善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 連環

61C (7)
60話から61話にかけてのトン&ピとチュンチュです。ちょっと自分の中での整理がてら書いてみましたので、少々ドラマと違うかもしれませぬー。
どうも、ディベートモードでいるとSSが単発だらけになりますねー。頭の切り替えも兼ねてあれこれ書き散らしてはいるのですが、うーむ、なんかこれでいいのかなぁ…と言う出来のものが多い気が…!精進精進。(と言いつつ、こう言う時に限ってパスワード記事は「ええい、やっちまえ!」と言わんばかりにアホなことが書けたりしますw)


* *


 ――陛下は、間違えている。
 玉座を担う力を持った二人の男は、様変わりした王を挟んで睨み合いながら、同じ焦燥に駆られていた。
 ――もう、陛下には独りで玉座を護る力はない。
 耄碌したわけではなかった。ただ、長年風雨に曝され続けた岩がいつの間にか小さな石になってしまうように、神国初の女王は、即位した時に纏っていた鎧を失ってしまっていた。……そして、代わりに温かい衣を与えられた彼女は、鎧をなくしたことに気付いていなかった。



 金の指環。トンマンだけが、女王だけが持つ、金の指環。
 それを受け取ったピダムは、その存在を秘するように指環を懐へ仕舞い込み、誰にもそのことを覚られぬように独りで着替えも済ませた。そうして私邸の自室で一人、思索に耽った。
 ――わからない。どうしても、わからない。
 けれど、いくら考えても、トンマンの考えが、わからなかった。

(指環は……王の証だ)

 それを分け与えることは、とてつもなく危険なことだった。しかも、この状況下である。見る者が見れば、女王が自らの指環と全く同じ指環を夫たる男に与えることは、王権を委任したと受け取ってもおかしくない。女王の指環は、唯一無二のものなのだ。
 そして、それがわからぬトンマンではないはずだった。昔、ミシル一族の指環を使ってポジョンを追い詰めたと言うではないか。指環が如何に強固な身分の証になるか、彼女は身をもって知っているはず。
 おかしなことは、それだけではなかった。

『処罰を。覚悟は出来ています』
『私の覚悟が出来ていない』

 ――「私の覚悟が出来ていない」?
 そんな馬鹿な話があるわけがなかった。ユシンの時ですら、ろくに時間のない中で、先も見えぬ状況で逮捕を断行した彼女なのに、「覚悟が出来ていない」とは。
 さらに、今回はユシンの時とは事態の重さが違う。ユシンは「復耶会の存続を黙認した」ことが問題になったが、ピダムは「玉座を狙う企てをした」ことが問われているのだ。これは明らかな反逆罪であり、だからこそ処罰を望んだ。もはや、貴族を丸め込み切り捨てたところで、女王を玉座から引き摺り降ろし、ピダム自身が玉座に相応しいと公言し、即位を狙ったと言う事実は揺らがないからだ。

(ここで私が逃れたら、陛下はどうなる? ここで、不敬不忠の首魁を見逃せば……陛下の権力は失墜するのではないか……?)

 幾度考えても、ここで彼が逃げ、それを彼女が求めたと言う事実が示すものは、女王は私利私欲に溺れたと言う結論でしかなかった。
 何せ、トンマンは上大等ピダムの都落ちを、便殿会議を通さずに独断で決めてしまったのだ。今日の便殿会議には参加していないのであくまでこれは想像だったが、もし便殿会議でこの一件を持ち出したなら、チュンチュが絶対に許さなかっただろう。ピダムを牢にぶち込んでおけと主張し、一歩も引き下がらなかったはずだ。何せ、上大等の身柄を拘束出来る権力を持っているのは、王だけなのだから。
 しかし、そうはならなかった。
 それに加えて、チュンチュが兵を寄越さない以上、トンマンは、あくまでピダムは私邸に軟禁されたままである、と言う姿勢を貫いたのだろう。推火郡行きは、トンマンの独断でしかない。
 ピダムは眉根を寄せた。

(……駄目だ。そんなことをすべきではないはずだ)

 王が公平性を失い、大義を忘れ、秩序を乱すなど、絶対にあってはならない――。
 トンマンの為にも、彼女が必死で築き上げてきたものを守る為にも、ピダムは推火郡で身を隠すべきではなかった。彼がすべきことは、反乱を防ぐことなのだ。

(だが、トンマンは私を罰することが出来ないと言う。トンマン以外の者には、私を捕らえる権力がないのに……)

 上大等として打てる最後の一手を封じられてしまった以上、残る道は一つしかない。――上大等としてではなく、『ピダム』として、この事態を収拾するのだ。

 久方振りに抜き放った刀身は、錆び付いてはいなかった。まるで『ピダム』がそうであるかのように、光を当てられ輝いている。
 その刀身を隅々まで眺めていると、礼装の下に押し込めた血潮が眼の裏で鋭く波打ち、視界が一気に皆紅に染まった。遥か彼方に置いてきた兄弟を得たように、懐かしく、力強かった。

(殺すだけなら……私には、容易いことなんだ)

 この十年、人を殺すことなく生かし、捕らえ、組み伏せることに腐心してきた。生け捕りがいかに難儀であるかを痛感しながらも、トンマンの為に生け捕りをしてきた。……最後には、自らの身を差し出して、生け捕りを促しもした。
 けれども、トンマンはそれを拒んだ。十年もの間築き上げてきたものを、拒んだのだ。
 それが、ピダムには恐ろしかった。

(もしかして……病のせいなのか……?)

 病の為に心身が弱り、正しい道を見失っているのか。収拾すべき時に事態を収拾出来ないのは、そのせいか。
 だとすれば、ピダムは尚のこと引き下がれない。女王の治世を正しい形にする為にも、彼を担いだ者達に、引導を渡さなければならないのだ。



 金の指環。トンマンだけが、女王だけが持つ、金の指環。
 それを見た瞬間、怒りを通り越して憎悪に染まりかけていたチュンチュの心は、侮蔑に呑まれた。

(王の指環を、あなたはピダムに与えたのか。それも……口づけを与えるように、密やかに)

 初めて、皆紅の衣を纏うのは、ただの女と言う生き物なのだと――王は、叔母は、骨抜きにされ、情に溺れたのだと確信して、チュンチュは血が滲むほど拳を握った。
 何故。何故、これまで血を吐くような思いで築き上げてきたものを、こんなにも簡単に、自ら滅ぼそうとするのだろう? 賢君たりえたのに、何故自らそれを打ち壊してしまったのだろう?
 そんなに、玉座は淋しいものなのだろうか。……どのような苦しみにも耐えてきたはずのこの叔母ですら己を失ってしまうほどに、辛く、苦しいものなのか。

(そうなのですか、陛下……?)

 チュンチュが見た限り、ピダムは叔母のように我を失ってはいなかった。ピダムはピダム。これまで通り、自儘で、頭も切れる。
 ……ただ、やはりこれまたこれまで通り、軍権を掌握しかねた時と同じように、叔母の愛を得る為に、肝心なところで盲目になっているだけ。
 しかし、ピダムはピダムのままだと言うのに、叔母は変わってしまった。それも、ピダム可愛さに、彼を女王の権力を使って大義もなく庇い立てして、その重大さもわかっていない。……いや、今になって、ようやく理解した、と言う方が正しいのだろうか。

(手元に置いておけば、惚れた男と、永久の別れを惜しむことも出来ただろうに)

 ――今となっては、それも叶うまい。

(いや……)

 ――私が、叶わせない。
 いくらまだ正式な婚儀を経ていないとは言え、女王の男が反乱軍の首魁となったのだ。それだけでも忌避すべきことであり、歴史から抹殺すべき事柄であるのに、その挙げ句に、男に絆され女王が決断を誤っては、王権どころか、神国の威信が地に落ちる。

(ピダムは反乱軍の首魁として、死なねばならない。もう、陛下に会わせてはならない。陛下が、これ以上愚かな過ちを犯す前に……殺してしまわなければならない)

 皆紅の衣を纏う女王への眼差しを、チュンチュは一層鋭くした。心なしか、女王は二回りも小さくなってしまったかのように、か細く見えた。



 金の指環。トンマンだけが、女王だけが持つ、金の指環。
 本来なら一つしかないそれは、今、一人きりで寝所に籠るトンマンの手の中に、二つあった。

『私達は何も分けあったことがなかったな』

 共に戦い、心を寄せ合った仲だと言うのに、トンマンはあの時、この、二つとない価値を持つ指環を渡した。
 何故渡したのだろうと、思う。答えのわかっている問いを、繰り返す。
 答えは、変わらなかった。

(……私は……淋しいんだ)

 ピダムが傍にいないことが、淋しくて、淋しくて、淋しくて。だから、指環を無理矢理渡した。同じ指環を持っていれば、自分の指環に触れることで、淋しさを忘れて決断することが出来ると思ったのだ。この身を蝕む空虚な冷気から、護ってもらえると思ったのだ。彼の手の温かさを、指環に触れることで思い出せると思ったのだ。

(ピダム……)

 空虚な心で、彼の名前が、木霊する。皆紅の衣の中に隠した干からびた心を埋め尽くしてくれた彼の名が。

(あの時、ピダムが申し出たように、私はピダムを処罰するべきだったのか)

 悔いても詮ないことだった。どう足掻こうと、あの時、トンマンはピダムを処罰出来なかったのだから。――何をしてでも生きていて欲しい。二人で一緒に暮らしたいと、希ってしまったのだから。
 そして、それが王としては如何に愚かなことであるかを突きつけられ、ピダムの望みは違ったのだと思い知らされた今でも、トンマンはそう希っている。それがどれほど虚しいことかわかっていても、打ち消せない。……ピダムが握った指環を握りしめて王としての力を取り戻そうとする度に、溢れ出したその想いは涙になって、皆紅の衣を濡らした。



 ――陛下は、間違えている。
 脳裏に響き渡るその声は、かつての己のものだった。
 ――もう、陛下には独りで玉座を護る力はない。
 その通りだった。もう、トンマンのどこにも、一人で玉座を護る力は残っていなかった。悔し涙に濡れた金色の衣は、今はただ思慕と空虚に濡れ、それでもトンマンの身体に貼りついて剥がれない。トンマン自身、今となっては、それを脱ぎ捨てることだけは、決して出来なかった。――皆紅の衣を、ピダムの血で深紅に染めるまでは。




****

「皆紅」と言う言葉がツボにはまったので、多用しました。し過ぎましたw
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  1. 2011.07.26(火) _00:06:43
  2. SS(ドラマ準拠)
  3.  コメント:4
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  1. 2011/07/26(火) 23:42:13 
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  1. 2011/07/27(水) 16:34:04 
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このコメントは管理人のみ閲覧できます

うさこ様へ

  1. 2011/07/28(木) 19:31:16 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
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うさこ様、こんばんはーvお返事遅れてすみません…!
そして、まず、お気遣いありがとうございます!内容的に、二つ目の記事と合わせてお返事させて頂きます。

あ、いきなりSSが始まったので確かに面食らいましたがw、楽しく拝読しましたー!
もう色んな方のトン&ピを拝読してきましたが、やっぱり皆様個性が出ますね。
うさこ様のトン&ピからはタイトルの通り、初雪のように綺麗で、儚げな印象を受けました。
しかも、艶(なまめ)かしいです。トンマンの手が懐にインされた行で、私まで「うおっ」と(心の中で)叫んでしまいました。(←恥ずかしい奴w) 私には、こう言う大人っぽい発想がないんだなーと学ばせて頂きました…!
でも、夢なんですねー。おまけに、ピダムはそんな大胆なことをしながらもすぐに泣いたり(笑)、夢はそこまでで終わったり…と言う報われなさ加減が、なんともピダムですww(酷)

なつかないピダム<携帯>で書いたと仰っておられましたが、さすがピダムによるピダムのSS!と頷きました。ピダムの新しい一面を見れた気がしますーv
反省のお言葉なんて、そんな、勿体ない…っ。もしこれを機に二次創作欲にお目覚めになられましたら、ぜひブログを!なかなか底の見えない深みにハマれますよーv(笑)

水中花様へ

  1. 2011/07/28(木) 20:46:59 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
水中花様、こんばんはv
色んな記事へのご感想ありがとうございます!嬉しいですーv

トンマンが指環を渡した時に犯した間違いと言うのは、「政略結婚として承認されたピダムとの結婚を、恋愛結婚として扱ってしまったこと」なんじゃないかなぁと…。ピダムは愛があろうとあくまで政略ありきの結婚だとわかっていたから処罰を申し出たのに、トンマンは袖の中に匿おうとした。このすれ違いが大問題だった気がします。
ピダムはトンマンが政略と愛なら、政略を優先させると確信してた(そう確信させたのはトンマン)。だから、自分の矜持もありますが、何よりトンマンの政治的な立場を考えた時、小鳥のように囲われると言う選択肢はあり得なかったんだろうなと思いました。
チュンチュもまた、トンマンの規約違反を咎めてますよねー。ピダムを焚き付けましたが、ピダムに申し訳なく思っているように、あくまでチュンチュを騙して裏切ったのはトンマンだと言うところが悲しい話です。
トンマンが贈り物に「指環」を選んだのは、その後に手紙の中で「徳曼」と署名したことと合わせて、凄く意味があることだと思うんですよ。「指環」は女王としての、公的なトンマンの証であり、「徳曼」は一人の女としての、私的なトンマンの証ですから、トンマンは公私共にピダムに与えてしまったも同然なんじゃないかと。
「指環」だけを先に渡したのは、勅書を渡せない代わりに、ピダムの身分証代わりになるものとして与えたのかな、と私は思っています。唯一無二の女王の指環は、水戸黄門の印籠じゃありませんがw、いざと言う時に助けになるはず、と言う願いもあって、女王の真心の証として渡したと妄想してますw

もし、二人の密約書が密約のままで、国婚に至って、ちゃんとトンマンの望み通りに隠居出来たら、トンマンが死ぬまでは幸せかもしるません…が、難しいですねー。ピダムがチュンチュより万能なのが、問題な気が…っ。

義経や三成!彼らが美形かどうかは疑問が残りますが(笑)、ある分野の才能は抜群にあっても、歴史の勝者とはなれなかった人ですよねー。(個人的には、どちらも処世術に欠けていると思っています)
史実のピダムは、被るところありますね!しかも、権力の絶頂で反逆者となっていて、乱の最中に女王が死んでいると言うのは、面白いです。妄想のし甲斐が…!(笑)

って、水中花様!うお、それは多少私も思いましたが、そんなズバッと!(笑)
ただ、それなりの大人物ならば、もっと違った記述が歴史上に残っているだろう…と言うのが、微妙なところでして。上大等で大規模な反乱を起こした人物なら、もっと記録があるべきだと思うんですが…徹底的にないのは、不思議だなーとw

迷宮のピダムは、トンマンを恋人兼ペット兼ケンカ友達みたいな扱いですから、「風とともに~」のレット、わかりますー!レットの方が大人ですが(笑)

政略結婚はイギリスの女王陛下、色好みは帝政ロシアの女帝陛下!なるほどー。ロシアと言うとエカテリーナ、なんですが、そう言えば意外と知りません…。調べてみます!

マイホームパパの代表で温和な司会者……だ、誰でしょう…!?気になりますw
ナムギルさんの行く末は…どうなんでしょう。魅力のある役者さんですし、ファンの方もいますし…とりあえず、まったり眺めます(笑)


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