善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説第19弾!!今回はsaki様執筆です。
そして、とうとうお待ちかねの領主様こと、諸侯がご登場です~!(←待ってたのは管理人だけですかね…?)(いやそんな) ドラマでもやたらと存在感のある諸侯、saki様の文章でさらに悪い感じが漂っています!


* *


そして各々の思いに過ぎゆく夜の中、宿から遠く離れた場所でもまたひとつの思惑が動いていた。
温かなランプの温もりも届ききらぬ広い部屋に男が2人。椅子に腰かけた豪奢な着物を着た男と簡素ながらも仕立ての良い着物の伏礼した男だった。
ひとりはこのオアシスの街を預かる領主。いまひとりはその領主に面会を申し込んだ隋からの商人だ。

「それで?こんな時間に訪ねてきて話とはなんだ。」

領主の手の中でカラコロと牌が鳴っている。それは時として何か意味ある音楽の様にも聞こえた。面会が叶ってから一瞥もくれない領主にしかし男はただ黙して持参した漆塗りの箱を差し出す。さして興味も無くただ顎をしゃくって彼は男に箱の蓋を開けるよう要求する。男は心得たものでやはり黙って静かに蓋をずらした。
細やかな細工の為された金細工。この砂漠では珍しい乳白色の玉を幾重にも連ねた装飾品。冷たく凍える蒼に熱砂を閉じ込めた紅蓮の大粒。箱の中に納められた品々はランプの灯りに照らされて美しいまでに輝いていた。男に向けられなかった視線がそれらの宝飾を確認するのを見てから、ようやく男は領主に対して口を開く。

「此度は領主さまにお願いがありまして御前に参上いたしました。このような時間に拝謁願えました事伏して御礼申し上げたく。これらの品々は挨拶としまして持参いたしました。」
「なるほど。それなりに礼儀は分かっているようだ。ならば、お前の言う願いとは何だ?」

その言葉に男は自分の要求がほぼ通るだろう内心で確信し密かにほくそ笑む。しかし、男が口にした願いへの返答は冷たく鋭い金属の刃であった。
部屋の外に待機していた城の兵士に瞬く間に拘束された男は動転し恐怖に染まった顔で領主を見上げる。

「その品については確か禁止令を出していたはずだが?知らぬはずはないな。そうであったならば、こんな物を持ってわざわざ私に願い出にはくるまい。」

じゃらりと箱の中の宝飾を無造作に掴むとばらばらと男の前に落としてみせる。

「そ、それは・・・。」
「ついでに申せば我が国で賄賂は大罪。受け取った者も送った者も相応の罰を受ける。もちろん知っていたな。」

乾いた音をたて転がって行く数個の玉。まるでそれが自身の首であったかのような錯覚を覚え男はごくりと生唾を飲み込んだ。そのまま押し黙る男に領主はむしろ優しげに、または男の友であるかのように語りかける。

「しかし、だ。それも私が禁止令なぞを出したが故の誤り。別にお前たちの商売の邪魔をしようとしたわけでもない。判らぬかもしれぬが私にも考えあってことだったのだが・・・、すまぬな。そこで、だ。ひとつお前に提案がある。」
「・・・と、申しますと?」
「なに、簡単な事だ。ここに牌がある。お前が『生』と書かれた方を選べば今回の事は不問にしよう。早々に帰ればいい。」

領主の手には裏返された牌が2つ。刃を突きつけられ血の気の失った男の顔に僅かに赤みが差す。助かるかもしれないという希望が男の胸の内に湧いた。

「異存は無いようだな。ならば選ぶがいい。ただし、間違えれば相応の罰を受けてもらうぞ。」

相応の罰。領主の持つ牌へと伸び掛けていた男の手がびくりと揺れる。しかし男が縋るように見上げた領主の表情は穏やかで慈悲があるようにさえ見える。その表情に背中を押される形で一度止まった男の手が恐る恐ると動き出す。
けれど、無情にも男が選び取ったのは『生』とは真逆の牌だった。これ以上ないほど青く、否、青を通り越した真っ白い顔で男は再び領主の慈悲に縋ろうと顔を上げた。だが領主は変わらぬ穏やかな表情のまま男から視線を外すと兵に命を下す。

「連れて行け。
そうだ。ついでに交易に関わった者たちの名も吐かせておけ・・・全て、な。」
「はっ!!」

一礼した兵に引きずられ退出していく男に領主は言う。

「そう心配するな。言った通り相応の罰を受けるだけだからな。そう、街の者たちが噂する『消えた人間』がまた一人増えるだけの事だ。」

男はその時になってようやく気付いた。自身に向けられる穏やかに見えた領主の眼のその奥に黒く凝った冷たい光があったことに。




カラリ・・・コロリ・・・
   カラリ・・・コロリ・・・

領主一人となった部屋で牌の転がる音だけが聞こえる。それは時として意味ある調べのようにも聞こえ、また同時に全く意味の無い音のように思えた。

カラリ・・・コロリ・・・

領主の手の中で互い違いに転がる牌は表と裏が入り混じり、その度に書かれた文字が現れる。

カラリ・・・

2つの牌が示すのはただ暗く深い死への誘いのみだった。

「まったく面白みの無い連中ばかりか。網の目を潜るのに皆同じ事しかせんとはな。」

領主は鼻を鳴らして置き去りにされたままの漆塗りの箱に目をやった。それらの宝飾は確かにそれなりの価値があるが、逆をいえばそれなりの価値しかないものばかりなのだ。このオアシス周辺での茶葉の交易を独占した領主にとってみればそれらは爪の先ほどの価値も無い。交易を独占し続ける限りその何十倍もの利益が彼の懐に入ってくるからだ。
更に云えば、実のところそれらによって得られる利益自体が領主にとっては二の次であった。

「遠く都を離れこんなところにまで来る羽目になったのだからな、少しくらいは楽しみを見つけなくてはつまらん。」

+++

暁に鳥の囀る声がする。朝の席に似つかわしいとはとても思えない兵士からの報告を受けて領主は朝食を取る手を止めた。

「やはり、あっけない。もう終わったのか?」
「詳細はこちらに。あの者については他の者と同じく砂漠に打ち捨ててまいりました。」
「ごくろう、商団の方には手を出すな。なに、動かす頭が一つ無くなったくらいで潰れはせん。もし行方を聞きに来る者があったら追い返せ。」

男自身の手によって取りよせさせた商団の帳簿を報告書と共に兵士から受け取ると領主はざっとそれに目を通しながら指示をだす。それは聞きようによっては慈悲ある言葉にも聞こえた。けれど、決してそれだけではない。領主は気紛れで残酷だ。世の廻りに鼻が利き、混乱を招かない程度に民を甚振るのが好きだった。そもそも都を遠く離れこの地に来たのも、実際はきな臭い匂いを嗅ぎ取り事変に巻き込まれるのを厭うたからに他ならない。
しかしこの領主が一度口にした事は決して翻した事が無いのもまた事実だった。答えさえ間違えなければ先日の男にもまだ生きる道があったかもしれない。ただしそこに問題があるとするならば、その答えを知るのが領主のみであり、またそこに辿りつくまでの道を尽く塞いで回るのも領主自身であることだろう。
頁を潜っていた彼の眼が細められる。面白いものを見つけたとばかりに。男の取引相手はかなり多岐に渡っていたようで潜る頁には見覚え聞き覚えのある名が隙間なく書き連ねられていた。それこそ都にいたころに懇意にしていた者から見慣れない西域の文字で名を書かれた者までだ。その中に埋もれるようにあった場違いな『宿屋』の2文字。見れば取引の期日は禁止令を出したよりも少しばかり前。確かに令の発布前の取引ならば罪科は訪れない。ただし、そこから更に荷の移動が成されていなければの話であるが。
ここが都や西域の国であったならば気にもかけなかったかもしれない。飯店が併設されている宿屋など珍しくもないし、それで客に茶を供する店もあるからだ。とはいえそれは客の対象を富裕層と決めているような所謂高級旅籠の話である。こんな辺境の地で、また茶葉という財を成す品を買う理由がそうであるとは考えにくい。むしろ新しく商売を広げるために買い付けたのだという方が自然だった。

「なるほど、宿ならば遠来からの馴染みや伝手もあるやもな。まずは少量でも他の商団より安く売ればそれなりに儲けも出るというものだ。」

しかも今は件の禁止令のせいでいかに少量であったとしても商人たちは喉から手が出るほどだろう。さて、この買い付けを行った者は今の状況を見極めて賭けに出るか、出ないか。
出ていたならば追い詰められた時にどうでるか。他の商人たちの様に財でもって懐柔を図ろうとするか、その財がなくば虚言を吐き別の誰かを贄と差し出すか。どちらにしても多少の暇潰しにはなるだろう。
領主は控えていた兵士にこの宿について調べるよう命じた。


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  1. 2011.04.24(日) _22:20:51
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
  3.  コメント:4
  4. [ edit ]

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comment

  1. 2011/04/25(月) 02:03:24 
  2. URL 
  3. げん 
  4. [ 編集 ] 
saki様 はじめまして。げんと申します

トンマンの幸せな記憶である砂漠時代、オリジナルキャラのザズが登場してドラマとは一味違って同世代の他人との交流があり、奥行きが広がった砂漠の平穏な生活を楽しく拝読させていただいておりまた。
ピダム、一匹狼のイメージですが、そういえば初登場時には友達というか自分の代わりに薬草摘みにいかせて鶏肉まで用意させちゃう子分みたいななが二人くらいいたんですよね…ムンノに連れて行かれる場所ごとに同世代の子分の一人や二人作っちゃうことやっててもおかしくないかーと思えば、溺愛する妹のトンマンと体の弱い母親のソファと血がつながらないけれどきちんと家族という枠のなかで育ったピダムなら同世代の対等の友人がいるのはごく普通のあたりまえの生活なはずなのかな…なんて思っちゃいました
砂漠にそんなに子供がたくさんいるとは思えないので、貴重な存在ですよね。ガールズトークならぬボーイズトークをたくさんしてるんだろうなと勝手な想像しております

死の牌を持つ領主が登場して、そんな穏やかな生活が一変していくードラマでは胸がすくトンマンの活躍が見られるシーンにつながっていく今回のお話でしたが、これに兄ピダムとザズがどう絡んでいくのか益々楽しみになってきました!








はじめまして、げんさま^^

  1. 2011/04/27(水) 21:03:05 
  2. URL 
  3. saki 
  4. [ 編集 ] 
はじめまして、げんさま^^
sakiといいます。コメントありがとうございますw

オリキャラのザズは中々に皆様に受け入れられているようでとても嬉しいです^^
私的にドラマでのピダムの性格は少なくとも半分は育ての親のムンノのせいだと思っています(え?)

彼の場合、師であり親ではあっても家族ではなかったんじゃないだろうかと(私が勝手に)見てて思ったので。
あれです。人間、育つ環境次第で色々性格変わるんじゃないかと思ったらああいう兄ピダムが出来上がりました(笑)

ボーイズトークはどうなんでしょうね?
ザズの方から話はふりそうですけど、はたしてあの妹馬鹿(褒めてます)のピダムが食いつくかどうか^^;
ザズの方も初めは呆れて嘆いて最後には諦めるそうな気がします。
私的には悪餓鬼みたいな悪戯とか剣術とかについての会話で盛り上がってそうなイメージですw

ではでは、これからどういう風に話が転がっていくのか自分でも予測がつかないので私も楽しみです。
まぁ、一応ドラマに沿うようにはしているのでそうそうおかしな方向には転がらないとは思いますが(汗)

では!ありがとうございました!!

おおっ!!!

  1. 2011/04/30(土) 10:07:55 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
saki様、おはようございます!

いや~領主ってドラマじゃインパクトある割りに、さらっと消えてきましたよね

でもこうやってSSで見てると宿屋=トン&ピに狙いを定め始めた所でドキドキが止まりません


ソファを庇うトン&ピにチルスクとカターンが…………ああ、ワクワクしてきました(^-^)/


悪ーい領主をぎゃふんと言わせるトンマンに期待大で続きを楽しみに待ってます


おぉっ!?

  1. 2011/05/11(水) 19:34:06 
  2. URL 
  3. saki 
  4. [ 編集 ] 
こんばんわ、すーさんさま><
ちょぴし、ご無沙汰していたせいでコメントに気づくのが遅れました!?
本当にすみません(-_-;)

領主に対してはイイ味出してるのに砂漠でしか出演しなかったので私も残念でした。
だからと言って唐からの使臣で再登場とかしてくれれば良かったのにと思うのは私だけだとは思いますが・・・(笑)
そしてあわよくばVSミシルとかw
狸と狐の化かし合いみたいな会話が発生しそうですw

いよいよ、砂漠編でのクライマックスその1が近づいてきましたけど、どうなる事やらですw


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