善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS それでも、大切だった<修正済>

最終回3
最終回のチュンチュの話です。
いつも通りデンジャラスなチュンチュです。管理人の書くチュンチュはいつも危ないですねー(笑)


* *


 ――私がテナムボを殺したのは、叔母が即位する前のことだった。

 ミシルの残党を生かすと叔母が宣言した時、私は耳を疑った。
 恨みが一番深いのは、誰か。そんなことは問題ではない。親に捨てられ己の素性を知らず砂漠へ追いやられ、それでも義母の愛を受けて育ち、両親にも会えた叔母と、父の顔も知らず、物心つかぬ頃に母から離され、義理であれ肉親と呼べる者もなく育ち、帰国した時には母すら消えていた私と。そのどちらの犠牲がより多いか――そんなことを比べて、どうなると言うのか。
 だが私にもわかることがあった。

(叔母上は……恨みと言うものを知らぬらしい)

 気風の違いとでも言うべきだろうか。
 叔母と私は共に異国で育ち、それ故に神国の者との違いを感じてきていた。その口には出せぬ孤独を、私達は分け合った。最も王位に近い王族でありながら、心は異国のもの――。その歪さから誰にも開けなかった心を、叔母にだけは預けることが出来た。
 けれども砂漠で育ち、郎徒として神国で暮らしていた叔母の感覚は、何もかも私と違っていた。

(知っていますか、叔母上。人材など……切り捨てても、すぐに補充が利くものなのです)

 隋では何もかもが違っていた。官吏であれ王族であれ、非があれば殺された。そして残された遺族の恨みの刃がこちらへ向かわぬように、一族全てを根絶やしにするのだ。
 チュンチュにとって、初めて目にした皇帝――明皇帝楊広。彼こそ、チュンチュにとっての『皇帝』だった。明皇帝は高句麗に敗れて滅びたが、チュンチュは彼や李世民のように王位を貪り、大業を成し遂げることこそを縁として生きてきた。
 己の傍にいる者達。己が選んだ側近達を率い、政治を行う。宮中にのさばる苔のような貴族達を排斥し、己の意が上から下まで浸透するよう、王宮の風通しを良くする。それが、一番の上策だ。

(叔母上の考えることは、所詮は商人の知恵から出たものだ。……古い者を飲み込み、自らの手足とするとは)

 欺き、脅し、従わせる。その手口が悪いとは言わない。けれど、叔母の視点が王として如何に破天荒であるか、それを彼女はわかっているのだろうか。……わかっているにしろそうでないにしろ、確かなことが一つだけある。それは、殺さないと言った以上、もう叔母は母の仇を討つことはしないだろうと言うこと。

(ですが、叔母上。私はあなたとは違う)

 私は恨みをこの手で晴らす為に生き残ってきた。全てを欲してきた。――だから。

「お呼びですか、チュンチュ公」

 その夜、叔母と同じ商人であるヨムジョンを呼んで、私は訊ねた。

「……残党どもは皆投降したか?」
「はい。チルスク公とソクプム郎が抵抗の末に斬り死にした他には、大きな混乱はありませんでした。大耶城周辺の民も、一先ず落ち着きを取り戻しています。さすがはチュンチュ公。この強大な城を一日の内に収拾してしまわれるとは」

 どう言うわけだか、ミシルが死んだと確認した後、叔母は城内を掌握することよりピダムに構うことを優先した。馬鹿馬鹿しい話だった。
 けれどもそのおかげで、私は残党どもの処置を好きにすることが出来た。彼らを一息に殺すことが出来るよう、手を打つことが出来た。しかし、最も憎い男は、防衛拠点にいた為に確認が遅れた。母を殺した下手人、テナムボは。

「私の命じた通りにしたな?」
「はっ。テナムボ郎はフンミョン団で身柄を確保しました。郎徒達も全員始末してあります」
「そうか」

 だが私はそれを逆手に取って、テナムボの率いていた軍を殲滅し、テナムボを捕らえた。

「それは楽しみなことだ」

 ――そうして、数日ほど監禁した後、徐羅伐に戻る前夜に、私は憔悴したテナムボを始末した。
 毒矢に倒れた母の痛みを、苦しみを味わわせる為に、楽に殺してはやらなかった。同室にいたヨムジョンが眉を顰めるようなやり方でテナムボを殺すことこそが、私の最初の復讐だった。苦悶するテナムボの悲鳴を聞いている間、私はその姿を睨めつけると同時に、口元には笑みを刷いていたようにすら思う。

 ……その時から、ヨムジョンは徐々に私と距離を置くようになった。


* *


(…………古い話だ)

 ピダムの乱が鎮圧されて、三日。
 すでにピダムを担いだ者達は全て処刑された。ミシルの乱の時、チュンチュに従い新たな王を立てようとした者達――チュジンを始めとする貴族達も、全て。

『チュンチュ公。私達は、あなたが恐ろしかった』

 トンマンの代わりにチュンチュが彼らの処刑を決め、それを宣告した時。打ちひしがれ、項垂れる者達の中で真っ先に声を上げたのは、チュジンだった。すでに死を覚悟しているのか、命乞いをするでもなく、彼はチュンチュを罵った。

『私達が何故ピダム公に従ったか。何故、あなたから離れたか。……私達は、テナムボ郎のように、この世から消えたくはなかったからです』

 その言葉にチュンチュは僅かに目を細めた。――テナムボ。
 チュジンの言葉に勇気付けられたかのように、ホジェも口を開いた。

『あなたは陛下が許したテナムボ郎を独断で殺した。それも、人知れず、遺体すら消した。陛下は何も仰らなかったが、私達は皆知っていました。あなたが殺したと』

 チュンチュの隣に立っていたユシンとアルチョンは、眉を顰めていた。彼らとて、ミシルの乱の際にテナムボが失踪したことを不自然には感じていたのだ。特にアルチョンは、仇が消えたことを訝しがっていた。それをトンマンにも進言しようか迷いもしたけれども、即位間もなく多忙なトンマンを一人の花郎のことで惑わせるのが良いこととは思えなかった。
 そうして、テナムボの一件は風化した。その件を調べて然るべきピダムは、トンマンに命じられたこと、そして彼女に関わることにしか興味がなく、チュンチュの動向など探りもしなかった。勿論、ヨムジョンのことも。
 しかし、貴族達は違った。十花郎達も、違った。
 彼らはテナムボのことを忘れなかった。

『チュンチュ公、あなたは恐ろしい。陛下は我らから兵を奪おうとなさるだけだったが、あなたは……!』

 ――我らから、命を奪う。何の躊躇いもなく、弁明すら許されず。我らの身上を考慮することすらなく。

『それゆえ……我らはピダム公を選んだのです』

 チュンチュの殺戮から彼らを護れるのはピダムだけだと思った。だから彼を盛り立てた。育てた。殺されぬ為に、強い剣を作った。『ピダム』と言う、諸刃の剣を。
 血を吐くような叫びを、チュンチュは微笑みながらひれ伏させた。

『私はその剣に感謝している。剣の切れ味が凄まじいおかげで、お前達の首を一度に落とせるゆえ』

 そしてその言葉を最後に、チュンチュは彼らに背を向けた。……次にチュンチュが彼らを見た時、すでに彼らはおらず、代わりに同じ顔をした首が並んでいた。



 目覚めたトンマンは、すぐにはチュンチュを呼ばなかった。真っ先に呼ばれると思っていた彼の期待を裏切って、まずアルチョンを寝所に入れた。
 ――その段階で、チュンチュは気付くべきだったのだ。

「お前は骨品制を否定して政界に飛び込んだ。お前は既存のものを否定する印象を皆に与えてしまっている」

 アルチョンの後にやっとチュンチュを呼び入れたトンマンは、寝台の傍に彼を座らせると、開口一番鋭くチュンチュに切り込んだ。

「……お前の時代を恐れる者が多い」

 そんなことは知っている。結局、貴族達が私から離れたのもその為だった。

「ですが、前に進まなければなりません」

 それは、叔母もわかっているはず。彼女は知っているはずではないか。彼を……チュンチュを懐に抱くことは、その毒も受け入れることだと。
 そう訴えるチュンチュの眼差しをかわすようにトンマンは正面を向くと、凛と張った声で宣言した。

「王位はスンマンに譲れ」
「!」

 不意打ちを喰らったかのように瞠目するチュンチュへと再び視線を戻すと、トンマンは丁寧に言の葉を紡いでいった。

「骨品制はいずれ廃れる。……覇道を歩むお前が、政局に煩わされることはない」

 ――お前の恨みの力を、国の内に向けるな。力は外へ。内には慈しみを、憐れみを。

「それは……勅命ですか?」

 トンマンの言いたいこと。それが何なのか、わからないチュンチュではない。
 けれども、知りたかった。それが情人を喪ったがゆえの感傷なのか、それとも……王としてのチュンチュを案じてのことなのか。
 トンマンは、揺らがなかった。情人を喪った衝撃で三日も生死を彷徨ったはずなのに、そこにいるのはあくまで『王』だった。

「……この時代の王が、次の時代の王に告げる助言だ」
「――」

 ならば。……ならば、チュンチュが言うことは何もない。寛いでいた姿勢を正して立ち上がると、チュンチュは最後の拝礼をした。

「……小臣キム・チュンチュ、謹んで勅命をお受けします」

 顔を上げれば、チュンチュへと向いていた顔は乾いた微笑と共に再び前を見ていた。萎れ、枯れた花を思い起こさせる風情のトンマンを残して立ち去る、その間際。

「……陛下」
「……なんだ?」
「私は……あなたを大切に思っていました」

 ――私なりに、心の底から慈しんでいました。あなたの意を、敬ってきました。
 つと振り返ったチュンチュは、最後に告げておくべき言葉を残して、トンマンの前から姿を消した。
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  1. 2011.01.30(日) _00:30:35
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:2
  4. [ edit ]

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comment

テナムボのことは

  1. 2011/01/31(月) 23:02:37 
  2. URL 
  3. りば 
  4. [ 編集 ] 
貴族の方々が覚えててくれたよ・・・よかったねテナムボ・・・自然消滅じゃなくて。とズレた感想を抱きつつ今晩は。しかし派手に散るより何となく忘れられてる方が残酷なような気がしてなりません。南~無~。

そして、やっぱりチュンチュへの遺言シーンをカットしたのって変ですね。考えてみると、死期が近いというのに後継者も指名せず逝くとか、王の義務をおろそかにするトンマンってのがまずらしくないですし。

それからトンマンが伽耶の書庫(古文書でしたっけ?うろ覚え)をチュンチュに教えるのはまだ早い、とウォルヤを止めてた前フリが、チュンチュを後継者からとりあえず外したことで完了するとも思うんですが。

んで、今頃やっと分かりました。今までどうもチュンチュを見ても焦点合わず、「?」だったのは、この人は後の太宗武烈王である、という事が常に頭にあって、そういう目で見ていたからだと。だから一生懸命いやこの人のやることには何かあるはず、と変に意味を持たせようとしてたんだなーと。

でも女王でさえ結婚(予定)相手に反乱起こされたあげく死ぬ、の善徳ですから、そういう先入観は断ち切ってあるがままを見なけりゃいかんかったんだー!とほんと今更思ってみたりしてます。そうして見直してみると、「王になる能力はあるが、器がない」というピダムに対して使ってきた表現が、割とこの方にもあてはまってしまうような・・・

しかし緋翠さんのチュンチュはまたデンジャラス標準装備なもんで、もしや色んな人間の恨みを買ったあげく、どっかで暗殺されて、影武者が王位についてたりしてなー。なんつう考えまで生まれる次第です・・・トンマンと違って振り切れてる所は王向きなのかなーと思ってましたが、分からなくなってきましたw

りば様へ

  1. 2011/02/01(火) 00:21:02 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
忘れられるのは一番残酷ですよねー。トンマンは忘れてなかったけど咎めなかっただけかもしれませんが、ピダムは確実に忘れてそうです。

チュンチュの描き方については、前フリだけ散々あって、結末はなし……と言う、マジで俳優さんが可哀想なキャラクターになっていまいました。韓国で最終回後すぐに放送された最終回特集で取り上げられてなかったら、どうなっていたことやら、って感じです。
女王時代はカットするシーンの選定が謎なことが多い気がします。監督ズも疲れたんですかねーw

トンマンのチュンチュへの危惧は、ウォルヤが開発中の新兵器(だったような?)を教えない、ピダムを例に出して「哀れみはないのか」と訊ねる、と、ポチポチありましたよね。
私見なんですが、史実のチュンチュはこの後唐や日本や高句麗と言った国と体当たり外交をしていくので、ドラマではきっと、その体当たり外交に至るまでのチュンチュを描きたかったのかなーと。彼が偉大な王になるのはもっと後のことで、まだまだ器が育ちきっていない成長途中の姿を見せたのだと感じています。

> 今までどうもチュンチュを見ても焦点合わず、「?」だったのは、この人は後の太宗武烈王である、という事が常に頭にあって、そういう目で見ていたからだと。だから一生懸命いやこの人のやることには何かあるはず、と変に意味を持たせようとしてたんだなーと。

ああ、なるほど…!!
私はまず、「この時代の王は、どれだけ偉大なことを成したとしても、本当は暗殺されたのかもしれないし、業績についても水増ししているかもしれない」と言う先入観があるので、善徳女王でのチュンチュがしっくり来たのだと思います。
必ずしも王の器がある人が王になるわけではないし、王になってから器が広がる人もいれば、反対に狭まる人もいる。チュンチュはきっと、これから広がっていくんだろうな、でも最期はどうなのかわからないねーってイメージです。
チュンチュの息子の文武王は晩年に反乱起こされてる上に海にお墓作ってますし、王ってつくづく難しい立場ですよね。

影武者が王になったかはわかりませんがw、チュンチュは一度、部下が影武者になり、高句麗で殺されていたような気が。


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