善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 共犯者・・あるいは優雅なる終劇@クリクリ様

クリクリ様SS第二弾!
今回はミセン(と言うかミセンとミシル)のお話です。タイトルは「共犯者・・あるいは優雅なる終劇」。

ではでは、どうぞ!


* *


「共犯者」

私達は良き共犯者だったー
 端的に言ってしまうと、そういう関係だろう。
勿論、世間的に言えば、私達は同じ母から生まれた姉弟であり、それ以外には何者でもない。だがやはり、私達の関係を表すと、これが一番ぴったりくるのだ。
 私達は良き共犯者だった。
初めて姉と対面したのは、彼女が10歳、私が8歳の頃だった。
些か特殊な家系の我が家では、女児が生まれるとすぐさま宮廷で育てられる事になっている。そう、まだ芽をだしたばかりの頃に温室に植え替えられ、たっぷりの肥料と水で大輪の花を咲かせ、極上の商品にするというわけだ。
そんなわけで、むつきが取れても、師について学ぶ頃になっても、私は一目も「姉」を見た事がなかった、というか、その存在すら忘れていた。
「あなたがミセン?」
 まだ10歳なのに、もう大人びた美貌を持つ姉は、鈴を転がすような声で話し、笑いかけた。対する私も、「はじめまして、あねうえさま」と、大人が喜ぶ「愛らしい子供」の仮面を被り、あどけなく挨拶をした。
 -この世界は芝居と同じ、男も女も、皆が仮面を被り、誰かを演じている・・というのが、わずか8歳の子供がはじきだした答えだった。
「まあ、なんてよく似た愛らしい子達なのかしら」
祭りの山車そっくりに飾り立てた伯母の一人(多分)が大げさな身振りで言う。
「特にミシルは日に日に艶やかになって・・これなら・・」
 どこぞの舞姫の様に扇を口元に寄せ、妙な含み笑いをする。「何が『これなら』なんだ?」と、私は蜜を絡めた菓子を頬張り、ふと姉を見た。
 その時だ。愛らしい桜色の顔をした少女が、刹那にー冷たい、氷の様に冷め切った表情をしたのは・・・
・・ぽかんと、一瞬呆気にとられた私は「愛らしい子供」の仮面も忘れて姉を見つめた。彼女は、といえば、澄ました顔でもう「頑是無い子供」になっている。
 ちらり、と目があった。
・・・みた?
・・・う・・うん
・・・これは「ひめごと」よ
・・・ひめごと?
・・・そう、ふたりだけのひみつ
 片方の眉だけくっと吊り上げた姉は悪戯っぽく笑った。まるで10歳の少女の様に。
 私も笑った。まるで8歳の少年の様に。

それからというもの、私達は良き共犯者となった。
表向きは仲の良い姉弟が他愛もなく遊んでいるように見えただろうが、実際には・・・
・・・ねえ、みた?
・・・うん、わらっちゃった
・・・わたしもよ ばかみたいなんだもの
・・・おとなって ばかだね
 姉は優れた「脳」であり、私は「手」だった。姉の考える事は私にすぐ伝わり、すぐに実行した。
 おかげで、泣く破目になる大人が続出し、表向きは「いいこ」で通していた私達は裏で死ぬほど笑い転げた。
 まったく、この世の中は二人の子供にとって巨大な遊戯場だった。姉と私は、良き共犯者だった。
 やがて、姉は15歳になり、私は13歳になった。

年頃になり、蕾が花開く様に美しくなった姉は恋をした。
 凛々しく、心正しく、正に文武両道を絵に描いた様な男だ。そしていつも、傍らに私と同じくらいの美少年を連れている。聞けば、その美少年は彼の父違いの弟で、誰からも愛されず冷たくされているのを、異父兄が不憫がり、可愛がっているらしい。
 実に美しい話だ・・まるで三文芝居の様に。
だが、姉は恋をしていた。いつも演じずにはいられなかった彼女が、彼の前では半ば仮面が取れかけている。
 おかげで、共犯者としては少々退屈だ
・・・我々と対極にある光の様な男は死んだ。親友の死に慟哭しての衰弱死で。
 芝居としては些か甘ったるいが、大衆受けはするだろう。
 姉はしばらく、糸の切れた人形の様になり、再び仮面をつけた・・「神国の妖女」として・・。
 そして、演じて、演じて、どんな役者も顔負けの名演技で自らの芝居に劇的に幕を降ろした。
 素晴らしい!稀代の悪女に惜しみない拍手を!

あれから何年経ったろう。
 その間、役者はお涙頂戴の茶番劇を演じ、飽きられれば交替し、忘れ去られていった。
 さしあたって今の私は・・そうだな、「反乱の首謀者の『共犯者』」といった役どころか。
 姉の分身とも言うべき息子は、姉と同じ邪悪な資質を持ちながら、私達にはない「純粋さ」とやらのおかげで自分の役を演じ切れなかった。演じ切れない役者はどうなる?勿論退場あるのみだ。拍手もなく、「歴史」という名の壮大な茶番劇からの・・
やれやれ、とんだ話だ。だがまあ、面白い演目だったな。
 哀れな姉の息子が狂おしいまでに恋した女も、演じ切る事が出来なかった。煌びやかな衣装と王冠をつけたにわか仕立ての「女王」役の小娘は、やはり彼への愛の為に「冷酷な女王」を演じ切れなかったのだ。おそらく、「女王」役も近々交代するだろう。役者は腐るほどいる。
・・・姉上・・おそらく、完璧に演じきったのは貴女だけかもしれません。貴女はその最期までも演出し、その退場後も我々を踊らせた。
 様々な役を演じた私ですが・・やはり貴女の「共犯者」役が一番の当たり役でした。
 それにしても、この鎧の無粋な色は何だ!終劇はもっと美しく装わねば。そう、例えば貴女が好んだ血の様に赤い紅梅色とか・・
 では、お見せ致しましょう。おそらく誰も見た事のない、見事な剣の舞を。
 ・・・驚きました?私ね、これでも名手なのですよ。ああ、でもとうにご存知かもしれないですね。
  私達は 共犯者なのだから




***

私見なのですが、タイトルがまず詩的でミセンにぴったりだなーと。私もこう言うタイトルをつけてみたいもんです…!

また、個人的にまさかの剣舞をする(予定の)ミセンに驚きました。私の中では、「ミセン=汗掻くことは出来るだけしないキャラ」だったもので…。普通に捕縛、投獄、処刑って流れだと思っていたので、目から鱗でした。やはし他の方のSSは勉強になります…!

また、クリクリ様へのお返事でも書きましたが、

>  それにしても、この鎧の無粋な色は何だ!終劇はもっと美しく装わねば。そう、例えば貴女が好んだ血の様に赤い紅梅色とか・・

↑この辺に特に「芸術家ミセン」を感じました。ポリャンの頬紅の色にまで拘ったミセンなら、自分の最期の姿、最期に纏うに拘るのは当然だなーと。
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  1. 2011.02.26(土) _23:40:38
  2. 宝物蔵(頂き物保管庫)
  3.  コメント:5
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<<SS 岐路@クリクリ様 | BLOG TOP | SS 黎明@クリクリ様>>

comment

<このコメントは管理人が拍手コメントから転送しました>

  1. 2011/02/27(日) 11:25:46 
  2. URL 
  3. nana 
  4. [ 編集 ] 
おはようございます。珍しくこのような時間にお邪魔します。緋翠さまとはまた違った視点、感性の作品、とても素晴らしいです。このタイトルを見て、私のダークヒーロー№1のチェーザレ・ボルヂアを描いた、塩野七生さんの「チェーザレ・ボルヂア あるいは優雅なる冷酷」を久し振りに思い出し、やっぱりダークヒーローは美貌が必須条件でしょうと・・・。また、ミシル、ミセン姉弟のイメージが、恐るべき子供たちとおっしゃっていて、こちらも遥か昔、東京八重洲の名画座で見た事も思い出し、まわりを巻き込んで好き勝手やっていく、やはり美貌の姉弟の物語は、この二人に重なるかなと・・・。萩尾望都さんが漫画化されていて、映画よりもこちらの方が面白かった感じです。善徳女王のお話から、こういういろいろな物語を思い出せるとは、本当に楽しいですね。皆様の創作意欲に感嘆しつつ、ただただ、楽しませていただいている身としては、申し訳ないような、でも、皆さんもっともっと、素敵なお話を書いてくださいねとお願いするしかないような・・・。本当にありがとうがざいますという言葉しかでてこないです。

nana様へ

  1. 2011/02/27(日) 22:47:39 
  2. URL 
  3. クリクリ 
  4. [ 編集 ] 
nana様へ

はじめまして、クリクリです。
この様な駄文に素晴らしい批評と考察を頂きありがとうございました。
 緋翠様の小説が大好きで、よく拝見させて頂いていた私が、無謀にも文章を書いていきなり送って・・本当に、緋翠様のご好意に甘えて、掲載までして頂き、夢の様でございます。
 お察しの通り、このタイトルは塩野七生さんの本のタイトルからインスピレーションを得ました。
 そういえば、チェーザレにも、ルクレツィアという、かけがえのない妹がありましたね・・・。昔の名門の姉と弟、もしくは兄と妹には、現代人からは計り知れない「業」があったのではないでしょうか。
 長くなりましたので、ここで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
    クリクリ

  1. 2011/02/27(日) 23:29:08 
  2. URL 
  3. nana 
  4. [ 編集 ] 
クリクリ様。はじめまして。ご挨拶が遅くなりすみません。

また、緋翠さま、このような場所を与えていただきありがとうございます。

本当に素敵なお話で、美しい姉弟がそれぞれの役を演じきって、破滅していく姿は、確かにほかの歴史上の人物や物語につながっていくようで、興味深かったです。

また、素敵なお話を楽しみにお待ちしています。
わざわざコメントをいただき、ありがとうがざいました。
                 nana

<このコメントは管理人が転送しました>

  1. 2011/02/28(月) 10:28:04 
  2. URL 
  3. 黒猫4.3kg 
  4. [ 編集 ] 
了解しました!
クリクリ様への感想をどうしたものかと思ってたりしたんで(^^ゞ
3作品見て、「静」の物語だな~と。
どの人もその終焉の時に回想しながらの形態をとってるので、そう感じるのかもしれませんが、その静がとってもゾクゾクします!
いや~緋翠さまとはまた違った感触!切り口!しびれますv
特にミセンが(笑)
そうそう、ミセンにこんな面があってもおかしくないよね!だってミシルとず~っと組んで生きてきたのは彼が一番なんだし!
そんな事を思ったのは、実はラストでピダムに話しかけ、なおかつ「ヒョンジョン」と呼びかけたことにはきっと深い理由が!とかなんとか思ったからでして。
今までは頭のいいお笑い要員扱いしてたけど、実はそれすらも彼の一面でしかない、とか。
ミシルがミセンに毒を笑いながら差し出したシーンを思い出しました。
あの時のミシルは「どうやって切りかえすか、それとも本当に飲むのか」って事を楽しんでいたように思います。それってミセンを信用してるからだよな~と。
思うばかりで考察って形にできず、お話としてまとめる事も出来ず、ひたすら頭の悪そうな感想ばかり述べてしまいました(^^ゞ
ミセンに夢見てるな~私。って現実を知ってみたり。ばーか、ばーかって自分で自分をけなしてみてます(笑)
くりくり様の手にかかって「サンタク」の物語はどんな事になるんでしょう。
楽しみです(^.^)

黒猫4・3kg様

  1. 2011/03/01(火) 00:09:05 
  2. URL 
  3. クリクリ 
  4. [ 編集 ] 
黒猫4・3kg様 はじめまして
クリクリです。
緋翠様、またまた場所をお借りします。
 この度は、素敵なコメントを頂き有難うございます。
 ミシル大好きな私、緋翠様のご厚意に甘え、駄文を掲載させて頂いております。
 ミシルの生涯には3人の男・・ミセン、サダハム、そしてソルォンが深く関わっておりますが、ミシルにとってサダハムは求めて止まなかった「光」、ソルォンは同族である「闇」、そしてミセンは彼女自身の「影」である共犯者だったのではないかな・・と考えております。
 ミセン・・優雅なる芸術家、醜悪なる道化、そして総てを欺くトリックスター。
 そんな風に考えた末に生まれたのが、「共犯者・・あるいは優雅なる終劇」でございます。
 「黎明」のミシル、「岐路」のソファ、「蠢動」のソルォン、そしてミセン。
 歴史の広大なうねりの中、彼らがどう思い、生きようとしたのか
 それを描き切れましたかどうかは、ご覧になる方々のご判断にお任せ致したいと思います。
 長くなりましたので、ここで終わりに致します。
ありがとうございました。
    クリクリ
 


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