善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 暴れ龍と男装娘の魔物語

ふと思いついたので。


* *


 昔々、新羅と言う国のとある村に、一人の商人が暮らしていました。彼の名は、チルスク。寡黙な彼は商才には欠けるところがありますが、その粘り強さと立派な体躯と生来寡黙なところがとてつもない迫力となって商売相手を圧倒し、結果としてまあなかなか上手く商売をしていました。
 そんなチルスクでしたが、狡猾な大商人ヨムジョン相手にはなかなか商売が上手くいきません。今回も、ヨムジョンに言いように踊らされて大損をしてしまったチルスクは、愛妻ソファと可愛い娘達恋しさに近道をして、これまで一度も足を踏み入れたことのない山中へと入って行きました。
 とは言え、見知らぬ山ではありません。魔物が棲むと言われており、地元の人間は皆、魔物が悪さをしないように朝に夕にと山を拝んでいたのです。
 チルスクも魔物のことは知っていましたが、一度だけなら、とつい心が急いて、山の奥深くへと迷い込んでいきました。
 そうして、どれくらい歩いたのでしょう。ふいにぽっかりと森が開けて、チルスクの目の前に宮殿が現れました。

「……?」

 何故山の中にこのような立派な建物が、とほんの少しだけ疑問に思ったチルスクでしたが、それよりもせっかくだから道を聞こう、と彼は宮殿の門を潜りました。
 しかし、いくら歩き回っても人っ子一人見つかりません。ただ、美しい牡丹と野放しにされている鶏の群れだけがチルスクの目に映ります。
 困ったチルスクは、せめてもの手土産に、と娘達の為に牡丹を手折りました。ついでに、鶏も掴みました。――その時!!

「俺の肉に何すんだよっ!!」

 いきなり何者かが襲い掛かってきました。しかしチルスクも負けてはいません。鍛えた拳で戦います。両者、共に強く、なかなか勝負はつきません。

「ちっ」

 その時、不利だと感じたのか、黒い影がざあっと風を切って駆け出しました。影を見るに、大蛇のようです。思わずチルスクも後を追います。けれども次の瞬間、チルスクは落とし穴に落ちていました。深い、深い穴です。さすがの彼も、這い上がれそうにありません。

「へへっ。やーい、引っ掛かったな!」
「……!」

 チルスクは歯軋りしましたが、どうにもなりません。渋々顔を上げると、黒い鱗を不気味に光らせた魔物が穴を覗き込んで笑っています。さらにその魔物は、とんでもない申し出をしました。

「出して欲しいか? 出して欲しかったら、お前の代わりに俺の僕となる奴を示せ。そうしたら、お前を出してやる」

 そうは言っても、チルスクは妻や娘達を代わりにする気にはなれませんでした。ただ、どうしても帰らない理由だけは伝えたい、と訴えるチルスクに、魔物は一つの策を思いつきました。毎日山へ向かって拝む者に、一人の商人が囚われていることを知らせたのです。
 その知らせはたちまち村を駆け抜け、いつまで経っても帰って来ないチルスクを案じる彼の家族へも届きました。

「チルスク様が魔物に……ゲホッ、ゲホッ」
「母さん!」

 身体の弱い妻ソファは、心労のあまり倒れ、長女チョンミョンは恋人ヨンスと共に慌ててソファを看病しました。気高いチョンミョンは、悔しそうに唇を噛んでいます。

「魔物を許さないわ……! 性根の腐り果てた化け物のせいで、父さんと母さんが酷い目に遭わなきゃならないなんて!」
「……」

 その様子を見ていた次女トンマンは、これまでこつこつと貯めていたお金で剣と弓を買うと、美しい髪をきりりと結い上げて男児の装いをして、こっそり村を出ました。目指すは、魔物の棲む山です。

「あんなに強い父さんが囚われたんだから、よっぽど強いか、悪知恵が働くに違いない」

 正攻法では勝てないだろうと当たりをつけたトンマンは、たくさんの荷物を抱えて山を登りました。夜道でもあり、なかなか辿り着かないだろうと思われましたが、不思議なことに真夜中のうちにトンマンは宮殿の前に立っていました。

「すみませーん!!」

 キイキイと軋んだ音を立てて門は開いたものの、誰一人現れません。トンマンは首を傾げながらも、父を捜して宮殿の中へと入って行きました。

「わっ」

 宮殿の中は、見たことがないくらい豪華でキラキラと輝いています。その眩しさに目を細めつつも、あまり贅沢に興味のないトンマンは父が囚われていそうな場所を探して宮殿の中をうろつきました。
 そうして宮殿の奥まで迷い込んだトンマンは、またそうっと扉を開いて中の様子を窺いました。

「ここにも誰もいない……ん? あれ、なんだろ」

 他の部屋とは違った雰囲気のしつらえの部屋の中央には、たくさんの蝋燭で照らされた箱が置いてあります。なんとなく手を伸ばしてみると、重厚な箱なのに鍵は掛かっていないようです。箱の中には、紫色の封筒と紅色の封筒が入っていました。

「…………取引の材料になるかな?」

 どうやらこの二つの封筒は大切なものらしいと察したトンマンは、ごそごそとそれを懐に仕舞って、また長い廊下に出ました。残る部屋は、ただ一つ。突き当たりにある部屋です。
 トンマンは深呼吸をして自分を落ち着かせてから、ゆっくり扉を開けました。

「……あ」

 広い広い部屋の中は、月明かりでぼんやりと明るくなっています。そこは、これまで見た部屋とは違って、明らかに誰かが使っている部屋でした。思わず恐る恐る部屋の中へと入って行った、その瞬間。

「あっ」

 トンマンの持っていた荷物が円卓にぶつかって、茶器が円卓から落ちてガシャンと割れました。すぐさま、寝台で横になっていた影が飛び起きます。

「誰だ」

 冷たく地の底を這うような声でした。トンマンはびくっと震えましたが、ここで逃げるわけには行きません。懐から目潰しを取り出して握りしめると、じりじりと男に近付きます。

「ここに父が囚われていると聞きました。父を解放して下さい」

 男はトンマンの頼みを聞いて、げらげら笑いました。

「なら、お前が父の罪を償うか? 償うと誓えば、お前の父を解放してやる」
「誓います。だから、父を解放して下さい」
「殊勝な心掛けだな」

 間髪を入れず応じたトンマンにニヤリと笑みを深めると、男は立ち上がってトンマンへと近付きました。その姿は、魔物と言うよりは、ただの人間に見えます。
 しかし、トンマンとて容赦する気はありません。男が十分な距離まで近付くやいなや、えいっと目潰しを投げました。

「おっと」

 ところが、男はあっさりトンマンの攻撃をかわして、あっという間にトンマンの手首を一つに纏めて彼女の抵抗を封じ込めました。

「生意気な坊主だなぁ、おい」

 トンマンが娘であることには気付いていないのか、「坊主」とトンマンを評した魔物は荷物を全て取り上げると、風を起こして窓を開きました。

「わっ!?」

 途端に暴風が吹き、荷物が外へ飛んでいきます。さらにその風に乗って父のチルスクまで空を舞っていることに気付いたトンマンは、窓の外へ駆け出そうとしました。

「父さんっ!!」
「安心しろ。山の麓へ送り届けてやっただけさ」

 それより、とトンマンの手首を無理矢理掴み上げると、ピダムは白い掌に印を刻みました。

「お前の父が牡丹を手折った罰として、この宮の庭にいる百の鶏と、百の牡丹の世話をしろ。お前の父が手折った為に九十九になった牡丹の花が百に戻ったら、お前を家へ帰してやる」
「に、鶏と……牡丹?」
「そうだ。もし私に隠れて逃げ出そうとしたり、この誓いを破ることがあれば、お前は死ぬ」
「つっ……」

 掌にちくりと痛みが走ったかと思うと、トンマンの掌には赤い牡丹の形をした痣が刻まれていました。
 ――こうしてトンマンは、暴れ龍の化身ピダムの宮殿で働くこととなったのでした。



* *

呪いにより、昼は翔べない上に魔力もない龍に、夜は魔力はかろうじてあるけど人間にされてしまった龍神ピダムと、男装トンマンのお話。美女と野獣パロディでした。
きりやんとまりもちゃんの写真を見たら妄想が…!
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  1. 2011.01.12(水) _19:47:53
  2. SS(パラレル系列)
  3.  コメント:4
  4. [ edit ]

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管理人のみ閲覧できます

  1. 2011/01/13(木) 04:48:46 
  2.  
  3.  
  4. [ 編集 ] 
このコメントは管理人のみ閲覧できます

hi様へ

  1. 2011/01/14(金) 00:32:55 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
hi様、こんばんは!
本当にお久し振りです!またコメントをもらえて、とても嬉しいです。このブログに来て下さる方の中で、善徳女王の生まれた国の出身者はhi様だけですので^^お忙しい中、またコメントを下さりありがとうございます!感激ですー(*´∀`*)

出来るだけ正しい文法を使うように努力していますが、翻訳機を通すときっと読みづらいところも多いでしょうね…!hi様の癒しになれて、幸せです。

私はピダム(毗曇)よりトンマン(徳曼)が好きなので、ついトンマンを贔屓して書いてしまいます(笑)
今回の物語は、ディズニー映画の『Beauty and the Beast(미녀와 야수)』の原作となる小説から設定を借りました。小説は、映画とはあらすじが少し違うんですよ。そして、善徳女王の世界に合うように、私がさらに設定を変えてしまいました(笑)
似たような話はギリシャ神話にもありますし、『Arabian Nights(千一夜話・천일야화)』もそうですよね。古今東西共通する物語で、素晴らしいと思います。
健気な末っ子王女と鬼の話、トンマン(徳曼)とピダム(毗曇)にピッタリですね!(笑)九年も労働を強要して、その上結婚まで強要するとは、悪者です。さすがピダム(笑) それでも、トンマンなら反撃に出るんでしょうね…!

日本でも、最終回の放送が終わったら、盛り上がって欲しいですね!でもこの放送は三分の一をカットしているので、これまでにもトンマンとピダムの恋愛場面がカットになっているんですよ(;Д;) きっと、視聴者の中には「トンマンは怖い」と思うだけで終わっている方もいると思います…。

トンピ(徳毗・덕비)は、あくまでこのブログだけで通じる言葉ですね(笑) 皆様と話していて、「トンマンが恋愛関係を主導しているので、トンピ(徳毗・덕비)」と言う結論に至りました。ピトン(毗徳・비덕)が正しいと思います(笑)

それでは、hi様、今年も宜しくお願い致します!韓国のお正月はこれからでしょうか?楽しいお正月を迎えられますように^^

翡翠様へ

  1. 2011/10/23(日) 18:16:00 
  2. URL 
  3. 鷺ノ宮 
  4. [ 編集 ] 
どこにでも出没失礼。
ここもツボでハマりました。
大人の絵本アジア版ですね♪
続き続き-読みたい-!上下いけます!
ついでに「オペラ座の怪人」版も-!

鷺ノ宮様へ

  1. 2011/10/24(月) 19:32:59 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
三度こんばんはv
大人の絵本はわからないのですが、美女と野獣ネタなので、絵本ですねー。続きは、か、書けたら…です(汗)
オペラ座の怪人は、イメージが湧かないと言いますか…(ちょ) うーん、あの話自体が好きじゃないので、厳しいです…!


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