善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説第9弾!!(パンパカパーン)(!?)
今回はsaki様のターンです。

さてさて今回もしつこくリレー小説参加者を募集します(笑) 興味をお持ちの方は、ぜひご一報を! スローペースの連載なので、「そんなに時間はない」と言う方でも大丈夫ですよーv

諸々のお返事は後ほどさせて頂きます。拍手ありがとうございますv


* * *


(不思議な子どもだ。)

砂漠で出会った子どもに対してチルスクがもった最初の感想がそれだった。
吹き荒れる砂塵に前を見ることも難しかったチルスクとは違いすっぽりと被った防塵の外套が子どもながらも砂漠に生きる人間だと言っていた。
それだけでなく子どもは神殿の神官のように星を読み自身がいる場所を知る術を持ち、人を和まし心を救いあげ、またその心を得る術を持った子どもだった。
はたしてそれは天性のものか学んで得たものだろうか。天性のものであるならば空恐ろしくもあり、学んで得たものであるならば何故の理由あってかと疑問を持つ。
チルスクは自身の数歩前を歩く子どもの背に先ほど前の出来事を思い出し知らず苦笑した。

―――らしくないことを口にした、と。

それは彼が花郎であったこと。宮主に仕えたこと。終に果たすこと叶わなかった下命のこと。
全てとは言わないがそれでも鶏林を出てから口に出したことなどなかったそれらをあの子どもに告げていた。
全てが全て子どもの調子に巻き込まれただけとも云えないとチルスクは思う。自身が過去を思い切りたいと僅かばかりでも考えていたのは確かなのだから。
そして、ただ思いきるには15年という月日はまだ短く、けれどかつてと同じ想いを等しく抱き続けるには長すぎた時間だったのだとチルスクは自身の思考を片づける。どちらにしても自身の過去を第三者に話せたことで少しばかり身が軽くなったようにも感じられた。
さて、それでは果てなど無いように思えるこの砂漠でそんな子どもに出会えたことを己は感謝すべきだろうかと思い、しかしチルスクは自身の考えにやはり『らしくない』と苦く笑った。
それでもチルスクはこの子どもに導べの星を見た気がして砂塵から守るために細めた眼で子どもの背をじっと見やっていた。それは闇の中、旅人を導く北極星のようでもあった。

+++++

チルスクの話は異国を直接には知らないトンマンにとってカターンに貰った本と同じくらいどきどきと胸をときめかせるものだった。
話に出てきた花郎というものを正確に推し量ることは出来なかったがおそらく物語に出てくるいわゆる騎士のようなものであることだけはトンマンにも理解できた。
それが美しい宮主(たぶん。チルスクは主の容姿については何も言わなかった。)の命を受け、遠く国を離れてまでの冒険譚だ。
追われた女官を連れ戻すためというからにはきっととても重要な何かをその女官は知っていたか持っていたに違いない。(それこそ国を揺るがすような何か、だ。)トンマンはチルスクから聞かされた話をおおよそそのように捉えていた。
事実、今目の前にいるこの男が辿ってきた道なのではあるがトンマンにとってみればそれは本の中の物語の世界そのままだった。
今はローマを目指しているという男にトンマンは好奇心から輝く瞳そのままに女官は今ローマにいるのかと尋ねた。だが、トンマンの期待は緩く振られた男の首に否定された。

「・・・いや。見失った後、杭州行きの船に乗っていたという話を聞き隋にも渡ったが、2年ほど探しても見つからなかった。―――それからは生きるために様々なことをした。いま、ここでこうしているよりも、あの時潔く主の下に戻り報告すべきだったと後悔しているな。」
「そうなんだ。あれ?じゃあ、おじさん。何でローマに行きたいの?」
「それでも生きるため、か。ローマに渡れればまた違う生き方も出来よう。」

それまで物語り然としたものだった男の話がその一言で現実のものであったことをトンマンに知らしめた。笠に隠れているとはいえ男の風貌は決して若くもなかったことにトンマンはこの時初めて気がついた。ここまで一人砂漠を渡ってきた疲れもあるのだろうがそれだけではない何か凝った感情が男をより一層年かさに見せていた。

(15年。15年か。この人はその命令の為にずっと一人だったんだ。・・・・・・花郎って凄いな。それともおじさんにここまでさせたその宮主って人が凄いのかな。)

本の中の偉人達に想いを馳せるときのようにトンマンは頭上を振り仰いで、次の瞬間、勢いよく固まった。
太陽が西の空に傾き始めていた。
兄との約束は日暮れまでだ。トンマンは今いる位置からオアシスまでの距離と時間をざっと頭の中で計算する。

(・・・今から急げば日暮れまでにはぎりぎり間に合う、か?)

希望的観測。現実問題とうに日暮れになど間に合わないことなど明白だった。トンマンは力なくこうべを垂れる。
兄が騒ぐ姿が脳裏をよぎり一瞬遠い目をした(兄の過保護は嬉しいがそれとこれとは別らしい。)トンマンは急に黙り込んだ自分を訝しげに見るチルスクの視線に彼の存在を思い出した。

「おじさん、それなら運がいいよ!ここであたしに会えたんだからさ!!」

中々に恥ずかしい心情を悟らせない為に咄嗟に口をついて出たのは本来の目的である客引きの為の言葉だ。
客を連れて行けば多少の言い訳にはなる。そうも思ったかどうかは別としてトンマンは常よりも輝く笑顔をチルスクに向けた。

「・・・運が良いかどうかは別としてだ。そういえばこんな砂漠の只中でお前みたいな子どもが何をしている?」
「只中でもないよ。もう少し歩けば町がある。交易路にある町だから結構賑わってるしおじさんが行きたがってるローマの商人だっている。」

チルスクは成程と頷き客引きかと呟いた。トンマンはにひひとローマまでの道連れも紹介できるよと笑った。

+++

オアシスは交易で栄えているだけあって実に多種多様な人間たちで溢れている。
例えばカターンのように茶葉を求めるローマ人。繊細で光沢のある絹を見定めるインド人。珍しい宝石や煌びやかやな装飾を探すトルコの商人といった具合に。
けれどチルスクのように鶏林から来た者に会ったことは片手で足りるくらいだった。トンマンはチルスクに気付かれぬように少しばかり後ろを歩くその姿を窺う。
父と同じ鶏林の人間。それだけでも興味を持つには十分だったがトンマンはチルスクが語る以外に彼の国について聞かなかった。
それはトンマンがチルスクにオアシスの人間やカターンたちが持たない影を僅かばかり感じとったことと、少しばかり粗忽なところもあるがいつも優しく朗らかな母が昔語りを避けていることを知っていたからだ。よほど自分や兄に聞かせたくないことがあったのだろうかとトンマンは思う。
自分よりも年かさである兄ならば父のことも鶏林のことも何かしら覚えているのかもしれなかったがやはりソファの手前それを聞くことも憚られていた。
特に話しかけられることもなく、またトンマンも出来るだけ急いでいたので自然2人は黙々とただ足を進める。
やがてトンマンは視線の先、どこまでも続く砂漠の一点にごく小さなそれでいて不自然だと感じる窪地を見つけ足を止めた。さっと片腕を上げ後ろのチルスクにも注意をうながす。どうしたという彼の言葉にトンマンは短く流砂だと告げる。

「流砂?」
「うん。砂漠では時々あるんだ。何も無いところに穴が開いて砂が流れる。落ちたらまず助からない。」

トンマンの言葉を証明するように小さかった窪地がどんどんその大きさを変えていく。さらさらと流れ落ちる砂の勢いも増しだんだんと2人が立つ近くまで穴は広がる。トンマンは数歩後ろに下がりじっと砂の行く先を見つめていた。

「おじさん。見たことなかった?」
「いや、何度かある。一度は足を取られ危うく中心にまで落ちそうになった。」
「え?よく無事だったね、おじさん。」
「あぁ、代わりに杖代わりにしていた木切れをひとつ失ったがな。」
「・・・・・・。」
「どうした?」

呆れたような感心するような表情でチルスクを振り仰いだトンマンはそのままツーっと視線を外すと小声で、兄さんみたいな(無茶な)事する人が他にもいたなんて思わなかったと呟いた。

「・・・兄がいるのか?」

けれどしっかりとその呟きは聞こえていたようだ。
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  1. 2010.10.23(土) _19:23:26
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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