善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 岐路@クリクリ様

クリクリ様に頂いたSS三本立てラスト!!
今度はソファ(と言うか、ソファとピダム)のお話です。この組み合わせもまた業が深いと言うか、実は本人達はドラマ中では会話をしていない(気がする)んですが、お互い因縁のある間柄ですねー。

ちなみにクリクリ様の次回作は「ミシルとソルォン」で、「サンタク」も予定しておられます。サンタクのお話は書こう書こうと思いつつも書いてないので(コラ)、益々楽しみですv

ではでは、どうぞ!


* *


歴史とは、時として平凡な人間に思いもかけない役割を与える事がある

そう言ったのが誰だったのか、またどこで読んだのか、よく覚えていない。
 私は取り立てて美しくもなければ、賢くもない(むしろその反対だ)いたって平凡な女だ。歴史の表舞台に立ち、その名を刻むなんて絶対と言っていいほどありえない。
 若い頃・・まだ無邪気な夢を見ていた頃は、「いつか素敵なお方が・・」等と勝手に甘い事を考えながら、やがて平凡に生き、死んでゆくのだろう・・そんな風に思っていた。
 あの日が来るまでは。
・・・「運命の子」を託された瞬間から、私というちっぽけな存在は、歴史という荒海に飲み込まれていった。
 何故私が?私なの?
穏やかで平凡だった日常を理不尽に奪われ、突然赤子と共に冷たい世間に放り出された若い私はそう思わずにはいられなかった。
 わからない・・わからない・・どうしてこんな事になった?
 ・・・焼け出され、追い詰められた先で逃げ込んだあの粗末な小屋。馬鹿な小娘に語られる難しすぎる話、互いに触れ合う可哀想な二人の幼子。
 小さな女の赤ちゃんがむずがる。名前すら持たず、死を望まれた子。
 小さな男の子が無邪気に笑う。あの女から生まれ、襤褸屑の様に捨てられた子。
 そしてこの私・・たまたまその場にいたというだけで、他に誰もいなかったというだけで、運命を捻じ曲げられた馬鹿な私。
・・・神様は、なんて意地悪をなさるんだろう・・痛む喉を潤す事も忘れ、私は自嘲的に笑った。
・・・どうしてこうなった?
きっと、同じ事を皆考えているに違いない。私の若いご主人も、私達を殺そうとしたあの男も、王妃になりそこねたあの女も。
・・・どうしてこうなった?
ごめんね赤ちゃん・・貴女だってそう思っているわよね。お願い、泣かないで。
・・・どうして?どうして?どうして?
「あなたのせいよ・・」
気が付いたら、私の唇は何かを口走っていた。
「あなたのせいよ・・」・・・男の子がきょとんとこちらを見る。大きな、黒い水をたたえた湖の様な瞳で。
「全部・・全部あなたと・・あの女のせいよ・・!」私はかっと目を見開くと、男の子の首に手をかけた。力がぐっと入る。

はっと目が覚める。
 どうやらうたた寝をしてしまったらしい。
・・・ここは眩しいくらいに太陽の照りつける砂漠のオアシス。乾いた風と砂が舞う最果ての地。私と「娘」の終の住処。
「母さん、ただいま。」
買い物籠を抱えた「娘」が暖簾をくぐりながら笑いかける。
「見て見て!沢山おまけしてもらっちゃった!」そう言って籠から胡桃やら香辛料、棗の実等、買い物を頼んでいない物を次々と取り出す。
「最近皆、しょっちゅうおまけしてくれるのよね・・何でかな?」・・最近花が綻ぶように美しくなった「娘」は無邪気に首を傾げた。
・・・客引きにいってくるねー、と元気に駆け出す「娘」に「気をつけるのよ」と「母親」らしい事を言って手を振りながら、私はふと、あの時の小さな男の子の事を思い出した。
・・・結局あの時・・・
弱い私の手はそれ以上力を込める事が出来ず、泣き叫ぶ二人の子供に囲まれて呆然としていた。
「・・泣かないで」そう言って、女の子を抱きしめる。女の子はまるで「その子に何をするの」とでも言うように私の腕の中で暴れる。
「・・泣かないで」男の子が涙でくしゃくしゃになりながら私に近寄る。ひた、と黒い瞳で見つめながら。・・「抱きしめて」とでも言うように。
 そして、男の子は
・・・・笑ったのだ。くっと一瞬片方の眉だけ吊り上げて。・・あの女みたいに。
 私は悲鳴をあげ、女の子を抱えると小屋の外に飛び出した。

抱きしめてやればよかった。
・・小さな子供を見かける度にそう思う。一緒に連れてくれば良かった、とさえ。
 そしたら・・どうなっていたろう?私はやはり、自分の子として育てていたのだろうか。
 だが、もうどうにもならない。運命というのは、ほんの些細な心変わりや気紛れで簡単に変わるものだ。そして、それが積み重なって所謂歴史というものになる。それが、私が馬鹿な頭で考え、言い訳のように自分に言い聞かせた事だった。
・・・今日も暑くなりそうだ。あの子はまた遅くに帰ってくるのだろうか?こんな日に砂漠にいるお客なんているのかしら・・?

はっと目が覚める
 どうやらうたた寝をしてしまったらしい。
・・・ここは煌びやかな宮殿。公主の部屋の外に通じる露台、そして総てが始まった場所。
「公主様からの仰せです。・・ゆっくりお休みになるようにと。」
 控えの侍女の伝言に礼を言うと、私は立ち上がり、牡丹の花が咲き乱れる庭に出た。
 誰かの心変わりか気紛れか、運命の悪戯に翻弄されるように私と「娘」は引き剥がされ、再び出会い、あるべき姿に戻った。
・・・君臨する者と仕える者として・・
今でも「娘」は・・いや「公主様」は私の顔を見ては何かを言いたそうにしている。・・母さん、抱きしめてと言う様に。そして私は精一杯忠義者の乳母の顔をしてみせる。
 運命といえば・・あの男の子も・・何度も私の脳裏に現れた可哀想な男の子とも再会した。
・・・神様は、なんて意地悪をなさるのだろう・・
牡丹の花の向こうに彼はいた。鮮やかな色彩の中、その瞳と同じ漆黒の装いで。手には・・何時もの様に野の花を持って。
「乳母殿」
青年が片方の眉をぴくり、とさせた。
「公主様は・・おいででしょうか?」
「いいえ・・」
私は答える。石の様に硬い声で。
「・・御用なら、私がお聞きしま・・」
「あなただった。」
・・・え?
「・・小さな小屋で・・私の首を絞めようとしたのは」
黒い、湖の表面の様に滑らかな瞳
「あなただった。」
 私はゾッとした。これは・・この男は・・
「何故、あんな・・」
哀しげな瞳
「私はただ・・」
やめて、ヤメテ
「抱き締めて欲しかっただけなのに」
天罰・・何故か、あの男・・私と「娘」を追う為に自らを犠牲とし、やはり「運命」の悪戯で私と束の間共に生きた男の言葉が蘇った。
「天罰かもしれん・・お前も俺も」
苦悩の後の様な皺の刻まれた顔を歪め、男は言った。
「命令・・ただそれだけの為に命を懸けて・・聞こえは良いが、ただ自分で考えず、考えようともせずにきてしまった・・自分で運命を切り開く勇気のないだけの事だったのに。」
てんばつ・・その時声を失っていた私は男を見つめた。
「哀れだ・・愚かだ・・。」
 まだ、泣いていた子供
「自分で決めるべきだったのに。」
 抱き締めてやればよかった
「あ・・なた・・」
・・・私のかすれた声は、「公主様」の「ピダム!」と嬉しそうに呼ぶ声でかき消された。

・・・痛みがひどくて、頭がまともに働かない。
どうしたというのだろう、身体がひどく重くて動けない。おまけに手足がどんどん冷たくなってとても寒い。
「・・・!」
私を見下ろす誰か・・あの男が蒼白な顔で何かを叫ぶ・・・手に血塗れの剣を持って。
・・・ああ、そうか
私は・・斬られたのだ・・この男に・・「娘」の身代わりとなって・・
・・・神様はなんて意地悪をなさるのだろう
いや、違う。これは天罰なのだ。かつてこの男が言ったとおり、「運命を自分で変えようとしなかった」事に対しての。
もしあの時、男の子を抱き締めていたら?
もしあの時、一緒に連れて行っていたら?
もしあの時、「娘」が客引きに行かなかったら?
もしあの時、「娘」と離ればなれにならなかったら?
もし・・・いや、よそう。
歴史とは、時として平凡な人間に思いもかけない役割を与える事がある
・・なぜか、そんな馬鹿げた事が馬鹿な頭に浮かんだ。
 おかしいわ・・痛みすら感じなくなった私は少し笑う。だって、まるで「歴史」の気紛れに振り回されたみたいだもの・・でもね、あの子に関してだけは・・私はいつも「自分」で選んできたわ。今度だってそう・・・可愛い、私の、可愛い娘・・もしね、あなたが亡くなられた姉君の復讐の為に王女になったというなら・・そんな事はやめなさい・・あなたにはもっと違う道があるかもしれないの。そう、例えば・・あの可哀想な小さな男の子と生きていくとか・・そして、二人で幸せになる・・ああ、あんたは母さんなんかよりずっとずっと賢いから・・自分で運命を変えれるわね・・・
「・・この30年・・めぐりめぐって・・元に戻ったのね・・」
 何も見えない無明の闇の中、誰かの温もりに包まれて、私は目を閉じた・・・




***

ふと思ったのですが、このSSだとソファにとってチルスクは「自分の影」みたいなもの…なのかなあと。切り離そうとしても切り離せない過去とか、業とか、罪とか、そう言ったものの象徴と言う気がします。
そう考えると、チルスクと一緒にいる間のソファが喋れなかったこと、最後にチルスクに斬られて命を落とすと言うことが、また違った意味を持ってきますよね。チルスクが近付けば近付くほど、ソファの『命』が飲み込まれそうになっていく…と言うか。(←表現力が足りてないようですw)
ううむ、いつものことながら参考になります!

クリクリ様、興味深い作品を下さり、ありがとうございます!!
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