善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 有為転変とは言うけれど

※本日二本目の記事です。


授乳期の巨乳ネタが自分の中で盛り上がったので(…)、そんな感じの話を書いてしまいました(恥)
ヒョンジョンは生後約半年と言う感じですー。一応調べてはみましたが、何せ未婚な上に周囲に赤ちゃんのいない管理人が書いているので、子育て経験のある方は違和感を覚えるかもしれません(汗) もし明らかに変なところなどありましたら、教えて頂けると嬉しいです!(・∀・)ノ


* * * *


 ピダムは自分の体力にはすこぶる自信があった。事実、斬られても射抜かれても刺されても死ななかったのだ、相当強靭な体躯であろうことは疑いない。
 しかし。世の中にはもっと逞しい奴がいるもんだ、と近頃その見解を変えつつあった。

「ぅああぁああん!! わぁあああん、ばわぁああぁわぅ……」
「ヒョンジョン、ほらお乳ー……」
「…………」

 その夜も、眠ったと思ったらぎゃんぎゃん泣いて起きるヒョンジョンと、その泣き声に素早く反応して、半ば寝たまま乳を含ませるトンマンを眺めて、ピダムはぼんやり考えた。
 ……ヒョンジョンが産まれて、すでに半年。始めはトンマン一人では絶対に育てられない、乳母が必要だと彼女には内緒で乳母を探しておいたものだが、この様子を見るに、どうやら母たるトンマンの言葉は間違ってはいなかったらしい。

「ヒョンジョン、ねんねしよう、ねんね、ねーんね……」
「あうぅう……」

 ――イヤだ、まだ寝たくない! おかーちゃん遊んで!!
 ……と思っているかは定かではないが、あまりに反応のない――つまりは授乳しながら寝ているトンマンにはこれ以上何を言っても無駄だと思ったのかあるいは腹が膨れて眠くなったのか、やがてヒョンジョンも静かになった。眠ってくれたようだ。

「……」

 そしてピダムはと言うと、真冬だと言うのにすっかり掛け布団が外れてしまっている二人に布団を掛けてやってから、二人に倣って目蓋を下ろした。





「乳母? 必要ないぞ」

 それは、もう産み月まであと二月となったある日のこと。乳母を見つけたと報告したピダムに対し、トンマンは眉を顰めて反論した。

「でも調べてみたら、赤ん坊の世話をしてると夜も眠れないって言うじゃないか。それに、王族に乳母は当たり前だって」
「お前にも私にも乳母なんていなかっただろう。第一、私達はあくせく働いているわけでもないのに、これ以上楽をするなんて間違っている。それに、子供だって実の両親が育ててくれるなら、それに越したことはないに決まっているじゃないか」

 眠れなくなるくらい、女王だった頃は当たり前だったとトンマンは段々膨らんできた胸をさらに張ってみせると、この上もなく幸せそうに胸と同じく膨らんだ腹を撫でた。

「この子も乳母は要らない、お母さんに賛成だって」
「……もう喋るの?」
「いや。でも、嬉しかったり楽しかったりすると、蹴るんだ」
「ふーん……」

 ――そんなことあるのか……?
 あからさまにピダムが半信半疑で聞いているのがわかったのか、ムッとした顔つきでトンマンは力説した。

「ここ数日は、私が歌うとその拍子に合わせて動いたりもするぞ」
「へぇー……」
「凄く元気なんだ」
「それは認めるけどさ」

 毎日毎日、赤子の脈動は力強いものに変わっていっている。それは事実だ。

「蹴る力が強いから、男の子かな」

 ちなみに、生温い視線を腹部に注いできたピダムとは対照的に、妊娠してからと言うもの、もう長らくしていなかった裁縫に目覚めたトンマンは、今日も今日とて目を輝かせておくるみを縫っている。

「いやいや、女の子だって。優しくて、可愛くて、大人しくて、トンマンそっくりで、「お父さん大好き!」って毎日言ってくれる女の子」

 その隣で赤ん坊の玩具になりそうな木片の角を丸くしながら、デレデレと薔薇色の夢に溺れるピダムは、まさかその夢と現実に著しく落差があるかもしれないなどとは考えたこともなかった。





 その日も夜中に引き続き元気の余っているヒョンジョンは、起き抜けに新羅最高の剣神と呼ばれた父を蹴飛ばして、朝の挨拶とした。

「ぶばぁう!」
「っ……」

 さらに、これまた昨日の朝と同じく鳩尾を抱えて丸まった父の髪を抜けてしまいそうな力で引っ張り、きゃっきゃと喜んでいる。……見た目の愛らしさも然ることなら、その力強さに関してもヒョンジョンは天下一品なのだ。
 一先ず脱毛の恐怖から脱出する為にもピダムは起き上がると、ヒョンジョンが乳恋しさに乱したのだろうトンマンの袷を直してやってから、両親よりも遥かに寝覚めの良い凶悪で可愛い息子を抱き上げた。このまま寝かせておいては、次は寝返りがてらトンマンを蹴りかねない。

「ほらヒョンジョン、おとーさんが遊んでやるから、お母さんは寝かせてやろうな」
「あばぶばばー」
「そうそう、ヒョンジョンは賢いなあ。おっぱいはさっき飲んだし、暫くは静かにしてるんだぞ」
「あぶぶぁあ」

 ヒョンジョンとしては、「違う、おっぱいをもっと!」と叫んでいるのかもしれなかったが、空腹ではない証に泣き喚くことはなかった。しかし部屋を出ようとするとぐずぐずと不機嫌になるので、トンマンの姿が見える場所でピダムはヒョンジョンを遊ばせてやることにした。
 ちなみに今は、夜明けだ。まだ空はうっすらと暗く、真冬だけあって、火鉢がなければ凍えてしまいそうな寒さだが、出産前から大量に用意されていた冬物の産着を着ているヒョンジョンは、逞しいことに、仰向けに転がったままばったんばったん跳ねると言う謎の運動を繰り返している。そのまま寝台から落ちないようヒョンジョンの腹の上に軽く手を当てながら、ピダムはもう一つの寝台で泥のように深く眠っているトンマンを見て、ひっそり嘆息した。
 ――あの様子では、今日も全く相手をしてもらえないだろう。
 わかっていたはずだった。覚悟もしていたはずだった。子供が出来たら、子供が産まれたら、一緒に暮らし始めた頃のように頻繁には触れ合えなくなると。
 しかし、どうにもこうにも、現実は考えていたよりもさらに過酷だった。大きくなった胸は完全にヒョンジョンのものになり、以前とは違って、トンマンからピダムに近づくようなこともなくなってしまったのだ。おまけにたまにピダムがそのような雰囲気を作り出してみても、横になったトンマンはそのまま眠ってしまうことすらあった。
 もう十八日もトンマンを抱いてない……と改めて日を数えたピダムがさらに落ち込んだその時、父が自分を無視していると気がついたのか、さらに激しく動きながらヒョンジョンが声を上げた。

「あぶぁう!」
「ごめんごめん。ヒョンジョン、ちゃんと見てるって」
「あぅ」

 なら良いんだと言わんばかりにフンと鼻息を荒くした後、またばったんばったん暴れ始めた息子の足を摘まんだりして遊びながら、少しだけピダムは思った。やっぱり一日だけ……いや一夜だけでも良いから、トンマンと二人きりになりたいな……と。


* * *


「やっぱり乳母がいると気が楽だ。ヒョンジョンの心配をしなくて済むから」

 十年前に比べると一回り小さくなったものの、昔の通り自分だけのものになったそこへ口づけを落としながらピダムは囁いた。

「乳母って……まさか、アルチョン公のこと?」
「他に誰がいるのさ」

 そのアルチョンとヒョンジョンが離れに去った後、二人きりになったトンマンとピダムは猫のようにじゃれ合っていた。

「アルチョン公が聞いたら、叱られるな、ピダム」

 そう言いながらもトンマン自身、アルチョンに乳母らしさを見い出してしまったのか、その口元は僅かに笑っている。

「でも……やっぱり申し訳ないな。アルチョン公にも家族がいるのに……」
「アルチョンが散々ここに来たいって言ったんじゃないか。トンマンは断ったのに」
「それはそうなんだけど……」

 楽をさせてもらっているのが申し訳ない、と苦笑するトンマンを抱き寄せると、ピダムは少し意地の悪い笑みを浮かべて囁いた。

「じゃあ、もう一人作る? ヒョンジョンも弟や妹が出来たら喜ぶだろうし、今ならヒョンジョンはアルチョンに任せて、私達は赤ん坊の世話にかまけられるし」
「えっ? ま、まさか本気じゃないだろう? ピダム」
「さあ? トンマンが産む気があるなら、いつでも可能なのは確かかな」
「可能じゃない! 今年で幾つになったと思ってるの」
「まだまだ食べちゃいたくなるくらいに美味しそうな年」
「……からかってるな、ピダム」
「本気だってば」

 その証とでも言いたげに唇を重ねてから、そっとピダムは囁きかけた。

「……でも、やっぱりトンマンを独り占めしていたいから、もう子供はいい」

 長い年月を経てトンマンに対する信頼は増しても、いつまで経っても独占欲だけは変わらないピダムは、とうの昔に息子は卒業した胸に顔を埋めてその心地好さに浸った。
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  1. 2010.10.01(金) _21:45:08
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
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