善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

お盆休み、皆様はいかがお過ごしでしょうか。帰省と無縁の管理人はお盆休みなしで日常を過ごしています(笑)
でも今日は初めてお盆用の花束を買って、祖母の家に行ってきましたー。四十九日までしかあの家に祖父はいないので、また来週か再来週にでもお花が朽ちる前に行って(笑)、ご挨拶してこようかと思います。……おお、お盆だ…!(何)

さて、リレー連載第五話! saki様のターンですv
本当に話し合わずに二人で連載していると、「お、同じアイディア!」と思うところも、「わ、これは考えたことなかった!」と言うことが両方ともあって、本当に面白いです。刺激的です(笑)


***

太陽が昇る直前の夜色の蒼。沈む夕日の赤、どこまでも広い空の青、闇に浮かぶ月の黄色に砂漠では滅多に目にできない植物の緑、瑞々しい果実の橙、朝焼けの紫紺そして洗いざらしのシーツの白。
トンマンはターバンにする布地とそれを彩るための刺繍糸の束をひどく満足げな表情で見ると隣を歩くピダムを見上げてニヒヒと笑った。

「予定より少し値は張っちゃったけど良い布があってよかったね、兄さん。」
「結局選んだのはお前だけどな。」
「何言ってるかな。この色が良いって言ったの兄さんじゃない。」
「俺が薦めたのはその2つ右隣りのもう少し安いやつだ。」
「あっちは少しごわごわしてて肌触りが良くなかった。」

いつもはキッチリと固い財布の紐もやはり特別な贈り物となると多少は緩むらしい。宿の帳簿も握っているトンマンはだいぶ寂しくなった自身の財布の中身を思い出し少しばかり眉を寄せた。特別ほかに何か欲しい物があるわけではないが、でもやっぱりちょっと他の所で締めておかないと拙いかなぁなどとぶつぶつ言い始める。

「まぁ、それはいいとしてだ。肝心の刺繍は何にするんだ?随分と糸を買い込んでたが。」
「あ!それはもう決めてるんだ!」

一転しかめっ面がぱぁと綻んで花が咲いた。妹のキラキラ輝く笑顔が一番好きなピダムはうんうんと頷きながらトンマンの言う図柄を思い浮かべる準備をした。色糸の豊富さから考えてやはり何かの花か蝶といったものだろうかと、しかしトンマンの答えはそのどちらでもなかった。

「『虹』!!」
「にじ?」
「そう!昨日、兄さんがくれた石を見てて思いついたんだぁ。太陽にかざしたら七色に光ってね。昔、カターンおじさんが教えてくれた虹ってこんな風なのかなって思ったらね。」

良い考えでしょ。ニコニコ笑顔のトンマンにつられて思わず深く考えず同意しかけたが頭の隅の方でちょっと待ったの声がかかる。
『虹』という単語は聞いた覚えがあった。記憶を手繰り寄せそれがトンマンの言うカターンおじさんの口から出たものでその説明に『空に架かる橋のようなもの』というくだりまで思い出したピダムは、今度はそれをターバンの図柄として思い描く。
そして兄の返事を待つ妹にピダムは沈痛な表情でかぶりをふった。

「・・・虹って、確か七色に塗装された橋、なんだよな?」
「うん。カターンおじさんはそう言ってたよね。」
「・・・・・橋、なんだよな?」
「う、うん。」

足を止め改めて兄のように図柄としてターバンに刺繍された状態を思い浮かべてみる。
この辺りでいう橋といえば砂レンガを積み上げた小さなものか板を何枚か組み合わせた渡しくらいだ。大きさも長さもさほどないそれらが兄の言ったように七色に塗装されている。
―――考えていたものと何かが違う。
八の字に眉の根を寄せた妹に困ったように見上げられてピダムはそうだなぁと考える。

「虹ってのは変えたくないんだよな。なら、そうだなぁ―――――――花の方がいいんじゃないのか?つる草で編んだような感じの図案は割とあるだろ。」
「むぅ。」
「・・・それで橋っぽくすればいいんじゃないのか?」

腕を組み合わせ何かを思案するように唇を尖らせたトンマンは、ふと兄以外の声に名を呼ばれた気がして顔をあげた。
この町の人間ではない異国なまりのその声の主は幾頭のラクダと数十人の人列の一番前で2人に大きく手を振っていた。

「トンマン!トンマンじゃないのか!!久しぶりだ。元気だったかい?!」

青い目のローマ人。トンマンに虹の話を始め様々な異国の物語を教えてくれたカターンだった。その姿を認めたトンマンがとった行動はピダムの目から見ても素早く映ったほどで。彼の名を驚きと嬉しさの入り混じった声で呼んだかと思うとピダムが止める間もなくカターンに向かって駆け出していった。再会を喜び合う彼らの姿にピダムは思い切り眉をしかめて足音も荒くトンマンの後に続く。
そして目の前で懐かしい家族に会った時のようにカターンに思い切り抱きつくトンマンの襟首を掴むとピダムは勢いそのままにベリッと2人を引き剥がした。

「・・・・・お前、仮にも年頃だろうが。」

呆れ半分苛立ち半分でピダムは自身の腕の中で再会の邪魔をするなと不満もあらわに見上げてくるトンマンに向かって心の底から息をついたのだった。


+++++


何時もなら幾つもの洗濯物がたなびく宿の庭先。
今そこで舞い踊るように木剣を交えているのはピダムとカターンの商団護衛のひとりだ。互いに剣を受けては流し、返す刃で相手の動きを牽制して距離をとる。どうだと言わんばかりにピダムが口端を上げれば相手はまだまだと肩を竦め一気に距離を詰めてきた。半身を使っての当身とその後に続く掌底をピダムは辛うじて避ける。数歩後ろに下がり体勢を立て直すと剣を正眼に構え2人は再び対峙した。
そして彼らから少し離れた宿の軒先では2人に応援とも野次ともつかぬ声をあげる他の商団護衛たちの姿がある。先ほど町の雑踏で再会を果たしたカターンたちは当然の行動としてそのままトンマンとピダムについて宿に入ったのだ。

「ほっほぅ~。ピダムも中々にやるようになったもんだなぁ。」
「だなぁ。あのチビがなぁ。」
「おい!こら!!モスク、手加減してんじゃねぇぞ~!」
「モスクの次は俺だからなぁ、ピダム!」
「って!ちょっと待て、おっさん共!?俺が勝ったら剣くれる約束だろうがっ?!」
「おぉ。そうだぞ~。俺ら全員に勝てたらなぁ~!」
「・・・・っざけんなぁ!!何人いると思ってやがる!!」
「あ?あ~、そうだなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20人弱か。」

まだ宿を開けるには少しばかり早い時間だったせいもあり(それでもちらほらと逗留中の客の姿はある)ピダムは彼の商団護衛の面々に早速とばかりに捉って遊ばれていた。いわく。どれだけ強くなったか見てやろう。昔、ほえ面かかせてやるって言ってたっけなぁ。いやぁ、懐かしい。成りだけはでかくなったようだが剣の腕の方はどうだかなぁ。相変わらず妹馬鹿なのか?トンマンは良い子だからなぁ、美人にもなったし。お前、妹に寄る輩には片っ端から喧嘩売ってないだろうな?してそうだな。あぁ、してそうだ。おぉい、ピダム。手合わせしないか?そうだなぁ、お前が勝ったら俺らが使ってる剣やってもいいぞ~。等々。まさに姦しいとはこのことで、どうやら女に使う表現だけではないらしいと思ったとか思わなかったとか。

それは兎も角として、商団護衛の誰かが言った言葉にピダムは手合わせ中であることも忘れて思わず彼らに向かって声を荒らげた。しかしそれも彼らを喜ばせるだけで、さらに言えば他の客がこの声を聞きつけて何事かと顔を覗かせる始末だ。娯楽に乏しいのか暇なのかやがて1人2人と増えていく彼ら。
そしてそれは誰が始めたというわけでもなく何故か当然の流れであるかのように始まった。

「お~い。そこの旦那。旦那方はどれくらいここに居る予定で?」

トンマンととりとめもない話に興じていたカターンはその声にうん?と首を傾げた。宿に逗留している商人だろうか。傍らのトンマンを窺えばやはりそうらしく親しげにその男と言葉を交わしている。

「あれ?おじさん。カターンおじさんと知り合いなの?」
「いや、なぁ。向こうでちょいと面白いことをしててなぁ。出来ればその旦那が何日ここに世話になるのか聞きたいんだよ。」
「面白いこと?」
「まぁ、仕入れ状況にもよりますけど。そうですね、少なくとも7日前後といったところでしょうか。」

2人、顔を見合わせて不思議そうにしながらもカターンが答えれば男はほうほうと頷き礼を述べると何やら人だかりの出来ている一角にいそいそと戻っていった。
耳を澄ませばその人だかりの向こうから微かに何かを打ち合わせる音が聞こえる。それに合わせて先ほどの男が、また別の男と身振り手振りを交えて話している姿がある。何故だか嫌な予感を覚えてトンマンは一緒に戻ったはずの兄が姿が見えないことに今更ながらに気がついた。

「7日前後ということは最低でも1日3人といったところですか。」
「ですなぁ。・・・・・・誰か書くものを持ってきてくれ。さて、旦那は何口のりますかな?」
「そう、ですな。では3日目に2口で。」
「ほうほう。これまた無難なところに・・・・・・商人ならもう少し勝負してみても楽しいのではないですか。おっ?そっちの旦那がたはどうです?」

つまるところピダムとカターンの商団護衛たちを肴にした賭け事である。

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  1. 2010.08.14(土) _20:39:23
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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