善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 蠢動@クリクリ様

クリクリ様シリーズ第四弾! 今回のお題は「ミシルとソルォン」です。
今回はクリクリ様からのコメントも掲載しますー。

ソルォンとミシルの物語「蠢動」でございます。
他のどんな人間よりも深くて奇妙な二人の愛が大好きです。

因みに、ソルォン、ミシル、ミセンの少年、少女時代の口調はオリジナルです。タイトルの「蠢動」は何かが蠢きだす・・ということで、造語でございます。


ではでは、どうぞーv


* *


けぶるような霧雨が降っていた

冷たく、肌にいつの間にやら纏わりつく細かい雨だが、少し火照った少年の・・私の頬には心地良い。そんな事を気にする事もなく、私は馬のわき腹を少し蹴り上げ、目的の地へと急いだ。

鈍色の空の下、豪奢な屋敷が姿を現す。霧雨の中に佇むそれは、まるでこの世あらざる幻の様に浮かんで見える。
 伴の者も連れず、馬から降りた私に門番は一瞬訝しげな視線を送ってきたが、花朗であると知った途端に丁寧な応対で奥に取り次いでくれた。
 「お嬢様はご気分が優れず・・」小綺麗な侍女が腰をかがめて断りの文章を読み上げようとした時
「いいんだ、彼は。お通しして。」
「でも若様・・」
「いいんだ。少しは気晴らしが必要なんだよ。姉上にはね。」
 いつのまにか柱に気だるげに寄りかかっていた少年・・ほとんど私と年は変わらないが・・が、手をひらひらと振って招き入れる。その手つきは、蝶を呼び寄せる如く優美だ。
「・・思ったより遅かったんだね。」
かすかに甘い香の薫りをくゆらせて少年が言う。
「申し訳ございません・・」
「別にあやまれなんて言ってないよ。君も大変だっただろうし・・って、また拳握り締めてる。」
 それって君の癖だよねーと、少年はくすくす笑った。
「・・・言っとくけど、姉上に同情なんて必要ないよ。確かに君の兄上とは色々あったみたいだけど。」少年はちょっと肩をすくめると、再び口を開いた。
「・・・今の彼女はれっきとした人妻であり・・まだまだ、やらなくてはいけない事があるんだから。」
・・悲劇の女主人公なんて姉上には役不足さ、と言う少年に促され、私はその部屋に入った。
 白と薄紅色を貴重とした、いかにも女らしい、そして瀟洒な部屋。庭に通じる露台の椅子に彼女はいた。人形の様に身じろぎもせず、霧にけぶって、ぼうっと銀色の光を放つ海棠の花を眺めながら。
 「ミシル娘主・・」躊躇いながら呼びかける私にくるり、と振り向いた彼女は水晶よりも青ざめた肌に、珊瑚よりも赤い唇で微笑むと・・呟いた。
「サダハム・・」
「・・・」
「嘘よ、ソルォン朗。あんまり遅いものだから、意地悪をしたの。」
 おかけになって、といつも通りに応対する彼女。違うと云えば、白い練り絹の喪服と・・その手に抱き締めた錦にくるまれた包み。
 訝しげに見やる私の視線に気付き、彼女は「あら、いやだ」と言って、紫檀の長持にしまって鍵をかけた。
「・・・お元気?」
「・・はい。」
「噂はかねがね・・ご活躍、私も嬉しいわ。」
 とりとめもない会話。香りの良い茶。・・・彼女はなんの屈託も無さそうにしている。その白魚の指で小さな金の鍵を玩びながら。
 ・・・霧はますます濃くなっていった。
「あのひと、もういないのね。」
 彼女は言った。まるで、気持ちの良い朝ね、とでも言うように。
「つい最近まで・・ここにあなたが座って、私がここに座って」
 彼女の黒真珠の様な瞳は瞬きもしない。
「あのひとがいて」
「・・・・」
 ざあっと一際強い風が吹き、庭の木々の枝がなびいた。
「あのひとね、私の光だったの・・・あなたにとっても・・ね?」
言葉の足りない私はただ肯く。
「・・だから・・これが最後の・・私に残された機会だったの。そう・・光に近付く・・」
優しかった異父兄
「・・でも私はあのひとと行かなかった。仕方がなかったの。だって私には・・」
「『夫君が・・そしてやるべき事』があったから。」
「・・・!」
温かかった異父兄
「・・・頭が良いのね・・そう、その通りよ。」
そう言って彼女は喉の奥で乾いた笑い声をたてた。異父兄の前では決してしなかった、私だけが知る笑いを。
「・・前からずっと思ってた。私達は」
美しく弧を描く片方の眉がくっと上がった。
「同族ね。」
・・・その時が、と言うよりその時だけだったろう。私達二人の心がぴったりと重なったのは。
「私達二人共・・『サダハム』という名の『光』に焦がれた『闇』なのね。そして、永遠にその暗い静寂を彷徨う運命・・そう、『光』を求めてやまないから。」
・・・物心ついた時には、冷たい、暗い闇に一人きりだった。
「薄汚い私生児」
・・・それが、私に与えられた総てだった。
「ソルォン」
・・・異父兄だけが、私の名を呼んでくれた。
「誰が何と言おうと、お前はお前だ。」
・・・眩しかった。
「ソルォン、こちらがミシル娘主だ・・って、ああ、もう知っているよな?」
・・・羨ましかった。
「私達は同族ね」
・・・私達は、あの「光」になりたかった・・
 涙を流したのは、一体何年ぶりだろう・・
彼女は、まるで頑是無い子供をあやす様に私を抱き締めた。声を殺し、涙を流し続ける私を抱きながら・・泣いていた。
 「・・私達、これがきっと最後の涙になるわね?」
 言葉の足りない私は黙って肯く・・涙をとめどもなく流しながら。
「ねえ・・私達、光にはなれないけど」
彼女は右手で私の頬を撫で、左手であの金の鍵をつまむ。
「光を屈服させられる・・出来るわ・・光が強ければ強いほど・・」
彼女は笑った。ぞっとするほど凄艶に。
「闇もまた濃くなるから。」
外はいつのまにか日が暮れ、闇に染まりつつあった。
「ソルォン・・・私と、修羅の闇を歩んでくれますか?」
「はい・・ミシル。」
「良かった。」
・・・彼女はにっこりと笑うと私に口づけた。
「今夜はもう遅いわ。」
 泊まっておいきなさいな、と言いながら立ち上がる彼女に、言葉の足りない私は少し微笑んだ。
 きらり、と彼女の手の金の鍵が煌めいた・・・

「・・・私が生きている間はミシルはこの国の宝だが・・」
 目の前の、死の淵にある老人は呟いた。
「私が死んだら、あれはこの国の毒となる。」
殺せ、という命令に私は黙って肯いた。・・・私はいつでも言葉が足りない。
 毒、か・・・身を切るように寒い冷気の中、鎌の様に鋭い月だけが見ていた。闇の中で、冷ややかに。
 言葉の足りない私は、いつも通り口を引き結ぶと行くべき場所へと進んでいった・・・




* *

サダハムとミシル、ソルォンって、調べてみたら3歳ぐらいしか違わないみたいなんですよね。しかもミシルとソルォンには同い年疑惑が…!! てっきりサダハム>ミシル>ソルォンだと思ってましたw

てな呟きはさておき、ミシル、ミセンと続いて、クリクリ様によって善徳女王の過去が広がっていきます。ソルォンが「言葉が足りない人」……と言うのは、口数が、と言うより、ミシルに関することや自分の感情に関することだと、いろいろなものが言葉に出来なくなるのかな…と言う印象を受けました。面白いです。

クリクリ様、ありがとうございましたー!
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  1. 2011.02.28(月) _10:46:27
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