善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 代償・上

画像の整理をしていて思い出した、去年のネタ帳にあったネタをイジってSSにしてみました。↓のトン&ピがくっつくと言うネタ展開ですw
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21話でトンマンとユシンが疫病の村に入ってましたが、ピダムと出会った後、その夜もしユシンが疫病にかかったらトンマンどうするだろ?と考えた結果のSSでございますので、ユシンファンの方には申し訳ない展開です。いつもごめんよユシン…!(土下座)
一応三話完結予定です。予定は未t(以下略)

お返事は夜に!コメントありがとうございます~v


* *


 トンマンが異変に気付いたのは、明け方のことだった。

『ユシン郎……? ユシン郎、大丈夫ですか』

 夜の間、隣でうとうとしていたユシンがいつの間にか動かなくなっていることはわかっていた。しかしトンマンはそれはユシンが眠ったからだろうと思い、放っていた。
 ところが空が白く、明るくなってもユシンは目覚めず、その時になってようやくトンマンは彼の様子が尋常でないことを悟った。
 顔中に浮かぶ玉のような汗。燃えるように熱い肌。震えている身体。何かの発疹。
 その全てが、一つのものを示していた。

『ユシン郎、ユシン郎!』
『…………う……』

 そんな、そんなまさか、と思いながらも、トンマンはもうそれを確信していた。
 昨日二人が足を踏み入れた村にあった、大量の甕。骸を燃やす煙に包まれた村へ、二人は何の用意もせず入ってしまったのだ。死を齎す疫病で封鎖された、死神に魅入られた村に。

『そんな……そんな馬鹿な! しっかりして下さい、ユシン郎!』

 ……ユシンは、その死神に憑りつかれてしまったと、トンマンは確信した。


* *


 朝方から夕刻まで、藪を突っ切り道なき道を駆けたトンマンの身体は、爪先から頭のてっぺんまで、泥と汗に塗れて真っ黒だった。
 けれども昨夜遅くから高熱を発し、未だに熱に魘されているユシン郎のことを思うと、例え足が縺れて眩暈がしても、立ち止まるわけにはいかなかった。一刻も無駄には出来ない。昨夜まではちっとも力が入らなかった身体に鞭をくれて、トンマンは走り回った。

(私の為に……私の為にユシン郎が死ぬなんて、絶対に嫌だ! もう誰も……誰も、私の為に死んで欲しくない。……母さんみたいに)

 本当なら昼にはユシンが父ソヒョンと会う段取りだったが、意識が朦朧としているユシンからはその場所を聞き出すことも出来なかったし、トンマンは元より彼ら親子しか知らないと言うその場所を知るわけもない。
 ソヒョンに頼ることも出来ず、トンマン一人でユシンを助ける為に出来ることは、一つだけだった。
 ……それは、朝方薬を求めて再び訪れたあの村で聞いた、死神を追い払う薬草である細辛を探す為に山に入ったと言う青年を探し出し、彼から細辛を貰い受けること。もうどこにも売っていない細辛を探しており、しかも、昨日ユシンが申の刻に鶏肉の代金を払うと約束したあの青年を、一刻も早く探し出し、薬草を分けてもらうこと。

「……はあっ、はっ……」

 崖のような坂を滑り落ちるようにして川辺に辿り着いたトンマンは、崩れ落ちるように座り込んだ。
 膝が笑って、もう立ち上がることすら難しい。肩で息をする彼女の目の前に、清涼とした滝とそこから流れる美しい川が広がっていた。
 時間を無駄にするわけにはいかない。
 しかし、これ以上このまま走り続けるのは無理だった。一睡も出来なかったことも災いしているらしく、体中についた泥と汗を落とさない限り、トンマンまで気を失ってしまいそうだった。
 そっとトンマンは辺りを見回した。――深い山の中、人影はない。
 身体を洗いたい。トンマンは切実にそう思った。
 あの青年は今日も細辛を探して山を歩き回る様子だったが、半日以上探しても出会えなかった。事実、もうとっくに申の刻は過ぎている。一応申の刻にはユシンのいるあの洞窟に戻ったが、彼は来なかったし、村にも帰っていなかった。つまり、まだ山の中で細辛を探しているはずだ。今、今ほんの少しの間だけ彼女が汗を流しても、それで会えなくなると言うことはないのではなかろうか?
 それに、ユシンと逃げて以来トンマンはまともに体を清めることすら出来ていなかった。もう限界だった。
 暫し悩みながら辺りを見回した後、川辺にある大きな岩の陰でこっそりとトンマンは郎徒服を脱いだ。
 日が傾いている為か、いつものあの肌に纏わりつくような不快な暑さは感じない。ゆっくりとトンマンは自身の長くすらりとした白い脚を水の中に入れた。
 冷たい水で汗を落としていると、こんな状態だと言うのに恍惚とした溜息が毀れた。

(……生き返るって、こう言う気持ちを言うんだろうな)

 刹那の一時でも現実を忘れることの出来たことに感謝して、トンマンは手早く汗と泥を落とし、髪を絞った。水滴は白い肌の上で跳ね、また川へと戻っていく。一息つく間もなく、岩陰に置いてある単衣を手に取った。
 その時だった。

「――お前、女だったんだ?」

 突然男の声がして、慌てたトンマンは再び水の中に落っこちた。腰が抜けそうだった。
 反射的に顔を上げれば、探し求めた相手が昨日と同じようにのっそりとこちらへ歩いて来ていた。トンマンの郎徒服のすぐ隣にしゃがみ込んで、また片目を瞑って寄越す。

「道理で、やわい奴だなあと思ったよ」

 探し回っていた時は髪一筋見つからずに唇を噛んでいたと言うのに。だと言うのに、こんな瞬間に突如として現れてトンマンを掻き乱す。
 今もじろじろトンマンを見下ろしながらも、昨夜彼女に向かって鶏肉を放り投げた時のように、手にした枝をとてつもない速度で投げ捨てる。枝が水の上を踊るように遠くへと流れていくのを見送って、トンマンはへらへら笑う青年へと視線を戻した。
 眼と眼が合った瞬間、青年の片眉が愉快そうに上がる。へへっと笑う彼を見て、ようやっと自分の格好を思い出したトンマンは慌てて細い腕で身体を隠した。水の中とは言え、これだけ綺麗な水なら全て透けて見えてしまう。後退りしながら、ユシン郎が気に食わない奴だと言ったわけだとトンマンは臍を噛んだ。
 とにかく、せめて彼が現れたのが水から完全に上がる前で良かったと思う。……いや、すでに半分は見られた可能性が高いが……と言うか絶対に見られてはいるが、全部ではないのが不幸中の幸いだ。
 羞恥の為に頬を赤くするトンマンの姿を楽しそうに眺める青年は、口笛まで吹いている。可愛いなあ、と声に出されてもいないのにそう言われた気がして、トンマンは驚きのあまり落としてしまった単衣でなんとか身体を隠した。

「ずっと……ずっと、あなたを探し回っていたんです!」

 羞恥を隠す為にも敢えて鋭く怒鳴ったトンマンに、青年は片眉を上げた。

「あ。そっか。そう言えば、とっくに申の刻は過ぎてたっけ。金は?」
「あ、あの、それは……実はまだ、お金は用意出来ていないんです」
「ええ?」

 唇を尖らせた青年にめげずにトンマンは食い下がった。

「不躾だし無遠慮だとはわかっています。でも、時間がないんです。お願いです、細辛を分けてくれませんか」
「細辛?」

 それまでは茶目っ気いっぱいだった青年の顔が、「細辛」と言う単語を耳にした途端変わった。どこか、酷薄さすら漂う瞳がトンマンを見詰めている。

「細辛を何に使うつもり?」
「その、ユシン郎が凄い高熱で、身体中が痛いみたいで……。多分、あの村に蔓延していると言う疫病にかかってしまったんだと思う。だから、細辛が必要なんです。お願いです、細辛を分けて下さい! ユシン郎を死なせるわけにはいかないんです……!」

 ――ユシン郎?
 言われて、青年はなんとか昨夜彼が鋭く投げつけた鶏肉をきちんと受け取った男を思い出した。籠の中に大事にしまってあるあの鉢巻の持ち主を。

(……ああ、あいつね)

 心の中で頷いて、青年は頬杖をついた。
 ちなみにその細辛は、今、青年が手にしている籠の中に幾つか入っていた。一日かけてなんとか見つけて掘り出したものだ。全く、この細辛の為にどれほど師ムンノから叩かれたことか。何度も遠慮なく叩かれたことを思い起こすにつれ、簡単に渡せるかと彼は意地の悪い笑みを浮かべた。

「うーん……俺が細辛を渡したら、お前は代わりに何をくれるんだ?」
「あ、と……そ、それは、ちゃんと明日、鶏肉の代金と一緒にお金を払いますから!」

 しかし青年はその言葉に全く興味がないように膝を叩いてそっぽを向いた。
 不味い、このままではこの気紛れな男はいなくなってしまう――。狼狽したトンマンは、まだ自分がほとんど裸でいることも忘れて水の中から彼の腕を強く掴んだ。

「お願いします! 今すぐあなたに渡せるものはないけど……でも、どうしても細辛が必要なんだ。必ずお金は払いますから……お願いします、細辛を分けて下さい!」

 切迫した様子で彼に訴えかけた為かさすがに振り返った青年は、それでも彼女の話に心を打たれているようには見えない。ただ、彼女の白玉の美貌を眺めた後、ゆっくりとその視線をその身体へと流した。
 ――肉と女は絶対に近付けてはならない。
 そう幾度も彼を叱り飛ばした師匠の顔が脳裏を過ぎり、我知らず青年は刃のような残虐で美しい笑みを浮かべていた。刹那の間に消えたその笑みにたじろいだトンマンの腕を掴み返し、今度は悪童のような無邪気な笑顔を彼女に向ける。

「……男なら、こう言う時は金より女を取らなきゃ駄目だよな」
「さ、細辛をくれるんですか!?」
「ん。いいぜ、あげても。――ただし」

 青年の鋭い眼差しが、トンマンの張りつめた瞳を、さらに強く捉えた。

「今夜、お前の身体を俺にちょうだい」





 地平線にその姿を隠そうとする夕日が簡素な家を赤々と染めている。
 ちょうどトンマンが探していた青年と再び出会った頃、ユシンの父キム・ソヒョン大監は、いつまで経っても約束の場所に現れぬ息子を思い、やきもきしていた。ウルチェの話が事実であるなら、事は一刻を争う。ミシルの手にトンマンが渡れば、王は双子公主を隠ぺいしたことを和白会議で糾弾され、窮地に追い込まれるだろう。そうなれば、王に引き立てられてきたソヒョンも無事では済まない。

「大監」

 廃屋へと置いていた兵が、やはりユシンもトンマンも現れなかったと彼に報告した。ソヒョンは深く息を吐いた。
 ……ユシンは、トンマンが公主だと知った上で彼女を逃がそうとしている。だが彼には路銀すらない。そして彼が頼れるのは、父である己のみ。となれば、彼は何があろうとソヒョンの前に姿を見せるはずなのだ。なのに姿を現さないと言うことは、何かユシンが動けない理由が……それも、相当切羽詰まった理由があるはずである。
 兵の報告を纏めると、ちょうどこの近辺に疫病の為に封鎖されたヤンジ村があった。身を隠すにはちょうど良いが、留まるには危険な村が。
 まさか。まさか……その村に入り、その疫病とやらを貰い受けたのではなかろうか。それも、トンマンではなく、ユシンが。
 そうでなければ、ユシンがいつまで経っても現れない理由の説明がつかなかった。
 物静かで巌のように揺らがないソヒョンの表情に、影が差した。



「何? 二人が現れなかった?」

 ソヒョンの兵に紛れ込ませた密偵が放った伝書鳩の伝言に従って伊西郡金花村へと馬を飛ばしたソルォンは、その道中、予想外の報告を受けて唇を真一文字に引き結んだ。
 伊西郡金花村はもう目と鼻の先だが、このままではウルチェの手にトンマンが渡ってしまう、と急いでいた彼にとってそれは朗報でもあったが、同時にせっかく掴んだ二人の行方が再び見えなくなったと言う悪報でもあった。
 チルスクによれば、着のみ着のまま徐羅伐を出たユシンとトンマンだ。必ずソヒョンと連絡を取るはずだし、そこで旅の支度を整えようとするに違いないと考えていただけに、ソルォンはさらに馬を走らせながらも眉根を寄せるしかなかった。何が、一体何が起きている?
 兎にも角にも、金花村よりそう遠いところには行ってはいないはずである。
 日が落ちてから伊西郡の太守の館へ入ったソルォンは、ポジョンとソクプムに厳命した。

「金花村の隣村は疫病で封鎖されていると言う。二人がそこにいる可能性もある。急ぎ金花村周辺に兵を配し、夜を徹して郎徒を見た者がいないか探せ」




****

中途半端にソルォンさん達がいるのは、最初はこの話は連載にする予定だったからだったりしますw
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  1. 2011.05.08(日) _18:00:54
  2. SS(ドラマ設定IFもの)
  3.  コメント:2
  4. [ edit ]

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comment

私も良く無事だなと思ってました

  1. 2011/05/08(日) 22:29:17 
  2. URL 
  3. すーさん 
  4. [ 編集 ] 
疫病が蔓延している村でユシンもトンマンも無事なのが不思議でした


それより治療に当たってたムンノが平然としていたのも不思議でしたねぇ……


まぁムンノは不思議ちゃんだからバリヤー張ってそうですがね(ファンタジーパワーって感じで)


ピダムは色黒バリヤーでも出してるでしょうがね(笑)


いやートンマン、ちょっぽしの細辛で身売りしちゃうんですか?


きっと抱いてから始まる愛なんでしょうか?(ピダムの場合ですがね)

トンマンからだと……「だれがっっ!!!」と怒りつつ細辛欲しさに…………ムニャムニャ…………「もう側によるな!!!」

な、展開でしょうか?

ユシンは知っちゃったら茫然自失に魂抜けちゃうか、意外に「俺が……」って迫っちゃうかも?


続きを楽しみに待ってます



すーさん様へ

  1. 2011/05/09(月) 00:07:59 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
すーさん、こんばんは~v

> 疫病が蔓延している村でユシンもトンマンも無事なのが不思議でした
> それより治療に当たってたムンノが平然としていたのも不思議でしたねぇ……

時間がないので仕方ないと言えばそうなんですけどねー(笑) せっかくなので、IFもののネタにしてしまいましたw
ムンノとピダムは人間じゃない(酷)キャラなので(すーさんの仰る通り、特殊なバリヤー張ってそうですしw)、疫病にかからなくても納得ですが、トンマン達を追いかけてきたポジョン達は、郎徒もたくさんいましたし、誰か被害に遭っていてもおかしくないんじゃないかと。

ここからの展開は、トンマンが身売りしちゃうパスワード記事な展開と、商売人らしく値切り交渉を始める展開と二通りあったりします(笑)
この時のトンマンの精神状態を考慮すると、「死んでもいいと思ってるんだから、別に身体くらい……」ともなりそうで。普通の状態だったら断固反対でしょうけれども、特殊な状況ですし。ツンデレする元気もないですよね、この時は。ピダムと接するうちに、元気になりそうな気もしますが。
あ、ピダムはどんな状況でもトンマンラブになるので、心配してませんv(ちょ)
んでもって、このSSのユシンは「私が」となるチャンスも体力もないままに終わりそうです(笑) と、と言うか、SS自体が中途半端なところで終わる予定だったりします…。←


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