善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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『第一美花郎比才』第拾話 優勝者決定

終わらない第一美比才、今回は後半戦がヨンモのお姉様の話になっているので、ご注意ください。多分、読まなくても大丈夫だと思われます。

↓は、今回のトンマンのイメージです。上のは拾い物ですー。
トンマン化粧
上半身アップ全身
↑あと、この袖が光の加減で透けたり、しゃらしゃら鳴る腕輪をつけてたり、髪型がもっとポニーテールっぽいイメージだったりします。


* *


「優勝は、ピダム郎です」

 ヒョンガンの玲瓏たる声がそう告げた時、トンマンはミセンに負けず劣らず驚いた顔をしてしまっていた。

(ピダム? ピダムが優勝?)

 ――テナムボの方が、明らかに人気があったのに?
 驚くトンマンと平然としているミシルの元へ、ヒョンガンから優勝者を記した巻子本が捧げられた。そして、ざわめきが静まったのを見届けてから、ヒョンガンはさらに別の巻子本を広げて詳細な結果を発表していった。

「二位から五位までの順位と金額、落札者を申し上げます。五位、ユシン郎。金参仟両。落札者はヨンモ娘主です」

 意外な低価格に、ユモは妹の横顔を見た。……が、先刻の本戦以来戻ってきていないヨンモの心は、まだ夜空へと羽ばたいたままらしい。うっとりと明後日を見つめたままだ。

「四位、アルチョン郎。金参仟弐佰両。落札者は、ヨンミョン宮主」

 続いて読み上げられた名に、ヨンチュンが「え」と呟いた。聞き間違いでなければ、中途半端な金額でアルチョンを落札した者の名は、彼の異父姉のものだった。……恐る恐る異父姉のいる方を窺ったヨンチュンは、たった一人の姉から「支払い宜しくね」と口の動きで伝えられて、がっくり肩を落とした。

「三位、ポジョン郎。金伍仟両。落札者はハヒ娘主です」

 ヨンチュンに続いて「えっ」と呆気に取られることとなったのは、ハジョンだった。今のところ、彼の両肩にはヨンモ、ハヒと二人の娘の支払いがのし掛かっているのだ。
 が、これ以上の出費はないだろう――。正直比才の結果より借金の心配をし始めていたハジョンは、やれやれと椅子の背凭れに身体を沈めた。
 ――衝撃が走ったのは、次の落札者が発表された時だった。

「二位、テナムボ郎。金漆仟両。落札者は、マンミョン夫人」
「は?」
「えっ?」

 ミセンとトンマンは、あまりに予想外の落札者に唖然とするしかなかった。と言うか、マンミョンには駆け落ちまでした仲睦まじい夫ソヒョンがいるではないか。ついでに言うなら、テナムボはチョンミョンを射殺した憎い仇だ。
 あまりのことに目眩すら覚えているトンマンの耳元に、その時、嗄れた声が囁いた。

「公主様、申し訳ありません。妻と娘達が、どうしてもあの仔虎を抱きたいと申しまして……」

 声の主は言うまでもない。ちなみに、その声は申し訳ないと言いつつも、妻と娘を喜ばせられた、と言う嬉しさを隠せずにいた。……キム・ソヒョン一家の家族団欒の真実を見た、と紗の向こうでトンマンは思った。
 一座の一喜一憂に構わず、着々とヒョンガンは発表を続けていく。

「優勝のピダム郎には、金壱萬両が示されました」

 しかし、さすがにピダムの金額が発表された時には全員がどよめいた。とんでもない金額だ。
 トンマンは、その計算高い頭で「これで瞻星台を建てる目処がついた!」と喜ぶ一方で、落札者の名前が気になって慌ただしくなる鼓動に耐えかねて、裳を握りしめていた。舞の為の美しい裳を、そうと気付かぬまま皺だらけにする叔母の繊手を、チュンチュはちょっぴり呆れた眼差しで見た。……ここまでわかりやすい反応を身体が示しているのに、何故この賢い叔母の頭はその反応の原因を突き止めないのだろう。
 落札者は一体誰だ、と誰しもが息を飲む中、ヒョンガンは至って冷静に結果を告げた。

「なお、ピダム郎にはユモ娘主とポリャン娘主が同額を示されましたので、お二方共に落札者とさせて頂きます」

 ……その衝撃的な内容に、セジョン、ハジョン親子と、ソルォン、ポジョン親子が同時に立ち上がり、ハジョンの雄叫びが貴賓席に響いた。

「なんでピダムに壱萬両も払わなきゃならないんだよっ!?」

 その叫びに、その日ばかりはソルォンもポジョンも心の中で大きく頷いたのだった。



 衝撃の結果発表が終わると、続く嘉俳の結果発表は和やかに進んだ。本戦に出場出来なかった花郎達もそれぞれの家族や恋人と並んで座り、嘉俳で負けた女達が勝者に捧げる歌舞を楽しんでいる。ユシンはヨンモやマンミョン達と並んで時折相槌を打ち、アルチョンは何故か、彼に向かって嘆くヨンチュンを叱り飛ばしつつ慰めていた。……どうやら、ヨンチュンは泣き上戸らしい。
 誰も彼も家族がおり、寛いでいる。
 トンマンはチュンチュとお喋りをしようかと思ったが、先手を打って逃げられてしまっていた。……やはり、嫌われているのだろうか。わかっていたこととは言え、トンマンは落ち込んだ。
 ――その時、ガタンと椅子が倒れる音がしたかと思うと、酔っ払ったハジョンの怒鳴り声がした。

「お前!! うちの娘に何をしたっ!?」

 やけ酒にしこたま酔ったハジョンに掴みかかられているのは、ピダムだった。計壱萬捌仟両もの支払いを義務付けられたハジョンからすれば無理もないことだったが、ピダムにすれば八つ当たりもいいところだ。ミシルも顔を顰めて窘めた。

「止めなさい、ハジョン。みっともない」
「でも母上……!」
「仮にも比才の優勝者です。敬意を払いなさい」
「……はい……」

 ハジョンが渋々ピダムを解放すると、ミシルはもうピダムには興味を示さなかった。
 そのピダムは、トンマンを遠慮がちに上目遣いで見つめている。話をしたいけれども、近付いて良いものか迷っているようだ。

「……」

 ミシル達の前で話をしたくないのトンマンも同じだ。ちょうど寂しかったこともあり、トンマンは席を立った。それを見たピダムの顔が、パッと明るくなる。足取り軽くトンマンを追いかけるその姿を横目で眺めて、ミセンは嘆いた。

「このミセンが鍛えた二人が、あんな親鴨子鴨主従に負けるなんて……!」
「でしょう、叔父上!?」

 続いて、仲良く管を巻く弟と息子になど付き合ってられない、とばかりにミシルも立ち上がった。トンマンが剣舞を披露するのは、宴の締め括りだ。それまで、久方ぶりに孫娘達と話をするのも悪くはないだろう。



「公主様、優勝しました!」

 宴の喧騒から遠ざかり、ソファ達侍女も退けて二人きりになるや、開口一番ピダムははしゃいだ。今日一日で感じた憂いはどこへやら、ユシンよりアルチョンより遥かに役に立ったことが嬉しくて堪らないピダムは白い歯を見せて破顔している。

「そうだな。おめでとう、ピダム。良くやったな」

 つられてトンマンも微笑むと、ピダムを労った。ピダムのおかげで予想を遥かに上回る金額が集まったのは事実だ。

「褒美を与えないといけないな」

 思わず、そんな言葉が唇をついて出る。

「褒美ですか? じゃあ……約束をしてください」
「約束?」

 勢い込むピダムには少々面食らったものの、金銭的には太っ腹な気分になっているトンマンはあっさり頷いた。ピダムなら、やたら高額なものを要求することもないだろう。

「わかった。何が欲しいんだ?」

 小鳥のように少しだけ首を傾げると、簪がしゃらりと鳴る。その音が消える前に、ピダムは躊躇いなく告げた。

「公主様の一日が欲しいです。一日、私と過ごすと約束してください」

 そして、トンマンは思わぬ『褒美』に目を丸くした。



 そこから少し離れたところでは、宴を脱け出してきたユモが、楽しげに話し込んでいるトンマンとピダムを、羨望の眼差しで見つめていた。

『ユモ』

 ユモと逢っている時、ホジェは嫌な顔をすることはない。それは、ユモがいつでもホジェの都合を優先してやり、ホジェの『愛妻家』としての一面を絶対に踏みにじらないからだ。
 ホジェがヒョンガンと婚姻したのは、まだユモが子供の頃のことだった。父ハジョンに会いに来るホジェに幼心をときめかせ、初恋をして。父に、「ホジェ郎のお嫁さんになる」と宣言したこともあった。
 けれども現実は、ホジェより一回りも年下のユモが大人になるのを待ってはくれなかった。ホジェは名高い国仙ムンノの長女ヒョンガンと婚姻し、娘も産まれて、風月主にもなった。そして……いつしか、ユモはヒョンガンの奇妙な噂を耳にした。

『ヒョンガン娘主は、もう御子を産めないらしい』

 貴族にとって、噂話は大事な情報源の一つだ。しかも、ヒョンガンの夫ホジェは風月主。いずれは国を背負うことを約束された人物である。
 一方、ユモの縁談は上手くいかなかった。縁談相手の父親が失脚し、数年を無為に過ごす破目になったのだ。
 人生が変わったのは、今から三年前の秋の夜。ユモの祖父セジョンがホジェを宴に呼び、たまたま邸にいたユモは彼と話をする機会を得た。……いや、もしかしたら、たまたまではなかったのかもしれない。祖父は孫達を可愛がってはいるけれど、だからと言って、政略を忘れる人物ではない。だから、ユモとホジェが話をしたのも、その日のユモがとりわけ美しく着飾っていたのも……ホジェが泊まっていったのも、偶然でも何でもなかったのだろう。

『申し訳ない、娘主』

 情熱的な一夜が明けると、生真面目なホジェは忽ち恐縮した。妻のある身で――それも、花郎から今なお絶大なる支持を誇る国仙の娘を裏切り、上大等の孫娘に手を出したと言う事実は、明らかに彼を打ちのめしていた。
 それに加えて、ユモは感づいた。どうやらホジェは故あって妻の肌に触れられずにおり、だからこそ簡単にユモに夢中になったのだと言うことに。……ユモに惚れたと言うより、若く美しい女に食指が動いただけだと言う、冷酷な事実に気付いてしまった。

『ホジェ郎……』

 だから、ユモはとびきり頼りない声で男の名を呼び、ぽろぽろと涙の雫を頬に滴らせた。慌てたホジェの胸に抱かれて無垢な少女のように振る舞い、彼の愛憐を誘った。その結果、案の定ホジェはユモをあわれに思い……そこには当然のように愛欲が絡みつき、二人の愛人関係は成立した。
 セジョンは二人の関係を黙認し、祖母ミシルも何も言わなかった。一年前には、ユモは父と妹にすら隠して、セジョンとミシルの手引きにより寺でホジェの子供を産んだ。ホジェは息子が産まれたことに歓喜し、ユモと婚姻するとまで言ったが、セジョンははぐらかした。婚姻は、ホジェが二人の妻を持っても許される身分になってから、と暗に匂わせて、ユモには待つよう告げた。それが何故か、チュンチュがソルォンの孫ポリャンと親密だと聞いてユモは理解した。
 ――ハヒやウォルヒより、私の方が美しいからだわ。
 さらに、子供を産んだユモは、誰もが祖母ミシルの若い頃と比べるほど、蠱惑的な色香を漂わせるようになった。セジョンもミシルも、明らかに「使える」孫娘を、そう簡単に手放す気にはならなくなったらしい。特にセジョンは、ユモにチュンチュを落とさせる気になりつつあった。
 お陰で、ユモには表立ってホジェを独占するような愚かな真似は許されなかったし、ユモもホジェの妻の一人になる気はなくなっていた。――だが。

(……ホジェ公が、独り身なら良かったのに。ヒョンガン娘主が……いなければいいのに)

 薄汚いその一念だけは、泥のようにユモの心にこびりついて離れなかった。
 妹のヨンモは、夫たるユシンにまだ愛されてはいないとは言え、ただ一人の妻だ。堂々とユシンを落札し、誰に憚る必要もない。好きなだけ夫を見つめられる。
 そして今、彼女の視線の先にいるのは。

(……ねえ、公主様。公主の御身分って、居心地はどうなのかしら)

 隣に立つ男を自在に選べる、唯一無二の存在。もし、それが公主だと言うなら、ユモは公主が憎らしかった。自分の都合で男を選べる公主が羨ましかった。

(勿論、公主ってそんな簡単なものじゃないって、私でもわかるけど……)

 公主の地位に付き纏う危険もその難しさも、ユモには想像もつかないものかもしれない。――それでも。

(一度くらい、私だって皆をあっと言わせてやりたいのよ。ねぇ……破天荒な、公主様?)

 ――祖母にそっくりだと言われているなら。ならば、祖母のように、王室に傅く男達を寝取ってみようじゃないか。
 ユモは不敵に微笑むと、誰に遠慮するでもなく見つめ合う公主とその花郎に背を向けた。


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  1. 2011.04.19(火) _18:45:02
  2. 中篇『第一美花郎比才』
  3.  コメント:2
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comment

  1. 2011/04/20(水) 16:03:10 
  2. URL 
  3. poko 
  4. [ 編集 ] 
キム・ソヒョン一家の団欒が…気になります。あのお父さんの抑えつつ喜ぶ表情が思い浮かぶので。あの夫婦はかかあ天下か…うん、ソヒョンは尻に敷かれてる、絶対。
ピダムに絡もうとしている女の腹黒さに、ワクワクしました。

poko様へ

  1. 2011/04/20(水) 23:32:15 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
poko様、こんばんはーv

キム・ソヒョン一家の団欒、私もどうなっているのか気になります(笑) あそこは毎回ご夫婦で登場していて、最初の百済戦の後には印象的な夫婦の会話もありましたし。その時の会話から、かかあ天下だな、とも思ったのですがw
地味に好きな夫婦関係なので、ちょくちょく登場させたいですw

ピダムの関わろうとする女性はこれまでにも書きましたが、寝取ってやろうと言うのは初めてなので、書いてて緊張します…! 若き日のミシルをイメージしつつ、頑張りますーv


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