善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS あき風

久々(?)に隠居生活の番外編をー。
一緒に暮らしてから初めての秋が終わる頃のお話です。夜の話なので予約投稿にしてみました。…投稿出来てますように(笑)

※性的な描写と血生臭さが少々あります。ご注意下さい。


* *


 秋には、「あき風」が吹くと言う。



 近頃きちんと『月のもの』としてやって来る客人が、今月も来た。

「……駄目、か……」

 その事実を目の当たりにしたトンマンは、小さく息を吐いた。

(かつては何かと心配事も疲れも多かったからか、薬を飲んでまでして来てもらっていた客人の訪れが、今では憎らしくて堪らないなんて……)

 勝手なものだ、とは思う。しかし、どうしようもない。
 チュンチュとスンマンからもらった本によれば、子は授かり物で、母親の身体は勿論、父親となる男に子種があるかも大事だと言う。子種があるかは、その男にすでに子がいるかどうかでわかると。
 けれどもトンマンの知る限り、ピダムに子はいなかった。と言うより、他に妻がいたとか、女がいたと言う話も聞いたことがない。……いや、正確には、そんなことをわざわざ話題にしたことが、ない。

(……聞いてみるべきなんだろうか)

 ピダムは子のことは全く口にしない。夜は言うまでもなく、朝も閨から出ることを惜しみ、惜しんだ結果、愛おしさが自然と形になっていると言うのに、それが結実するかどうかに関しては、全くもって無頓着なのだ。
 考えてみれば、夫婦二人きり、継ぐべき家があるわけでもない。子が出来ないなら出来ないで、二人で四季を楽しみ、面白可笑しく暮らせばいいのだ。
 ……しかし、トンマンは諦めきれなかった。

(おこがましい願いかもしれないが……)

 ――子供が、欲しい。
 夏の終わりから、トンマンは切実なまでにそう願うようになっていた。



 外に出ると、先程と同じようにピダムは落ち葉を掃いていた。集めた落ち葉を燃やして、鶏肉を燻すのだと言う。

「トンマン」
「ピダム、ご苦労様」
「うん。あと少しで終わるけど、寒かったら中で待ってて」
「わかった」

 さかさかと動く姿を眺めながら、彼女は彼女で自分の悩みへと意識を飛ばした。

(……ピダムは、自分の子供について考えたことがあるのだろうか)

 彼の口から出るのは、トンマン、鶏、トンマン、(トンマンが大人しくないことに対する)愚痴、夕餉のおかず、鶏、トンマン、トンマン……。他の話題は、大概彼女から振っている。気がする。

(今夜は何も出来ないし……聞いてみようかな)

 軽い調子で、いつかのように勘違いしないように、用心深く切り出してみよう。相変わらずトサンやトファに対してはあまり優しくないことが気にはなるが、自分の子供となれば、違うはず。

(……。違わなかったら、どうする)

 そもそも自分の子供が欲しいなら、とっくの昔にトンマンへの愛は諦めるか封印するかして、所帯を持つのが当然だろう。しかし、ピダムはそうはしなかった。

(…………駄目だ、先が暗く見えてきた)

 ――これも月に一度の客人のせいか。
 はあ、とトンマンは重い溜め息を吐いた。深い意味もなく、何とはなしに。

 ところが、そうは受け取らなかった者もいる。
 背後で放たれた溜め息に背を強張らせたピダムは、そっとトンマンの様子を窺った。……やはり、何か思い悩んでいる様子である。

(最近、夜もあんな感じだ。どこか上の空って言うか……)

 ピダムの愛撫にうっとりと身を任せ、さらには朝に肌を重ねても怒らなくなったと言うのに。だと言うのに、いざ事が終われば、ピダム自身にはまるで興味がないかのようにトンマンはその意識をどこか違うところへ向ける。それは刹那のことで、すぐにピダムへと戻ってはくるのだけれども、その刹那が彼を不安にさせる。
 何がいけないのだろう。最近は彼女が近所の子供と遊んでも目くじらを立てないようにしているし、一緒に外にも出ている。鶏肉料理も一日一回にした。……一体、何が問題なのだろう?



 神経質になっていたピダムは、その夜、閨でいつものように袷の中へと手を滑り込ませようとした彼をトンマンが止めたことに、殊更に反応した。

「私に触れられるのは……嫌ですか」
「え?」

 突然顔を固くして丁寧な言葉を使い始めたピダムに驚いたのはトンマンで、不思議そうに夫を見つめた。

「違う。月のものが来たから止めてくれ、と言うことだ」
「……ああ」

 なんだ、びっくりした、と笑うピダムに、今度はトンマンの顔が強張った。

「安心したのか?」
「え? ああ、はい。安心しました」

 嫌がられているんじゃないとわかって――とは口にしない。それよりも、それなら身体がつらいだろうと、ピダムは寝衣の上からトンマンの下腹部を摩った。そうするのがいいと、初めて彼女の月のものを目の当たりにした時に宮医から習ったのだ。
 ところが、いつもなら嬉しそうに微笑んでピダムに寄りかかってくるトンマンが、どう言うわけだか硬い顔を崩さない。

「酷く痛む?」

 それを身体の不調のせいだと思ったピダムの問いにトンマンは少し視線を逸らした後、つと視線を彼に据えて呟いた。

「ピダム」
「はい」
「その……残念だとは、思わないのか」
「残念?」

 寸の間目を丸くしたピダムは、すぐに機嫌良く微笑んでみせた。

「ああ……勿論、終わったらいっぱいするよ。大丈夫、数日くらい我慢出来るから。それより、その時寝不足にならないように、今日はたくさん寝て」
「いや、そうじゃない」

 閨のことを言っているのではないとトンマンが訂正すると、ピダムは首を傾げた。

「じゃあ、何?」
「それは……」

 ――どう切り出せばよいのだろう? 子供のことを遠回しに告げるには、一体どうしたら良いのか。
 悩んだ末に、トンマンは決意した。遠回しに言ったところで、仕方がないと。

「ピダム」

 トンマンはピダムの手を退けると、寝台の上に座り直した。自然とピダムもつられて、姿勢を正す。そして、一拍。刃を手に向かい合っているかのように張り詰めた空気が、二人の間に流れた。

「正直に答えろ」
「はい」
「言い逃れはするな」
「わかりました」

 さらに、一拍。

「…………お前は、私との子供が欲しいと思うか?」

 思わず詰問口調になってしまったのは緊張からだったが、トンマンは奥歯を噛みしめてピダムを見た。王座に在った頃のように、瞬き一つ逃さぬような眼差しで。
 一方、思いもよらぬ質問にきょとんとした顔つきになりつつも、ピダムは即答した。

「欲しいとは思うけど、トンマンの方が欲しい」

 だから早く月のものも終わって欲しいです、とピダムは真面目な顔で付け足して、トンマンを見つめ返した。

「……それはつまり、どう言うことだ?」

 対するトンマンも、至極真面目な顔で問い返している。傍から見れば少々滑稽な図だったが、本人達は至って真摯な態度を崩さない。

「簡潔に言えば、あなたが身篭って子供を産めば、あなたを子供と折半しなければならなくなるので、それは嫌だと言う意味です。私は、トンマン、あなたを独り占めしたい」
「……つまり、子供は要らないと言うことか?」
「はい。差し当たり必要だとは思いません」

 けれどもすっぱり言い切ってから、ピダムははたと我に返った。……ひょっとしてこれは、トンマンからの合図だろうか。

「トンマン……」

 ピダムはトンマンの頬に手を添えると、何やら考え込むあまり少し尖っている唇を軽く吸った。そうして瞬く間にその身体を懐に引き入れ、細やかに触れ始める。トンマンは身体を強張らせてはいるものの、抗うでもなく大人しいままだ。それを許諾と受け取ったピダムは、滑らかな額に口づけをしながら囁いた。

「トンマン、急にどうしたんだ? 子供が出来るようなことがしたくなった?」
「…………」

 トンマンは何も答えない。黙然としつつ、頭の中ではピダムの言葉を繰り返していた。

(やはり私が贅沢なんだろうか。ピダムと夫婦になって幸せだから、次は子供だなんて……)

 欲張り過ぎか、と密やかに嘆息したトンマンは、気付いていなかった。その間にも、彼女の夫は夫で悶々としていることに。

(近頃、トンマンはこんな風によく上の空になる。そうだ、たまにはこう言う日に肌を合わせるのも……刺激になっていいんじゃないか?)

 そもそも、血を見るのが嫌いなピダムではない。
 それに加えて、狎れも彼の背中を後押しした。半年ほど一緒に暮らしてきて、どこかに自信とも驕りともつかぬ確信が芽生え始めているのだ。
 ――トンマンは、俺のものだ。
 その確信は日毎に高まっており、それを示しているかのように、この時もピダムは少々強引になり……濃密になった血の匂いに、瞳の奥が不穏な揺らめきを見せた。

「ピダム!」

 いきなり性急になった手つきに、トンマンはやっとピダムが愛撫以上のことをしようとしていると悟って我に返った。慌てて腕を突っ張るも、すでに機先を制されている。
 おまけにピダムの表情はいつもの彼のものではなくなっている。いつか見たような気もするが、一体いつだったかと思い出しているうちに、思考は切れ切れになった。せっかちなピダムの唇や手に煽られ、吐息が熱を帯びていく。

「なんだか痛々しいな……」

 口ではそう言うくせに、双眸には愉悦が顔を覗かせている。それを指摘しようとするのだが、もうトンマンの唇は言葉を紡ぐには火照り過ぎていて、あまり役に立たなくなっていた。

「前から思ってたんだ。あなたには……赤が良く似合うって」
「ん……?」
「嬉しそうな時や、照れてる時に頬に赤みがさすだろ? その時、赤い服を着ていると……本当に花が咲いたみたいになるんだ。だから……きっとこの敷布が深紅だったら、もっともっと綺麗に見えて……触れなくなっちゃうくらい綺麗になるんだろうなって思って」

 そこでピダムが感嘆の吐息をつくと、彼の言葉通り、青白い肌が花開くように朱に染まっていく。

「トンマン……私のトンマン、愛してる……」

 そして、ピダムの唇も複雑な話をするには熱が高まり過ぎたらしい。いつにも増して絶え間なく愛を囁き続けるピダムに翻弄されながらも何度かなされたトンマンの訴え――血生臭いから止めろ、と言う制止は、言葉になる前に全て唇に飲み込まれ、抗議は鞭のようにしなやかな身体に封じ込められた。
 そうするうちにトンマンも沸々と泉のように湧き上がる喜悦を自ら口にして、その花を大輪のそれへと変え始める。

「ピダム……!」

 すると、もう目の前にいるピダム以外はどうでもよくなってしまう。
 ……勿論、翌朝我に返った時に盛大に恥ずかしがり、不貞腐れ、照れ隠しに憤ることになるのだが、いくら「もうピダムにいいようにはされない」と誓っても、結局ひと度その肌に抱かれるとまだまだ滅法弱いトンマンだった。



 秋には、「あき風」が吹くと言う。
 しかし、この二人はどうやら、その「あき風」とやらとは無縁のようだった。ただ、その風向きは少しずつ変わり、より薫り高くなり始めていた。




* * *

若トンマン1

↑個人的に一番綺麗だなーと思うトンマンです。

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  1. 2011.02.13(日) _01:02:00
  2. 隠居連載『蕾の開く頃』
  3.  コメント:5
  4. [ edit ]

<<2月12日と13日に頂いたコメントへの返信 | BLOG TOP | 乱世の兵法。@『孫子大伝』第五話~第七話>>

comment

拍手に続いて……

  1. 2011/02/13(日) 02:35:55 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
緋翠様、教えて頂いたのに失敗してる私……器械音痴も甚だしいです(笑)

平日にゆっくり調べる事にします

ありがとうございました

お礼が言いたくて再びコメントしちゃいました

早くパソコンを繋いでもらわないと(笑)

管理人のみ閲覧できます

  1. 2011/02/13(日) 23:33:17 
  2.  
  3.  
  4. [ 編集 ] 
このコメントは管理人のみ閲覧できます

椿様へ

  1. 2011/02/15(火) 00:03:34 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
椿様こんばんはーv
はい、100の質問の時のアレです(笑) 翌朝明るくなってから惨状を目の当たりにしたトンマンが怒るところは、タイトルと合わなかったので書きませんでした。

妊娠、出産の時の状況は千差万別、人それぞれだと聞いてはいますが、本当にそうなんですね…!
椿様のお話を聞くと、ひょっとしたら、もし乱の時にトンマンが妊娠していて、ピダムが死んだ後一人で出産して子育てしたら、我が子への愛情はあるとしても、体調的には椿様と同じように凄く苦労するような気がしてきました。

里帰りをしても、実の母がいないと出産経験のある相棒(のように気軽に何でも任せられる存在)がいないわけですし、大変ですよね…!
人生語れるほど成熟してはいませんが(汗)、心が疲れ果てている時に一人ぼっちで、身体を休めることも出来ないなんて極限状態を耐え抜けるのは、『親』と言う尊い存在だけだと思います。(ドラマのトンマンもそこから病気になってましたし…)

子供が欲しくて欲しくて堪らない人は妊娠した瞬間から「~~ちゃん」と名前もつけ(るらしいと聞きました)、すでに溺愛状態、むしろ出産してからの方が落ち着く……と言うこともあるかもしれませんし、生後数ヶ月経って、コミュニケーションが取れるようになってから「あ、可愛い」とときめき(笑)、のめり込んでいくのもあるんだなーと思うと、トンマンは前者、ピダムは後者かもしれませんねー。

子供を実感するって、男の人は何かが変わるわけでもないし、余計に大変そうです。
私は長子なんですが、父の年齢が若くもなかったからか、あるいは生まれた瞬間から母ががっかりするぐらいに父親そっくりの顔で健康だった為か、生後すぐ私を抱いた父は(母曰く)「じーん……」と感極まっていたらしいです。人それぞれですね、ホントに(笑)

いつ出産するか……って、難しい問題ですよねー。
この隠居版トン&ピは高齢出産で、散々働いた末での子育てですが、迷宮シリーズでは公主になった頃に出産する予定ですし。どちらのピダムでも、「トンマンを独り占めしたい……」は永遠のテーマではありますが(笑)、どう変わるんだろうなーと考え中です。
トンマンは勿論、ピダムも両親とは縁が薄い人なので、子供を持って、二人きりの生活ではなく、もっとたくさんの人数での家族と言うものに触れさせたいですね!

はじめまして

  1. 2011/02/17(木) 16:55:40 
  2. URL 
  3. うつつ 
  4. [ 編集 ] 
はじめまして、こんにちわ。
poko様のブログからたどりつきました。
本当に本当に楽しく読ませていただきました。
物語解釈もおもしろ~い!
ピダム狂いのワタクシ、本編の終わり方は悲しすぎ、なんとかあの後誰かがピダムを生かしたことにして・・・と頭の中で妄想ストーリーを組みたててみたのですが、そんな工作ができる人物・勢力が頭に浮かばず・・・チュンチュとわっ!(チュンチュは政敵と除外していたので・・)なるほど!
トンマニア(キッザニアみたい・・・)な彼は何事もトンマン次第なので、
『トンマンがミシルのようにうまく男をあやつってくれればこんなことには・・・』
『イヤ、それじゃ惚れないっしょ・・・』
『じゃあ、あのときもっとこうしてくれていれば乱なんて・・・』
『いや、それでもこのタイミングでしかトンマン動けんでしょ・・・』
・・・・・と混乱の繰り返しでした。
なので、緋翠様のおかげで本当にココロが癒されました。
報われるだけでなく、トンマンにヤキモチまで焼いてもらうピダム、
美花郎大会に出たりミセンに恋愛指南されるピダム・・・
彼にもほのぼのした時間があったとうれしくて泣けてきますv-408

美花郎大会が大のお気に入り!
続きが早く読みたいです~~!
御忙しい中とは思いますが、ぜひ、ぜひ宜しくお願いいたします。v-398

うつつ様へ

  1. 2011/02/18(金) 01:05:29 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
うつつ様、はじめまして!管理人の緋翠と申します。
poko様のブログからですか!!わわ、ありがとうございます…!poko様もありがとうございます!
物語解釈……と言えるほどのものか怪しい、愚痴に近い語りも多いのに、楽しんで頂けてホッとしました。(←ピダムについてあんまし良いこと言ってないんじゃないかとビビっております。笑)

本編から繋げてピダムを生かすのは、最初はユシンがやるかなーと思ったんですが、ちょっと考えて「ないな」と。そんな細かい気遣いが出来る男ではないでしょうし(笑)、第一あそこでトンマンが倒れたのにトンマンにくっついていかないと言うのが大前提なので、色々考えた結果、やはりチュンチュだろうと考え直しました。
あと、個人的に、トンマン・ピダム・チュンチュの三人の関係は重要だと思っているのでー。

> トンマニア(キッザニアみたい・・・)な彼は何事もトンマン次第なので、
トンマニアwwww
今度からピダムのことは「トンマニア・ピダム」と呼ぶことにします!(笑)

私はトンマンに最後の望みを叶えて欲しくて隠居連載を始めましたが、書いているうちにピダムにも愛着が湧いてきて、今ではすっかりトンマン&ピダムのファンですv なので、二人にもっともっとほのぼのした時間を過ごして欲しいなーと!

美花郎大会、頑張ります。大体のあらすじは決まっているのに、十花郎の書き分けがうまく出来なくて筆が止まってまして…(汗)
いざとなったら十花郎カットで書きあげます!(ええっ)


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