善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説第十七話ですー(*´∀`)
今回はsaki様のターンでございます。もう、今回管理人は読んでて顔がニヤけ(以下略)

※このお話へのご感想は、拍手ではなく、一番下にあるコメント欄にお願い致しますー。saki様がお返事を書いて下さるので!


* *


浮足立った心のままピダムは妹が待っているはずの家である宿へと足を急く。絶対に絶対これはトンマンに似合う。というかトンマン以外には似合わないに違いない。そんなどこか間違った認識までを覚えているに違いないことが容易に想像できる有様だった。もちろん少しばかり遅れてピダムの後を歩くザズの吐いた溜息の意味など露ほども気付いていない。
しかしてその足もだんだんと目的地に近づくにつれ速度を落とし始めた。羽根でも付いているかのような軽やかな足取りだったものが鉛の足枷を嵌められたかのように。
やがてザズの足も追い付く。つい先ほどまで地に足の先もつかない浮かれようだったピダムの変化にザズは眉根を寄せた。

「どうした?」
「・・・トンマンが口きいてくれなかったらどうしよう。」
(こいつ。トンマンに帯飾り渡すそもそもの理由忘れてやがったな。)

宿はもう目の前だ。どうやらここにきて出掛けにトンマンに冷たくされたことを思い出したらしい。ザズは肺の底から深く息を吐き出した。

「口はきいちゃくれるだろ。ただし口をきいてくれたからって嫌われていないとは限らないけどな。」
「うわぁぁぁぁ~!?」

あわやザズの言葉に手の中の帯飾りの存在を忘れピダムは両の手で自身の頭を掻き毟りそうになる。

「はっはっは。冗談、冗談。まずもってそれは無いから安心しろ。」
「ザ~ズ~?!」

―おじさん、凄いね。これなら出発までに単語だけじゃなくてちゃんと話せるようになるかも。というか、飲み込み早いね。なんで?
―そうか?・・・そうだな、昔の名残といったところかもしれん。文を認められぬ時などは一言一句違えずに相手に伝えねばならぬ時もあったからな。
―???
―戦場においた時などがそうだな。敵に確固とした情報を与えぬためであったり、またはその逆、書状にて偽りを記し予め示し合わせた言葉に寄って真の情報を伝えたりだ。
―へぇ。じゃあ、もともと何かを覚えたりするのが得意だったんだね、おじさん。

風に乗って微かに届いた楽しげな会話にザズの首へと伸び掛けていたピダムの腕がぴたりと止まる。ぐぎぎっと視線が動いたかと思うとザズの事はもういいのか宿の壁にへばり付き窓から中を窺い始めた。

「お前なぁ、親父殿たちが来たら間違いなくしょっ引かれるぞ。」

どう控え目にいっても怪しい事この上ない。ザズの言う事もさもありなんだ。
トンマンとチルスクは厨房に近い卓のひとつを使って敷布の解れを直しているようだ。それは本来ソファの仕事だが、まだ発作が起きて日も浅かったためにトンマンが取り上げてきたのだろう。いつも自分たちの部屋で針を片手にしているソファを思い浮かべる。わざわざ下にまで持って降りてきたのは母への気遣いと、立っている者は客でも使えという考えが半々といったところだろうか。


+++


チルスクはふと視線を感じた。
隣に座る娘のその兄に関する愚痴だか文句だかを多分に含んだ教えを受けながら何故か宿の繕い物までを手伝わされていたチルスクは半ばどうにでもなれといった心境だった。そこに来て殺意とまではいかないが微弱な敵意の含まれた視線についっと意識がむく。
窓の向こう。ざわつく気配は行き交う人々のそれか。しかし行き交う人々が皆何やら口元を緩めてはこちらを見ているような、否、その視線の先は若干自分たちとはずれている。窓枠の底辺からひょこりと黒い髪が見えた。

(ピダム、とかいう兄か。あの赤毛からやはり何か聞いたか。しかし、あれで隠れているつもりならば粗末に過ぎるな。)
「おじさん、おじさん。これが終わったらお茶で一休みするから、もう少し頑張って。」

チルスクはトンマンの声に手元が留守になっていた事に気がついた。珍しくも苦笑を浮かべ少女に謝罪する。

「ん?あ、あぁ。すまない。しかしこう次から次へと仕事があるとはな。人を雇う気はないのか?」
「ん~。うち、人を雇えるほど余裕ないから。」

それよりもまずはお金貯めないとねぇ。続く言葉にそう言えばそんな話も聞いたなとチルスクは胸中で頷く。
火に巻かれ肺を焼いた女。
年の頃は15、6の娘。
そして、10年ほど前に東から流れてきたという親子。
確証を得るには不十分。しかし疑うなと云うには符合する点が多すぎた。この親子を黒とみるか白とみるか。それを見極めるための時間も実は限られている。交渉を終えた商人がローマへと旅立つその日までだ。だがしかし、その交渉が難航しているのか何なのかここ数日彼らにこれといった動きが無い。商団を率いるあの男の腕が悪いのかそれとも取引相手に何かあったのか。以前いくつかの商団に身を置いていたこともある過去からチルスクはそう考えていた。
と、こちらを窺っていた視線が外れたのに合わせチルスクの意識が思索から現実へと引き戻される。ついでそこにあった気配が動き始めたのに漸く宿に入る気になったのかと思い、聞こえてきた騒ぎ声にチルスクはそれが自主的な行動では無かった事を知った。
トンマンの耳にも入ったのか手を止め声の方へと首を向ける。

「もういいから、とっとと行け。鬱陶しい。」
「兄さん?ザズさん?」
「トンマン、兄貴返しにきたぜ。」

ピダムが蹈鞴を踏んで入ってきたかと思うと敢え無く平衡を崩し懐を庇うように地面に転がる。その後ろからザズが顔を覗かせてにこやかに入ってきた。何があったかは知らないがどうやらピダムはザズに蹴り入れられたらしい。床に転がるピダムを置いてザズはトンマン達のいる卓に近づくとその斜向かいに腰を下ろした。

「や、旦那。仕事の方は順調で?トンマンって人使い荒いだろ。」
「さて。流石に宿の手伝いというのも初めてでな。まだ勝手が分からんのでどうにも言えん。しかし、そういうからにはお前も使われた口か?」
「まぁ。親友が困ってたらいくらか手を貸すのは確か。」
「そうか。 しかし妹の方はだいぶご立腹のようだったが。」
「それはそれ。妹の機嫌を取るのは兄の務めなんで俺の範疇外。」

ザズはチルスクの問いに答えになっているような、なっていないような答えを返す。中々に食えない小僧のようだとチルスクが思う隣ではトンマンが珍しくもその両眼を瞬かせていた。床に未だ蹲るピダムと何故かチルスクに喧嘩を売っているように見えるザズとを交互に見やう。
やがてチルスクがザズから視線を外した。しばし何とも言えぬ沈黙だけがその場を支配していたが、地を這いずる様な声とともに浅黒い手が出てきてザズの頭を掴んだ。

「ザ~ズ~。てめぇ、汚れたり、あまつさえ壊れでもしたらどうしてくれるっ!?」
「何? 壊れたんか?!」
「死んでも壊すかっ!!」
「だろ?お前がそんなへまやらかすはず無いもんな。あれだ。信頼しているからできる行動ってことだな。まぁ、許せ。」

怒り心頭な表情のピダムがぎりりぎりりと手に力を込めるが、ザズは笑いながら合いの手をいれている。彼にとってはでかい犬がじゃれついてくるのとそう大差ないのかもしれなかった。しかし、それは彼当人に限ってのことであるようだ。チルスクは外した視線を思わず戻しながらも言葉もなく。トンマンに至っては滅多に見ない兄の本気に近い怒りに戸惑っている。

「え~と。兄さん?」
「おっと。ほらほら、お前の愛しの妹が呼んでるぞ、っと。」

かなり締まっていたはずのピダムの手を自分の頭からあっさり外してみせると、ザズはピダムをトンマンの前に座らせた。

「あっ!いや、あのなトンマン。これは別に喧嘩じゃない。うん。喧嘩じゃないぞ。」
「・・・じゃあ、何?」
「うっ。え、そ、それはだな。・・・はっ!そうだ!! それよりも大事な事があるんだ!トンマン!!絶対にこっちの方が大事だ!!」
「何が大事、なの?」
「これだ!!!」

そういってピダムが懐から出したものにトンマンとチルスクの目が吸い寄せられる。その手の上で輝く花はかつてチルスクが宮中で見た装飾品と比べても決して見劣りしていない。流石は交易の街。こんな物まで手に入るのかとチルスクが心ならずも感心しているその隣でトンマンは別の感想をもったようだった。
やおら卓越しにピダムの襟元を掴む。

「兄さん!! こんな見るからに高そうな物一体どうしたの! まさか、母さんに顔向けできない事したんじゃないでしょうね!?」
「・・・。阿呆かっ!これは!俺が!ちゃんと!値切って!買ったもんだ!!」

一瞬、言葉を無くしたピダムに何とも言えぬ表情で兄妹を見るチルスク。
ただ一人ザズだけが顔を反らし小刻みに体を震わせ笑いを噛み殺していた。


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  1. 2011.03.22(火) _19:06:01
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  3.  コメント:4
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comment

ザズがいい味だしてますね

  1. 2011/03/26(土) 08:48:02 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
おはようございます

saki様、いつも読ませていただいてます。

今回のはチルスクが沢山出ていて思わずニヤケた私です

繕い物までできるんだぁ~~って妙なとこで感心してます

ザズのピダムに負けてないイイ性格が、二人の結びつきを感じて思わず涙が(ピダム良かったな友達いて)………

これから先も波乱の物語でしょうが楽しみにお待ちしてます


ズレた兄妹…w

  1. 2011/03/26(土) 11:26:08 
  2. URL 
  3. 椿 
  4. [ 編集 ] 
saki様、こんにちわーv

今回も楽しくって、思わずニヤニヤ緩みっぱなしですvv

いつも思うのですが、チルスクが可愛い…w
そしてこの、もう一つの砂漠編があまりにも違和感なくって、ドラマとシンクロしていながら別ストーリーが展開してて、すっごい面白いです!

ザズくん大活躍だし!なんかトン&ピを見てると、思わずザズくんに感情移入してしまいます(笑)。ピダムが鬱陶しいって、蹴り入れるところもトンマンの疑い晴らすため、値切ったことを威張る(?)ところも、そしてそんなやり取りをだまーって見てるチルスクと、笑いを噛み殺してるザズ!いいなぁーv 頬が緩みっぱなしですww

ズレた兄妹に、ほほえましさともどかしさを感じて、そこにまた萌えます…!

これから先の無自覚兄妹が楽しみですー!そしてそんな兄妹に振り回されちゃいそーなチルスクも…v

こんにちわ、すーさん様^^

  1. 2011/03/27(日) 13:57:44 
  2. URL 
  3. saki 
  4. [ 編集 ] 
こんにちわ、すーさん様^^
すーさん様はチルスクがお気に入りなのですねw
彼も伊達に15年も一人放浪していたわけなので、きっと色々出来るようになったと思うのです。
ムンノと違ってヨムジュンみたいに支援してくれるような人もいなかっただろうし・・・。

ザズ、ピダムの友達らしいですかw
ありがとうございます^^
並みの性格だったならあの兄妹と渡り合うのは難しかろうと、かなり好き勝手に動かしていたのですが、そういわれて嬉しいですw

ではでは。
かなり遅筆ではありますが頑張って書かせていただきますねw

こんにちわ、椿様^^

  1. 2011/03/27(日) 14:14:34 
  2. URL 
  3. saki 
  4. [ 編集 ] 
こんにちわ、椿様^^
楽しんでくれて幸いですw
チルスクが可愛い、緋翠さまにも以前同じことを言われました。
私が書くとどうやら彼は可愛くなる傾向にあるようですね(笑)
緋翠さまの書かれるチルスクは渋いので見習いたいと思ってはいるのですが・・・。

ザズとずれた兄妹、すーさん様へのコメントにも書きましたが彼の行動については割と好き勝手に書いているので、そういう風に褒めて頂くととても嬉しいです^^
それと、もうひとつ言うならば彼は兄妹との付き合いも年期入ってますから、きっと他の人間よりも兄妹について耐性がついているのではないかと思いますw

これからの無自覚兄妹も楽しんで頂けるよう少しでも頑張らせていただきます^^

ではでは。


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