善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 晦の夜・上

CSI10が始まりました~!
一時はぐちゃぐちゃに絡まったチーム内の恋愛関係と作風の変化についていけずに離れましたが、ラングストン教授の登場した辺りからは楽しく見ておりますv
やっぱりCSIはラスベガスが好きです! サラちゃんが才女に戻ってカムバックしてくれたことも嬉しいですね~(*´∇`*)

さてさて、半年振りにソッちゃんフィーバー再来!ってなわけで、ソクプムSS『朔の夜』の続編、ソッちゃん視点SS『晦(みそか)の夜』です。
本当は一つの記事にしたかったのですが、収まらず…(汗) 0時に後編を更新します。
ちなみにR15です。ご注意ください!


* *


 初めて人を斬った時、私の胸裏に満ちたのは安堵だった。
 与えられた任務を果たせた。きっとこれからも、任務を果たすことが出来る。任務を果たせるなら、いずれ上に行ける――。
 璽主を裏切った貴族をポジョン郎に従い暗殺した夜、私は血の滴る刃を見て、心の底から安堵していた。





 裕福な家に育った他の花郎とは違って、私は貴族とは到底言えないような小役人の父を持つ、貧しい家で育った。貧乏子沢山とは良く言ったもので、年々増えていく弟や妹を尻目に、家計はどんどん見るに堪えない有り様になった。
 そんな暮らしに憤懣やる方なかった私は、十五になるや徐羅伐に出て、日月星徒の郎徒となった。日月星徒を率いるポジョンは叩き上げの将軍ソルォンを父に持つだけあって、年下ではあっても敬愛するに足る才覚と品位を備えていた。
 私は努力した。家柄に胡座を掻く連中に侮られぬよう努力し、花郎になった。徐羅伐十花郎に選ばれた時の満たされた気持ちは、生涯忘れないだろう。
 だが全ては、チョンミョン公主に双子の妹がいるとわかった時から変わっていった。……その双子の妹が、常々その脆弱さに見合わぬ努力を続ける、美貌と勝ち気だけが取り柄の郎徒トンマンだとわかった時から。



 ――風月主比才で、ポジョン郎が勝利する。
 それは、私にとって当たり前のことだった。それ以外、考えられなかった。例えユシンが公主に引き立てられようと、一時ポジョンを負かそうと、花郎としての才覚はポジョンの方が圧倒的に勝る。比才での戦い振りも、ポジョンはユシンより明らかに優れていた。
 ……ところが、ポジョンは負けた。それも、ユシンにではなく、どこの馬の骨とも知れぬピダムに負けた。
 それは同時に、私の野心が敗れたことも意味した。ポジョンを見込み、彼に、ミシルに仕える私の「いずれは出世出来るだろう」と言う確信が、その敗北によって打ち砕かれた。
 鉄が錆びるように、身体の深奥から不安が押し寄せた。何一つ確かなものがない世の中で、信じるに足ると……忠誠を与えるに足ると信じたものが、少しずつ綻び、崩れていく。
 どうしようもなく息苦しくなって、足掻かずにはいられないと言うのに、私は更なる深みに嵌ることがわかっていながら主を変えなかった。いや、変えられなかった。これまで成し遂げてきたことを全て打ち壊すような真似だけは、出来なかった。恩があると言うことは、それだけ私も尽くしてきたと言うことなのだから。



 ユシンが風月主に決まって間もなく、傷の癒えた私を自宅に誘う郎徒がいた。
 臆病で武芸の腕はからっきしだが、笛の腕前だけは他の花郎徒の誰をも唸らせる郎徒だった。どうと言うこともない男だったが、ミセン公がその男の音色を気に入っていることもあり、傍に置いていた。

「ソクプム郎の快気祝いに、是非」

 美味い酒があるとそいつが口にすると、サンタクや他の郎徒達が早速騒ぎ出した。
 何せ、サンタクのような独り者は宿舎に入り、妻子のある者とは違って家を持てない。持っても、家を守る者がいない。遊ぶ金もなく、楽しみは遊花と戯れることくらいだ。尤も、その遊花とて、花郎には媚びても、郎徒にはつれない。

「……では、一晩世話になるか」

 ちょうど切羽詰まった任務もなく、比才以来すっかりその遊花や妓女との遊興からも離れていた私は、郎徒達の期待に応える為にも、素直にその郎徒の申し出に従った。

 夕刻になり訪れた家は、華美ではなかったが、金のある商家の者らしく、間取りには余裕がある。よく手入れされているのか、埃っぽさは少しもなかった。下女もろくにいないようなのに大したものだと感心していると、郎徒が妻を連れてきた。自慢の妻らしく、どうやら見せたかったのは酒ではなくこの女かと見当がついた。
 しかし、自慢の割には、愛想のない女だった。夫には柔らかい微笑を向けるくせに、急な客人にはほとんど上っ面だけの微笑しか見せない。杯を出せば酌はするが、それだけだった。さして美味くもない酒を美味いと言ってやった時、僅かに安堵したように顔色を明るくしたが、可愛いげはない。
 やがて、その女の固い顔と、そつなく客人を捌くしゃんと背筋の伸びた姿を見ている内に、沸々と欲望が芽生え始めた。どこかお高くとまったその女が顔を歪めて泣く様が、ふと見たくなった。遊花や妓女が花郎には媚を売るように、この女も大切な夫の上役の前では化けるのか、試してやりたくなった。

 おかしなことに、私がその女に向ける眼差しが変わったことに気付いたのは、私を誘った郎徒――その女の、夫だけだった。
 さして度胸のないそいつは、見るも無惨なほどに狼狽していた。酒を供するはずが、まさか妻を供することになるとは考えていなかったらしい。……いや、考えていたからこそ、狼狽したのだろうか?
 厠に立った私を待ち構えていたかのように歩み寄るそいつの顔は恐怖と興奮が入り混じっていて、その混乱が手に取るように良くわかった。けれども私は、半ば酔った風情を崩さぬまま、簡潔に告げた。どうとでも、取れる言葉を。

「どうやら酔ったようだ。横になりたい」

 そいつはその言葉に縮み上がると、自分の寝間を私に案内した。しかもご丁寧なことに、隣が妻の部屋だと笑顔で付け足した。自分は郎徒達と居間で休む、と震える声で告げながら。
 愚かな男だ。
 とぼければそれで済むことを、そいつは自ら厄災を呼び込むような真似をした。

 その夫とは異なり、女は私が何か言わない限り、木石のように何もしようとしなかった。私を満足させさえすれば早く終わるのに、唇を一文字に引き結んだまま、義務のように単調に、ぎこちなく腰を振った。世馴れた女達の嬌態に慣れている身からすれば、あまりの拙さに眠気が顔を出すほどつまらない情事だった。
 女が変わったのは、寝惚けた郎徒の一人が間違えて私達のいる部屋の戸を開けようとしてからだった。鍵をかけていた為に戸が開くことはなかったが、誰に気付かれるかわからないその緊張が女の興奮を呼び、一気に具合が良くなった。
 少し突き上げてやると、忽ち唇を引き結んだままの女から鼻にかかった吐息が漏れた。そうなれば、あとは容易い。

「……もっと動け。少しは私を楽しませてみろ」

 外に声が漏れぬよう低く命じれば、女も私に合わせて滑らかに動いた。決して声は出さなかったが、佳く反応した。女の身体は、男を、快楽を知っている身体だった。それもたった一人の男しか……夫しか知らない身体らしく、見知らぬ刺激に戸惑いと期待が垣間見える。
 そして、その瞬間、初めて女を抱いてからこれまで、ずっと惰性と本能で繰り返していた情事と言うものに対して、ふと興を覚えた。
 さらにその興は、そのまま夜を明かして、僅かに明るくなった部屋で女と向き合った時、好意と呼べなくもない何かに変わった。

「こう言う時、お前のような手弱女はさめざめと泣くものだ」

 涙の一粒も見せずに淡々と私の身支度を手伝う女にかけた言葉には、感嘆が混じった。女と言う生き物に対して抱いていた思いを変える何かが、その女にはあった。男の力に屈しても、泣き喚くでもなく、憤るでもないその姿に、私は枝葉を落とされても枯れることのない大樹を思い出した。……大樹のような女と接することで得られる安堵を感じた。

「……お気に召さなかったのなら……申し訳ありません」

 女は私の言いたいことをちっともわかっていないようだったが、それで良いと思った。私の中に満ちた安堵は、女からの好意を要求する感情ではなかった。

「いや……悪くない」

 ただ、不思議と本音が漏れ出た。
 そう、悪くない。悪くなかった。……最悪のことばかりが起き続ける中で、珍しく悪くない一夜を送れた。それが、その時の私には貴重に思えた。
 それでも、だからと言ってその女を囲いたいなどとは少しも思わなかった。女は他にいくらでもいたし、それ以前に考えねばならないこともせねばならないことも多く、以前のように女と戯れていられる時間は日増しに減っていた。
 そんな中、女の夫がしきりに私を誘っているのは、むしろ目障りだった。
 それでも時折その誘いに乗ったのは、私の顔を見る度に表情を強張らせる女が好ましい為だった。土臭いまま、此方に靡かない女と接していると、不思議と緊張が緩んだ。



 そんな状態が半年ほど続いた。
 その頃、穀物価格の高騰で町は混乱していた。混乱させたのは、貴族――つまり、私もその一員に含まれる。徐羅伐に来る前とは、立場が逆転したのだ。

「……狂っているわ」

 餓えた子を抱えた親が穀物屋の主を殺すと言う事件が起きたその夜、いつも唇を閉ざしたまま、ただ身体を差し出すだけだった女は、初めてまともな口を利いた。
 ――狂っている?
 滑稽だった。私から言わせれば、餓えて穀物屋を襲って捕縛されるのは、狂気でも何でもない。ただ愚かなだけだ。生き延びたいなら、己を捨てて、何にでも這いつくばれば良かったのだ。己を捨てて……狂ってしまえば良かったのだ。

「この世のものは、皆どうせ狂っている」

 ――そう。生き延びようとする限りは、己を捨てて狂っていなければならない。よく踊る者だけが生き残ることが出来るのだから。
 私の言葉に首を横に振った女の背を見下ろして、私は嘲笑った。傷一つない滑らかな背に歯を立て、初めて睦言を囁いた。

「狂っているから、生きていられる」

 この女は、生き残ることを選んでいる。声を殺して喘ぎながら、狂ったように敷布に縋りついて、それでも生き残ることを選んでいる。

「……お前は愚かではない」

 これ以上望むべくもない形で踊る女に、その夜、私は溺れた。そうしている瞬間だけは、朽ちかけた船に乗っているのかもしれないと言う不安を……徐々に愚かになりつつある自分を、忘れることが出来た。




*++*++*++*

続きます。

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  1. 2011.04.25(月) _19:33:18
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:2
  4. [ edit ]

<<SS 晦の夜・下 | BLOG TOP | リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki>>

comment

私にもあるんだぜ!(需要が)という訳で・・・

  1. 2011/04/26(火) 23:11:09 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
参上いたしました。緋翠さん今晩はー。

「朔の夜」と対をなして、最初と最後が同じ文章なんですね。この場合初めて他人を殺し、最後は己という最後の人殺しで、一つの輪が閉じられたかのような。

で、初めての戦場で人を斬って、ソッちゃん怖れを感じるでなく、かといって何も感じないでもなく、安堵。なんですね。「生き延びようとする限りは、己を捨てて狂っていなければならない。」て後の文章に出てきますけど、初めて人を殺して安堵を感じたその日から、ソッちゃんある意味狂ってるのかなと。そして自分に目隠しし、狂い続ける事で徐羅伐での日々を送ってこられたんでしょうか。ミシルの末端となれば相当汚れ仕事に手を染めたんでしょうし。

んで、SSではドラマでの事件を交えながら、時系列がはっきりしているので、ソッちゃんあの時こういう気持ちだったんかのー、というのが追えるのも嬉しいです。終わりというか破滅が見えていながらも立ち場を変えられない、足元の土台がゆっくり砂と化していくような恐怖を感じている頃、件の女に出逢った訳ですね~。

なので変遷のただ中にあって、たとえ言いなりになろうとも動かない芯を持つものとして、部下の妻に惹かれるものがあったんだな、と改めて感じました。あがきたくても足掻けない、自分にあがくことを許してないからこそ、女にすがったのかなーと。すがったようにはも見えませんがvでも己の内にある脆さを紛らわしたのとは違うし、癒された(笑)てのとも違うし、やっぱりすがった、という単語しか出てきません。

〉〉「こう言う時、お前のような手弱女はさめざめと泣くものだ」

これ、「朔の夜」の時は揶揄かと感じたんですが、賛辞だったんですねー。いつも淡々と着替えを手伝いながら、女はソッちゃんの背中に殺意を覚えていたかもしれないし、ソッちゃんもそれに気づいていたかもしれない。まあ一般人の婦人に遅れはとらんでしょうが、その緊張感をも楽しんでいたかもしれませんねー。

りば様へ

  1. 2011/04/27(水) 18:56:11 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
やはしソッちゃんと言えばりばさん!ですね~!!
がっつりコメントを頂けてめっちゃ嬉しいですvvりばさんこんばんはー。

そーですねー、タイトル、構成含め、「朔の夜」とワンセット、裏表になるよう注意して書きました。途中途中で同じ文章を使ったり…。
また、今回のSSでの秘かなテーマは、『花郎と郎徒』だったので、そこら辺も気を付けました。
裏テーマが「郎徒と言うものは、愚かであればあるほど、花郎の意を汲み、花郎に似る。」だったので、サンタクと夫の二人もソッちゃんの分身として意識して書きました。ソッちゃんは初めて他人を殺し、最後は己という最後の人殺しで一つの輪を閉じましたが、サンタクと夫もまた、人一人の生死がその死に大きく関わりますし。

「安堵」をキーワードにしたのは、剣を抜いてる時のソッちゃんを見ていて、ソッちゃんって実は相当無理して戦ってるんじゃないかなぁ…と思ったからだったりします。例えばポジョンなんかは、さすがミシルの息子だけあって、虐げられていることに不満はあっても、人の血を見て楽しむ一面もある気がするんですよ。
権力者独特の歪んだ愉悦を楽しむ一面、と言うか、下から這い上がってきた人間がぶつかる一番大きな壁が、その「傲慢」で、トンマンはそれを叩き壊そうとしたけど、ソッちゃんは無理矢理それに馴染んだ……それが「狂う」ってことなのかな、と。「狂う」ことで自分を正当化すれば、どんな汚れ仕事でも出来るんじゃないかなーと想像しました。

> 終わりというか破滅が見えていながらも立ち場を変えられない、足元の土台がゆっくり砂と化していくような恐怖を感じている頃、件の女に出逢った訳ですね~。

↑この通りですね~!
私の中でソッちゃんは「苦労してきた常識人」と言う設定なので、本来なら部下の妻を襲うなんてマイナスなことは、絶対にしないと思うんですよ。でも敢えてしたのは、その時のソッちゃんにはそれが必要だったからでもあり、本気で惚れたからでもあるのかなーと。
変な話ですが、ソッちゃんが初めて女に「母性」を求めた瞬間、てのを意識しましたw ソッちゃんが妊娠に納得するのも、こう、「生まれ変わりたい」って言う願望を女が叶えてくれた、と感じたから…なのかもしれません(←どっちだ)

〉〉「こう言う時、お前のような手弱女はさめざめと泣くものだ」

普通は揶揄ですよねー(笑) ミスリード(?)を狙って書いたと言うか、短刀にしても、ソッちゃんは女をよく見ているけど、女はいつもソッちゃんから目を逸らしている感じを表現したくてですね…!
基本的に、女はソッちゃんに「いなくなって欲しい」けど、本気で「殺したい」とは思わなかったんじゃないかなと。そこまで真正面から向き合ってもいなかったし、そもそも彼女は剣なんて握ったことのない一般人ですし…。だから、土壇場で夫を殺してから初めてソッちゃんと同じ土俵に立ってソッちゃんと向き合い、彼の為に泣けるようになった気がしています。
なんとなくですがw


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