善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS これぞミセンの最終極意 巻之一

※本日二本目の記事です。


ちっちき様リクエスト「司量部令時代、もしピダムがトンマンを諦め他の女性と婚姻しそうになったら?」ですー。
……リレーSSがなかなか進まないので(なんでだ!!滝汗)、ストックしていたSSを放出します。うおー、カターン、カターンおじさん降臨して下さい…!!(落ち着け)

↓の画像は、後で出てくるトンマンの私服です。実は、どっちにしようか迷っています。……本当はもっと可愛い色を着せたかったのですが、トンマンは可愛い色合いのものは着ないようなので(笑)、濃い色で攻めてみました。ちなみにまだ女王時代前半なので、髪の毛も膨らんではいません。
トンマン  1.png

また、今回のSSはリクエストの内容的にも、どうしても女性のオリジナルキャラクターが必要だったので、登場しています。苦手な方はご注意下さい!


***


 神国に新たな王が誕生して二年――司量部令ピダムが誕生してからもちょうど二年ほど経った冬の日のこと。二年前とは打って変わって貴族達の畏怖を集めるようになっていたピダムも、今では前髪も上げて髭も伸ばし、その地位に相応しい威厳を手にしている……はずだった。

「ピダム公、私のせいじゃありませんよって……おうっ」
「ミセン公が私を焚きつけたんじゃありませんか。おかげで陛下に白い目で見られました」

 ところがミセンの邸に雪崩れ込んできたピダムは、いい気分で三十四人目の妻と眠っていたミセンを叩き起こして怒りを迸らせていた。
 ミセンはピダムに睨まれてずれたお尻をちゃんと椅子の上に戻すと、少し乱れた髪を撫でつけながら扇をわしわし振った。そうでもしなければ、この男の相手はしていられない。

「ちゃんと私の申し上げた通りになさったのですか? 何かお間違えになったのでは?」
「ミセン公の仰った通り、侍女も遠ざけ、二人きりでいる時に陛下を見つめて、潰した声で呼びかけました」
「は? 潰した声……?」
「掠れた声と仰ったでしょう」
「…………それは、ガラガラ声と言う意味ではないんですが……ああ、もう……」

 ハジョンも馬鹿だ馬鹿だと思ってきたが、ヒョンジョン――いや、ピダムも相当馬鹿なのかもしれない。
 仕事に慣れてきた為か、近頃とみに女王を口説き落とそうとしている司量部令に何くれとなく助言を続けているミセンは、いくら助言をしてもどうにもこうにもずれた方向へと突き進む甥を前にして、もう何度目になるかわからない心境になった。……彼の姉は、どうやら息子達に知略と色香と武術、その全てを残せはしなかったようだ。全てを持ち合わせている者が、今のところ全く思いつかない。
 いや、ポジョンがいたか。万年哀れと言うか不幸な目に遭っているのでついつい使いっ走りばかりさせているが、彼は優秀である上に女心もわからないわけではない。恐らく。

「次の手は?」

 自分で考える気はないのか、それとも考えられないほど(一時的ではあれ)落ち込んでいるのか、苛々とした空気を撒き散らしながら迫ってくるピダムに、とうとうミセンは秘策を授ける決意を固めた。……こんな風にしょっちゅう理不尽な怒号に晒されては、堪ったものではない。

「宜しいですか、ピダム公。これにしくじったら、もうお仕舞いです。次はありません。背水の陣のつもりで戦って下さい」

 重々しいミセンの宣言に、ピダムの背筋が自然と伸びた。


**


 女王となってから月日も流れ、トンマンは即位したばかりの頃に比べれば女王の装束も誰よりも高い地位にも馴染んでいた。
 そして女王であることに慣れると同時に、公主であった頃にはやたらと鼓動を忙しなくしていたピダムの言動にも落ち着いて対応出来るようにもなっていた。……勿論、今でも心の中では平静ではいられないが、それでも、面の皮が厚くなければ王ではいられない。特に、最近のピダムは体調が悪いのか、喉が枯れていたり目が潤んでいたり赤くなっていたりと様子がおかしい。
 ……ひょっとして、ピダムが拒まないからと仕事を与え過ぎているのだろうか?
 少し的のずれた不安を抱えながら、トンマンは謁見を求めてきたピダムを迎えた。

「――休みを?」

 しかし、いざピダムから数日の間静養したいと告げられた時には、先程までの心配はどこへやら、むっとトンマンは顔を顰めていた。

「だが……まだ、司量部に任せた案件が……」
「ご心配には及びません。ミセン公、ソルォン公に任せてあります。……あの二人が勝手なことをすることは、ありません」

 ピダムの言う通り、少なくとも、ソルォンはピダムを優秀な司量部令に育て上げることが自らの権力に繋がると理解している。おまけにピダムの言う静養は数日のことで、火急の件もない以上、反対するのはおかしかった。そもそもピダムはこの二年、一日たりとて休むことはなかったのだ。

「わかった。ただし、行き先だけは侍衛府令に伝えておいてくれ。何かあった時に行方知れずでは困る」
「勿論です、陛下」

 トンマンが「侍衛府令に」と口にした時にピダムの眦が不服そうに蠢いたことには気付かぬまま、トンマンはピダムを見ていられなくて正面に向けていた視線を、再び上書に落とした。

 ピダムは申し出た通り、翌日の朝には静養の為に清遊へと赴いた。アルチョンからそのことを聞いたトンマンは、まさか徐羅伐を離れるとは思っていなかった為に一寸閉口したが、まもなくミセンとソルォンがピダムの代わりに司量部のことで謁見に現れた為に、冷ややかな女王の仮面を掲げた。
 ミセンとソルォンは、有能ではあったが、勿論油断のならない相手だ。ところが不思議なことに、その朝の二人は妙に柔らかい雰囲気を醸し出していた。
 ……何があったのか聞き出したいところをグッと堪えて二人からの報告を受けたトンマンだったが、やはり生来不思議に思ったことは口に出す性を押さえ込むことは出来なかった。曰くありげな表情のまま退室しようとする二人をつい呼び止めると、疑問を声に出してしまっていた。

「今日のお二人は随分とご気分が良いように見えます」

 ――喰らいついた!……と長い袖の下で力強く拳を握ったことは隠したまま、ミセンは満面の笑みにいつもの不気味な笑い声を足した最高の状態で振り返った。ぎょろん、と妙な擬音がトンマンは聞こえた気がした。

「え~っへへへ。おわかりになりますか、陛下」
「ミセン公」
「……いいえ、構いませんソルォン公。ミセン公、一体何があったのです?」

 ソルォンがミセンを制そうとした為に文句も言えなくなったトンマンは、少しばかり二人を呼び止めたことを後悔しつつ、ぎこちない微笑を浮かべた。調子に乗ったミセンはさっとトンマンに近寄って、ふさふさとした扇をトンマンの頬に寄せると、聞き間違えのないように囁いた。囁きと言うにしては、随分大きな声で。

「…………え?」

 それでも、トンマンは何を言われたのか、咄嗟に理解出来なかった。いや、単語は聞こえた。理解も出来た。ピダム、娘、一緒に、清遊。一つ一つは理解出来るのに、それが一つの文に繋がらない。バラバラになったまま、散らばったまま、集まらない。

「とうとうピダム公も年貢の納め時と言うわけです」

 えっへっへ、と耳障りな笑声で高らかに舞い上がるミセンに何か言葉を返す余裕もなく、トンマンは止まってしまった思考と身体を取り戻そうと凍りついた表情の下でもがいた。
 そんなトンマンの様子をじっくり見定めたソルォンは、任務完了とばかりに口元に微かに冷たい笑みを湛えると、ミセンに目配せした。あとは、女王が動くのを待つだけだ。ミセンも言われるまでもないと鬱陶しそうにソルォンに頷いてみせた。

「それでは陛下、ご機嫌麗しゅう」

 色男の名に恥じない切り替わりの良さで優雅に礼をすると、ふんふんと鼻歌を後に残してミセンとソルォンは去った。……トンマンは、二人がいつの間にかいなくなったことにすら気付かなかった。

「――陛下?」

 トンマンがやっと我に返ったのは、いつになってもどこへも出ようとしないトンマンを訝しがったアルチョンが入ってきた時だった。

「陛下、本日は便殿には――」
「……アルチョン公」
「はっ」

 震え始めた拳を隠すように袖の下で強く手を握りしめると、トンマンは顔色の変化を悟られないように正面を見据えたまま訊ねた。

「ピダムは……何か言っていましたか」
「ピダムですか? いえ、今朝申し上げたことの他には、何も聞いてはおりません」
「…………そうですか」
「陛下、ピダムに何か? 使いを送りますか」
「いいえ!」

 突然声を張り上げたトンマンにアルチョンは目を丸くした。彼女がこんな風に荒れるのも珍しい。

「便殿に行きます。大等達が待っています」

 常にも増して郎徒染みた……もとい、きびきびとした仕草で大股に仁康殿を飛び出したトンマンを追いかけ、アルチョンは首を捻った。

 その後、一度も転んだことのない仁康殿の階段を踏み外したトンマンの腕を掴んで、危うく転げ落ちるのを阻止したところで、アルチョンの決意は固まった。――何か、あった。ピダムにあったのか女王にあったのかは定かではないが、このままではアルチョンが目を離した隙に女王は大怪我をしそうだった。
 侍衛府の兵を呼ぶと、直ちにチュクパンを呼ぶようアルチョンは命じた。


**


 そもそも大自然にも美しい景色にも興味のないピダムは、何度も足を止めては離れて久しい徐羅伐を振り返っていた。
 ……とは言っても、彼が今いるのは徐羅伐の目と鼻の先だ。馬で駆ければ、宮殿から半刻ほどで到着する。彼が恋しがっているのは徐羅伐でも宮殿でもなく、当然女王であった。

「ピダム公は本当に正直ですねえ」

 その隣で、おっとりとした声が柔らかい風に揺れた。しかし、この二年間片時たりともトンマンから離れていなかったピダムは声の主には興味もないのか、未だに徐羅伐のある方向へと遠い視線を送っていた。熱烈で、切ない眼差しを。
 ……どうしてこの眼差しを間近で受けているのに女王陛下はなんにも感じないのかしらん、となんだか父の頼みを聞いてしまった自分をアホらしく感じて、声と同じくおっとりとした様子で彼女はしんしんと積もる雪を見上げた。…………寒かった。

「あの……ピダム公。中に入っても宜しいですか?」

 どうやらこの男は寒さと言うものを全く感じない身体を持っているようだったが、彼女は違う。普通の人間だ。寒いものは、寒い。風邪もひく。徐羅伐恋しと寂しげに立ち続けて雪に埋もれそうなこの男と一緒にいたら、病でも拾ってしまう。

「…………」
「……失礼致します、ピダム公」

 このままボーっと徐羅伐に歩いていきそうな『冷酷非道の司量部令』に背を向けると、父のミセンへの恨み節を呟かずにはいられなかった。

「…………三日もここにいたら、わたくしのいとこは廃人にでもなってしまいそうな気がします、お父様……」

 ミセンからは、隙あらばピダム公に色々と手解きして差し上げろ、ととんでもない頼みごとをされた彼女は、何とも形容し難いいとこをもう一度見て、嘆息した。
 素地はいい。見目はいい。……髪も、下ろしていれば美しいだろう。だが。

「……色気がないわねえ」

 宮中の女官達は冷ややかな美貌の司量部令にきゃあきゃあ騒いでいるらしいが、今ここにいる男は、離れた恋人を恋しがる色男と言うよりは、主人を待つ犬に近かった。残念ながら。

「確かに……お父様の仰る通り、手を加える必要があるわねえ……」

 くしゅっと小さなくしゃみを一つして、彼女もまた、暖かい徐羅伐の邸へと思いを馳せた。


**


 ごぃん、と穏やかならざる音を立ててトンマンが脛を打ったのは、うっかりアルチョンが目を離したほんの二、三秒のうちのことだった。

「……っ!」
「陛下!」

 痛みが激しかったのか、唇を噛んで悲鳴は堪えたものの、さすがのトンマンもその場にしゃがみ込んでしまう。
 そしてアルチョンが視線を外す原因となったチュンチュとユシンは、いつになくどんくさい女王を前にして、それぞれ奇妙な表情をしていた。ユシンは驚き心配していたし、チュンチュは今日に限ってやたらと挙動不審になっている叔母に欠けているものを察して、呆れた顔をするしかなかった。……いつの間に、叔母はピダムなしでは魂が抜けた状態になるようになってしまったのだろう。

「陛下、直ちに宮医を!」
「大……っ丈夫、です……!」

 その言葉に説得力は欠片もなかったが、ふんっと鼻息荒く立ち上がると、トンマンは仇でも見つけたかのように眦を吊り上げて自分の席に座った。どうやら、戦闘態勢に入ったらしい。

「どうしたのですか? チュンチュ、ユシン公、座って下さい」

 平静を保とうとして攻撃的になっていることには気付いていないのか、鋭く彼らを睨みつけているトンマンの無意味な怒りを買わぬよう、チュンチュは素早く、ユシンは訝しげに席についた。ところが、いつもならそこで退席するアルチョンは、今日ばかりは女王から離れるわけにはいかないとばかりに、手の届く範囲に影のようにへばりついて、離れなかった。
 ……長いような、短いような一日が終わる頃には、ほとほとと降り続いていた雪は止んで、落日が赤々と徐羅伐を照らしていた。



****

またまた続き物で申し訳ないです…! 文体からもわかるように(笑)、ギャグものです。ピダムのブーメランアタックは成功するのか!?(笑)

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  1. 2010.08.28(土) _18:44:12
  2. SS(ドラマ設定IFもの)
  3.  コメント:2
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comment

ふと、ポジョンの恋愛が気にかかりました・・・

  1. 2010/08/30(月) 23:48:49 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
タイトル見た時、ミセンが主役!?と思いましたが違った(笑)でもこのネタ、リク一覧の中でもわ~気になる!と読みたかったネタなのですっごく楽しみに読み始めました。

ミセンの娘さんが大いに気になります!ピダムの様子からいろいろ見てとっている事からして、またミセンの芝居の役者として事情を承知の上で選ばれるあたり、「宮廷の娘達の胸騒がす司量部令とご一緒できて嬉しい・・・v」な貴族の娘とは一味もふた味も違いそうな、小粋で洗練された美女を想定します。「手を加える必要」って何だろうとわくわくします。

トンマンは・・・・そんなに動揺激しいんだったら、も少し自分の胸に手をあててその理由を追及したらいいのになーと思います。ああなんて手のかかる二人wwwミセン先生(なぜかそう呼びたい)も大変ですね!

ポジョンも書きたいです…!

  1. 2010/08/31(火) 18:41:15 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
ポジョンは個人的にはソルォンさんに続く旦那さんにしたいキャラなので、恋愛するならマジでいい男にしたいですね!
歴史上のポジョンは恋愛に興味なし、の究極の草食系だったみたいですが…(笑) 創作するなら、せっかく子役時代にトンマンと縁があったので、それを生かして切ない話にするのもありかなーと思います。

すみません、ミセン主役は…なかなか書けないですw
このネタはシリアスにいくかギャグに走るか悩み、ついでにピダムがトンマンじゃない他の女の人に走るきっかけや理由に悩み(笑)、どーしたもんかとさらに悩んだ結果、ミセンに責任を押し付けることになりましたw

ミセンの娘は、次辺りで正体が判明します。名前もあるので(ハングルの読みとして正しいかが怪しいですが…)、お楽しみに!
ただ、さすがりば様…小粋で洗練された美女は当たりです(笑) お気付きかもしれませんが、彼女、若くありません。ピダムとトンマンを「あらあら」と微笑ましく、呆れながら見れる年齢ですw 「手を加える必要」…は、そ、そんな大したことではないかもです。

トンマン、ホント困ったちゃんですよね!(笑) ドラマの中でもトンマンの不器用っぷり…と言うか、無骨で野望な感じが物凄かったので、今回も遺憾なく発揮して頂きました。全く手がかかります!(笑) 
ミセン先生のお心お察ししますw


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