善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説第15話~!
奇数の回と言うことで、saki様のターンです。

私が言うのもなんですが、いやー今回は力作です!
オリジナルキャラクターが出てくるのですが、これがなんとも、私の好きなタイプでしてv(笑) 詳しいことは言えませんが、そう言えば、オリジナルキャラがしっかりと物語に関わってくるのはこれが初めてのような…?
今回のようなお話はあまり書いたことがなかったので、とても新鮮でした!リレー小説は本当に勉強になりますねー!

ではでは、続きからお楽しみ下さいv


* *


くすんだ赤銅色の髪の少年が街を駆けていた。
この街の自警団の見習いで父親も同じ団に所属している少年は、団員でもないのに自警団の詰め所に出入りするピダムの悪友だった。そして今、彼が目的地としているのはその彼の悪友が家族で営む小さな宿だ。
小さいながらもその賑わいと旅人をもてなす暖かさはこのオアシス一番といってもよく、さらにそこの兄妹はこのオアシスの名物といってもいいほどだとは彼の弁であり、またこのオアシスに住む者たちにとっても共通の認識であった。
それはさておくとして通りの角を曲がった彼の目に目的としていた人物がちょうど件の宿から出てくるのが映った。どこかに行くのか自分とは逆の方向に歩きだすその背中に向かって彼は駆ける勢いを殺さず後ろから飛びつくように体当たりをする。

「ピ~ダム。お前、近頃まじめに宿の手伝いしてるって本当だったんだな。」
「・・・いつもサボってるみたいにいうな、ザズ。」
「事実でしょ、兄さん。こんにちは、ザズさん。自警団の方はいいんですか?」
「事実だろ?さてはトンマンにこってり絞られたんだろ?
 よぉ、トンマン。元気か?俺、今日は非番なの。お休み。」

前半はピダム、後半はトンマンに向けての言葉だ。ザズはにこ~と人好きのする笑顔をトンマンに向ける。
一方で不意打ちだった体当たりの衝撃を逃しきれなかったのか軽く咳き込んでから『離れろ』と腕を払うピダムの手をザズは難なく逃れて再びピダムに抱きつく。

「まぁまぁ、そう言うなって。ちょっと気にかかることがあるんだよ。お前んとこの客で。」

後半の言葉はピダムにだけ聞こえるようにその耳元でザズは声を潜めた。
彼の腕を自分から引き剥がそうとするピダムの力がその言葉に若干緩んだのを見計らい、『何だ?』と視線だけで自分に問いかけてくるピダムにザズはニヤリと笑った。傍目には友人同士がふざけあっているようにしか見えないまま2人の会話は続く。

「お前の家の事を聞き回ってる。背の高い東洋人。」

ちらりと意味ありげにトンマンの後ろに立つ男に視線を投げればピダムの方眉が上がった。

「これがまぁ、トンマンやおばさんの事だけ聞き回ってるんなら何時もの事って放っておくんだけどよ。お前の事まで聞いて回ってるんだから、おっかしいよなぁ、な?」

トンマンは言わずもがなだが、ソファもまたその穏やかな仕草と優しさで密かな人気を集めているのだ。実をいうとピダムだってそういう意味での人気はある。ただ当人がどれほど妹に傾倒しているかということが知れ渡っているだけで。

「・・・どこのどいつだ。」
「あ?だから、お前んとこの・・・」
「違う。それじゃない。」
「違うって・・・・・。そっちか、おい。」

何故にこいつは自分の家族の事を嗅ぎまわっているらしい不審者よりも、男とはいえ可愛い恋心を持っている奴の方を重大視するんだろうか。本当に妹馬鹿だな、こいつは。というザジの呆れた眼差しを丸きり無視してピダムが低く唸る。

「当り前だろう。いいから教えろ。」
「仮に教えたとして、一応どうする気か聞いてもいいか?」
「出そうな杭は出る前に引き抜いて叩き割っておくべきだろ?」
「何を当然みたいな口調で言うんだよ、お前は・・・。」

しかも実行する気満々だ、こいつ。ピダムの背に圧し掛かったままぐったりとザジは脱力した。教えたが最後、相手の無事が保障されかねないことをザジも言うつもりはない。
しかし、この状態のピダムをどうするかと考えてどうにか出来る人間なんて限られている。
こちらの話など聞こえていなかっただろうがザジはトンマンに話を振ることにした。

「なぁ、トンマン。悪いけどお前の兄貴と俺の親交をより深めるために暫く貸出願いたいんだけど、いいか?宿の仕事が忙しくなるころには返すからさ。それまではそっちの旦那もいることだし、って! っうえあ?!」

ぐりんっとザズの体が浮く。人一人の体重を物ともせずにピダムが背中に貼りついていたザズを振り落としたのだ。強かに腰を打ったザズは何故だか冷たい笑みを浮かべたトンマンと凍ったように動かないピダムを見上げた。
その様子にザズはあれ?と首を傾げる。先ほどまでは呆れた表情で宿の前でふざけ出した自分たちを見ていたはずなのだが。トンマンはにっこり笑うと(ただしその笑顔は何時もと違い大変怖かった。)件の男の腕を取る。

「いいよ。兄さんよりも頼りになるおじさんがいるし、宿の仕事は気にしないで。」


+++


「なぁ、だからさ。そこまで落ち込むことないだろ?」

所変わってとある飯屋の片隅を陣取りザズは白く燃え尽きた感のピダムを延々と慰め続けていた。けれど飯屋の卓とお友達状態のピダムの耳には右から左のようで妹の名前をうわ言の様に繰り返し、さらに言えばその卓はピダムの涙によって小さな水たまりまで出来始めている始末だ。
ザズは嘆息した。確かにあの時はトンマンに話を振る事でこの男の暴走は未然に防げたわけだがそれに増して実に鬱陶しい展開になったものだと。
(トンマンもらしくなかったけどなぁ。いつもなら2つ返事で無理は無理。良いなら良いって言ってくれんのに。)
妹の氷の笑顔と『兄さんよりも役に立つ』という言葉の2重打撃でピダムはまるで恋女房から行き成り三行半でも突きつけられたどこかの男の様にその場に凍りつきトンマンがチルスクを連れて去っても微動だにしなかった。
ザズは、まぁそれをかなり好意的にトンマンの許可と取って今に至るわけなのだが。これではピダムに聞きたかった事が何も聞けないではないかと思う。こう見えて意外とピダムの耳は早い。自分の知らない情報を持っている事も多々あったりする。まぁ、そういった場合の主な情報源は彼の宿に逗留している商人たちからであるらしいのだが。
それでザズが聞きたかった事というのは現在宿の手伝い手となっている男の事などではなく、オアシスの状況についてだった。
オアシスの領主が替わるか替わらないかの頃からだろうか。街に降りてくる兵士の数が妙に増え始めたのは。初めの頃はそれでも客商売。売り上げが増えるなくらいにしか思っていなかったのだが、ここ最近になってどうにも街の人間に対して支払いを渋るとかの乱暴を振るう輩がちらほらと出てきたのだ。
こちらはあくまでもただの自警団。注意は出来てもおいそれとした事は国の兵士に対して出来る筈もなく。

(やっぱり、あの旦那の事は後回しにしときゃあ良かったなぁ。トンマンも最近はピダムが真面目に宿仕事してるから機嫌いいと・・・・・・・って、もしかして原因、俺っ?!)

一旦、その事に気付いてしまえばひどく馬鹿らしい事に自分は時間を割いたのだとザズは頭を掻き毟りたくなった。ついでに云えば目の前の男を慰める気力も全く失せる。

(おいおいおい。男の俺に焼きもちってありえねぇだろう。焼くんなら兄貴に女でもできた時にしてくれ・・・・って、無理か。)

ピダムがここ数日、宿仕事を真面目に手伝っていたということはある意味トンマンが兄を一人占め出来ていたということなのだ。相手が友人で男とはいえ兄を連れ出されることをトンマンは面白く思わなかったのだろう。ただし当人の自覚があるかどうかは別として。
しかしその感情の行き先が自分ではなくピダムの方に向かう当りがトンマンだよなぁとザズは思わなくもない。
兎にも角にもザズはピダムが正気づくまで放っておくことにした。こんなもの犬も食わないに違いない。





そして半刻が経ち。
一向に泣き止む気配の無いピダムを尻目にザズは店の女に料理の追加を頼み。





料理を摘まみながらさらに一刻が経ち。




冷えた料理と代わり映えのしないピダムを前にザズが皿を下げに来た店の女を口説きにかかるころ、それまで糸の切れた人形の様だったピダムがやおら立ち上がった。

「・・・って。待て、こら。」

彼をおいて店を出て行こうとする男の髪をザズは卓越しに手を伸ばして引っ掴む。

「は~な~せ!俺はトンマンと話さなきゃいけないんだよ!!」
「離すか。俺の話はまだ一つも終わってないんだよ。」
「俺には無い!!」
「お前には無くても俺にはあるんだよ。判れ、こら。第一、あの旦那のことも教えてやったろうが。」
「・・・あれなら問題ない。あと数日もすりゃいなくなる。」
「そうなのか?」
「あぁ。カターンの商団についてローマまで行くんだとよ。それよりトンマンに嫌わる方が大問題だ!!お前、責任取れんのかっ?!あぁっ?!」

髪を掴まれたままぎろりと睨みつけてくる迫力は中々のものだったが、ザズは臆した様子もなく真っ向からピダムと睨みあう。

「問題、責任っていうがな。トンマンが機嫌損ねた理由も分かって無いくせに云える口か?!」

真実ピダムが分かっていないから言える言葉である。判っているならこんなところで落ち込まずザズにだって構いもせずに妹の所に飛んで戻るだろうからだ。
そしてそれを肯定するようにピダムはうぐっと黙り込んだ。

「まぁ、あれだ。トンマンの機嫌が直るように俺も協力してやる。そのついでに俺の話も聞いてけ、な。」

まさかその不機嫌がただの焼きもちで、しかも原因が目の前のザズだとは考えてもいないピダムに対して彼はそう言ったのだった。


+++


ザズいわく、女の機嫌を取るにはまずは贈り物であるらしく、結局2人街の市場を連れ歩くことになった。2人がいるのは中央の市だが遠来からの商人たちで賑わう中心地からは大分外れた自分たちでも手の届く、ちょっとした贅沢品を扱うような区域だ。
その中でも女物の飾りなどを扱う店の人間にザズは慣れた様子で声をかける。ピダムはというと少し遠めに店先を覗きこんでいた。ザズが来い来いと手招きしてようやく観念したのかザズに並んで店の品を見始める。

「今日はこいつが主役な。俺は付き添い。」
「あら~。ソファさんとこの坊やじゃないかい。何だい、とうとうあんたにも良い人ができたの?」
「あ?」
「違う違う。相手はトンマンだよ。いつもダメな兄貴が苦労かけてるからそのお詫びってよ。」
「あら、そうなの?そりゃ残念だ。でも、あの子も年頃だからねぇ。こういう飾り物はあって困るこたぁないでしょうね。」
「うんうん。だよねぇ。で、何かいいのない?」
「そうだねぇ。あんたたちの懐具合にもよるけど・・・・・・。」

ザズの言葉に表に置いてある品ではなく店主は奥の棚をひっくり返し始めた。
あれでもない。これでもない。と呟きながら次々と違う引き戸を開け閉めしていく店主の手にはどう見ても自分たちには手の出せないような物まで収まっているのだが、まあいいだろう。見るだけなら金はかかるまい。

「で、だ。お前、街の様子見てどう思うよ。」
「兵士が目立つな。」
「目立つなって・・・。んじゃ、理由知ってるか?」
「領主が替わったからだろ。」
「んなこたぁ、俺でも知ってるわ。他だ、他。うちの親父殿たちも近頃殺気立ってんだよ。」

他の顔役たちと領主に会いに行っても門前払い。城の兵士にしても柄が悪いのが降りてきやがるしとザズが言えばピダムは少し考えてから口を開いた。

「・・・・・・・・交易禁止令が出てるって話だ。」
「交易禁止?専売でも始める気か?」
「さぁな。それしか知らん。まぁ、よっぽどの馬鹿か強欲でもなけりゃある程度のとこで話はつくだろ。」
「だといいけど。交易商の耳って意外と速いからなぁ。」

何も交易の拠点となっているオアシスはここだけではないのだ。領主の圧制や暴漢などにによって街が荒れれば交易商達の足だって遠ざかる。誰だって危険と分かる街に好んで近づこうとはしないだろう。
そうなれば、いくら水を湛えたオアシスがあろうとも街が廃れるのは時間の問題だ。
領主にしてみれば街が廃れる頃にはまた別の任地に赴くのかもしれないがこのオアシスに住む人間にとっては死活問題である。
ザズは新しいこの街の領主がよっぽどの悪辣ではないことを祈った。

「さぁて、こんなとこじゃ如何だろうね?貴族のお姫さんが持ってたっておかしかないよ。」
「おばちゃん、おばちゃん。選んでくれんのは良いけど俺らの小遣いで買えるもんにしてね。」
「なに言ってんだい。十分買えるさ。あんたたちが無駄金さえ使ってなけりゃあね。」

からからと笑う店主が新しく店先に並べ始めた中に一際目を惹く帯飾りがあった。ピダムの手も惹き付けられたようにその帯飾りに伸びる。
薄い更紗を幾重にも巻いた花の形の帯飾りは青銀とも黄色がかった白金とも見える淡い月の光を集めたかの様な色合いで、その花の中心と花弁を模した一部には朝露を思わせる蒼い小さな石が縁どられていた。
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