善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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『第一美花郎比才』第壱話 公主の妙案

すーさん様のブログでも連載中の、「チャットで盛り上がった『花郎イケメン選手権』ネタ」です。時期は、ユシンが風月主に、ピダムが花郎になった後です……ので、チュンチュもいます。テナムボはまだ行方不明ではありませんw

あ、実はですね、せっかくなので、このSSを二十万打記念にしようかと思いますー!
と言う訳で、書ける範囲でキャスト総出演で頑張ります(笑) ラストは……トン&ピになるかあるいはどっちつかずになるか、まだわかりません。(でもきっとトン&ピになる予感)


* *


 悩める公主トンマンは、その夜もこめかみを押さえて唸っていた。

「足りない……これでは、明らかに足りない……」

 彼女の前にある卓には、調府から借りてきた今年の収穫予想やそれに合わせて作成された徴税予測、予算書、昨年の納税状況などの資料が積まれている。……そして、それらの資料全てに目を通した結果、トンマンは確信した。

「…………お金が足りない」

 相次ぐ災害対策に惜しみなく金銀を注ぎ込んだ結果、瞻星台の建設費用が足りなくなってしまった――。
 情けない話だったが、商人出身のトンマンともあろう者が、苦しむ民の前ではただ無計画に財物をばらまく公主となってしまったのだ。加えて、政治に飛び込んで間もない頃に始めたこの瞻星台建設が中断されることは、トンマンの政治生命にとって大きな痛手となる。瞻星台建設は彼女の信念を象徴するものでもあるからだ。

(何としてでも費用を捻出しなければ……)

 しかし、民からこれ以上の税を徴収するなど以ての外だった。財物を出させるなら、金の余っている貴族達を狙わなければならない。

(だが、和白会議にかけたところで、瞻星台建設を白紙撤回しろと迫られるのが関の山だ……)

 正攻法では貴族から金を巻き上げることは出来ないのだ。……ならば、どうすれば良いのだろう? 何か……何か、奥の手を考えなければならない。大儀に反することなく、こちらの利にも適う手立てを。

「――公主様」

 トンマンが深い溜め息を吐いたその時、ソファが静かに部屋に入った。

「はい」
「あのう、アルチョン郎とピダム郎がおいでになっておられます。公主様はまだお休みになっておられぬのかと……」

 ユシンが婚姻して二月が経った今、風月主になり雑務の増えたユシンに代わり、アルチョンとピダムは交互にトンマンの夜の警護を務めるようになっている。それが、どう言うわけだか今夜は二人で一緒にいるらしい。
 ――どうやらあの二人も、少しは親しくなったらしい。
 公主と認められる前の、まだ洞窟で作戦を立てていた頃のことを思い出してふっと笑うと、トンマンはソファにも微笑みかけた。

「……二人を中に入れて下さい。ちょうど相談したいことがあるんです」
「はい、公主様」

 気遣わしげだったソファもトンマンの寛いだ顔を見て愁眉を開くと、早速二人を呼びに行った。トンマンから顔を背けた瞬間、本当に一瞬だけ、アルチョン郎だけなら良いのに、と密かに嘆息して。



「公主様! どうしたんですか? こんな遅くまで」
「公主様、もうお休み下さい。お身体に障ります」

 開口一番全く異なる言葉を口にする二人を見てまた小さく笑うと、トンマンは二人を座らせた。座る時も、ピダムはもぞもぞと、アルチョンはさっと座る辺りがなんとも対照的で可笑しさもあり、悩みもどこかに吹き飛んでしまいそうだ。
 しかし、現実はと言えば、何も解決していない。この先いくらでも同じことはあるだろうに、初手から躓くわけにはいかないのだ。

「実は、二人に相談したいことがあるのです」
「何ですか」
「それが……」
「はっ」
「…………」
「……公主様?」

 ところが、待てども待てどもトンマンは何も言おうとしない。その代わりに「あっ」と小さく叫ぶと、奇策を思いついた時に見せる自信たっぷりの微笑を白面に湛えた。

「……すみません、アルチョン郎、ピダム。やはりこれは、明日、風月主も交えて話すべきでした。二人とも、今日は休んで下さい。私ももう休みます」
「え……」
「はっ」

 言うなりすっくと立ち上がるトンマンに倣って、アルチョンも席を立った。しかしピダムだけは、なかなか腰を上げずにいた。
 ――結局、婚姻しても、ユシンなのか。ユシンがいなければ、駄目なのか。
 知っている。トンマンが、もうこの男は駄目だからとすぐさま次の恋に走るような女ではないことは。……けれども、やはりユシンにばかり頼るトンマンを見ているのは、気分の良いものではない。
 少しは、私を頼りにしてくれればいいのに――。声に出せない不満から唇を尖らせて、ピダムは落ち込んだ。

「ピダム? どうかしたか?」
「いえ、公主様。……お悩みが解決したのなら、何よりです」
「うん。ありがとう、ピダム」
「……はい」

 嬉しそうに微笑むトンマンの瞳がきらきらと煌めくと同時に、ピダムの双眸は暗く澱んでいった。


* *


「比才を執り行います」

 翌朝、改めて集まったユシン、アルチョン、ピダムを前にして、トンマンは涼やかに宣言した。

「比才……ですか」
「はい、ユシン郎。風流黄巻に名を連ねている花郎を集めて、各々の容姿の美しさを競う比才を行うのです。花のような男だと謳われる花郎の中でも最も美しい者を選ぶ比才……第一美花郎比才です」

 武術比才や風月主比才と同じようなものだと言わんばかりにさらりと言い切る姿に、迷いは見られない。

「……でも公主様、男が美しさなんて競って、何が楽しいんですか?」

 そんなトンマンを前にして、その斬新な試みに対し逸早く疑問を呈したのは、特に比才に対する思い入れのないピダムだった。……ちなみに、比才に大いに思い入れがあるユシンとアルチョンは、あまりに突拍子もない発案に硬直している。

「女達が喜ぶ。貴族の娘達が花郎を見る目を知っているだろう? 憧れとときめきに満ち満ちている。それに、花郎になるのは名家の子息達だ。独身の者も多いし、結婚相手として望むべくもないだろう」
「……公主様もそうなんですか?」
「私か? そうだな、私は主催者だ。勿論、花郎達が本気で美を競えば、これほど喜ばしいことはない」
「公主様、いけません」

 そこで、どうやら本気で花郎に美しさのみを競わせるつもりらしいと悟ったユシンが、トンマンの提案を鋭く切り捨てた。

「花郎とは本来、神国を護る戦士なのです。故にたゆまぬ努力を重ねて日々精進し、折に触れ武術比才を行うことによって互いを刺激し合い、腕を磨きます。美を競うなど、堕落の元です。お考えを改めて下さい」
「……アルチョン郎はどう思いますか?」
「風月主の仰ることに一理あるとは思いますが……まず、公主様は何故そのようなことをお考えになったのですか?」

 アルチョンの知る限り、トンマンが突拍子もないことを言い出す時は必ず何かしら理由があった。今回も、ただの思いつきだとは思えない。
 どうやら、ユシンのあまりに鋭い諫言によって、アルチョンは少しトンマンに同情的になったらしい。そうと悟ったトンマンは思わず怜悧な微笑をその唇に刻むと、三人の男達を順番に見つめて答えた。

「来月、女の祭り……嘉俳があります。実はその折に、花郎の美貌を商品にして、真骨や貴族の女性と商売をするつもりなのです」

 ――続いて語られた内容に、男三人は仰天することとなった。



「第一美花郎比才?」

 耳慣れぬ言葉を噛みしめるように呟くと、ミシルは小さく笑って片眉を上げた。

「公主様は本当に面白い御方です。次々に新しいことを思いつかれる」
「それが私の取り柄ですから」

 それに応えるようにトンマンもにっこりと微笑むと、四つ折りにされた紙を女官に渡した。

「是非、璽主にもご協力頂きたいのです。子細はそちらに記してあります」

 女官から紙を受け取ったミシルは、さっと一通り目を通した後、書かれている項目を一つ一つ声に出して読み上げた。

「一つ、花郎はその美貌と音曲歌舞の才のみを競い、比才開催中の一切の武力闘争を禁じる。一つ、比才は演武場にて執り行い、その際演武場には骨もしくは品を持つ女人を招き、審査を託す。一つ、審査の為に演武場に入る女人は、入場料として銀一両を支払う。一つ、審査員となった女人は予選、本選のいずれにおいても、最も美しいと思われる花郎を選び、その花郎に金銀を賭ける……。……公主様、賭けるとはどう言うことですか? 賭場でも開くおつもりですか」
「いいえ、璽主。私は競売をするつもりでいます」
「競売?」
「はい。花郎の美しさに値をつけてもらうのです」

 その言葉に僅かに目を見開くと、ミシルはすぐに高らかに笑った。

「ッハハハ……。公主様、公主様はまさか、神国の誇る花郎に妓女の真似事でもさせるおつもりですか? 花郎を競り落とした女人に、その花郎と一夜を共にする権利でもお与えになりますか」
「そこを迷っているのです。是非、璽主にご意見を伺いたくて」

 対するトンマンも、全くめげる様子はない。本当に悩んでいるらしく、白皙の美貌が微かに憂いを帯びた。
 近頃のミシルは、そんなトンマンを見るのが面白くてならなかった。一つ一つの事柄に苦悩し、他の者に助言を求める様は、どこかかつての自分自身を彷彿とさせるのだ。まるで、過去の自分と相対しているかのようで、トンマンとこうして話をする度に、ミシルの中には愛惜と羨望の念が複雑に渦を描いた。

「……では公主様、このようにしてはいかがでしょう?」

 そして、その渦が形成する感情は、憎悪ではなかった。むしろ、血の繋がった者達よりも、抱いてきた男達の誰よりも大切な……敢えて言うなら、愛情と言う言葉が最も沿うであろう感情が、ミシルの心を沸き立たせ、その身を縛り付けていた。


* *


 それから数日後、徐羅伐中に花郎の主人である公主トンマンと源花ミシルの連名で『第一美花郎比才』の告知文が張り出され、その日の内に花郎達は列仙閣に集められた。

「嘉俳の日に、比才だって?」
「ああ。それも、武ではなく美を競うとは」
「歌舞音曲ならばまだわかるが、美しさとは、なんと曖昧なことを」

 単に、「集まった観客の投票によって優勝者を決定し、優勝者にはその名誉を讃え、新しい旗が贈られる」としか聞いていない花郎は、まさか自分達が競売にかけられるとは思ってもいない。狡猾な主催者二人は、彼らの士気を殺がぬ為にも表向きにはそのことは伏せ、秘かに貴族の女性達にのみ通達し、花郎達には大会直前に通達することにしたのだ。
 会議を終えて列仙閣を出た花郎達は、ポジョンを中心にしてそれぞれに嘆いている。しかし、ポジョンだけは母ミシルに言い含められていただけあって、常と変わらず冷静だった。

「競うものがなんであれ、比才は比才だ。第一、源花が旗を下さるなど、金輪際ないだろう。これは名誉ではないか」
「……」
「それは……そうだが」

 そもそも比才で優勝する気のないソクプムは黙ってポジョンを見るだけだったが、ポジョンのその言葉にパグィは動かされたようだった。そして他の花郎達も、源花だけでなく、源花と公主の連名で贈られる旗と言うのは滅多にあるまいと言う意見だけは一致している。

「璽主と、新米とは言え、我らの主である公主様のご命令だ。従うのが我々花郎の掟ではないか」

 ――結局、ソクプムのその言葉が止めとなって、花郎達の比才参加は決定した。

「――テナムボ郎」

 その時、それぞれに比才にやる気を漲らせる花郎達の中、チュンチュの世話に手一杯で比才のことにはほとんど無関心な様子だったテナムボに、ふいにポジョンが声をかけた。

「はい」
「ついて来い。母上がお前をお呼びだ」
「え?」

 チュンチュを呼びに行く前はミシルの護衛を護衛をしていたテナムボだったが、チュンチュを隋へ迎えに行って以来、その役割は、二十数年振りに帰ってきたチルスクに与えられていた。おかげで、テナムボがミシルに呼び出されるのは、久方振りのことだ。
 思わず、チュンチュのことだろうかと顔を強張らせたテナムボを安心させるかのように彼の肩を叩くと、ポジョンは母親そっくりの微笑を浮かべて囁いた。

「此度の比才、母上はお前に賭けるおつもりのようだ。公子様のお世話も結構だが、母上のご期待を裏切らぬように」
「は……はい!?」

 驚くテナムボを引き摺るようにして、ポジョンはミシル宮へと向かった。



* *

す、進まない!早くすー様のところの展開に追いつけるよう頑張ります…!
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  1. 2010.11.29(月) _21:12:15
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