善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 君の肩で雨宿り

うおおおお、原因不明のスランプが!!(汗)
……いえ、時期的に、多分ホルモンバランスが崩れてるんだろうなーとか大体想像はつくのですが、確信は出来ませんし、うーむ困った……。カターンおじさんの話を書こうとしていたのですが、ネタは浮かんでいるのに文章に纏まらない…………orz
あまりにSSの更新がないのも申し訳ないので、ちょっとしたSSを置いていかせて下さい。内容は、トンマンとピダムの、隠居生活中のどうと言うことはないお話です。


****


「お父さん、雨すごいねー」
「ああ」
「止まないねー」
「……うん」
「お母さんも、雨かなあ」
「……だろうなあ」
「せんたくもの、だいじょぶかなあ」
「洗濯物なんかどうとでもなるさ。それより、雨の中お母さんが洗濯物を取り込んだりしてないかが心配だ」

 家を出た朝はからっからに晴れ渡っていた空は、昼過ぎから突然漆黒の雲に覆われて、今では一寸前も見えないほどの大粒の雨が下へ下へと落ちている。

「……お母さん、さびしくないかなあ」

 そんな中、ピダムの膝に乗っかっているヒョンジョンは、雨が止むのを逃すまいとじいっと空を見上げたまま、ずっと母トンマンのことを口にしていた。お母さん元気かな、お母さんごはん食べたかな、お母さんおねむかな、と延々と母の話題ばかりを続ける息子に、しかし、一緒にいる父が不貞腐れる様子はない。代わりにその父ピダムも、息子と一緒になって妻の心配をしていた。
 けれども、だからと言ってピダムは雨の中を突っ切って帰宅しようとはしなかった。昔なら雨の中だろうと嵐の中だろうと関係なく家に帰ったであろうに、今では全くそんなことはしなくなっているのだ。何故なら。

「ねえねえお父さん、雨、ちょっと元気なくなった!」
「駄目だ。雨に濡れたら、また風邪ひくぞ。ヒョンジョンが風邪をひいたら、お母さんが心配するだろ?」
「かぜなんてひかないもん」
「お母さんの前でも同じこと言えるか? お母さんはヒョンジョンが風邪ひいたら、すっごく心配するんだぞ」
「…………」

 日頃は元気一杯なヒョンジョンも、さすがにたまには風邪もひく。そしてトンマンは、心配する。ピダムは、ヒョンジョンだけでなく、息子から風邪をもらうことのあるトンマンの心配もする。――おかげでヒョンジョンが生まれてからと言うもの、出来る限りピダムは無理はしなくなっていた。

「雨が止んだら帰ろうな、ヒョンジョン」
「……うん」

 ざあざあ降っていた雨は、いつの間にかさあさあとその音を少しずつ変えている。これなら、そのうち止むだろう。むうっと顔を顰めているヒョンジョンを揺らしてあやしながら、ピダムも待ち遠しく空を見つめた。


* *


 それは、まだトンマンとピダムが暮らし始めて半年も経っていない頃のこと。

「トンマン」

 散歩がしたいと外に出てきたトンマンと、無理矢理くっついて出てきたピダムは、裏山の麓にある沢へとやって来ていた。
 まだ夏の終わりとあって、トンマンは澄んだ小川を見つけるなり、瞳をきらきら輝かせている。早速履いていた沓を脱ぎ始めた彼女を見て、慌ててピダムはしゃがんで背を差し出した。

「なんだ?」

 しかし唐突な行動の意図がさっぱり掴めないのか、トンマンは不思議そうな顔をしている。

「もう秋だし水も冷たくなってきてるから、水に入ったら風邪ひくかも。背負うから、乗って」
「子供じゃあるまいし、何を言っているんだ」

 大丈夫だ、と裾を捲って水の中に入ろうとするトンマンを、ピダムは間一髪で抱き止めた。

「駄目だってば! もし足を滑らせたら大変だし、大人しく言うこと聞いて」
「おんぶをしたまま水の中に入る方がよっぽど危ないじゃないか。いいから、離せ」
「駄目」
「…………しょうがないな」

 ぶすっと唇を尖らせてピダムを睨んでから、渋々と言った様子でトンマンは彼の首を抱いた。心得たとばかりにピダムが再び背を向けてしゃがめば、今度はそこへ大人しく負ぶさってくる。

「お前に言われた通りこうやって負ぶさったのだから、ちゃんと私の言う通りに動け」
「はい、陛下」

 人一人を背負っているとは思えない軽やかな足取りでピダムは川に入っていこうとしたが、ふいに後頭部に何かが圧し掛かり、彼の足を止めた。

「……陛下じゃない」

 ピダムの頭に顎を乗せたままぶすったれてそう呟くトンマンが可愛くて可愛くて、ピダムは危うくその場で彼女を下ろして抱きしめたくなった。けれどもトンマンが負ぶさってくることも滅多にないので、にまにま笑うだけに留めて、また歩き出した。

「わかった、トンマン」


* *


 黒雲も消えた空には、紅い夕暮れが迫っていた。あの時小川で感じた重みよりも遥かに軽く、その一方で同じくらい暖かくて大切な存在を負ぶったピダムは、今ではすっかり見慣れた家を見て、そっと囁いた。

「ヒョンジョン、おうちに着いたぞ」
「…………」

 けれどもすっかりピダムの背中で温められて心地良くなってしまったヒョンジョンは、深い眠りについていた。雨が止むのを待つ間ずっと、トンマンのことを気にして緊張していた為に疲れたのかもしれない。なんと言っても、まだ小さな子供なのだ。
 そんな、安心しきった様子でピダムに凭れかかって寝ている姿がどことなくトンマンに似ていて、ピダムの顔が綻んだ。トンマンは日頃、ヒョンジョンのことを「ピダムにそっくりだ」と言っては、「産んだのは私なのに不公平だ」と拗ねていたが、ピダムから言わせれば、ヒョンジョンはトンマンに良く似ていた。彼女と同じように意地っ張りで、彼女と同じように愛らしい。

「トンマン、ただいま」
「ピダム、お帰り。雨は……あれ、ヒョンジョンは寝てるのか?」
「うん。雨宿りしてて、疲れたみたいだ」
「じゃあ、少し待っててくれ。布団を用意してくる」

 ヒョンジョンの部屋へ入っていくトンマンを追いかけてピダムも部屋に入ると、起こさないように二人でそっと小さな身体を寝台へと寝かせる。その上に丁寧に掛け布団をかけていると、何だか無性に可笑しさが込み上げてきた。

「どうしたんだ?」
「いや。昔は人に布団を掛けてもらう身だった女王様が、今は子供に布団を掛けてあげる一人の母親なんだと思うと、なんだか可笑しくてさ」
「……別に、昔も布団ぐらいは自分で掛けていたぞ」
「そう?」
「当たり前だろう」

 口調はぶっきら棒だったが、怒っているわけではない証に、トンマンの口元にも穏やかな微笑が湛えられていた。

「トンマン」

 なんだか面白いような面白くないような不思議な気分になって、ピダムはつとトンマンを呼んだ。

「なんだ?」
「さっきのヒョンジョンみたいにさ、負ぶさってみない?」
「ええ?」

 くるりとトンマンに背を向けると、ほら、とピダムはしゃがんだ。

「……家の中だぞ」
「だから?」
「別に、足元が悪いとか、そう言うことはないだろう」
「うん。でもだからって、別に負ぶっちゃいけない理由もないだろ?」

 それから暫く押し問答を続けた後、ようやく諦めたのか、トンマンは不承不承ピダムの背中に乗った。

「……重くないか?」
「ちっとも」
「……楽しいか?」
「うん」
「………………なんだか、眠くなってきた」

 鼻歌でも歌いそうな様子で家の中を歩き回っているピダムの背から伝わる微かな揺れには、どうやら催眠効果があるらしい。うとうとしてきたトンマンは、先程のヒョンジョンと同じようにピダムの肩に顔を埋めた。

「……ピダム……」
「何?」
「…………お父さん、なんだな」
「え?」

 トンマンのささやかな囁きにピダムが答える前に、すでにトンマンは小さな寝息を立て始めていた。
 起こすのも勿体無くて、そのままうろうろと辺りをさ迷いながら、ピダムはつい先刻告げられた言葉を思い返した。

 ――お父さん、なんだな。

 そう言えば……トンマンは、ソファに女手一つで育てられたと言っていた。公主とわかるまで、彼女には父親はいなかったのだ。物心ついた頃には、もう母に負ぶわれることなどないだろうから、トンマンは誰かに負ぶわれると言う記憶は無きに等しいだろう。
 ピダム自身、ムンノに男手一つで育てられた為に、所謂母の温もりと言うものは全く知らなかったし、ムンノと対立した時、間に入ってくれる存在もいなかった。そのことを、不満に思ってもいた。
 けれど、トンマンと暮らし始めて、さらにヒョンジョンが産まれてからは、ムンノがどれほどに苦労したのか思い知らされてすっかりその考えは改められていた。両親共に揃っていても難儀なのが子育てなのだとようやっとわかったピダムは、今ではトンマンと同じように、毎月ムンノの命日には太白山へ向かって手を合わせたし、鶏肉料理も控えた。今更、と言われても仕方がないことだが、それでも何か師の為にしたかった。

「……お父さん、か」

 まだムンノと旅をしていた頃、何度も思った。師匠はどうして「お父さん」と呼ぶことを許してくれないのだろうと。実の父でないにしろ、赤子の頃から育ててくれているのだ、養父と言って差し支えないのに、何故頑なに「師匠」と呼ばせるのかと。
 ……かつては、理解出来なかった。
 「師匠」としか呼ばせないくせに、幾つになってもピダムを放らずに一緒に旅をし続けようとするムンノの心が。

 だが、今はわかる。
 王位を継がせる時に自分の存在が枷にならないよう父とは名乗らず、その後、弟子に失望しても、弟子をどう導けば良いのか迷っても、ちゃんと弟子が生きていけるよう様々な知恵を授けた理由が。
 不器用で口下手な国仙が、不出来な弟子を彼なりに一生懸命大事にして、愛して、守ろうとしていたことが。
 ……最期の時、必死になって背負ったあの重みが、今こうして感じている掛け替えのない温もりと同じように大切なものであったことが、わかった。

「…………トンマン」

 背に感じる重みと温みを確かめるように呟くと、眠っているはずの彼女がもぞもぞ動いて、さらにピダムにくっついた。
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  1. 2010.09.10(金) _21:00:50
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
  3.  コメント:4
  4. [ edit ]

<<「2」@善徳女王43&44回 | BLOG TOP | 9月7日に頂いたコメントへの返信 ※追記あり>>

comment

週も明けましたが体調いかがですかー。

  1. 2010/09/12(日) 22:19:16 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
ホルモンバランスは崩れると体調だけでなく精神にも影響しますもんね。どうぞご無理なさらず。

雨のイメージって好きです。屋内での静かな語らいが似合いますよね。それと思い出をたどるのも。このおんぶの連続はなんなのだろうと思ってたらルーツはムンノの死の場面だったんですね。ムンノ話には弱いもんで私の目にも雨が・・・うるる。

「親の心子知らず」という言葉が思い浮かびます。二度目の成人式(笑)を経て、子育てもして、初めて理解したというか成長したピダムの姿が見られて嬉しかったです。ピダムがムンノの苦労を知り、その苦労に思いを馳せたことで、ムンノの苦労も報われたと思います。少しだけ(笑)。直接子育てする大変さや醍醐味は、宮殿では(皆無ではないけれど)味わえないことだと思うので、二人とも野に帰ってよかったね、とも思います。思えばトンマンもピダムも、実の親との縁は薄く、かわりに必死に親になってくれた育ての親がいてくれて幸せだったよなーとも。

あとはヒョンジョン君、父と一緒の時は母の話題ばかりだけど母と一緒の時は父の話題・・・あまりしてくれなさそうwとか・・・

トンマン「陛下じゃない」って怒ってますが、それならもう少ししゃべり方を可愛く!というか普通に喋ってみwwとか。

あとドラマ違いますがおんぶというとチャングムとミン・ジョンホのかけおちデートを思い出しました。めたくそ可愛かった・・・(チョンホ様が)

りば様へ

  1. 2010/09/13(月) 19:34:34 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
りば様、ありがとうございます!
今週は家でボーッとする日はなかったのですが(当たり前だ)、今日は朝から肉をがっつり食べて元気になりましたーv 文字通り肉食タイプのようです(笑)
適度に運動して、たっぷり寝て、しっかりします!

私も、雨の日を描くのが好きです。雨にも色々あって…このお話は秋頃の、さっと降って、すぐに止む雨をイメージしました。
今回は、特にムンノを意識していたわけではなく、なんとなくトンマンとピダムっておんぶしそうだな、と書いていたら、ムンノが出てきて自分でもびっくりしました(笑) あの花畑の場面があまりに綺麗だったので、自分の書いた内容とは関係なく、あの場面を思い出してジーン…としたりもしました。りば様の目にも雨とは…ムンノ好き同志として、光栄です!(何)

そうですね、色々大人の階段(笑)を昇ったピダムは、彼なりに、ムンノについて考えることが多くなったようです。勿論、まだまだ他人の子供を育てる気持ちとかはサッパリなんでしょうが、ピダムなりに少しずつ過去の色んなことを振り返って、より良い未来に繋げていって欲しいなあと思いながら書きました。ムンノも少しずつ報われていくようです(笑)
確かに、宮中ではなかなか深く子育てに関われませんよね…特に、王は。二人とも庶民として育ってきましたし、子育てをするなら庶民としての方が幸せそうなので、私も野に下った方が良いのかなぁと思います。育ての親の苦労や、その思いの一端に触れることが出来ますし。

あの父と息子は、母の話題で絆を深めているので!w あとは、基本的にベタベタせず、色んな面でライバルって感じですね。……親子なのに(笑)

私のトンマンイメージって、恥ずかしくなると偉そうになったり突き放したりしちゃう感じでして。(要するにツンデレw)
あと、口調は、どうも女っぽい口調のトンマンに違和感ありまくりと言うか…トンマンって甘えん坊ではあっても、お淑やかなキャラではないと思うので、なかなか可愛く出来ずにいますw 女っぽい口調にすると、別人になるんですよ! ピダムに勝てなかったり(笑)

あー! ありましたね、雪の中でおんぶするシーン!
あれ、めっっちゃ可愛かったんですが、それよりも「寒っっっ! 凍死するぞあの薄着じゃ!((((゜д゜;))))」とビビった覚えが(笑)

最高です!

  1. 2010/10/20(水) 00:31:35 
  2. URL 
  3. まりん 
  4. [ 編集 ] 
はじめまして!
ピダムにはまり、ネットで検索していたらこちらのサイトにたどりつきました!!ssもう最高です!!
ピダムがトンマンと暮らしてて子供までいて^^
リレー小説のソファに兄妹として育てられてる話もかなりお気にいり♪
私はムンノも大好きなので、リク・・・など受け付けてないかもしれませんが、可能であれば、ムンノとピダムの話も読んでみたいです。本編でピダムが厳しくされてもムンノを慕ってたところが、なんともいえなく切なくて・・・
でもこちらの小説を読んで、確かにいい加減大人なのに、ずーっと連れて歩いてユシンに三韓・・の本を渡した後もピダムを連れてソラボルを離れようとしたところを考えるとやっぱりムンノもそれなりの愛情があったんだろう・・・と。恐れてただけではないだろうと・・・実は、この2人の関係が一番切なくて(笑)
勝手に暴走して書きまくって申し訳ないです!
でもこちらのサイトをみつけれてとてもうれしいです!!
ちなみに、制限のかかっているところも読ませていただきたいのですが、ブロトモというのにならないと難しいですか?どうやってやればいいのでしょう???

まりん様へ

  1. 2010/10/20(水) 23:32:49 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
まりん様はじめまして! 管理人の緋翠と申します。

おお、ありがとうございます…!
トンマンを可愛がりたい一心で書いているのでピダムはわりと不憫なこともあるのですが(笑)、隠居生活、楽しんで頂けて良かったですv 子供も大丈夫かなーと最初は不安だったのですが、喜んで頂けてもう私が幸せです。
リレー小説もお気に入りだなんて! ありがとうございますーv 一緒に書いている相棒のsaki様に伝えておきます(笑)

ムンノとピダムのお話ですか!
ど、どうでしょう、他の方からもリクエストを頂いているので一度はこの二人に絞って書こうとは思っているのですが、なかなかうまくいかずについつい隠居生活話の中で登場させてしまっています(汗) でも、いつかは書きたいです。
あ、ただ私はピダムはムンノからたっぷり愛情を受けていたと考えているので(でなきゃいい年した子供が師匠と手を繋いで寝ることはないと思います。笑)、恐れていた…と言うのは、ピダムをと言うことではなく、ピダムが惨いことをするように育ててしまった自分自身をも恐れたんじゃないかなーと解釈しています。ムンノ寄りな発想ですね!(笑)
暴走だなんてとんでもない! リクエストありがとうございます、メモっておきますv

パスワードのかかっているページは、「パスワード入力」と言うリンクをクリックすると、パスワードについての説明(と言うかクイズ)が出てくるので、そのクイズにお答え頂くと見られるようになっています。ブロともにならなくても大丈夫です(笑)
クイズの答えは調べればわかるものなので、もしご存知でなかったら、ネットで検索かけてみて下さいv ウィキペディアがオススメです。


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