善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 夢枕の影

去年のクリスマスに更新した、『小ネタ「お届けものです」』の続編…とも言えないような、でもネタは似てます、な話です。(←わかりづらい)
お楽しみ頂ければ何よりですv


* *


「おかあさーん。夢にヘンな人が出てきた!」

 昼寝から目覚めたヒョンジョンは、繕い物をしているトンマンの背にのし掛かるや、ぎゅっと細い頚を抱きしめた。

「変な人?……ヒョンジョン、危ない目に遭ったのか?」
「ううん。えっとね、なんかオジチャンがいっぱいいて……真ん中にツーンとしたオバチャンがいて、そのオバチャンが、「お前がヒョンジョンか。いいことを教えてやろう。フタオヤにおくりものをくれるようねだりなさい」って言ったの」

 ここで一端言葉を切ると、ヒョンジョンは甘えながらトンマンの顔を覗き込んだ。

「ねー、フタオヤって何?」
「………………ヒョンジョン、もしかして……そのオバチャンって、背の高い人だった?」
「うん。おっきくて強そうでコワーいオバチャンだった! ねーねー、フタオヤって?」

 好奇心いっぱいのヒョンジョンをいなしつつ、トンマンはピダムにこっそり囁いた。

「……まさか……璽主?」
「え!? 璽主がなんで……」
「それは……だって、ヒョンジョンは孫じゃないか。夢に出てもおかしくないだろう?」
「でも、それなら先に息子の私の夢に出たっていいのに……」
「それを言ったら、私の夢にだって……」
「ねーねー!! おくりものくれるフタオヤって? フタオヤにおねだりするんだから、教えてー!!」
「……何をおねだりしたいの? ヒョンジョン」
「えっとね、あかちゃんと、犬と、馬と、おとーさんより強い剣!!」
「そんなにあれこれ欲しいのか!? いつも玩具なら作ってやってるだろ」
「あんなの、子供だましって言うんだもん。ヒョンジョン、もうリッパな男だから、オモチャなんかいらないもん」
「…………」
「…………」

 ぷいっと顎を上げるヒョンジョンに、トンマンもピダムも返す言葉がなかった。何せ、ヒョンジョンはまだ五つである。





「どうしよう……犬と馬と剣はまだなんとかなるかもしれないけど、赤ちゃんは……」
「真に受けなくていいんだよ、トンマン。言いたいだけ言わせとけばいいんだって」
「でも、あんなに欲しがってるんだし……」
「欲しがるものを全部あげてどうするのさ。そうやって甘やかすと、我慢が利かない奴になる」
「……」

 お前が言うか、とトンマンがふと思ったのは、片肘をついて寝台に横になったピダムが、父親らしい言葉を紡ぎながらも、その手を隣に座るトンマンの裾の中に滑り込ませているからだ。いつもより性急なその振る舞いが、実母が自分ではなく息子の夢に出たことに対する嫉妬からだと感じたトンマンは、なんとなくすっきりしなくて、徐々に太股から上へと向かうピダムの手を引き剥がした。

「トンマン?」

 図々しくも、引き剥がされた指の背で頬を撫でてくるピダムを上目遣いに睨むと、トンマンは裾を押さえながら冷ややかに告げた。

「犬を飼おう」
「えっ?」

 昨冬、サンタクに良く似た犬と暮らした時、ヒョンジョンのみならず、その犬と別れではトンマンまで泣いていたことを思い出したピダムは、露骨に嫌そうな顔をした。
 ――犬なんか飼ったら、トンマンはきっと私に注いでくれる愛情を減らして、その分を犬に注ぐに決まってる。
 当たらずとも遠からずの危惧を抱いたピダムに対して、トンマンは更なる攻撃にかかった。

「今度は仔犬を探してきて、赤ちゃんのうちから育てるんだ。そうしたら、ヒョンジョンは赤ちゃんにも触れられるし、大きくなったらお前がいない時もその子に守ってもらえる」
「…………」

 にっこり、と微笑むトンマンを見上げて、ピダムは凍りついた。――トンマンが怒っている。
 頬にかかった手が動かなくなったのを感じたトンマンは、今度はその手に自分の手を重ねると、口の端を上げてピダムを見下ろした。

「璽主も、ヒョンジョンに贈り物を……と願ったのに渡さないのか?」
「……」

 甘えられているはずなのに、背筋をひんやりとしたものが滑り落ちるのは何故なのだろう――とは、考えるまでもなかった。とにもかくにもここで頷いてはならないと身体が勝手に判断して、ピダムは固まった。下手に動いて失策を重ねたくはない。

「ピダム?」

 形勢有利と見て取ると、トンマンはさらに優しく……もとい、不敵な笑みを深めた。その笑みにはやはり弱いピダムが、思わず起き上がった、次の瞬間のこと。

「おかぁさーん……」

 先刻トンマンに寝かしつけられたはずのヒョンジョンが、半分ほど開いた戸の合間から顔を覗かせた。一緒に寝たい、と言う合図だ。
 ピダムが舌打ちしかけた一方、トンマンは意地悪な顔をさっと引っ込めると、今度は正真正銘の優しい笑顔でヒョンジョンに向かって手招きした。

「ヒョンジョン、おいで」
「うん」

 ヒョンジョンは手前にいたピダムを容赦なく乗り越えると、両親の間に寝転がって、同じく横になったトンマンに抱きついた。

「おかぁさん……」
「何?」

 そして、トンマンを見上げて言うことには。

「オバチャンがコワい……」
「え?」
「何だって?」
「だってぇ……」

 ヒョンジョンが言うには、目を閉じて眠ったら、昼間の『オバチャン』が見返り美人さながらにヒョンジョンを睨んだらしい。加えて、「このミシルの……欲しがるのが、赤子に犬とは……」と舌打ちしたと言う。ヒョンジョンには『オバチャン』が話した言葉は断片的にしか聞き取れなかったが、『オバチャン』は片方の眉を上げてヒョンジョンに言ったそうだ。
 ――欲しがるのなら、玉座を欲しがれ。お前の血に相応しい夢を見るがいい。

「……」
「……」
「オバチャン、オニババだったの? ギョクザって、なぁに?」
「……」
「……」

 瞳をきらきら光らせるヒョンジョンを笑顔で撫でつつも、トンマンはピダムを見た。ピダムもまた、トンマンを見た。
 ――どうする?
 声に出さずに語り合う両親に気づいたのか、ヒョンジョンはぐいぐいトンマンの袖を引っ張った。

「おかあさん、聞いてる? ギョクザって、なに?」

 いったいどう説明すればいいものやら、悩むトンマンの懐で、ヒョンジョンは眠ってしまうまで何々攻撃を続けた。結局、やっとのことでヒョンジョンに夢に出てきた『オバチャン』はオニババではないし、自分の欲しいものを大事にしなさい、とトンマンはヒョンジョンを寝かしつけたのだった。



 ヒョンジョンがやっと寝ついた後、堪えきれなくなって先にぷっと噴き出したのは、トンマンだった。

「孫は強いな。オバチャンか……」

 声を押し殺して笑うトンマンに対して、ピダムは何やら複雑な面持ちである。自分では母のことを悪し様に考えたこともあるものの、死の瞬間まで麗々しかった母の性格を思うと、「オバチャン」呼びは王妃の夢を絶たれたことと同じくらい惨いことなのではないかと察せられたのだ。
 しかし、ピダム母子と違って若作りに関心のないトンマンは、愛息の寝顔を見下ろしながら、しみじみ呟いている。

「もっと若い時に産んでいれば、ヒョンジョンも璽主と会えたのになぁ……」

 学び甲斐のある人だったのに、と惜しむトンマンとは裏腹に、ピダムは全く違うところに素早く反応した。

「若い時に、子を作る気があったのか?」
「え?」

 トンマンは顔を上げてピダムを見つめると、不思議そうに首を傾げた。

「勿論、そんなつもりはなかったけど……でも、もしかしたらユ――」

 と、危うく禁句を言いかけたところで、トンマンは不自然なくらいぎゅっと唇を引き結んだ。
 ――いけない。つい気が緩んだ……!

「ユシンの息子じゃ、会った日が命日になったかもな」

 が、意外なことに、ピダムはイヤミったらしく敬語を使うわけでもなく、ただ氷刃のごとき声音でトンマンの言葉を斬って捨てて、さっさとトンマンに背を向けた。ヒョンジョンも一緒に寝ている以上、トンマンに詰め寄るわけにもいかないからと、戦法を変えたらしい。
 いつもはピダムの聞き分けのなさに困っているはずのトンマンは、何故だかその新しい戦法に肩透かしを喰らった気がして、落ち着かない。ヒョンジョンがしがみついてきているので、ピダムをせっつくことも出来ず、トンマンは焦れた。珍しく悩ましい夜が更けた。

 翌朝、深更まで寝つけなかった為か朝寝をするトンマンとは対照的に、父子は暁が終わる頃には爽やかに目覚めていた。特にヒョンジョンは元気いっぱいで、ピダムから許しを得るなり駿足で表へ飛び出した。いつもの小川におたまじゃくしを探しに行く、と叫んで。
 そして、「おたまじゃくし」の変化に夢中な「おじゃまむし」――もとい、愛息を暫く追い払ったピダムは、その足を家の奥へ向けた。悩ましげに眠るトンマンのいる閨で、昨夜から溜め込んだ妬ましさを綺麗さっぱり払ってくれるであろう艶なる夢を楽しむ為に。



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  1. 2011.12.21(水) _19:00:39
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
  3.  コメント:2
  4. [ edit ]

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comment

緋翠さまへ

  1. 2011/12/21(水) 20:20:13 
  2. URL 
  3. あき 
  4. [ 編集 ] 
緋翠さまこんばんは♪

璽主が夢枕に立たれる……怖いですね。でも怖いもの見たさってありますよね!
ミシルを恋しがる?ピダムに、姑に嫉妬するトンマン…萌ですね!でもトンマンの意地悪な笑顔はピダムしか見れないんだし…贅沢者め!

璽主ーーー!!まだ…玉座に執心ですか!?天国で歴代王や初恋の君(と、ソルォンさん)を侍らせていると思っていたのに。
そしてピダムの新しい戦法、6年(か、7年)の成長の証ですね!

クリスマスプレゼントのように癒やしと萌のSSをありがとうございました。
でも最近隠居編やトンピのイチャイチャが多いですね。年末忙しくて疲れが出てきたり、風邪をひいたりして、体が癒やしを求めているのではないでしょうか?(そして年明けからはダークに?)

それでは、体調に気をつけて年末年始をお過ごし下さい♪(まだ挨拶には早いですね)

あき様へ

  1. 2011/12/23(金) 15:56:01 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
あき様、こんにちはーvお返事が遅れてすみません…!

> でも最近隠居編やトンピのイチャイチャが多いですね。年末忙しくて疲れが出てきたり、風邪をひいたりして、体が癒やしを求めているのではないでしょうか?(そして年明けからはダークに?)

順番がめちゃくちゃですが、この一段落にビックリしました。複数の話を同時進行で書いているせいか、自分では全っ然わかってなかったんですよー!
管理画面なら見るんですが、自分のブログはリンクぐらいしか真面目に見ないもので(←お前…)、確認してさらにビックリしました(爆) いやー、確かに最近あんまりダークな話が遅筆と言うか、書き散らすばかりで纏まっていませんでした。ダークな話は体力が要るんですね!(笑)
年明け…ではなく、たぶん年内に迷宮シリーズの更新はありそうです。久々の本編をv


> 璽主が夢枕に立たれる……怖いですね。

怖いですね(笑) しかも、周りに濃いオジサマがたくさんいそうですしw(怖いもの見たさと言う表現にウケましたww)

ピダムがミシルを恋しがる…と言うネタは、私の中では消化しきれていない部分なので、上手く書けているか不安ですが、入れてみました。ミシルに嫉妬するトンマン萌えなので(←不純)
ピダムは、意地悪な笑顔を見まくっているせいで有り難みを忘れたのかもしれません(え)

璽主の孫への囁きは、ミシル自身の夢を託すと言うより、「夢はデッカク持てや!」と喝を入れに来たのかな…と。スパルタばーさまです(笑)

ピダムの新しい戦法は、次は上手くいくか怪しいですが、頑張って欲しいですw

> クリスマスプレゼントのように癒やしと萌のSSをありがとうございました。

こちらこそ、嬉しいコメントをありがとうございますー!
年末のご挨拶も、年内にまたあき様のブログで申し上げると思いますが(笑)、一足先に頂けて嬉しいですvあき様も素敵なクリスマスをお過ごしくださいませー(・∀・)/


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