善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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連載 蕾の開く頃20

隠居連載、とうとう20話を突破しましたー!いやはや、なんだか感慨深いです。BSは緊迫していますが、こちらでは幸せなトン&ピで突っ走りたいと思います!
いつもトン&ピと管理人を応援して下さる皆様、ありがとうございますーv


* *


 さて、それからさらに夜が過ぎ昼が去りまた夜が来た翌朝、半ば無理矢理目を覚ましたトンマンはピダムが彼女のお腹の辺りに埋もれて眠っているのを確認すると、そっとそのピダムの腕を引き剥がしにかかった。

(起きるな……気付くな……起きるな、ピダム……!)

 一昨日は一日中眠っている内に太陽は消え、それからは起きている間はこの腕が放してくれなくて、ほぼこの寝台の上にいたのだ。重病人でもないと言うのに。
 もうさすがに起きる、起きてあの紗を処分してやる、と決意したトンマンだったが、あと少しでピダムの腕から抜け出せる、と言うところで唐突にトンマンの腹――もとい、ピダムが喋った。

「……トンマン、まだ早いよ」
「!」

 ――ピダムの方が早く起きることは知っていたが、まさか狸寝入りをしていたとは!!
 驚いたトンマンは、あわあわと動揺した。……しかし、それ以降、全く反応がない。

「……ピダム?」

 訝しく思って長い前髪を上げてみれば、なんとピダムはまだ寝ていた。かーかーと、暢気な寝息を立てながら。それに、なんだ寝言か、と安心すると同時に、もし本当に起きたら今度こそ雷を落としてでもこの可愛い甘ったれをひっぺがさなければならない、と決意を固めたトンマンは、するりと寝台から降りると、真っ先に箪笥に向かい、寝衣から普通の衣に着替えた。
 着ている物が変わると気分も変わるのか、しゃきしゃきとトンマンは厠に行って、顔を洗って髪を結い直した。……ちなみに、あちこち身体が痛むことは、出来るだけ考えないようにした。
 そうして例の紗を見つけて拾いあげた時、その横に落ちていた荷を見て、おや、とトンマンは首を傾げた。確かその荷は、あのとんでもない夜にピダムが持って帰ってきたものだったはず。

(そう言えば……これのことはすっかり忘れていた)

 ピダムの物は私の物、と考えているかどうかは定かではなかったが、トンマンは卓の上に荷を置き、さっさと包みを開け始めた。今までここに放っておかれたと言うことは、どうせピダムはこの荷のことは忘れていると言うことだろう。

「……派手な衣裳だな」

 そうして現れた紅白の男物の衣を見て、トンマンはまたしても首を傾げざるを得なかった。これまで長年ピダムと行動を共にしてきた結果、ピダムが地味な服装を好むことを知っているトンマンとしては、この華美な衣裳はピダムらしくないような気がしたのだ。
 あるいは、誰かから貰い受けたのかもしれない。そうだとすれば――。

「……チュンチュの土産か?」

 思わず、ただ一人思い当たる甥の名を呟いた時だった。

「……チュンチュが何?」
「うわっ!」

 トンマンの背後に、亡霊ならぬ、袴を穿き、黒衣を肩に引っ掛けただけのピダムが立っていた。

「お、起きたのか、ピダム」
「うん。おはよう、トンマン……」

 まだ色惚け状態にあるのかあるいは単に寝惚けているのか、背後からのし掛かるようにトンマンを抱きしめたピダムはそのまま彼女を反転させると、飽きもせずに良くもまあ、と言いたくなるほど何十回とした口づけをまた繰り返した。
 ピダムに抱きしめられて彼の胸に手を当てていたトンマンは当初の決意はどこへやら、重ねられた唇の感触と、悪戯をするように動く舌にうっとりとしていたが、やがてピダムが頬から首筋へと唇を滑らせていくとさすがに我に返った。

「ピダム、今日は駄目だ!」

 思いがけないところではね除けられたピダムは、くうん、と鳴いて尻尾を垂れさせた。……ようにトンマンには見えたが、甘やかしては後々トンマンが苦労することになる。心を鬼にして、トンマンは黒衣の間から彼女を堕落へと誘うピダムの裸の胸を見ないようにした。ちょっと寝癖のついた長い髪に隠れた美貌も見ないようにした。ついでに、哀しげに呟かれた「トンマン……」と言う魔法の言葉も聞かないことにした。
 兎にも角にも雰囲気を変えようと背後に手を伸ばすと、トンマンはやたらと派手な紅白の衣をピダムの胸に押しつけた。

「ところでピダム、これはどうしたんだ? チュンチュからもらったのか?」
「そうですが……それより、今日はしないんですか? 月の障りですか」
「ち、違うけど……それより、どうしてチュンチュはこんな派手な衣をお前に?」
「婚礼衣裳だそうです。月の障りじゃないなら、しましょう。それとも……お身体の具合でも? 宮医は今日は来るはずですが、呼んできましょうか?」
「いや、いい。どこも悪くは…………ちょっと待て。今、何て言った? 婚礼衣裳?」
「はい。要らないと言ったのですが、持っていけと押しつけられました」
「あ……」

 そこでようやく思い至ることがあったトンマンは、先程箪笥に仕舞い込んだ紅い裳と、さらにその奥に隠れている紅白の繻を引っ張り出した。紅白の繻も、紅い裳と同じく、派手だからと敬遠していたものだ。
 さらに、それらをピダムの持たされた紅白の衣と並べると、トンマンはあっと息を飲んだ。

「陛下?」
「……そうだったのか」
「え?」

 何故チュンチュがわざわざやって来て、化粧をしたのか。犬猿の仲であったピダムに衣を贈ったのか。
 ――ただ叔母に会いに来たのかと考えていたが、違った。

「婚儀をしろと……言いに来たんだな」
「……え?」
「ピダム……チュンチュは、また一つ大きくなったみたいだ」

 トンマンとピダムの命を助けたとは言っても、チュンチュはあくまでトンマンを生かす為にピダムも生かしている、と言う姿勢を崩さなかった。トンマンがピダムと二人で暮らす為に復耶会の砦を出ることを決めた時も、ユシンやアルチョンのように言祝いではくれなかった。ただ、「宜しいのですか」と一言だけ口にして、その問い掛けに頷いたトンマンの頼みを聞き入れてくれただけだった。その、チュンチュが。

「トンマン!」

 その時、トンマンの瞳からぽたぽたと涙が溢れた為に、ピダムは仰天してトンマンの頬を両手で包み込んだ。流れる涙を指先で拭いながら、なんとか泣き止ませようと必死になっている。

「どうしたんですか? あのクソガキがあなたを悲しませるようなことを言ったんですか」
「違う。そうじゃなくて……」

 婚儀が出来る……そのことがまるで夢みたいで涙が止まらないのだと、トンマンは切れ切れに呟いた。
 国婚をすると宣言した時もささやかな式をしたいと考えてはいたものの、ユシンを始めとするごく僅かな者しか心の底から国婚を祝福してくれなかった。その上すぐに情勢は急変し、結局トンマンは国婚どころではなくなった。事態を収拾してピダムを生き残らせるのに必死で、その後は病と……折れそうな心と闘うので、精一杯だった。
 そしてそれは、この家に来てからも変わらなかった。ただいつまで続くかわからない幸せを胸一杯に吸い込むだけで、とても婚儀までは頭が回らなかった。

「婚儀……」

 それは、ピダムも同じだったらしい。トンマンを抱き寄せてあやすように髪を撫でながら、ピダムは茫然とその言葉を口にした。

(……だから、あいつ、トンマンは喜ぶって言ってたのか)

 ふと脳裏にしたり顔をしたチュンチュが蘇って、ピダムは思わず顔を顰めた。トンマンをこんなに感激させているのがチュンチュ、さらにはユシンであると言う事実に沸々と腸が煮えてくる。一瞬顔を覗かせた「有難い」と言う殊勝な感情などはすぐに塵となって、今はもう、ピダムの心は二人への対抗心でいっぱいになった。
 その対抗心は、すぐに言葉に変じてピダムの唇から飛び出した。

「婚儀をするなら、私が支度をします」

 ピダムの胸でようやく泣き止もうとしていたトンマンは、上から降ってきた宣言にぱちぱちと瞬いてから顔を上げた。

「ピダム? それは、どう言う……」
「婚儀も儀式の一つでしょう。それなら、私がきちんと必要な物を調べて、全て用意します。お任せ下さい」

 まるで司量部令に戻ったかのような口振りにトンマンは少し歓喜を削がれたが、ピダムがやる気になっているのを咎めるわけにもいかない。これは、言葉を変えれば婚儀をしたいと言ってくれている……はずである。まさか、今にもなってチュンチュに嫉妬しているわけでもないだろう。
 その「まさか」が見事に的中しているとは露知らず、トンマンはこくんと頷いてピダムの胸に擦り寄った。



 さて、一方その頃、いつものようにガサガサと草を掻き分けやってきた兄妹は、昨日彼らが置いていった草花がそのままになっているのを見て、目を真ん丸にして叫んだ。

「今日もだ!!」

 今日も、『化け鳥』のおじさんはご飯を食べてない――。
 この数日、ピダムがトンマンとの閨に夢中になるあまり最低限の家事しかしていないことなど知る由もない二人は、『餌付け作戦』の危機にあたふたと騒いだ。お腹が減らないのかな、いや、もしかしたら、あの天女のようなおねえちゃんを食べちゃって、お腹いっぱいになってるのかな、と二人が最悪の事態を想定した、その瞬間。

「ピダム! もうっ、歩けるから下ろせ!」

 家の中からもう何日も見ていなかった『おねえちゃん』が出てきた為に、手当たり次第にその辺の草花を引っこ抜いていた二人はひゅっとお互いの顔を見た。元気だ、とにっこり笑って。

「駄目です。腰がだるいって仰ったじゃありませんか」
「だから、身体をほぐす為にも自分で歩くと――」
「おねえちゃん!!」
「えっ?」

 そうして、妹のトファが一目散にトンマンへと駆け寄り、トンマンも二人を見た途端に本気でピダムの腕から下りようとした為に、ピダムも渋々トンマンを下ろした。最後に、じろりと兄妹を睨んでトンマンに叩かれてから。

「二人とも朝早くからどうしたんだ? 朝御飯は食べた?」
「はい!」

 小さな顔から溢れそうな笑顔を咲かせているトファを抱えると、トンマンはトファが手にしている花を見て、微笑を深めた。

「花を摘んでいたのか?」
「うん!」
「そうか。綺麗だな」

 女二人がのほほんと会話をしている傍らで、兄トサンはびくびくと『化け鳥』――もとい、ピダムを見上げていた。ピダムはちらっとそんなトサンを見下ろすと、話をしようと唐突にしゃがんで、さらに彼を怯えさせている。

「最近うちに草花を置いていってるみたいだけど、なんでだ?」
「え、えっ……あの……」
「鶏の餌なら、あそこにある桶に入れておけ。地べたに置かれると、拾うのが面倒で困る」
「う、あの……っ」
「わかったか?」
「はい」

 ――違う、言いたいことは、違うのに!!
 心の中では盛大に悲鳴を上げつつも、いざ『化け鳥』を前にすると怖くなって、トサンは頷くしかなかった。もしこのおじさんを怒らせたら、おねえちゃんと妹もあの時の鶏みたいに殺されちゃうかもしれないと思うと、小さなトサンの胸はそれだけで押し潰されそうだった。
 ――そうして、『化け鳥』の監視の下、三人は鶏に餌をやって、花を摘んだ。



「花を摘むのは楽しいものだな」

 お土産代わりに菓子を持たせてから二人を見送ったトンマンは、自分で摘んだ花を両手で握って、満足げに眺めていた。ピダムがさほど熱の篭ってない口調で生返事をしても、怒る様子もない。

「そうだ。昔、お前から花をもらったことがあったな」
「え?」
「ほら、私が公主になって最初の比才の時に、花束をくれただろう? 誕生日だと聞いたからって」
「……ああ」

 ――そう言えば、そんなことをしたこともあった。
 その時の嬉しそうなトンマンの笑顔にときめいたことを思い出したピダムは、じゃれるように背後からトンマンを抱きしめて囁いた。

「あの時は、陛下の本当の誕生日が知りたくて、「誕生日だと聞きました」なんて嘘をついて、バレないように花も用意しましたが……あんまりあなたが喜ぶから、吃驚したものです」
「……何?」
「女が花を好きなのは知っていましたが、まさか陛下もそうだったなんて」

 が、幸せボケ真っ最中のピダムは、自分が余計なことまで口にしていたことに、まだ気付いていなかった。
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  1. 2011.01.11(火) _20:00:57
  2. 隠居連載『蕾の開く頃』
  3.  コメント:2
  4. [ edit ]

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comment

  1. 2011/01/13(木) 22:55:30 
  2. URL 
  3. yukuru 
  4. [ 編集 ] 
お~! 緋翠さま、早速 私のために(違う)v-300花の計略ネタを本編に混ぜ込んで書いて下さいまして(すみません)本当に有難うございます。
この後トンマンが怒るか怒らないか、ちょっとした論争(?)に発展したので・・・とにかくつづきが気になります。

それと、いよいよ・・・結婚式の話が出たりして、なんか~感慨深いですよねv

yukuru様へ

  1. 2011/01/14(金) 00:36:49 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
いやいや、これはかなり前から予定されていたことなので、大丈夫ですよー。隠居連載は、細かいところはその場のノリですが、大筋はすでに決まっているんです(笑) なので、花のネタはここで書く予定でしたv
トンマンの反応がわかる次の回も、早めに書き上げたいですー!

結婚式の話は出ましたが、ピダムは今一つ結婚式をわかっていない気がします。「婚儀=儀式」と考えて、対抗意識で準備すると言い出しただけなのでw(酷い設定)


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