善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by 緋翠

リレー小説第6弾! 今度は管理人緋翠のターンです。
更新が遅れてしまいまして、本当にすみません…!(汗) な、なんで今回こんなに手こずったのか…。

あ。そう言えば、アルチョン郎こと、イ・スンヒョさんのファンミーティング(お茶会みたいなものなんでしょうか?)と言うのがあるようです。アルチョンファンの皆様、良かったら参加してみて下さいv^^v


****

 またしても兄が良からぬことに関わっているのではないか。兄の悪戯や悪事に関しては探知機がついているトンマンは、じとーっと兄ピダムを睨んだが、それに気付いたピダムが隙ありとばかりに叩かれてしまった瞬間、今度は後方から物音がした。

「母さん!」

 案の定、振り返ったトンマンの目に映ったのは無残にも地べたにて潰れているソファで、慌てて駆け寄った。

「母さん、大丈夫!?」
「わ、私は大丈夫よ。それより、ピダム、あの子が……」
「えっ? あ、もうっ……兄さん!!」

 ソファが倒れた原因が兄にあると理解するや否や、トンマンは大声で怒鳴った。すぐさまそれに反応したピダムが振り返り、ピダムに遅れるようにして商団の者達も振り返る。話に聞く津波とやらのようにトンマンとソファに注目が押し寄せ、ソファがびくっと慄いた。
 が、トンマンはその場にいる者全ての目を集めても全く気にする様子はない。

「トンマン、聞こえてるって……! 母さん、大丈夫かよ? んっとに足元覚束無いよなあ」

 ピダムも自分に注目が集まることはなんでもなかったが、トンマンに商団の男達の視線が注がれるのは気分が良くない。ソファに手を貸して起こさせると、ふうと息を吐いた。

「兄さん!」
「トンマン、お客様の前よ」

 母親への思いやりに欠ける態度はトンマンの怒りを買ったが、ソファはトンマンをたしなめた。ソファは、知っていた。ピダムの中にはソファを大事に思う気持ちが確かにあることを。

「ピダムも、ありがとう。大丈夫よ。それよりも、そろそろ夜の準備をしないと。今日はお客様がたくさんいるもの」
「わかったわかった。おいトンマン、母さんを手伝ってやってくれ。俺は灯りをやるから」
「もう! こんな時ばっかり兄貴ぶるんだから」
「いつでも俺は優秀なお兄様だぞ」

 フフンと笑って背を向けたピダムにベーッと舌を出して、トンマンはソファの手を引っ張った。

「母さん、今日は何作るの?」
「今日は……商団の人が持ってきてくれた材料があるから、カリにしようと思っているの」
「カリ! わぁ、久し振りだね! じゃあ……」
「そうね…………だから……して…………」

 明るい声と弱々しいけれども落ち着いた声が遠ざかっていく。その声に唇を緩ませていたピダムは、そんな彼を見て商団の者達がこっそり囁き合っているのに気付かなかった。

「ピダムも強くなったが、あれじゃ女が出来るのはまだ先だな」
「腕っぷしは大人顔負けなんだがなあ」

 ハハハッと明るい笑い声が夕暮れの庭に木霊した。


+++++++


 その日の夜、ソファがカターン達に呼ばれた隙を狙って早速刺繍を始めたトンマンは、隣で糸を見繕っているピダムに唐突に宣言した。

「え? 明日はお前が客引きに行くって?」
「うん。だから兄さんはうちにいて、母さんを手伝ってあげてね」

 トンマンはそれで話を切り上げようとしたが、ピダムとしてはそのまま見過ごすわけにはいかない。

「危ないだろ。第一、カターン達がいるなら客引きに行く必要もないじゃないか」
「でも、部屋に空きはあるし……それに、たまには私も砂漠に行きたいの。蛇を捕まえるんだもん。お小遣いになるし」
「トンマン、あのな、いっつも言ってるが、毒蛇だっているんだぜ。噛まれたらどうするんだよ」
「大丈夫だってば! 蛇ぐらい簡単に捕まえられるもん」
「どーだか――いてっ!」
「大体、兄さんがちゃんと客引きしてくれないのが問題なんじゃないの! いないと思ったら、すぐにチャンバラし始めるんだから」
「チャンバラじゃなくて、腕を磨いてるんだって! 危ないだろ、いざって時に剣も使えないんじゃ。母さんも守れない」
「それは、そうだけど……」

 それでもやはり、兄のサボり癖は気になる。勿論、本当に大変な時には仕事をサボることはないのだが、だったら普段から真面目に働いて欲しいとトンマンは思うのだ。

「とにかく、明日は私が客引きに行くからね! いい、ちゃんと兄さんは母さんの手伝いをしてよ」
「トンマン!」
「はい、もうこの話はおしまい! それよりも、刺繍手伝ってよ。終わらないよ、これじゃ!」
「……ったく、利かん気の強い奴だな……! そんなんだと、嫁の貰い手がなくなるぞ」

 そもそも嫁にやる気があるかないかは別にして、ピダムは強情な妹を横目で睨んだ。トンマンは、けろりとした顔つきで針を動かしている。

「お嫁になんて行かないよ」
「……。え?」

 布から顔も上げずに、まるで至極当然なことを言っているかのように、トンマンは淡々と続けた。

「だって、私がいなくなったら、母さんと兄さん二人きりになっちゃうじゃない。そんなの、危なっかしくて見てられないもの。もし、兄さんが……例えば、頼りになるお嫁さんを連れてきてくれるなら…………話は、別だけど」

 ――そうしたら。もし兄に立派な嫁が来たら、トンマンは必要なくなってしまうのか。
 ピダムは、彼自身が考えたこともなかった「結婚」について妹が深刻に考えているらしいことを知って瞠目した。――いつまでも三人で暮らしていられれば、それでいいと思っていた。けれど、ことはそう単純ではないのだろうか? トンマンは、母と兄が大丈夫だと……もうトンマンがいなくてもちゃんと暮らしていけると思えたら、嫁に行く気でいるのだろうか?
 トンマンにちょっかいを出す少年達を打ち払うことと、トンマンとソファと一緒に暮らし続けることがきちんと繋がっていなかったピダムは、愕然とした。


+++++++


 旅の疲れを酒で癒した一行は、ソファの作った菓子を手に歓談していた。
 そんな中、カターンは片付けも終わって一段落ついたソファを呼び止め、彼女にも酒を勧めていた。ソファはあまり飲めないからと渋ったが、たまには晩酌をするべきだとカターンが朗らかに笑うからか、ついに酒を口にした。

「トンマンもピダムも、大きくなったね」
「……はい」

 ソファがこのタクラマカンにやって来た時にカターンと出会ってから、ほぼ十年が経つ。あの時はまだひよっこ商人だったカターンは商団を率いるまでになり、ソファは宿の下働きから女主人になった。過ぎ去った年月、二人は数年に一度、カターンが茶葉の買い付けに来る時に顔を合わせているだけの関係だったが、トンマンがカターンに懐いていることもあってか、お互いにいつの間にか友にも似た安らぎを覚えるようになっていた。

「まだ子供だと思っていたけど、もしかしたら次に来る時には顔触れが変わっているかもしれないね」
「え……?」
「トンマンは綺麗になったし、ピダムも男らしくなった。次に会う時には、ソファはお祖母ちゃんと呼ばれるようになっているかもしれないと思ったんだ」

 女手一つで二人を立派に育て上げたソファだ。孫の顔が見られれば、どんなに嬉しいだろう――。
 カターンはソファの長年の労苦を労うつもりでそう声をかけたが、その時ソファの脳裏を過ったのは、全く違う声だった。

『ピダム、その子が可愛いか。その子はお前の妻になる公主様だぞ』

 もう、忘れたい――忘れてしまいたいと思っていても、どうしても消えてくれないあの声。これこそが運命なのだと、そう信じて疑うことのなかった国仙の微笑。……国仙は、公主だけでなくピダムまでソファに連れ去られて、一体どうしたのだろう。まだ、トンマンとピダムは結婚すべきだと……そんな、あってはならないことを考えているのだろうか。

 カターン達がそれぞれの居室に戻ったのを見届けた後、ソファ達三人の部屋へと戻ったソファは、対照的な姿で寝ている二人を見て、苦笑した。

「おやすみなさい、トンマン」

 身体を丸めて眠っているトンマンの掛け布団を直してから、ソファは大の字になって掛け布団を蹴り飛ばして眠るピダムに、足の辺りでぐちゃぐちゃになっている布団を丁寧にかけてやった。

「……おやすみなさい、ピダム」

 急に身体にかかった重みが気になるのか、むにゃむにゃ唇を動かして寝返りを打った後、再び寝息をたて始めたピダムから離れて、ソファは自分の行李を開けた。手にしたのは、国仙と彼女を繋ぐ、一通の書状。

「…………国仙。私は……私はきっと、二人を幸せにします」

 ――新羅とは、神国とは関係のない、この場所で。
 明り窓から差し込む星明かりの下で、ソファは厳かに誓った。その眼差しは、誰よりも凛として煌めいていた。

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  1. 2010.08.30(月) _21:49:35
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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