善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

リレー小説の砂漠編も徐々にクライマックスに近付いてきたような気が…!?
前回は私のターンだったのですが、自分で書いておきながら「これ、次の展開がまったく思いつかないなあ」と大変投げやりな感想を持っていたので(すみませんすみません)、今回のsaki様のお話に「おおおうそう来たか!」と盛り上がっております。この盛り上がりが続いているうちに、今度はさっさと続きを書きたいですねー!
ところで、久々に募集します。

saki様と管理人と一緒にリレー小説を書いてくださると言う方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひご一報を!!まったり連載なのでしめきりもありませんし、ご一考くださいませーv


* *


ザズは目的も無く燻ぶる心の間ままオアシスの中を歩き回っているつもりだった。
現状に対する父親の態度といい、悪友の無理解さといい、今日は本当にイラつく日だと思いながら。それでもいつもと変わらず太陽は容赦なく照りつけるし、風は砂っぽい。腹が減りもすれば眠くもなる。街は相変わらず賑やかで騒がしい。そう、また人が消えた事など露とも気にしていないかのように。

「諦観。正論。それとも妥協ってか。冗談じゃねえよ、畜生がっ。」

悪態を吐くその視線の先には領主の館。知らず気が付けば足がここに向いていた。流石に自分がここで何かを出来るとは思っていない。できてその城壁に唾を吐くくらいだろう。もしくは指を突きつけるとか。睨みつけるとか。
どうしようもない怒りにザズは舌打ちを零すとそれに背を向け再び歩き出した。腹は立つが生産性の無い事も実はあまり好きではない。領主の鼻をあかす、とまでいかなくともいい、どうにかしてその腕や足のひとつにでも傷をつけられないかと半ば本気で物騒な考えが頭をよぎる。

(俺たちが黙っているから・・・。何も出来ないと思っているから・・・。あいつらはっ・・・。)

だからそれは偶然だった。

「若旦那、そろそろお戻りを」
「わかってる。あんまり店を空けると、親父様に叱られるからな」

店という単語と聞き覚えの無い声。全てとは言わないが、それでも職業柄オアシスに住む者たちについては知っている。ザズはぐるりとまだ少し険しさの残る視線を向けた。珊瑚の髪飾りに見覚えの無い商人風の男。とその使いらしき男。

「若旦那っ! ご無事で!? さあ、そちらの店へ」
「う……べほっ、げほっ!だ、大丈夫だ。帰ろう」

ちょうど吹いた砂ぼこりに巻かれたのか情けなくも咳き込んでいる男に内心、情っさけなねぇ奴と判を押した。街を離れていたどこかの商家の放蕩息子。そう見えた。だが、ザズが興味を無くし視線を逸らそうとしたとき男が振り返った。ザズに、ではない。通り向こうのよく知った店を、そしてその口が何か音にならない呟きを形作ったのを、ザズは視界の端に捉えた。捕まえようと手を伸ばす。何故、そう思ったのか。それは分からない。けれど、その男はあっという間に人ごみの中に姿を消していた。特徴と云えばここらではあまり見ない珊瑚の髪飾り。顔の造作はよく見なかった。
ザズは男が見ていた店。悪友の実家である宿へと足を急がせる。ピダムは客引きに出ていていない。何か――――――嫌な予感がした。


が、予想に反して悪友の自宅は何時も通り昼の商いに忙殺されている最中だった。賑やかに騒々しく客と主人が行き合う店内にザズはほっと胸を撫で下ろす。ほっとしたついでに腹が鳴った。そういえばピダムと喧嘩別れの様の別れてから何も腹に入れていなかったことを思い出して空いた席を見つけるとそこに腰を下ろす。無愛想な給仕が水をつぎに来たのにザズは今日初めて笑った。

「旦那。すっかり板について。」

じろり、睨まれたがそこはどこ吹く風とザズは目敏く店を走り回るトンマンを見つけると『美味い物ひとつ』と声をかけた。

+++

「相談。これは相談。ただの相談よ。他意は無い。絶対に無いわ。
 兄さんの言うとおり、領主云々のこともあるけど売るからにはやっぱり適正かつ相場の確認は絶対必要よ。
 それで、信用出来て秘密にしてくれそうな人がたまたま、たまたま!カターンおじさんだけだったってこと!!うん。大丈夫。問題ない!!」

宿の一室でぶつぶつと自己弁護に走っている姿を見れば誰でも一体何事だろうと首を捻るに違いない。昼の慌ただしい時間も過ぎ誰もが暇を持て余すそんな時間帯。兄は朝早くまるで逃げるように客引きにと出かけて行った。あの様子と昨夜の表情から客を一人でも捕まえない限り絶対に帰ってこないような気がする。好機と云えば好機。トンマンはピダムにあれだけ言われたにも関わらずあくまでもさり気なくだが磚茶の事をカターンに話す心算でいた。その根底にあるのは大好きな人の力になりたいというごくごく単純なそして真っ直ぐな心だった。よしっ!とひとつ気合いを入れるとトンマンは扉に手をかけた。



食堂に顔を出した瞬間、トンマンは見覚えのある顔やない顔に取り囲まれた。どどっとそれはもう雪崩の様な勢いだった。共通するのは格好から皆どうやらどこかの商人らしいということ。思わず一歩後ずさったトンマンに罪は無い。

「なぁ!茶葉があるってのは本当か!?」
「売ってくれ!金は出来るだけ出すっ!!」
「いや!あんたに売った商人を紹介してくれるだけでもいい!」

思わず眼が点になる。一体誰から聞いた?カターンにだってこれから話すというのに。というかそんな大声で騒いでいていいのだろうか?今、この街で茶葉の取引といえば商人たちの間で禁句に等しい状況の筈である。
とりあえずは否定しようと、皆を落ち着かせようと口を開こうとするのだが、既に彼ら自身の熱によって殺気立ちトンマンの声など耳に入っていない。考えたくもないが、今、警邏の兵士などに見つかればしょっ引かれるかもしれない。家捜しされた所でそう簡単に見つかるとも思えないが痛い腹なのは間違いないのだし。
冷汗が流れる。

(あぁぁ!?―――兄さん。母さん。カターンおじさん!!誰でもいいからとりあえず皆を止めて~?!)

「おい。娘相手に何を騒いでいる。」

天の助け。トンマンにとってその声はそれの一言に尽きた。さっきまであれほどに膨れ上がっていた熱が嘘のように静まって行く。水を打ったかのように静まり返った場に現れたのはカターンに連れられたチルスクだった。

「何の騒ぎだ。」

反論を許さぬ冷え切った声。そして瞳。ここ数日で見知った彼では無い男がそこにいた。それは人を従えるための―――従えた、命じる事を当り前としていた者の声だった。
金縛りにあったかのようにトンマンに詰め寄っていた男たちの動きが止まった。止められた。誰も答えない。誰も動かない。そこに風を通したのはカターンだった。

「みんな、トンマンが怖がっているよ。それに茶葉とは一体何の話だい?」

チルスクとは反対の柔らかな声に男たちは漸く動きを取り戻す。カターンにおいでと手招きされトンマンはそんな男たちの間を擦り抜けると彼の背中に駆け込んだ。心臓が痛い。カターンの背中から男たちを窺うと、皆ばつが悪そうに顔を見合わせていた。

『いや、こいつが』『向こうで小耳に挟んだ』『俺はそいつらが話しているのを。』

喧々囂々。皆が皆、首を傾げ言いだした者を見つけようとするもその道行く先は堂々巡り。結局、だれが言い出したのかは判らぬまま。

「あれのせいで焦っているのは解るが関係の無い者を巻き込むのは感心しないよ。それに、出所の分からない話を鵜呑みにするのもね。」

カターンの苦笑と共にそう言われ、あからさまに肩を落とす者、トンマンに謝る者、領主に対して文句を言いだす者とに様々だったが皆、茶葉については誤った情報だと判断したらしくトンマンは密かに胸を撫で下ろした。
やがて、昼過ぎの宿にある正しい風景―――外からの賑やかな声を肴にトンマン達が一息つくための時間が戻ってきた。カターンとチルスクに礼を兼ねた点心と水を2つ、3つ出してから2人が付く席にトンマンも腰を下ろした。

「トンマンも災難だったね。皆も悪気や悪意あってのことじゃないんだけど。」
「あ、ううん。それはいいよ。大丈夫、分かってるから。」

ありがとうと頭を撫でててくるカターンを見上げてトンマンは彼にだけ聞こえるように小さく「それに・・・」と言った。

「実は本当にあるんだ、―――茶葉。」

そして、そんな彼らの騒ぎを食堂の隅からじっと注視し、いつの間にやら姿を消した男がひとり。



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  1. 2011.06.01(水) _00:00:46
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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