善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SSS うろうろと

掲示板にあま茶様が投稿してくださった漫画を見てからどうしても書きたくなって書いたSSSを更新します。『りんりんと』の後日談です。

コメントへのお返事は後程!
一度SS書いたら、なんかあれこれ冷静になってきましたwいい気分転換ですね!(ちょ)


* *


 ミリョンと名乗る青年が去ってから、五回ほど夜が来てはミリョンのように去っていったものの、ヒョンジョンの癇癪はまだ去ってはくれなかった。
 いや、ミリョンが去った夜、ぱちりと目覚めた時にすぐ傍に母親がいなかった上に、彼がわんわん泣いてもすぐに駆けつけてくれなかったが為に、ヒョンジョンの癇癪は根深くなってしまっていた。と言うわけで、その日もヒョンジョンはトンマンに貼り付いて、トサンやトファが来てもトンマンが離れることは許さずにいた。

「あぅ……」

 さすがに眠いのか、兄妹が帰った後からこっち、ヒョンジョンはトンマンの胸でうつらうつら船を漕いでいた。が、そのぷくぷくとした手はぎゅむっと隙なくトンマンの髪を一房握りしめ、離す気配はない。

「おねむかなー?」

 トンマンが小さな小さな声で囁くと、半ば反射的にヒョンジョンは顔をもにゅっと顰めた。どうあっても寝たくないらしい。
 強情な息子を寝かしつけようと、トンマンはあの手この手で息子を攻め立てた。子守唄、柔らかな手、一定の揺れに、母のぬくもり。
 そのどれが効いたのかははっきりしなかったが、結局ヒョンジョンは不承不承眠った。執念を拳に残して、トンマンの髪を掴んだまま。――そしてその瞬間、ヒョンジョンが凭れている方と反対側のトンマンの肩に、のしっと何かが乗っかった。

「……ピダム」

 疲れた様子でトンマンがその名を呼ぶと、ピダムはヒョンジョンを抱っこしたままのトンマンの腹に腕を回して、後ろから抱きしめた。前と後ろに子供を抱えているような錯覚に囚われそうな光景だったが、後ろの子供は前の子供とは違う方法でトンマンに自分に構うよう要求し始めた。

「ピダム……この通り、ヒョンジョンが離れないんだ」
「わかってる」

 だからこっちも勝手にやる、とでも言わんばかりに、ピダムは白い首筋から耳の後ろまで、残らず味わうように堪能した。すでに日は傾きつつあったが、まだ夕刻とは言えない昼下がりの一時は、ヒョンジョンにとっては昼寝の時間で、ピダムにとってはトンマンとじゃれ合う時間であるらしい。じゃれ合い方は、その時々だが。
 その日はあまり軽やかなじゃれ合い方とは言えず、ピダムの片手が脇腹から腰へと不条理な動きを見せている。それを感じて不条理な気分が芽生えることに腹が立って、トンマンは少しピダムを睨んだ。

「ピダム、夜にしろ」

 しかし、ピダムは引かなかった。

「触るだけだからさ……」

 自分でもどうしようもないのだと言わんばかりに切ない吐息をわざわざ耳朶にかけるピダムもまた、ヒョンジョンと同様に、ミリョンが去って以来、以前よりさらにトンマンから離れようとしなくなった。何か大きな勘違いもしているらしく、暇さえあればトンマンをその気にさせようとこうして触れてくるのだ。口ではミリョンの一件におけるトンマンの行動に理解を示すようになっていたが、狭い狭い心の方には、危うく他の男に彼女を掻っ浚われそうになったと言う焦燥が深く深く根差しているらしい。
 正直なところ、トンマンはすでに、夫と息子の双方を叱り飛ばし、一人にさせてくれと叫びたい衝動に幾度となく駆られていた。それでも我慢しているのは、自分の行動に責任を感じているからだったが、それにしても堪ったものではなかった。

「……座りたい」
「いいよ」

 辛うじて発した願いはあっさり聞き入れられたが、座ったのは寝台で、しかも背後にはやっぱりピダムも座っていたので、なんだか疲れてトンマンはピダムの胸に背を預けた。ヒョンジョンは相変わらず髪を掴んだまま、トンマンにしがみつくようにして眠っているし、ピダムはトンマンが腕の中に倒れ込んできたからか、我が意を得たりと言わんばかりに絡みついている。

(ただのトンマンになって暮らしてみたいと思った時には、ここまでとは思わなかったなぁ……)

 数年前には考えもしなかった、少しどころかかなり暑苦しいその状態にも、近頃は慣れてきている自分を振り返って、トンマンは小さく微笑んだ。

(……二人きりより、こうやっている方が幸せだと言ったらピダムは拗ねるのだろうが)

 夫と息子、双方からの愛情を鬱陶しいくらいに感じるこの状態が、トンマンは嫌いではなかった。疲れるけれども、幸せだと思う。

「なぁ、ピダム」
「うん?」

 顔を上げて静かな声で夫の名を呼ぶと、トンマンは彼女をじっと見つめ返してくるその瞳ににっこりと微笑んで、当たり前の挨拶のように告げた。

「愛してる」
「――」

 滅多に聞けないその言葉を何の前触れもなく耳にしたピダムは、それからすぐに、息子を妻から無理矢理引き剥がそうとするあまりに息子を最悪の状態で起こした。そうして膨らんだ幸福感と欲望を抱えたまま、ぎゃんぎゃん泣く息子を宥める妻の周りをうろうろし、いつまでも離れようとしなかった。





****

タイトルは『りんりんと』にかけて、『有漏有漏と』を平仮名にしてみました。
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  1. 2011.07.13(水) _21:49:24
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
  3.  コメント:2
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  1. 2011/07/13(水) 23:50:03 
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  4. [ 編集 ] 
このコメントは管理人のみ閲覧できます

お返事不要とお気遣いくださる方へ

  1. 2011/07/14(木) 20:51:21 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
当たり。

です。おおおお返事したい…!(笑)


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