのは分かるだろ。まぁ、小僧に関しては成り行きだな。一緒にいたから仲間だと思われたんだろ。」

なるほど、納得。と頷いてしかしとトンマンはかぶりを振った。だからといってあんなにも嬉々として立回っているのはどうだろうかと。
一応巻き込まれた(らしい)のならばもう少しこう逃げ回るなりなんなりした方が良いのではないだろうか。が、どうみても積極的に乱闘に参加しているようにしかトンマンには見えなかった。まぁ、あの兄の性格を考えればただ逃げるだけということはしないだろうことも分かっているのだが・・・・・。

「っ兄さん!?」

店主から未だ騒ぎ収まらぬ通りへと再び視線を転じたトンマンの目に兄の背後に立つ男が映った。しかも一体どこから拝借したのか天幕の設営に使う角材を手にしている。トンマンは思わず立ち上がると目の前にあった袋の山の中から固い殻に覆われた胡桃を掴み取り男に向かって思い切り投げつけた。
それは放物線を描き狙いたがわず今まさにピダムに向かって角材を振りおろそうとしていた男の顔面に命中する。

「・・・トンマン?」

妹の声に一瞬、間の抜けた表情をしたピダムはしかしすぐに己の後ろにいた男に気がつくとニヤリと口角をあげた。

「上手いぞ!さすが俺の妹!!」

ピダムは右足を軸にすると振り向きざま男の顎先に向かって足を蹴り上げた。ぐらりと男の体が傾き乾いた砂をまきこんで地に転がる。そのままピダムは男を注視していたが完全に気絶したようで起き上がってくる気配はない。気がつけば周囲の騒ぎも漸う収まりつつある。自警団の面々にあらかた取り押さえられた彼らは暫く町の牢に世話になるのだろうか。ぐるりと首を巡らしてからピダムはトンマンのいる露店に近づいた。
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  1. 2010.07.18(日) _20:14:22
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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