善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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【ときめき10の瞬間】09. 瞳そらした困り顔

お題SSです。
遙か3で攻略と言いつつ、なぜか南斗様です。
でも文中の神子は望美ちゃんの事なのでアリでしょうか。
アリですよね!(…)


* * *

 南斗星君には好ましいと思うものがたくさんある。それこそ、彼の掌には乗り切らないほどに多く、けれども掌から零れ落ちる事などない“愛しいもの”がたくさんある。
 だからきっと、こうして兄の所業の為に苦労を強いられている白龍の神子も、その内の一つなんだろうな、と彼は思っていた。
 思っていたのだが。

「南斗様!」

 ぱあっと場を照らすような笑顔を向けられて、「おや?」と南斗は小首を傾げた。
 なんでしょうかね、これは、と痛む胸をさすってみる。しかしさすっても胸が押し潰されそうなほどに痛んで、南斗はその場に座り込みたい衝動に駆られた。駆られただけで、それを兄である北斗星君の前で実行する気はなかったけれども。

「南斗様、本当に色々とありがとうございました」

 夢浮橋を渡って帰ろうとした神子――望美は、もうすっかり傷も癒えた南斗の前に立つと、いつも通り凛と張った眼差しをやや潤ませて南斗を見上げた。
 それに、「よかったですね」と南斗は答えようと口を開いた。
 ところがいざ開いてみたら、飛び出たのは全く別の言葉だった。

「――――帰っちゃうんですか?」

 え、と場が凍る。
 いや、凍ったのは南斗の理性と呼べるような部分と、神子の周りを囲む八葉と、兄の顔であったかもしれない。特に、南斗には背後に佇む兄の顔が「今さら何を言っている」と歪められているのが、振り返らなくてもありありとわかる気がした。
 だって、龍神の神子と八葉達を元の世界に帰してやろうと兄・北斗星君の邪魔をし続けたのは、この南斗星君なのだから。
 最初から最後まで、南斗はひたすら神子達を彼らの世界に帰そうと努力していたはずなのだから。

 けれどもこの土壇場になって、南斗はそれがもはや自分の望みの全てではないらしい、と知ってしまった。

「もう少しここにいませんか? ちゃんと向こうの世界の夜明けまでにはお帰ししますから」

 何を言ってるんだろう、と思いながらも、南斗は止まれなかった。
 先ほどまで延々とお祝いの宴を開いていて、そこでも僕は散々この神子と話をしていたのに、それでもまだ足りないのか。
 そう自問しながらも、「足りない」と断言出来る自分がいる事にも気付いて、南斗は驚きに目を瞠っている神子を見詰めて口説いた。
 そのらしからぬ勢いに、神子の周りの八葉も呆然としたり、眉根を寄せたりしている。囚われている内に親しくなったのか、先々代の神子と先代の神子が互いの袖を引き合い、もの言いたげな視線を交わしていた。

「ね、あと少しだけ。お願いしますよ」
「ええっと……」

 神子――望美は、そこで初めて南斗から視線を外した。
 夢中になっている南斗は気付いていなかったが、いつの間にやら彼と望美の間の距離は拳幾つ分もなくなっていたのだ。

「少しだけって言うと……ええっと、皆にも聞いてみないと」

 困ったように望美が隣にいる八葉を見上げる。染め始めの紅葉色の髪をした彼は、苛立ちと困惑を混ぜたような皺を眉間に刻み、南斗を見た。

「南斗殿。お誘いは嬉しいが、戦の最中なんだ。一刻も早く戻らねば……」
「だから、夜明けまでにはお帰ししますって。不安なら、八葉の皆さんはどうぞお先にお帰り下さいな」

 その南斗は、八葉を見もしない。
 彼の眼差しは望美にのみ注がれていて、訳がわからないながらも望美は頬を赤らめた。南斗の双眸はその様を楽しそうに、かつ嬉しそうに眺めている。
 2人の神子と24人の八葉と北斗星君は、理由をわかっているかどうかはそれぞれだったが、とにかく南斗星君は今ここで望美を帰す気はないんだろうなと言う事は理解した。そして彼にその気がない以上、望美はなかなか帰れないだろうな、と言う事も。

「ね、龍神の神子さん。もう少しお話しましょう?」

 その一方で、そんな外野の事などもはや何の気にもならない南斗は、さっと赤らめられた頬を見て、先ほどまで痛んでいた胸が今度は高々と鳴り響くのを感じていた。

「…………」

 そんな中、なんだか妙な気配を感じた北斗星君は、一人辺りを見回した。

「――」

 見回して、彼にしては珍しく驚きに目を瞠った。
 南斗星君が喜悦に震えているからだろうか――。草花が尋常ではない速度で大きくなり、生き物がやたらと賑やかに動き回っていた。

 南斗星君に春が来た。
 つまりそれは、常春の天界に、さらなる春が到来した――と言う事らしい。

 しかしその晴れやかで賑やかで鬱陶しいぐらいの“春”は、その光景にぞっとした北斗星君の気持ちが沈んだ為に、あっと言う間に元の“春”に戻ったのだった。


* * *

【ときめき10の瞬間】09. 瞳そらした困り顔
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  1. 2009.06.24(水) _06:10:47
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