善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by 緋翠

※本日二本目の記事です。


リレー小説第8弾! 管理人緋翠のターンでござりますー。

ちなみにこのリレー小説、多分あと何回かで第一部の砂漠編を終え、第二部の鶏林編(郎徒編?)に突入すると思われるのですが、第二部から、saki様と私と一緒にこのお話を書いて下さる方はいらっしゃいませんでしょうか?
サイトやブログの有無は問いませんので(あ、勿論お手持ちのサイトやブログでの公開可です、ご安心(?)を!)、もし「参加してもいいよ!」と言うお優しい方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひご一報下さい。勿論一人で書くのも面白い作業ですが、リレー小説は予測不可能な上に、自分だけでは絶対に書けないお話が書けて、すっごく楽しいですよ!!(*´∀`*) (ちょっと派手に宣伝してみました)


* * * *


 縦横無尽に吹き荒れる砂漠の風は、晴雨に関係なく、刃のように肌に突き刺さる。それを良く知るトンマンは、頭から布を被って僅かな隙間からも入り込む砂を少しでも振り落とすと、気紛れな駱駝の紐を強く引っ張った。勿論トンマンの力で駱駝を引っ張れるわけではないが、今回はなんとか言うことを聞く気になってくれたらしく、もそもそと駱駝は動き出した。
 昨夜の「お嫁に行かない」発言が兄ピダムの中ではしこりになっているのとは対照的に、もはやその発言自体を忘れてしまっているらしいトンマンは、夜空に煌く星のような笑顔をその顔に湛えている。

「今日はお客さん掴まえられると良いなあ」

 どうやら、もうすでに気分は狩猟に出る狩人らしい。きらきら輝く瞳で砂の山を見据え、トンマンは獲物――もとい、新たなる客の獲得を目指して砂漠へと踏み出した。





 さて、トンマンが蟻地獄よろしく手薬煉引いて砂漠をうろついているまさにその時、流れ流れてタクラマカンへやって来たチルスクは、砂漠を越えるには自身の装いが聊か身軽過ぎたと後悔し始めていた。
 中原でも多少の砂地は経験していたので、この格好でも大丈夫だろうとラバに荷を乗せここまで来たものの、どうやらそれはあまりに砂漠を畏れぬ行為であったらしい。服の中どころか、ほとんど開けていられない目にまで砂が入って、酷く痛んだ。
 いや、砂漠の道が平坦だとは決して考えてはいなかった。砂漠を越えて来る商人達の中には、その中途で命を落とし、故郷に帰ることすら叶わぬ者もいるのだ。彼がこれまで辿ってきた道と同じように、この道も死と隣り合わせになっている、それだけだった。
 笠を目深に被り直すと、チルスクはまた一歩、何かに引き寄せられるように、操られているかのように、足を前へと踏み出した。





 朝よりは穏やかになった風に誘われるかのように、トンマンはぺたんと駱駝の隣に座り込んだ。

「…………誰も来ないなあ」

 運が悪いのかな、と呟いて駱駝に寄りかかると、水の入った袋を取り出し喉を潤す。すると朝から歩き回って疲れた身体の隅々まで潤うような感覚を覚えた。

「どうしようかな……」

 本当ならもっと先まで進んで客引きに行きたかったが、ピダムと日が暮れる前に帰ると約束してしまった以上、これ以上は進めない。こう言った約束を破ると彼は半狂乱になって怒り出すことを、彼女は良く知っていた。そしてそのちょっと行き過ぎた愛情を、鬱陶しく思いつつも、それと同じくらい……いや、それ以上に嬉しく思っている自分もいるのだから、逆らいようがない。
 せめて、とその辺に蛇がいないか探しながら、トンマンは辺り一体に目を凝らした。ちょうど風が弱くなり、砂がぶつからなくなった時を見計らって、大きく口を開く。

「誰かいませんかぁああああ!!」

 まるで迷子のような叫びだったが、これは人口密度の低いこのタクラマカンではそれなりに有効な客引きの方法だった。いたいけない少女(何故だかわりと高確率で少年に間違えられることが、トンマンとしては疑問だ。何故こんなに可愛い女の子が男に見えるのか)がこんな場所で客を探していると知れば、大概の客は同情してトンマンの宿に足を踏み入れてくれる――それは、このタクラマカンで宿屋を営む内に培った、トンマンなりの処世術である。
 しかし、今日はどうにも運が悪いらしい。トンマンの声はすぐに砂の風に阻まれ、ろくろく響かなかった。

「……うう」

 日頃、兄を不真面目だの遊んでばかりいるだのと叱り飛ばしている以上、今日は何としてでも客引きを成功させなければならない。でなければ、兄ピダムは「俺が行くのとお前が行くので変わりがないんなら、俺に任せとけ」としたり顔で言ってくるに違いない。それは少々むかっ腹が立つ。

「困ったな……もうお昼になっちゃう」

 太陽はじりじりとその身を天辺へと動かしている。もう、そんなに時間はない。

「うん、最後にもう一回叫んでみよっと。……おおおおおーい!! 誰かいませんかぁあああ!?」

 ――しかし、今回も何も答えは帰って来なかった。
 どうやら今日は、つくづく商いの神に見放されているらしい。代わりに見つけた小さな蜥蜴を捕まえて袋に押し込むと、トンマンは蜥蜴のいた石の上に座り込んだ。

(あーあ、これならカターンおじさんの話を聞きながら母さんの手伝いをしてる方が良かったなぁ……)

 この前にカターンからもらった本の中には、もっと彼に詳しい説明を聞きたい部分もある。
 はあ、と心の中で(砂漠では大口を開けたら口の中が大変なことになる)盛大に溜息を吐いた時、遠くにやっと待ち望んだ影を見つけて、慌ててトンマンは立ち上がった。ゆらゆらと揺らめく人影は、ラバと思しき生き物を引っ張って、こちらへ向かっている。
 どうやら一人で旅をしている者のようだ。近づくにつれ、随分と大柄な男だと言うことがわかる。

「おぉおーい! すみませぇえええん!!!」

 その男がどうやら若くはなさそうだとわかった時、砂漠に慣れていないのか、顔を上げられずにいる男に向かって、トンマンは大きく手を振った。





 当初、チルスクはその呼び掛けが自分に向けて発せられているとは思っていなかった。
 ただあまりに大きな声が聞こえたので吃驚して顔を上げると、男とも女ともつかぬ子供が自分に向かって手を振っていたのだ。特に無視をする理由もあるわけがなく、自然と彼の足は子供の方へ向かっていた。

「えへへ、おじさん旅の人?」

 その子供は幾つかの言葉でチルスクにそう訊ねた。交易路に住むだけあって、子供ながらにあらゆる言語に精通しているようだ。
 おかげでチルスクは、ちょうど子供の口から滑らかな鶏林語が飛び出た瞬間に、迷うことなく懐かしい言葉を口にしていた。

「そうだ。随から来た」
「わあ!」

 子供はピョンと小さく跳ねると、顔をくしゃりと崩してその満面で笑った。

「おじさん、鶏林の人?」
「そうだ」
「うわーっ! ここら辺じゃ鶏林の人は珍しいんだよ。あ、私、この先の町に住んでるの。おじさん、喉渇いてない?」

 チルスクが何か言葉を挟む間もなく、子供は彼の腕を引っ張ると、石の上に彼を座らせた。次いで水の入った皮袋を取り出す間も、ずっと喋り続けている。その明るい笑顔と声に感化されてか、すっかりその子供の調子にチルスクは巻き込まれていた。

「おじさん商人じゃないよね? 剣を持ってるから、武人なの? 元は鶏林の兵士?」
「……昔は、花郎だった」

 だからだろうか、無視をしようと思えば出来たのに、ついチルスクはもう何年も誰にも言わずにいた自らの過去を、口にしようとしていた。

「花郎?」
「鶏林にだけ存在する若い軍だ。選ばれし者のみが花郎と呼ばれ、鶏林を代表する戦士となる」
「じゃあおじさんは、鶏林の偉い人だったの?」
「偉くはない。ただ、主に仕えていただけだ」
「主?」

 鶏林を代表する花郎が仕える相手と言えば……と呟いて、子供は大きな瞳を一層大きく、きらきらと輝かせた。

「王様に仕えてたんだ!」
「いや、違う」
「えっ? じゃあ、誰に? 王后様?」
「違う。私の主は……宮主だ」
「宮主? じゃあ、その宮主様の命令でここに来たの?」

 不思議そうに首を傾げてチルスクから皮袋を受け取ると、子供はちょこんとチルスクの向かいにしゃがみ込んだ。もはや完全に、話を聞く体勢になっている。チルスクはそこで初めて、微かに苦笑した。

「長い話だ。昔話でもある」
「構わないよ! だって、花郎って初めて聞いたんだもん。すっごく気になる!」

 どうやら旺盛過ぎるくらいの好奇心の持ち主らしく、一向に引く様子はない。それどころかどんどん前に身を乗り出してくるものだから、とうとう断りきれずに、チルスクはその重い口を開いた。
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  1. 2010.09.30(木) _22:09:22
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
  3.  コメント:2
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comment

出ましたチルスク郎!

  1. 2010/09/30(木) 22:50:25 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
そうそう、最初にトンマンに新羅の事を話したのはチルスク郎でしたね。

捜し求めていた子供がトンマンと判るまで(判ってからも、解放されるまで知らん顔してましたが)、結構二人がいいコンビだったような……

トンマンを頼って、商人を紹介してもらおうと付いて回ってたチルスクが……妙にツボでした(笑)


それにしても、ピダムとトンマンが兄妹で……チルスク郎登場で……今後の展開がワクワクです!



すーさん様へ

  1. 2010/10/01(金) 19:22:06 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
チルスクとトンマン、意外といいコンビですよね!
特に砂漠での最高潮に饒舌なチルスクは、きっとトンマンのテンションにビックリしつつも、テンション高いトンマンを可愛く思ったんだろうな…と推測しながら書きました。

実はチルスクとピダムってドラマでは私的に会話をしたことがないので、私自身、どんな感じになるやらさっぱりです。

リレー小説なので次がどうなるかわかりませんが、saki様が書くチルスクはまだ見たことがないので一読者として楽しみにしています…って、次回もチルスクが出るかどうかはわからないんでした!
リレーはこの予測不可能なドキドキ感が徐々に癖になりますね!(笑)


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