善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 芳しきカルガモの逆襲劇・上

以前に書いた『SS カルガモの夢』の続編です。ピダムがトンマンに逆襲する(?)話です。一話目はパスワードなしですが、二話目はパスワードになる可能性が濃厚です。おまけに二人がイチャイチャしてるだけです。なので、「バカップルバーカバーカ!」な気分の方には、閲覧をオススメしません(笑)


****


 近頃、トンマンが凄く優しい。

「トンマン!」

 わっと抱きついても手を繋いでも後を追いかけても口づけをしても、全くと言っていいほど怒らない。

「どうしたんだ?」
「呼んでみたかっただけ」
「そうか」

 これがちょっと前なら、「用がないなら騒ぐな」とか、「吃驚するだろう!」とか、真っ赤になって怒ってたのに(勿論、怒ってるトンマンも可愛いから好きだけど、笑ってたり優しい方がもっと好きだ)、ここ数日、ずーっと笑ってる。
 ただ。
 ただ。一つだけ、少し気になることがある。

「ピダム」
「何?」
「本当にカルガモみたいで可愛いな、お前は」
「……ありがとう?」

 それは、トンマンが未だに私を「カルガモ」扱いすることだ。……カルガモは味が悪いと言うのに!!
 おまけに。

「ピダム、一回カルガモの真似をしてみないか? 「グワッグワッ」って」
「…………」

 トンマンにこんなに熱い目線で見られて断るのも気が引けるけど…………頷く気も、しない。って言うか、そもそもなんでカルガモの真似なんだ? 鶏がたくさんいるんだから、それでいいじゃないか。カルガモなんて、鶏に比べれば泣き声も醜くて、どこも良いところはないのに。

「…………」
「なあピダム、一回だけ、一回だけ鳴いてみないか?」
「………………ぐわ、ぐわ」
「! ピダム可愛い……!」
「う、うん……」

 トンマンに抱きしめられるのは嬉しいんだけど。すっごく、すっごく嬉しいんだけど。
 ……でも、なんだか胸の辺りがモヤモヤするのは、なんでだ? カルガモだからか? 鶏の真似なら良かったのか? それとも……それとも、私のことをカルガモだと言って喜ばれると、なんだか夫に思われていないような気がするからか?

 ……なんだか、このままじゃ駄目だ、と言う気がした。





 近頃、ピダムが凄くよそよそしい。

「ピダム」
「何?」

 呼べば、振り返って笑ってくれる。ここまでは、これまでと同じだ。同じなんだけれど。

「…………」
「どうしたの?」

 これまでは、黙ってじっと見つめたら、すぐに抱きしめてきたのに。煩いとか鬱陶しいとか、ちょっと文句を言ってしまったりしても、怒らずに「ごめん」と謝ってくれたのに。
 ……なのに、どう言う訳だかここ数日、いくら見つめても何もしてくれない。

「ピダム」
「はい」
「……少し、庭を散歩してくる」

 それでも、ぷすっと唇を尖らせて出て行こうとすると、ちゃんとついて来る。私の後を、ちょろちょろと。

「一緒に行こうか?」
「……いい」
「でも、今日は日差しが強いから、倒れるかもしれないし、行くよ」

 それに、私が拒んでも、全くこちらの意見なんて聞かない。そんなところも、いつも通りなのだけど。

「ピダム」
「はい」
「…………手……」
「手? どうしたの? 手が痛い?」
「……何でもない」

 ――やっぱり。やっぱり、手を差し出しても握ってこない。
 変だ。そう言えば、最近夜も一緒にお喋りをして、ピダムが指圧をしてくれて……それだけで、後は何もない。少し前までは、隙あらば引っ付いてきて、いくら「カルガモ」とからかってもめげなかったのに。こちらが恥ずかしがっているとか、そんなことは無視して、いつどこでもお構いなしにくっ付いてきたくせに。なのに。

 ……なんだか、このままじゃ駄目だ、と言う気がした。


* *


 ピダムがやっとカルガモ扱いされることに理不尽さを感じて逆襲を始めたのは、秋風が吹き始めた頃のことだった。
 とは言ってもピダムの逆襲方法は至極簡単で、「暫くトンマンにくっ付かずにいよう」と言うものだ。くっ付かずにいればカルガモ扱いされないだろうとあっさり判断したピダムは、多少欲求不満に襲われてはいたが、ピダムからくっ付かないようになってからやたらとトンマンが彼を呼ぶようになったので、一定の満足感は得ていた。あくまで、一定の、だったが。
 その一方でトンマンは、ピダムの所業に不快感を募らせていた。そもそもがしおらしい性質ではないのだから、不快感はそのまま怒りに繋がる。トンマンの頭は、徐々にピダムをあっと言わせてやろうと言う、例によって例の如く、聊か物騒な方向に切り替わりつつあった。
 そして都合の良いことに、度胸と胆力はあっても、こう言った面での経験が圧倒的に少ないトンマンの知恵を補う本が、彼女の手元にはあった。

「…………『夫婦の関係に亀裂が入った時は、日頃と違う趣向で相手を驚かせる』……」

 ピダムの目を逃れる為にわざわざ湯殿にまで例の本を持ってきたトンマンは、蝋燭の明かりの下で怪しげにぶつぶつと呟きながら本を睨んでいた。

「違う趣向……違う趣向とは、なんだろう……?」

 ――とりあえず首を捻って考えてみるものの、よくわからない。どうしたら良いのだろうか。
 その時、ふいに窓から一陣の風が吹き込んできて、本の頁をパラパラと捲った。

「…………匂い……」

 風が誘ったそこに描かれていたのは様々な花の香りやその楽しみ方についてだ。湯に浮かべると見栄えが良い花についても、記されている。

「湯……?」

 湯、と言えば。今、目の前に湯がたくさんあるではないか。

「湯……風呂……花……」

 ――『夫婦の関係に亀裂が入った時は、日頃と違う趣向で相手を驚かせる』……。
 なんだか妙に従姉妹に似た女神と、甥っ子に似た神がニヤニヤ笑いながら見下ろしてきているような気もしたが、雑念だと首を振ってそれを払い除け、トンマンは本を閉じた。――そのついでに、決意も固まった。


* *


 作戦決行の日は、その二日後になった。
 最大の問題点である花びら集めは、トサンとトファに頼むことで上手くピダムに見つからずに済み、二人にお礼として菓子をあげたトンマンは、意気揚々といつも通りピダムより先に湯殿に入ると、まず花びらの半分を湯に入れて、自分が漬かってみることにした。公主や女王だった頃はこう言った妙にむず痒い趣向を凝らした湯にも入ったことはあったが、もう随分と前のことだ。

「女官達は、ここにさらに油を撒くとか言っていたような気がするが……」

 正確には油ではなく香油だったが、両者の違いがわかるトンマンではない。美貌の維持に関しては、無頓着だ。

(……まあ、火事になっても困るものな。油は省略しよう)

 よし、と納得して、トンマンはそっと湯に手を入れて掻き回した。ややあって、ふわりと甘い香りが立ち上り始める。とは言え、それはあまり豊かな香りとは言えない。しかしとりあえずは十分と言えるだろう。やっと着ている物を脱いでぽちゃんと湯に漬かると、満足げにトンマンは微笑んだ。



「ピダム、出たぞ」
「ああ、わかった。入……る……?」

 ――なんだろう、この匂いは?
 トンマンから香るいつもとは違う匂いを敏感に感じ取ったピダムは、ひょいっと立ち上がると無意識の内にトンマンの髪に顔を近づけた。

「……? トンマン、これ、何の臭い?」

 ピダムとしては、大好きなトンマンの匂いを妨げる香りはなんであろうと「臭い」だったが、そうとは露知らぬトンマンは、ピダムが「匂い」に反応したと嬉しそうに、企み顔で振り返った。

「秘密だ」

 湯殿に行けばわかる、と荷物と共に部屋から追い出され、ピダムは首を傾げた。悪臭の元になりそうなものを湯に入れた覚えはなかったが……と言うか、何も湯に入れた覚えはなかったが、臭いがするのは何かが湯に混入しているからだろう。
 湯殿に入ったピダムはトンマンとは違って真っ先に着ている物を脱ぎ捨てると、ふと首を傾げた。

(……さっきと同じ臭いがする)

 思わず身体を洗うことも忘れて、ピダムはくんくんと臭いの元を探し回った。そして、見つけたのは――。

「………………ごみ?」

 トンマンが聞いたら張り倒しそうな感想を呟き、ピダムはぷかぷかと大量に湯に浮かんでいるモノを手に取った。くん、と臭いを嗅げば、薄っすらと先程トンマンから感じたものと全く同じ臭いがする。臭いの元はこれかと納得したピダムは、暫し思い悩んだ。
 ……トンマンの様子からして、これは彼女の仕業だろう。コレを湯に浮かべて何が面白いのかはよくわからないが、彼女に余計な手間を掛けさせてしまったことは申し訳なかった。
 おまけにこうしてこれ見よがしにこの臭いの元が残されていると言うことは、ピダムにもこの湯に漬かれと言うことだろう。何故トンマンがそんなことを考えたのかはサッパリわからなかったが、彼女の考えがたまに理解出来ないのは今に始まったことではない。

「…………とりあえず、入ってみるか」

 ――細かいことは、後で考えよう。湯上りにでも、トンマンに聞けばいい。
 そうして汗を流して湯に漬かったピダムが、手持ち無沙汰に花びらを飛ばして遊びながらも時間を持て余し、そろそろ出ようかと考えた時のことだった。――ピダムにとっては覚えのあり過ぎる気配が戸の外に感じられたのは。

「……トンマン?」

 その呼び掛けに答えるように、がたっと戸が動き、少しずつ赤い欠片がピダムの視界に入った。

「ピダム、入ってもいいか?」
「え?」

 さらに、日頃は絶対に自分からピダムと一緒に湯殿に入ろうとしないトンマンが有り得ない言葉を発した為に、ピダムは凍りついた。
 ――何か、何か、とてつもなく尋常ではないことが起きている。

「ピダム?」

 ピダムが唖然として答えを返せずにいると、焦れったくなったのか赤い塊が中に滑り込んだ。妙にひらひらとした、透き通った赤い塊が。
 それが、いつぞやチュンチュがやって来た夜にトンマンが着ていた衣裳だと気付いた途端にピダムは慌てた。あの夜、まあ色々あって、それ以来トンマンはその衣裳を衣裳櫃の奥に仕舞い込んでいたはず。それをどうして引っ張り出してきたのだろうか。それも、その衣裳を着て湯殿に突然現れるなど何事だろう。
 衝撃やら下心やら、色んなもので遽しくなる鼓動を抑えながら、ピダムはなんとか浴槽に凭れかかって湯に落っこちるのを防いだ。

「ど、どうしたんですか?」

 ピダムの動揺は明らかに口調に表れていたが、トンマンが気に掛ける様子はない。……いや、正しくは、彼女もすでに自分の計略通りにことを運ぶのに精一杯だったのだ。

「……たまには、背中を流してやろ……あげようかな、と思ったん……の」

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  1. 2010.09.23(木) _00:02:19
  2. 隠居連載『蕾の開く頃』
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