善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説第11弓ぁー単!!(※弾=「弓+単」)
今回はsaki様のターンでございます。

ドラマの世界に入って、シーンとシーンの隙間を埋めると言う新たなステージにランクアップ!(え?)
ドラマとどこまで同じでどこまで違う展開になるのか、おおまかな流れは決まっているとは言え、細かいところはあれこれ違うところがきっと出てくると思います。……が、saki様と頑張ります!

と言うわけで(ん?)、第二部から一緒に連載してくれる方を引き続き募集しております(笑) 第二部は新羅編、トンマン郎徒、ピダム花郎編ですー。


* * *


確信が欲しい。
通された部屋。宿屋の一室でチルスクは一人ごちた。
薄暗い部屋を仄暗いランタンの灯だけが照らしていた。彼の脳裏にあるのはこの宿を営む親子の姿だ。明るく人懐っこい娘。その娘をどうやら溺愛しているらしい兄。時折危なげな所作をみせる母親。どこの街にでもいるような親子・・・のようだった。けれど頭の奥底で警鐘がなるのだ。とくにあの母親の声を聞いてから。

(・・・声、が似ていた気がする。)

―10年以上も昔にただの数度聞いただけの声をどうして覚えていられようか。
―幾年が過ぎようと聞き違えるものか。この身を賭して探し求めた者の声を。
相反する声が彼の中でせめぎ合うように己の主張を声高に叫んでいる。是か否か。
チルスクは寝台に腰かけたまま手付かずの水差しを睨むように視界に留めた。娘があそこまで流暢に新羅の言葉を操れたのは何故か。それは、ここが東西を繋ぐ交易の街だからというだけでは決してないだろう。娘はどう見ても西域の血が混ざっているようには見えなかった。兄もそうだ。母親は間違いようもなく東の―それが中国かはたは高句麗か百済か・・・―人間だ。なれば言葉は母親から娘に伝わったものと考えるのが妥当だろうと思えた。
その母親は確認を含めたチルスクの求めに言葉を返さなかった。自分の早合点かとも思ったが、しかし言葉が通じぬ振りも出来る。
是か否か。求める答えは唯一つ。
探し求めた侍女と双子の片割れ。10年近くもの時を経て自分は漸く追い付いたとでもいうのだろうか。もしそうならば自分は。自分が成すべきことは・・・・・・。
過去を断ち切り、なお生きるためにローマを目指すはずだった男の瞳に暗く淀んだ光が浮かぶ。

「・・・まずは情報だ。」

チルスクははやる気持ちを抑えるようにかぶりを振った。仮にあの親子がそうであったとしても合致しない点がまだある。娘の兄という少年の存在が。
チルスクはゆっくりと寝台から立ち上がる。結局水差しには一切口を付けぬままに彼は扉へと手を掛けた。


だが、それでもあの家族の姿を思い浮かべると自分の思い過ごしであればいいとも彼は思うのだ。


+++


「・・・なんだ、これ?」

宿の仕事も一通り終わり厨房の火も全て落として戻った部屋でピダムは首を傾げた。トンマンが自分用にと使っている小卓に放ってあった見覚えの無いもの。訊ねようにも持ち主らしき妹の姿は見えず。寝台の上で髪を梳いていた母親にそのことを問うと苦笑して妹の所在を教えてくれた。砂漠で付いた砂を落とすのに今日は何時もより念入りに風呂に入っているそうだ。オアシスは当然砂漠の只中にあるから街にいるだけでも砂にまかれることはある、しかしそれでも遮る物の無い街の外に出ている時よりはるかにマシであった。一度砂漠に出れば、いくら気を付けて防砂の為の外套を着こんでいたとしても細かな砂がどこからか入り込んでいるものだからだ。

「なぁ、母さん。これ何だ?」

その答えに納得し次いでピダムは小卓から平たい水晶の様なものをソファに見えるようにかざす。ピダム自身それほど目利きというわけでもないが素人目に見ても中々に値の張りそうな細工が施してある。何の気はなしに覗いてみると水晶越しの母親の姿が少し大きく見えた。

「トンマンがお客様に頂いたらしいわ。流石に誰とまでは知らないけれど。

ピダム、いつまでもそこに立っていないでこっちにいらっしゃい。」

(・・・貰いもんね。あいつはまた何とこれを交換したんだか。)

ピダムは水晶を軽く上に放る。そして再び自分の手の上に落ちてきたそれを小卓の上に戻すとソファの手招きに応じて彼女の隣に腰を下ろした。
ソファの手がピダムの髪に触れ適当に結わえていただけの息子の髪紐をするりと外す。存外丈夫な髪質なのか砂漠の陽と風に負けることもなくさらりとした手触りの真っ直ぐな黒髪だった。つい先ほどまで自分の髪を梳いていたのと同じようにソファは丁寧に櫛を入れる。珍しいこともあるなと思いつつも特にそれを厭う理由も反抗する意味も見つからなかったのでピダムは大人しく母親にされるがままに身を任せていた。実際、子どもの時以来かもしれなかった。母親に髪を梳かれることなど。ふと昼間母親の胸に抱かれた事を思い出してピダムは何となく今の状況を理解した。もしかしたらこれは昼間の延長なのかもしれないと。ピダムはこそばゆいながらも嬉しくふわふわと雲の上を歩いているような心持ちになった。彼女は時折こうしてピダムとトンマンに確かに母親としての顔をみせるのだ。2人を甘えさせてくれる。平時ならばあらぬところでドジを踏む母親を妹と一緒に何くれと心配して世話を焼いているのは自分の方であるはずなのにだ。だから聞き逃した。髪を梳くソファが小さくぽつりと零した一言を。しかしそれでも空気が揺れたのを感じ取りピダムは髪を梳く邪魔にならぬよう器用に後ろ向いた。
けれどその事でピダムが口を開くことは叶わなかった。垂布で仕切る対の間からひょっこりと現れた妹によって。トンマンはソファに髪を梳かれていた兄を見るなりぷぅと頬を膨らませた。風呂上り特有の空気を纏ってトンマンはほたほたと2人がいる寝台へと近づいていく。

「兄さんずるい!ねぇ、母さん。あたしもやって!あたしも!」

髪から垂る滴が床を濡らす。ピダムはぐるりと首を巡らし妹のその姿を認めると盛大に眉をしかめた。本当ならば直ぐにでも彼女の側に寄ってその濡れ髪をしっかりと乾かしてやりたいところなのだが、彼の髪はソファの手によって梳かれている最中だったので寝台から降りることも叶わずまた手を伸ばしても届かない距離にいる妹に対してピダムは口を開く事しか叶わなかった。

「おまえなぁ。髪はしっかり拭いてから上がってこいよ。風邪引くだろうがっ!?」

そのままソファを挟んで右隣に座ろうとする妹にピダムはこいこいと手招きする。少しばかりの不満を表して唇を尖らせるが兄の意図が分かっているのか大人しくピダムの前に座りなおしたトンマンの手からピダムは毛巾を奪い取りそれを妹の頭に被せる。少しばかり乱暴に髪を拭われたトンマンはそれでも楽しげに眼を細めるばかりだ。
気分そのままに鼻歌まで口ずさみそうな妹の髪を拭う手は止めずピダムは肺の底から深い吐息を吐きだした。

(俺も餓鬼っちゃあ餓鬼だけど、こいつもまだまだ餓鬼だよなぁ・・・。)

その様子は、昨夜、思いもかけず知った妹の考えに深淵の淵にまで落ち込んだ自分は一体何だったのだろうかと思えるほどだ。同意を求めるように見上げた母親は彼女がいつも浮かべる穏やかな笑みをその顔に浮かべて2人を見ていた。
私たちは家族。それは何があっても変わらないわ。昼間言われたその言葉と母親の笑みが重なりピダムは何故だか急に面歯痒くなった。しかも妹をぎゅーと力の限り抱きしめたい衝動にまで駆られる。ずっと昔から家族であるはずなのにどうして今それがこんなにも嬉しいと感じるのだろう。意味も理由も分からないけれどピダムはとりあえずその衝動のままに妹を抱きしめることにした。

「うきゃあ!な、なに?なに?兄さん?」
「何でもねぇ!」
「何でも無くないなら抱きつかないよ?!ねぇ、母さん。兄さんどうかしたの?」
「ふふ、さぁ?どうしたのかしらね?ピダム、もういいわよ。トンマン、いらっしゃい。」
「うわぁい。兄さん、兄さん、放して~。あ~、もう!は~な~せ~!」

耳に心地よく響く母と妹の声。いつまでも、いつまでもこの時が続けばいい。出来るだけ長く続けばいい。ピダムはソファに助けを求め始めた妹を抱きしめる腕を緩めないままにそう思うのだった。
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  1. 2010.11.24(水) _06:05:59
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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