善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 凍える君を、蕩かす為に(加筆修正)

54話のトンマン解釈をしていて注目した、ミセンがピダムに「今こそ婚姻をすべき」と釘を刺した時にハジョンが返した「でも、結婚はいつも拒まれたじゃありませんか」と言う台詞から妄想。


結婚「は」拒まれる。
  ↓
結婚以外なら、拒まれない。
  ↓
色供なら拒まれない。
  ↓
色供は受け入れられた。


そんな感じの女王時代…と言うか、空白の時代(笑)のトン&ピです。こんな時もあったらいいよねー的なラブラブっぷりです。
……すみません、SSがあまりに書けないので、やむなしオチなしのリハビリSSを書いてしまいました…!


* *


 それは、ミセンが礼部令に返り咲いて一年ほど経った頃のこと。

「……わかりました。色供臣を迎えましょう」

 国婚はなさらなくとも、後嗣をお考え下さい――。
 度々臣僚から湧いてくるその上奏にうんざりしたのか、母マヤ太后の喪を終えたトンマンは色供臣を置くことを許した。ただし、三婿の制に則ることなく、一人だけを指名する、と言う条件をつけて。

 その一人に指名されたピダムは、いつになく緊張したまま初夜を迎えた。日が落ちてから仁康殿に入るのは勿論初めてではなかったが、日のあるうちでも寝所に立ち入ることは滅多にない。人払いがなされ、侍女も消えた執務室に入ったピダムは、珍しく閉ざされたままの寝所の戸を暫し見つめた後、小さく深呼吸をしてからそっと声をかけた。

「陛下、ピダムです」
「……入れ」

 さすがにトンマンも緊張しているのか、すぐに答えが返ってくることはなかった。それでも刹那の躊躇いの後にピダムの入室を許可した声は、落ち着いている。思わず、ピダムの脚も軽くなるほどに。
 ところが、いざ寝所に入ってみたピダムは、呆気に取られた。

「陛下。その……お姿は……?」
「これか」

 瞠目しているピダムにふっと口の端を上げてみせたトンマンは、白絹で織られた夜着を纏ってはいなかった。代わりにその華奢な身体に纏っているのは、かつてを髣髴とさせる男物の麻の衣だ。
 そのまま立ち上がって卓の上に置かれている衣を手に取ると、トンマンはそれを、まだ事態を図りかねて呆然としているピダムの胸に押しつけた。

「あの衝立の向こうで着替えてこい。出掛けるぞ」



 即位してからと言うもの、その安全上、トンマンは宮中にある全ての秘路を暗記せざるを得なかった。そしてさらに、ミシル一派が知らない脱出口を用意する為に、極秘のうちに新しい秘路も造っていた。
 それをトンマンと共に設計したピダムは、勿論秘路が仁康殿の寝所から四方八方の秘路に繋がっていることは知っている。しかし、恋焦がれてきたトンマンとようやく初夜を送るつもりで来ていたピダムにとって、その秘路を通って密かに寝所を抜け出すのは苦痛でしかなかった。
 そんなピダムの胸の内を知ってか知らずか、トンマンは宮殿の裏手に通じる秘路を使って外へ出た。

「……陛下、どちらへ向かわれるおつもりなのですか?」
「すぐにわかる。それより、馬を用意させてある。あまり駆けるわけにはいかないが、歩くよりは速い」
「……はい」

 不満げなピダムの問いには答えずに颯爽と馬に跨がったトンマンは、軽く馬を走らせた。夜道だと言うのに、乗馬姿にはぎこちなさは欠片もない。男装しているせいもあってか、まるで即位する前に戻ったかのようにトンマンは生き生きとした様子で馬を駆っている。
 ――そうして訪れた場所は、寺の多い徐羅伐でも名だたる大寺院の一つだった。

「陛下、ここは……」
「永興寺だ」

 永興寺は、聖骨、真骨の女が余生を過ごす為の寺だ。トンマンの母マヤも、この寺に入りその生を終えた。歴代の王達はそれぞれに墳墓を持つが、皇后や、それに準じる妃や公主はこの寺が終の住処なのだ。ミシルとチョンミョンも、今はここに眠っている。
 けれどもその一方で、芬皇寺や霊廟寺が完成した今、永興寺は時代遅れの古びた寺となり、行幸が行われることもなくなっていた。重厚さはあれど、往時の華やかさも錆び付いてきている。
 訝しげなピダムの顔が仄かな月明かりに照らし出されると、トンマンは困ったように苦笑した。

「行幸で訪れるような用事ではないから、こうしてお前と来たんだ。ピダム、お前も久しぶりに璽主に挨拶をしたらどうだ?」
「ですが……」
「私も王として来たわけではない。姉上と母上に挨拶をしに来ただけだ。だから、そう構えるな」
「挨拶ですか」
「ああ」

 そして、本当に挨拶だけして、トンマンは宮殿へと戻った。往路と同じようでいて、少し硬い顔をして馬を走らせながら。

 再び仁康殿に入ったトンマンは一度ピダムを執務室で待つよう命じて夜着に着替えると、ピダムにも奥の部屋で着替えるよう求めた。
 先程とは違ってふんわりと花の香りを漂わせている小部屋に押し込められたピダムは、そこに用意されていた男物の夜着を見て、唾を飲み込んだ。ミセンから仁康殿の寝室の構造とその使用目的については聞いてはいたが、こうも格式ばられると、力が入って肩が凝る気がした。
 とは言え、やっと待ち望んでいた瞬間が訪れるであろうことを察したピダムは、素早く着替えを終えた。どうせ脱ぐのに、と身も蓋もない感想もちらりと脳裏を過ぎったが、下手な真似をしたら、もう二度と呼ばれないかもしれない。色供臣を迎えると宣言してからも、なんだかんだと理由をつけて二月近く彼をヤキモキさせたトンマンだ。
 寝室に戻ると、トンマンは明かりが減って薄暗くなった部屋の真ん中で、珍しく長椅子に座っていた。傍には小さな卓が置かれ、そこには茶と菓子が用意されている。トンマンが命じたのか侍女が気を利かせたのかはわからなかったが、それも仕来りのようだった。
 兎にも角にも、トンマンの隣には明らかに人一人分以上の場所があいている。何か言われたわけではなかったが、そこに座るべきだろうとピダムも察した。

「飲め」
「はい」

 そして、ぶっきら棒に勧められた茶を飲んで一息ついてから、改めてピダムはだんまりを決め込んでいるのか何も喋ろうとしないトンマンに訊ねた。

「陛下、あの……何故わざわざこのような夜更けに永興寺まで赴かれたのですか?」

 どう言うわけだか、茶器に手もつけず、トンマンは柱を凝視している。なんとなくピダムもつられてその柱を見たが、特におかしなところはない。

「陛下……?」
「…………」

 結局、ピダムがもう一度声をかけてからようやく、トンマンは答えを返した。視線は動かすことなく。

「挨拶をしなければならなかったからだ」
「陛下、例え挨拶をする為だけに行幸をなさるのが嫌なのだとしても、夜道を馬で駆けるのは危険です。もしまたこうしてお出掛けになるなら、その時は私の馬に乗るか、輿を用意するか、歩くか、この三つのうちの一つにして下さい。別の馬に乗っておられたら、何かあってもお助け出来ません」
「……わかった」

 ところが、やっと顔を動かして渋々頷いたかと思うと、トンマンは今度は俯きがちになってしまっていた。ピダムを見るどころか、しきりに居心地が悪そうに手を組み直している。
 ちょうど茶もなくなって手持ち無沙汰になっていたピダムは、それを見て咄嗟にしまったと舌を打った。

(忘れてた! 初夜は優しいことしか言うなって散々言われてたのに……つい、アルチョンみたいな口を利いてしまった)

 どうするか、とピダムが悩んだその時、ふいにトンマンがちらりと彼を見上げて問いかけた。

「……気分が悪いのか、ピダム」
「え?」
「今、舌を打っただろう。その……呼び出しておきながら私が何もしないから、気分を害したのか……?」
「ええ? 何もって……陛下」

 思わず昔の口調に戻ってしまったピダムを咎めるでもなく、トンマンはさらに続けた。

「こう言う時は、王たる私が何かすべきなのだとわかってはいるのだが……すまない、どうやら……上手く出来そうにない」

 そうして視線を落としたトンマンは、太股の上に置いた両手を強く、強く握りしめた。あまりに強く握った為か、白い手に筋が浮いている。それを見たピダムは、反射的にその手に自分の手を重ねていた。……潰れてしまいそうなその繊手は、極度の緊張状態にある為か、震えて冷たくなっていた。

「陛下……」

 そうとわかった瞬間、ピダムの中では一気にトンマンへの愛おしさが膨れ上がった。緊張しているのは自分だけかと思い違いをして、何をすべきか、何をしてはいけないのか、そればかりに気を取られていたけれど。……ミセンの言う通り、こう言った経験が全くなく、誰かに話を聞くわけにもいかないトンマンこそ、ピダムよりよほど緊張もして、怖さも感じているのだろう。

「陛下、すみません」
「何が――」

 顔を上げてそう口にしかけたトンマンは、次の瞬間、あまりに近くにピダムの顔があった為に目を丸くした。

「色々と手順があると聞かされていましたが、全部忘れてしまいました。……陛下、もう我慢出来ません。陛下……」
「ん……っ」

 両手でトンマンの頬を包み込むように押さえると、ピダムは正面からゆっくりと唇を合わせた。啄むようにして始まった口づけは、瞬く間に激情的なそれへと変わっていく。

(……唇を重ねるとは、こう言うことなのか)

 初めての経験を、ぎゅっときつく目を瞑ったままトンマンは受け止めた。膝の上で震えていた手を恐る恐る持ち上げてピダムの胸へ添えると、口づけに没頭していたピダムは片手を頭の後ろへ、もう一方の手を背に回して、さらにトンマンを強く引き寄せる。緊張で乾いていた唇はいつの間にか潤って、重なり離れる度に耳慣れない音をたてた。
 やがて、背に回していた手で脇腹を撫でると、ピダムは少しずつ唇を下げていった。その舌が首筋を降りていくと同時に、その手も太股へと滑り落ち、また這い上がってきている。

(ピダムが、首筋を噛んでいる。ピダムが、腹を撫でている。ピダムが、鎖骨の辺りを舐めている。ピダムが、胸を……)

「――っやめろ!」

 ところが、いざピダムが胸に触れた瞬間、トンマンは半ば本能的にピダムを突き飛ばしていた。その力はピダムの身体に僅かな衝撃を走らせる程度の弱い力だったが、途端にピダムはトンマンから離れて立ち上がった。

「すみません、陛下。お気に……障りましたか」

 片やトンマンは、いきなり離れたピダムに驚いていた。
 気に障ったのかと訊ねられても、どう答えていいかわからない。ただ、ピダムが何をしているのか認識した瞬間にとてつもない羞恥心に襲われた。おかげで、何かせずにはいられなかった。それだけで、他意はない。せっかくチョンミョンに会いに行ってまで覚悟を決めたと言うのに、何と言う体たらくだろう。

「陛下。お気に召さなかったのでしたら、そう仰って下さい。出直します」
「……」

 乱れた黒髪を整えるでもなく、頬を上気させたまま胸元を握りしめているトンマンはとてつもなくピダムの欲望を煽ったが、ピダムとしては、絶対に無理強いだけはするわけにはいかなかった。せっかく唯一の色供臣になれたのだ。初夜は、夢のような甘美な一時にしなければならない。トンマンが、その頑なな心を蕩かすほどの、甘美な一夜に。
 あらぬ方向を見て黙りこくっているトンマンに慌てたピダムは、さらに捲し立てた。

「陛下、ご安心下さい。次回までにミセン公にもっと詳しく習ってきます。次は必ずや陛下のお気に召すようにします」

 が、ピダムのその言葉にトンマンは不思議そうな顔をして振り返った。

「ピダム。まさか……お前も初めてなのか」
「はい。でも、大丈夫です。私は剣も弓も馬も、すぐに覚えました。だからきっと、次は陛下を喜ばせることが出来ると思います」

 武術の才を例に挙げるなら、剣も弓も馬も不得手なミセンに教えを乞うと言うのはおかしな話だったが、ピダムは全く気付いていないらしい。思わず、トンマンは笑った。

「陛下……?」
「いや。そうだな、お前も初めてだと聞いて……少し、落ち着いた」
「陛下」
「すまない。もう、突き飛ばしたりしないから……続けてくれ」
「宜しいのですか……?」

 しかし、一度拒絶されたピダムは慎重だった。また拒まれたらと考えるだけで、血の気が失せ、手が震えた。
 対してトンマンは、僅かに膨れっ面をして、恥ずかしさを隠す為か上目遣いでピダムを睨んだ。

「何回も言わせるな。それとも、突き飛ばした仕返しのつもりか?」
「――」

 トンマンの言葉に驚いて叫ぶ前に、今度はピダムは最初から強く彼女を抱きしめて激しい口づけをした。

「陛下。陛下」

 歓喜に支配されたピダムは先程よりもずっと熱を孕んだ眼差しでトンマンを見つめて、口づけを繰り返した。そのあまりの熱っぽさにトンマンの身体の芯もくらくらと揺れて、覚束なくなっていく。もう、ピダムがどこに触れているのかなどと言うことを細かく考える余裕は残されなかった。

「陛下……陛下……」

 いつもより低く、深い余韻を残して自分を呼ぶピダムの声を聞きながら、トンマンは瞼を閉じた。恐る恐る伸ばした腕で、温かく彼女を抱きしめる男を受け止めながら。



「陛下……」

 ことを終えたピダムは、「女に情事の感想を求めてはいけない」と言うミセンからの忠告は完全に忘れてしまったらしく、つい先程まで彼女を翻弄していたとは思えないほどに恐々と、しかししつこくトンマンに訊ねていた。

「あの、陛下。お気に……召しましたか……?」
「…………」

 そのピダムの隣で目の下にまで掛け布団を引き上げて真っ赤になった顔を隠しているトンマンは、布団の下でもじもじと太股を擦り合わせながら、ぽつりと呟いた。勿論、ピダムではなく、反対方向へと目を向けたままで。

「……気に入ろうが気に食わなかろうが、私の色供臣はお前だけだ」
「陛下……」

 果たしてトンマンがそれを良い意味で言ったのか悪い意味で言ったのか図りかねたピダムは暫し黙然としたが、やがて、冬でもないのにトンマンが「寒い」と呟くと、急いで彼女を抱きしめて額に、頬にとそのあちこちに熱の籠った唇をくっつけた。……未だ汗ばむ肌を、さらに柔らかく温めるように。




* * *

オチはありません!(コラ!)
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  1. 2010.12.12(日) _00:47:15
  2. SS(ドラマ設定IFもの)
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