善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS プレゼントの裏

いつぞやネタで書いた「先生はシンデレラ」設定の現代パロディSSです。バレンタインネタ、お楽しみ頂けますようにv


* *


 夜の闇に溶け込みそうでいて、重厚な輝きを見せる黒い車体が入ったのは、街の中心部に聳え立つマンションの地下駐車場だった。
 厳重な警備の施されている駐車場は平日の夜とあってか、人気はない。暗証番号を入力して車庫に車をしまうと、彼はチェーンにとりつけてある鍵を外して、リズミカルにそれを放りながら歩き始めた。イギリス生まれの車に相応しく、スラリと背の高い彼が纏うのは、上品な黒いタキシードだ。
 けれどもパスワードを入力してマンションに入った彼は、口笛を吹きながら足早に最上階を目指した。絵文字の一つもないシンプルなメールの文面を思い出す彼の口元は、だらしなく緩んでいる。

(起きて待ってるって言ってたからな)

 ――ったく、可愛いことを言ってくれるじゃないか。
 カウントダウンから新年、旧正月にバレンタインと続いていた一連のイベントを終えた今夜、打ち上げにも出ずにその場を去った彼を、皆が何と噂しているかは知っている。婚約中の恋人に夢中だと言って、馬鹿にしていることも。
 だがそれでも、彼――ピダムは、恋人であるトンマンに会うのが楽しみで仕方なかった。せっかく教師をしている彼女が学校が冬休みに入った為に時間が出来たと言うのに逢えなかった日々を思えば、彼女の顔が見たくて、声が聞きたくて、居ても立ってもいられない。わざわざ休みを取ったと言った瞬間に母ミシルにも叔父ミセンにも呆れられたが、構わなかった。

『誰だったかしらね? 教師なんて野暮ったい仕事をしてる女は御免だ、なんて言ってたのは』
『正義感ばかりが先行してる奴は御免だ、なんて言ってた色男が……はぁ、やってられませんよ、姉さん』
『はいはい。ま、ババアとジジイには今時の恋愛がわからなくて当然――』
『ああ、明日も平日だから仕事はあるのよねえ……』
『未熟な若者のすることですから、大きな心で見守って下さい、お母様』

 会場を発つ際に言われたイヤミを噛みしめつつ目的の部屋の前に立ったピダムは、すうと息を吸って襟と袖口を整えてからインターホンを押した。



「あ」

 聞き慣れたインターホンの音。恋人ピダムが来た証であるその音を聞いて立ち上がろうとしたトンマンは、しかし、すっと翳された手を見て持ち上げかけたお尻をソファーに戻した。

「出ますよ」
「いいの?」
「はい。夜中ですし、ピダムヒョンじゃなかったら危ないですから」
「ごめんね、ありがとう」

 すまなさそうにトンマンは微笑むと、エントランスへ行く代わりにキッチンへと向かった。それを見て腰を上げた少年は、ふっと口の端を上げてエントランスへ踵を返した。
 覗き窓から外を見ると、ドアの向こうにいるのは恋人だと信じているのか、やに下がった笑みを隠しもしないピダムが立っていた。顔はだらしなかったが、立ち姿はと言えば。

(……キザったらしい奴)

 チュンチュは天井を仰いで嘆息してから、いつもの得体の知れない微笑を唇に湛えてドアを開けた。……ちなみに、チェーンは外さないままで。

「トンマン――」
「こんばんは、ピダム」
「!」

 ドアの隙間からチュンチュの顔を見た途端に表情を凍りつかせたピダムは、上から下まで睨んでそこにいるのが確かにチュンチュだと確信してから、唇を引き攣らせた。チュンチュの勘が正しければ、その唇は「クソガキ」と声にならない呻きを紡いでいる。

「一昨日からおばあちゃんが入院しまして。一人じゃ何かと危ないし寂しいだろうからって、今日から先生が泊めて下さることになったんです」
「……」

 ――そんなことは、聞いてない。
 思わず叫びそうになったピダムの怒りをさらに煽るかのように、チュンチュはにこにこ微笑んで口調を変えた。

「先生に聞いたよ。あんた、忙しかったんだって? お疲れ様。安心しなよ、今日は良い子にしてもう寝てやるから」

 ただし、と笑いながら、チュンチュは一度扉を閉めてチェーンを外した。僅かなりともドアが開くなり、突撃するかのように擦れ違っていく男に、そっと囁く。

「僕がいるんですから、未成年に相応しからぬことはしないで下さいね」
「ハッ……」

 すぐにでもトンマンの安否を確認したくて駆けた足を一度止めると、ピダムは苛立ちを紛らわすかのように息を吐いた。チュンチュを締め上げるべきか否か悩んでいた手が、不穏に動く。

「おい、殴られたくなきゃ偉そうな口利くな。大体――」
「ピダム? おかえりなさい」
「トンマン」

 ――けれども、そこへトンマンが現れるや、ピダムは蕩けた顔つきになって彼女を抱きしめようとして……さっと避けられた。どうやら、チュンチュの前では一切のスキンシップをしないつもりらしい。

「ヒョンも来たし、僕は寝ますね。先生、お休みなさい」

 それを見てくすりと笑ったチュンチュが客間に引っ込んだ瞬間、ピダムは今度はトンマンの制止も聞かずにトンマンを寝室へと引き摺り込んだ。
 きっちりとドアが閉められたと同時に明かりもつけずに始まったのは、熱烈なキスの応酬。やがてお互いの顔が見たくて電灯をつけた後も、ピダムは嬉しそうにキスの合間に囁いた。

「メイクしてなくて良かったよ」
「どうして?」
「トンマンの匂いが味わえるから」

 赤くなった頬を熱を孕んだ舌先が舐めると、再び唇が重なった。先程とは違ってベッドに倒れ込んだ二人の影は、暫く蠢いていた。
 しかし、ふとした瞬間にトンマンが息を切らしながらも笑った為に、ピダムも眦を緩めた。

「唇が腫れそう」
「明日の朝には治るさ」
「ピダムの服も、皺になっちゃうし」
「脱がせてくれる?」
「途中までは」

 起き上がってベッドに腰掛けた二人は、息を整えながらリズミカルに会話を楽しんだ。

「ピダム、遅くまでお疲れ様」

 ピダムのタイを外すトンマンの顔は、柔らかく綻んでいる。ちらっと一瞬だけ視線を上げて「待ってたの」と小さな小さな声で呟く彼女が、ピダムは可愛くて堪らない。自然と、小僧のように破顔してしまう。

「ありがと。トンマンこそ、遅くまで……『可愛い』生徒さんと待っててくれて」
「うん。良かった、チュンチュもピダムに会いたがってて」
「……へえ?」

 しかし、話題がチュンチュのことへと飛ぶと、ピダムの双眸は途端に嫉妬でいっぱいになった。
 ――あいつ、いつまでここに居座る気だ?
 チュンチュには祖母以外に身寄りがない。だからその祖母が入院した今、担任教諭であるトンマンが世話を焼くのは、当然と言えば当然のことだった。
 けれどもピダムにとっては、子供とも言いきれない年の男が恋人と暮らしているなど、不安で仕方がない。

「私もね、ピダムと話がしたかったから、今日来てくれてホッとしたんだ。実は……」
「危ないだろ」
「え?」
「トンマン。例え生徒だろうが、男の同居人は認められない。食うに困らないよう金なら払ってやってもいいけど、ここに住むのはダメだ。今夜は俺もいるし泊まらせてもいい。でも、明日には出てってもらうよ」

 上着をハンガーにかけるトンマンの姿をじっと見ながら、ピダムは低い声で話した。有無を言わせぬ口調だ。

「ピダム……」

 そんなピダムをトンマンもまたじっと見返すと、何やら不穏な微笑を浮かべてピダムを手招きした。

「何――いてっ!!」

 ふよふよと誘われたピダムを待っていたのは、軽い電撃。その出所はすぐに知れた。

「あの年頃は難しいからな。私も万が一を考えて、こう言うものは常に身に付けてるけど……やっぱりこれだけじゃ心許なくて」

 どこがだおい、と突っ込みたくても、ビリビリと痺れる腕が口を重くさせる。結局、ピダムが何も言えない間に、トンマンはにっこり笑ってピダムの隣に座った。

「だから、ピダム、暫くここに泊まってくれない?」
「…………。えっ!?」

 思わぬ提案に踊るピダムの手に、トンマンはさらなるプレゼントを置いた。

「あと、これ。バレンタインだから」

 二人が恋人同士になって、初めてのバレンタイン。
 ピダムとしては、夜景の綺麗なレストランを貸し切ってディナーをして、そこでチョコを受け取るはずだった。ドラマよりロマンチックな夜にして、この、些か飾り気のない恋人を夢見心地にする予定だった。
 しかし、チョコレートはもう彼の掌にある。ついでに言うと、トンマンはもう一つ、やけに大きな包みをベッドにのせた。包装紙を破ると、現れたのはどう見てもピダムよりトンマンに似合う、可愛らしい……けれども、巨大なぬいぐるみだった。

「…………あのさ、トンマン」
「うん」
「えっと………………とりあえず、なんで、ぬいぐるみ?」

 好きって言った覚えはないけど、と胡乱な顔をするピダムに、トンマンは晴れやかに笑った。

「前に、一人で寝ると寂しいと言ってたでしょ?」
「ああ……」

 確かに言った。「トンマンがいないと寂しい」と言う、意味で。
 だが、ピダムの恋人はそこのところを盛大に勘違いしてしまっているらしかった。

「抱き枕としても使えるって聞いたから。普通の抱き枕より、ぬいぐるみの方が寂しくないんじゃないかと思ったの」
「はぁ……」
「でも」

 ……一緒に寝るなら、必要ないけど。
 ピダムの溜め息にも似た相槌を遮るようにそう付け足して、トンマンは彼から視線を落とした。

「……トンマン」

 一連の流れやプレゼントがそこに――「一緒に暮らしたい」と言う思いに帰結するとわかった時、ピダムは思わず噴き出した。こう言う時、赤くなって照れるよりも表情を固くするのがトンマンなのだと知って、嬉しくなった時と同じように。
 そして、その時よりも優しく笑ってピダムはトンマンを抱き寄せた。

「ぬいぐるみは、寂しいだろうチュンチュにあげるよ。一緒に暮らしても、一緒に寝てはやれないし」
「……じゃあ、お前はどうするんだ?」
「あれ、言わなかった? 俺はトンマンと寝るから、ぬいぐるみも抱き枕も要らないよ」

 明日、荷物を持ってこさせる、と笑って、ピダムはまたキスを降らせた。
 今度はキスでは終わらないらしく、チョコレートは宙に放られて、ぽふ、とベッドに受け止められた。二人がチョコレートのことを思い出すのは、再び寝台に横になったついでに、ピダムがその箱を潰してしまった時のことだった。



* * *

やっぱり現代ものは難しいですね…!
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  1. 2011.02.08(火) _06:33:07
  2. SS(パラレル系列)
  3.  コメント:4
  4. [ edit ]

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comment

なんて贅沢な!

  1. 2011/02/08(火) 13:57:48 
  2. URL 
  3. 椿 
  4. [ 編集 ] 
こんにちわ!
腹黒オールスターズ、豪華共演ですねー
韓ドラ風に妄想してみました(笑)

ピダムにぬいぐるみ……。
普通とズレた感覚はトンマンのチャームポイントですねっ!

現代ものって、難しそうだなと、私も少し書いてみて思いました……(汗)
スラスラ書けるようになりたいです。(←その前に漢字と日本語が…)

お邪魔虫チュンチュとトン&ピが一つ屋根の下!おぉー、この三人が囲む朝の食卓を見てみたい気が(笑)

ミシルとミセンのピダムに対するイヤミも、現代ものならではで、イヤミで返すちょっぴり強気のピダムも新鮮でした!

見たかった現代パロディ、おもしろかったですーv

椿様へ

  1. 2011/02/08(火) 23:23:22 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
椿様こんばんはー。

現代版ならではの共演をしてもらいました(笑)
って、腹黒オールスターズwwメンバーはトンマンとチュンチュとミシル&ミセン姉弟も入れていいんでしょうか?w
ピダムもこのピダムなら入る……んでしょーか。珍しく母にイヤミを返して、しかも涙目になりませんでしたもんね(笑)

ぬいぐるみ…はピダムなら持たないとは思うんですが、案外俳優さんには似合うんじゃないかなと(コラ)

現代ものって、ドラマの時代より難しいですよね…!今回の話を書いて、現代ものをすらすら書けるすー様凄いな、と改めて実感しました。どこまでカタカナを使っていいかも悩みますし…。(←私もその前に漢字と日本語が…)

> お邪魔虫チュンチュとトン&ピが一つ屋根の下!おぉー、この三人が囲む朝の食卓を見てみたい気が(笑)
思春期の息子(妻の連れ子)を持つ夫婦(夫は長期間の単身赴任から帰ってきたばかり)ってな感じになりそうですw
朝ごはん編なら書けそうな気もしますねー!ただ今回も妙に韓国のマンション事情とか調べてから書いたのでw、今度は朝ごはん事情を調べてから…!(←もう日本設定にしてしまえー)

現代バロディ、楽しんで頂けて良かったです。次も書けたら頑張ります!

管理人のみ閲覧できます

  1. 2011/02/09(水) 13:49:09 
  2.  
  3.  
  4. [ 編集 ] 
このコメントは管理人のみ閲覧できます

椿様へ

  1. 2011/02/09(水) 23:35:14 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
椿様こんばんははー。

腹黒五人組結成ですね!w(あ、でも五人組はミシルチームでしょうか…!?)(←ミシル&ミセンとセジョンとソルォンと上天官で)

現代ものは、多分私は全く書かないか、あるいは書くとしてもほんのちょっとしか書けないと思います。なので、ネタ被りなんてお気になさらず、どんどん書いちゃって下さいー!と言うかもう、私のネタで役に立つものがあるなら、使って頂きたいくらいです(笑)

どうか、書きあがったらお蔵入りさせずにブログに掲載なさって下さい!ぜひぜひ読みたいですーvv

厚かましくなんてないですよ…!
むしろ「うちのネタ使って下さい」とか言う私のほうがよっぽど厚かましいです(恥)


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