善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS これぞミセンの最終極意 巻之二

※本日二本目の記事です。


今回のお話には、豆知識と言うか、管理人が調べてみたら判明したとある人物の家族関係が出てきます。いやあ、風月主出身者は記述が多くて助かりますv


***

 さて、トンマンがユシンとチュンチュを心配させている頃のこと。

「ピダム公は一体なんだってこんなところへ……寒いったらないぞ」

 ぶしゅっ、ぶくしょっと洟を飛ばしながらアルチョンに命じられた場所へとやって来たチュクパンは、因縁の相手を見つけて声を張り上げた。

「おいっ!」
「わあっ!? なんだ、無礼も――お前か!」

 その因縁の相手――サンタクは、珍しいことに司量部員の格好ではなく私服を着ていた。どうやらピダムの清遊に付き従ってきたらしい。
 笠を取ってそのサンタクに顔を寄せると、辺りを憚りながらチュクパンは訊ねた。

「ピダム公に会いに来たんだ。ほら、取り次いだ取り次いだ」
「偉そうな奴だな! 取り次いで欲しいなら、まずは俺に敬意を示せよ! それにな、ピダム公は誰も取り次ぐなと仰ってるんだ」
「ああもう、煩いっ……え? 誰も取り次ぐなって?」
「そうさ」

 サンタクは、ふふんと胸を張った。

「今な、ピダム公はお楽しみの最中なんだ。美女と二人、よろしくやってるのさ」

 ところが。そのサンタクの言葉を、彼の息が掛かるのが鬱陶しいのか手で耳の辺りを払いながらも、チュクパンは一笑に伏した。

「おいおい、バカを言うな。いいか、お前はバカだから知らないんだろうが、ピダム公は陛下一筋なんだ。ったく、宮殿に生える雑草ですら知ってることだってのに、全く……」
「おい、誰がバカだ誰が! 第一、ピダム公が美女と一緒なのは本当なんだぞ! 美女と一緒にいて、ただ一緒にいるだけだって言うのか? 俺達を遠ざけておいて?」
「何? いや、そんな、ま、まさか……」
「それでも疑うってんなら、見せてやる! ほら、ついて来いよ!!」
「あ、こらっ……!」

 ――その後、サンタクに連れられてこっそりピダムの様子を窺ったチュクパンは、美女と二人で邸の中に入っていくピダムを目撃し、とんぼ返りで宮殿に戻ることとなった。
 アルチョンからは、ピダムの首根っこを掴まえてでも連れ戻し、陛下にご心労をお掛けしていることを謝らせろ、と言われてきたが、とんでもない! 世慣れたチュクパンの頭は、直ちにこの事態をアルチョンに知らせなければと訴えていた。


**


 やっとのことでピダムを邸内へと誘うと、彼女は鏡台の前にピダムを座らせて、その髪を解いた。

「何を……!」
「ピダム公。女人と言うものは、一にも二にも、美しいものを好みますの」

 ――例え、陛下でいらしても。
 続けられた言葉に、ピダムの手がぴたりと止まった。

「ピダム公は……もうちょっと、生まれ持ったものを大切になさるべきではないかしら」
「はあ……?」
「有り体に言えば、そうねえ……その極上の絹のようなお声で、こんな風に陛下に囁いてみるの」

 袖に半分ほど隠れた繊手をピダムの肩に置くと、彼女は耳朶に触れてしまいそうなほどに近くで囁いた。

「今宵は、まるで……雪の中に咲く牡丹のように艶やかです、陛下……」

 それから、と顔を寄せた右肩から腕を撫で下ろすようにしてピダムの手を取ると、ごつごつとした手に向かってうっとりとした眼差しを注いだ後、小さく、しかしピダムには聞こえる程度の声で呟いた。

「――ローマングラスよりも美しい、この宝石のような手に口づけを」
「ぶはっ!」

 そこでとうとう耐えきれなくなったのか、ピダムは盛大に噴き出して、げらげら笑い始めた。はあ、と盛大に溜め息をついてピダムの手を放り出すと、ミセンの娘らしい技術を披露した彼女は子供のように笑い崩れるいとこにげんなりとした顔を向けた。

「ピダム公。笑っている場合ですの? これくらい、初歩じゃないかしら?」
「そ、そうですか。ははっ……あ、ええと、あなたは……」
「メセンと言います。梅に生きると書いて、メセンですわ。……ピダム公。わたくし、ピダム公を心の底から応援しておりますの」

 まだヒイヒイ笑っているピダムの髪を鷲掴むと、その荒っぽさとは打って変わって丁寧に櫛を通しながら、メセンは微笑んだ。

「わたくしも、ピダム公とおんなじ……。陛下がとある方と国婚をなさるのが、嫌なんですもの」
「とある方……?」

 ミセンの子供は百人を軽く超えている。であるからして、ピダムはいとこ達のことなど把握してはいない。認識しているのはテナムボくらいだ。当然、今、彼の髪に剃刀をあてているいとこのことも、さっぱりわからなかった。
 うふふ、とメセンはどこか父に似た独特の笑い声をたてながら、サッサッと傷んだ毛先を落としていった。

「……ピダム公もよくご存知の方ですわ」
「え?」
「でも、わたくしのことなんて、今はどうでもいい。そうでしょう?」

 それはその通りだったので、ピダムは頷いた。
 しかし、その何とも自分勝手ないとこの態度をメセンが咎めることはなかった。代わりに彼女は、ピダムの髪を高く結って毛先を垂らす形にすると、何とも男らしい手つきでピダムの頬を撫でた。

「ピダム公は、女人には触り方と言うものがあるのをご存知? それに、女人を見る時はまずどこを見て、次にどこを見て、挨拶の後には何を言うべきかお分かりかしら?」
「は……?」
「まぁ、ご存知ならこんな事態にはならないわねえ……」

 気を取り直して卓の上にあるお菓子を手に取ると、メセンはそれをピダムの目の前に翳した。

「女人の心を蕩かせるには、身も心も甘いものでいっぱいにして差し上げるのが一番。――これは、陛下がお好みだと噂の菓子ですの。わざわざ用意させました。……ピダム公、陛下がお好みの菓子のことはご存知でした?」

 ぶんぶんと首を振ったいとこの口にその菓子を突っ込み、メセンは続けざまに訊いた。

「では、陛下のお好みの色は? ご存知……ないのね」

 誰かを振り向かせたいなら、その誰かのことを誰よりも知らねばならない。……が、彼女のいとこはその誰かのことを、あまり知らないようだった。――教え甲斐があるじゃないの、と暗い情熱を燃やして、メセンはほんの少しだけこのいとこに似ている夫を懐かしく思った。


**


 アルチョンから、陛下のお側から離れるわけにはいかぬ故、陛下の御前で報告しろ、と命じられたチュクパンは、怪訝そうな顔をしたトンマンと厳しい顔つきのアルチョンに睨まれて、散々な気分を味わっていた。

「早く報告しろ。司量部令はいつ戻ると?」
「は、その、ええっと……」

 アルチョンの厳しい追求に、チュクパンは逃げ出したい気持ちを抑えてちらちらトンマンを見た。それは、陛下の前ではまずい、と言うチュクパン渾身の合図だったが、アルチョンはまるっと無視している。……とうとう、チュクパンは泥を吐いた。

「ピダム公には……お目通りが叶いませんでした」
「何? 私からの使いだと告げたのか?」
「その……ピダム公は、誰にもお会いにならぬと……」
「なんと言うことを……!」

 アルチョンが意気込んだところで、ふいに、やけに落ち着いた声でトンマンが口を挟んだ。

「――ピダムはミセン公のご息女と一緒にいたのですか」

 その問いかけにチュクパンからの答えはなかった。しかし、「ひえっ」と息を飲んだのを見れば、答えなど聞くまでもなかった。
 アルチョンはいやに物静かな女王を怪しんで、そっと声を掛けた。

「陛下……?」
「……ご苦労でした。下がって下さい」
「は、はい」

 けれどもトンマンはアルチョンには応えずにチュクパンを下がらせると、膝の上に置いた手を強く握った。その手は、震えていた。
 ――ピダムが私に何も言わずに、婚姻を?
 昨日、ピダムはトンマンに「静養したい」としか言わなかった。清遊に行くのも、女人と一緒なのも、トンマンはピダム本人からは聞いていない。……ピダムは、トンマンに隠すつもりでいたのだ。恋人が出来たことを、隠すつもりなのだ。

『もし……もし、話して…………公主様に、もうお前は必要ないと……必要なくなったと言われてしまったら……』

 ――嘘つき。
 トンマンは、カッと燃え上がった怒りに任せて強く裳を握った。しゃらりと金の飾りが鳴って、トンマンの怒りを煽りたてる。

「陛下、私が参ります。夜、陛下がお休みの間にピダムを捕まえて、仁康殿まで引き摺って参ります。お任せ下さい」
「――いいえ」

 ズキズキと身体が痛い。そう言えば、強く打った足がそのままだ。痛いのは、そこかもしれない。
 ギリッと奥歯を噛みしめて、トンマンは冷ややかに命じた。

「輿の用意をして下さい。私が行きます。……不在に気付かれぬよう、手を打つことも忘れずに」
「はっ!」

 きびきびとした動作で礼を取りながらも、自身はトンマンから離れようとしないアルチョンに付き添われてトンマンは寝室に入った。着替えるからとやっとのことでアルチョンを追い出し、侍女に支度をさせたトンマンは、ようやく一人きりになったところで引き出しを開けた。箱を取り出し、さらにその箱の中から丁寧に一枚の紙を手にして抱きしめると、消え入りそうな声で呟いた。

「…………女ったらしだったのか、ピダム……」

 公主となった後も、ただ一人、ピダムだけはトンマンを女人として扱ってくれた。トンマンが花も虹も砂漠では見たことがなかった、と話してからは、やれ花が咲いているだの、虹が見えるだのと言ってはトンマンを誘って庭園を歩いたピダム。そのピダムがくれた花を、トンマンは侍女達に頼んで押し花にしてもらい、大事に取っておいた。
 ――今、彼女が抱きしめているのは、その押し花だった。

「友なら……友なら、恋人が出来たら、言うべきではないのか」

 こんな風に無視されると、まるでピダムにとって彼女はもはやどうでもいい存在なのだと……ただ主従であるだけだと突きつけられたようで、トンマンは無性に腹が立った。いつの間にか、ミセンやソルォンより親しい間柄だと思われなくなったことに、怒りすら覚えた。

「私は……お前を友だと思っているのに……」

 ちくりと痛む胸を抱きしめて、トンマンは涙を浮かべた。


**


「ミセン公」

 同じ頃、退庁しようとしていたミセンは、珍しい人物から呼び止められていた。

「これは、上大等。何か?」
「実は、昨夜からメセンの姿が見えないのですが……ご存知ありませんか?」
「ああ、メセンなら、我が家におります。何せ気紛れな娘でして……どうやら二、三日里帰りをしたいと思い立ったようです。申し訳ありません、上大等」
「いいえ、居場所が確かなら構いません。メセンも近頃の寒さですっかり塞ぎ込んでいましたから……お父君が恋しくなったのでしょう」
「いやいや、父より夫です。ヨンチュン公、ご心配なされずとも、すぐにヨンチュン公を恋しがりますよ。え~へっへっへ」
「ははは、いや、そんなことは」

 ……気の毒なことに、ヨンチュンは全く知らずにいた。彼の妻であるメセンが、今、異母弟ピダムと一緒に清遊に出ているとは。
 そしてミセンも、それをヨンチュンに教えるつもりはなかった。――何、ヨンチュンの女はメセン一人ではない。ヨンチュンとて、それなりの艶福家なのだ。数日の間メセンがいなくても、どうと言うことはないだろう。

「いやはや、メセンは我が娘ながら奔放でして。あれを扱えるのはヨンチュン公ぐらいですよ」
「いや、そんなことは……」

 ヨンチュンの背を撫でてどこかいやらしい笑みを浮かべながら、ミセンは心の中で愛娘に声援を送った。ミシルやミセンに悪感情しかないヨンチュンをその虜にした美女は今では子供のいる年増になってはいたが、それでもピダムとはほとんど年は変わらない。同年輩ならではの……さらには女人ならではの助言を与え、ことを上手く導いてくれるだろう。
 それに、とミセンは女王の背後に影のようにへばりつくアルチョンを思い出して、笑みを深めた。
 ――メセンなら、必ずやアルチョンに邪魔はさせまい。
 我ながら良い娘を持ったとミセンは満足げに頷きながら、謝礼としてその愛娘に要求された西方の菓子一式を手に入れる算段をたて始めた。
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  1. 2010.08.31(火) _22:34:27
  2. SS(ドラマ設定IFもの)
  3.  コメント:3
  4. [ edit ]

<<ソヨプ刀と連載の行方。@トンマン、ミシル、真興王 | BLOG TOP | 8月29日と30日に頂いたコメントへの返信>>

comment

初コメントです

  1. 2010/09/01(水) 01:06:24 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
初めてコメントから書いてみました。

ミセン公の娘さんがヨンチュン公の奥さんとは………びっくりです。


44話(ヨンチュン公とユシンパパが酒に薬入れられて緊急和白会議に遅刻する回)見てて…………ヨンチュン公には奥さん、いないよね~って友達と話してましたが…………


びっくりです(・◇・)?


このお話し好きなんで続くの嬉しいです(*^∇^*)


メセンさんが髪をいじってくれてトンマンが『ときめく』ってなったら嬉しいなぁ~


ミセン公+メセンさん!!! ファイティン!!!


アルチョンにも話して味方に引きずり込んだら面白いのに(笑)

管理人のみ閲覧できます

  1. 2010/09/01(水) 15:39:14 
  2.  
  3.  
  4. [ 編集 ] 
このコメントは管理人のみ閲覧できます

すー様へ

  1. 2010/09/01(水) 18:45:22 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
実は、コメントって管理画面からは編集出来ないんですよ…! 編集出来るのは書き込んだ方だけだったような気が…。ひとまずはコメントを未承認状態にさせて頂きました(汗)
後でパソコン開いたら、いじれるか試してみます…!


ヨンチュン、ドラマの中では生涯独身みたいな扱いになってますが(笑)、ドラマの元ネタの花郎世紀では娘が18人(だったかな…?)いる、普通に子だくさんだったと記されています。
妻も、今回出てきた梅生(読みはメセンで合っているのか。汗)さんだけじゃなく、ドラマでは出てこない第9代風月主の秘宝の娘さんとかもいたりして…。んで、後々ヨンチュンの娘がチュンチュの後宮に入ってたりもします。
ただ、男子はいなかったようで、チョンミョンと再婚してチュンチュの義父になり、チュンチュを後見していたようです。なので、ドラマの展開は大体合ってるんじゃないかと。
ヨンチュンの奥さんが登場しないのは、ソルォンの奥さんや、ミシル以外の女性との間に出来た子供達が出てこないのと同じ理由だと思います。要するに、ドラマの本筋に絡まないから、と言う…(笑) ソルォンさんも、ミシル以外の女性との間に10人くらい子供がいるので。

SS、ミセン親子に頑張ってもらって(笑)、アルチョンを味方に出来るかどうかはわかりませんが、一風変わったトンマンとピダムらしくなるようにしたいと思いますv


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