善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 「さんたく」@shoko様

隠居連載の番外編としてshoko様が書いてくださっているサンタク犬シリーズです。shoko様、いつも素敵なお話をくださり、ありがとうございますーvv
そして、今回は管理人のSSへのサブ・アンサー・ストーリーではありません。独立したお話です。しかも、とうとうアノ人が出てきます…(←また思わせぶりな…)

※このSSの感想は、出来れば拍手コメントではなく、一番下にあるコメント欄から、「公開する」設定のコメントで宜しくお願い致します。そうしないと、shoko様にせっかくのご感想が伝わらないので…。

ではでは、続きからどうぞ!そして管理人はこれから頂いたコメントへのお返事を!


* *


 ―――だんなさまは ときどき ぼくのことを  さんたく  と よぶ


 昼寝から目覚めたばかりの犬が最初に聞いたのは、自分の傍らでぶーたれている背の高い旦那さまの言葉だった。

 「なんで俺がおまえのお守りなんかしなきゃならないんだよ」

 まだ自分が目覚めたのに気がついていないらしい。むこうの原っぱで楽しそうに遊んでいる奥さまと坊ちゃんを羨ましそうに見ながら、それでも旦那さまはおとなしく犬のそばの草の上に腰掛けていた。

 「目が覚めたときにそばに誰もいないと寂しいでしょ? だとさ」

 それなら自分がそばにいればいいのに、その自分はちゃっかりと母親と楽しんでいる。要領のいい奴、とつぶやいて、まぁいいか、あれだけ遊んでれば夜だって早く眠るだろう、と奥さまと夜遊ぶ時間のために今は我慢しようと思っている旦那さまの心が透けて見えるようで、犬はまだ半分眠たい頭で、じゃあもうちょっと寝てようかな、と思った。

 そんなとき、急に冬の風が吹いて、犬の耳の毛までふるわせた。枯れた草にさざ波が起こる。ゆっくりと風は渡ってゆき、雲が陽光を隠したり見せたりと目まぐるしい。日陰になり日向になったりするこの場所には、いつしか不思議なゆらぎが満ちて、過去と現在を行き交う時間のざわめきが、知らぬ間に辺りを包んだようだった。どこかにすっぽりと落ちていくような感覚――敏感な旦那さまは、そんな空気にすぐ捕まってしまう。

 「こんな季節だったな・・・・・・サンタク」

 不意に旦那さまがそう言った。

 「いや・・・・・・もっと寒かったな。風が凍るようだった。そして・・・・・・何もかもが、冷たかった」

 その手が自分の首をそっとなでている。でも視線は自分ではなくどこか遠くを見つめたまま――ちらりと旦那さまを見てそれを確認した犬は、自分のことをまだ眠っていると思っているから、旦那さまは自分を通して別のお話したい人に話しかけているんだ、と考えた。

 「俺は自分のことしか考えていなかった。自分の想いを果たすことしか考えていなかった。最後のひとりになってもずっとついてきてくれたのに、おまえのことなんか、まったく考えていなかった・・・・・・」

 不思議とおまえだけは何があっても無事な気がして、と言いかけて、やめた。自分でも、言い訳のようにしか聞こえなかったから。

 「あのときの俺は、そんな奴だったんだ、サンタク・・・・・・」

 サンタク――それは旦那さまの大切なお友達の名前。いつだったか聞いたことがある。おまえを見ているとサンタクを思い出す、と。そう、自分を見ていると思い出す人。その人とお話がしたいんだな、と思った犬は、それなら名前を呼ばれている今だけでも、その「サンタク」という人になってあげようと考えた。お友達なら旦那さまのことを好きだった人だろう。そんな人の代わりになることは簡単だ、と思った。そして旦那さまのひと言ひと言に、犬は心の中で答えたのだ。


 「サンタク・・・・・・どうして最後まで俺から離れなかったんだ?」
  そばに いたかった からですよ
 「おまえひとりなら、逃げられたのに」
  ふたりで たすからなければ いみが ないです 
 「おまえだけは生かしてやりたかった」
  だんなさま だけは いきてほしかった 
 「俺はどうなってもかまわなかったのに」
  だから そんな ひとを ひとり には できない 
 「罪のないおまえが死に、罪深い俺が生き残った」
  つみの ない ひと なんか いません


 そこで旦那さまは少しうつむいて、黙った。犬をなでていた手は、力をなくして草地に落ちて・・・・・・そして、そっとつぶやいた。

 「サンタク・・・・・俺を、恨んでいるか?」

 その言葉を聞いた犬は ばかだなぁ と思った。

  だいすき ですよ  だんな さま

 犬は傍らにあった旦那さまの手をペロリと舐めた。旦那さまはびっくりして、夢から覚めたように犬を見た。犬を見ているうちに今までの思い出はさらさらと消えてゆき、頬をなでる風にさらわれるように、彼は薄情なほどあっさりと現実に戻った。

 「なんだ、起きていたのか」

 それならもうお守りはおしまいだ、と立ち上がりかけた旦那さまの手の上に、犬はのそのそと乗っかった。

 「・・・・・・なんだよ、おい」

 犬はまだ動きをやめない。旦那さまの手の上から足の上、腹の上から胸の上へと体を踏んで移動していく。そしてとうとう旦那さまを後ろへ押し倒すと、今度は嬉しそうに顔中を舐めまわし始めた。

 「よせ、やめろ。よせったら」

 抵抗の言葉は、最後は笑い声になった。それを聞きつけた坊ちゃんがふりかえって、自分の犬と楽しそうにしている父親を見つけると、大きな声で「おとーさん、ずるいっ!」と叫んだ。

 「こぶんは、ぼくとあそぶのっ!」

 母親と遊んでいながら犬とも遊びたいなんて、まったくどっちがずるいんだ、と旦那さまは思ったが、奥さまを自分に返してくれたので、さっきまで「サンタク」になってくれていたとも知らず、犬を息子にさっさと返した。坊ちゃんのそばへと歩き出した犬の後ろでは、夫に無防備な笑い声をあげさせた犬に嫉妬した奥さまと、そんなことにはまったく気づいていない旦那さまの間で、早くもいつもの痴話喧嘩が始まっている。

 曰く「ずいぶん楽しそうだった」「たまには犬に押し倒されるのもいいものです」「じゃあこれからはずっと犬に押し倒されていろ」「・・・・・・押し倒されるより押し倒す方がいいです」「なんだ、たまには押し倒してやろうと思ったのに」「押し倒してください」「いやだ」「・・・・・・機嫌を直してくださいよ」うんぬん。

 そんな、まさに自分(犬)だって食べたくない会話を背中で聞きながら、ふしぎ だなあ と犬は思う。

  みんな だんなさま のことが だいすき なのに 
  だんなさま には どうして それが 
  わからなくなって しまう ことが あるの だろう

 犬の目には見える。ときおり、旦那さまの周りに旦那さまのことを守っている人たちがいるのが。何度か見かけたのは、長い髪を三つ編みにした、とても威厳のある落ち着いた優しい目をした背の高い男の人。また、甲冑に身を固めた強そうな武将を連れたとても美しい奥方さまも、一度だけ見たことがある。そして今日は・・・・・。

 「あ、おとーさん、ずるいっ! おかーさんに抱っこしてもらうのは、ぼくっ!」

 せっかく近寄ってきた自分も無視して、坊ちゃんはもう旦那さまと奥さまの方に走り出している。そしていつもの、旦那さまと坊ちゃんによる「奥さま争奪戦」が始まるのだ。長い闘いになるのがわかっている犬は、親子でじゃれあっている三人を遠くで眺めながら、その場で行儀よくお座りの姿勢をとった。

 「おまえは行かないのかよ?」

 ふと気づくと、自分のそばに腰を下ろしている男がいた。それは今日、旦那さまの周りに呼ばれてきた幻の男。ひょうきんな顔にちゃんと髭もたくわえていたが、その髭が男を立派に見せるどころか、どこかおかしみを与えていたので、犬はなんだか笑ってしまった。初めて逢った相手なのに、昔からの知り合いのように自然に答えていた。

  ぼくは じゃま な きが して

 なぜか言葉が通じたらしい。

 「犬もそんなことを考えるのかよ?」

 男は早口で、心からびっくりしたというような大げさな声をあげた。

   かんがえ ちゃ いけません か?

 「いけないことはないがよ、犬はそんなことは考えないんだと思ってたよ」

 本当にびっくりしているようなので、また犬は笑ってしまった。感情がそのまま表れている。情けないほど裏表のない人――と心の中で犬に笑われた男は、そうなのかよ、と首をひねりながら続けた。

 「だって俺は犬になりたいと思っていたんだがよ」

 人間なのに犬になりたいなんて信じられなかった。

  いぬに? どうして ですか?

 「危ない仕事をするたびに、いっぱいいっぱい追いかけられたよ。ああ、こんな時、犬だったら足が速いからあっという間に逃げられるだろうに。どんな隙間にも入り込んで、簡単に敵の目をくらませるだろうに。この図体ばかりでかい体をどうにか小さくして隠れたいと、何度思ったかしれないよ」

  そんなに あぶない おしごとを いつも していた のですか?

 そんな危ない仕事をしていたなんてとても思えないような顔と、そして同じ間の抜けた性格に見えたが、その幻の男は「そうなんだよー」と、よくぞ訊いてくれたと大きくうなずいた。

 「死ななかったのが不思議なくらいだよ。ま、最後は死んじまったけどよ」

 と、実にあっけらかんとそう言ってその男は笑ったが、それでもなにか思い出したことがあったのか、ちょっと寂しげにため息をついた。

 「あの時だって、おまえみたいな犬だったら、その前に大事な御用をしてのけてよ、あの方に頼まれたことを教えて差し上げられた。あんなことになる前に、間に合ったかもしれないよ」

  まに あわなかった んですか?

 「うん。悪い奴らにいっぱいいっぱい追いかけられて、追いつめられて崖に貼りついたり、敵ばかりの中を変装して縫うように紛れ込んで、綱渡りみたいにしながら頑張ったんだけどよ」

 それは、と犬は思った。見かけによらず、かなりな頑張りだ。

 「でも、それも昔のことだよ。もう終わっちまったことだしよ。それに」

 と男は、「あの方」とその家族を眺めながら微笑みんで続けた。

 「今、あの方は、うーん、いろいろとまだあるみたいだけどよ、それでも充分幸せそうだから、ま、いいかなと思ってたりするよ。ほんとに俺が犬だったら、おまえみたいにそんなふうにお座りして、あの方たちを眺めながらのんびり楽しく暮らせるんだけどよ」

 いいよなー、と本当に羨ましそうに言う男。そしてふと思い出したように懐から丸い金の飾りを取り出した。それは持ち主の男には、似つかわしくないほど繊細な金の細工ものだった。男はしばらくうっとりとその金色を眺めていたが、次には犬に視線を移して、今まで大事に持っていただろうそれを、惜しげもなく犬の首に掛けようとした。

 「これをやるからよ。おまえがあの方たちをしっかり守るんだぞ」

 その飾りからはかすかに背の高い旦那さまの匂いがして、犬にはそれがどんなものなのかすぐにわかった。

  だめです  それは あなたの たいせつな もの でしょう?

 そう言って断ったのに、「いいからいいから、遠慮するもんじゃないよ」とかまわずその男は金の飾りを犬の首の毛に巻きつける。もう俺には必要がないものだし、それに、と続けて

 「こいつはおまえのいる世界ではもう幻みたいなもんだけどよ、俺がおまえを見つける目印になるよ。それはあの方たちを見つける目印にもなるってことだよ。ついでに、時には、俺以外の者がおまえを助ける目印にもなるかもしれないしよ」

 似合うぞ、綺麗だ、と誉めそやし、でもみんなからは見えなくて残念だな、と男の方がよほど残念そうな顔をした。

 「なんだか、俺のものはおまえのもの、って気がしてきたよ。変だな」

 しばらく男は首をかしげていたが、ああ、と合点がいったらしく嬉しそうに犬をなでた。そうか、俺はおまえみたいな落ち着いていて賢い犬になりたいと思ってたんだな、とつぶきながら。

 ふと、男の姿がゆらぎ始めた。それに気づいた男は、あの方の方を見やり、そして嬉しそうに笑った。

 「ああ、今、あの方の中から俺の思い出が消えてゆくよ。今日、あの方の心を魔物みたいに捕まえた、つまらない闇も消えていくよ。良かったよぉ・・・」

 おっと消えるまえに、と男は座りなおして居住まいを正した。懐かしいあの方をまっすぐに見つめて・・・・・・男は深々と頭を下げた。長く、長く。そしてその姿勢のまま、幻の男は風の中に静かに溶けていった。その姿が犬の目から完全に見えなくなっても、しばらくは男がいた空間にキラキラとしたものがかすかに漂っているようだった。

  いぬ に なりたい なんて へんな ひと
  
 犬はそう思ったが、同時にあの幻の男の心の内も、手に取るようにわかる気がした。

  でも あなたの ねがい が かないます ように

 初めて逢ったのに、なぜか忘れられない思い出の中の人のように思われて、そう願わずにいられなかった。

 「こぶーん、帰るよーっ」

 坊ちゃんの声がした。見ると旦那さまに肩車をしてもらっている。わん、と一声吠えて、犬は坊ちゃんのそばへと駆けて行った。心はあの幻の男に向かって話しかけながら。

  また おあいできます ね  

 旦那さまはあなたのことを忘れることはない。あなたを思い出すたび、あなたは旦那さまの思い出の中のあなたのままに姿を現す。そのときには見逃さず、この金の飾りのお礼を言おう、と思った。見えないけれど、決して消えないあなたの大切な心のようなこの贈り物のお礼を。

 息子を肩車し、なにげなくこっちに向かって走ってくる犬を見ていた旦那さまは、ふと、犬に重なって懐かしい笑顔と輝きを見たような気がした。
 が、肩の上で暴れる息子に手を焼いているうちに、すぐそれも忘れてしまった。息子を片手で押さえ、もう片方の手で愛する人の手を握っている彼に、他に何も考えることはなかったから。

 そして旦那さまと坊ちゃんと奥さまと犬は、楽しげに語らいながら家路についた。
 そのまだ薄明かりの残る頭上で、冬の一番星が、そろそろと輝こうとしていた。(了)
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  1. 2011.10.15(土) _17:18:02
  2. 宝物蔵(頂き物保管庫)
  3.  コメント:2
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comment

shoko様へ

  1. 2011/10/15(土) 18:41:41 
  2. URL 
  3. あき 
  4. [ 編集 ] 
shoko様こんばんは♪
サンタク犬様(もう敬称を外す事は出来ません…はあと)またお会い出来て嬉しいです。 サンタク(こっちは呼び捨て?)にも会えて、私のドライアイは久しぶりに潤いを取り戻しました!
 (*^o^*)
私の今回の萌ポイントは、何度か姿を現したムンノと一度しか現れなかったミシルですね♪

『元気にしているならばよい。』
『璽主様…もうよろしいのですか?』

な、感じでしょうか?

そしてピダムの気持ちに寄り添って、サンタクの代わりをしてあげたサンタク犬様!もう仙人の領域です。(ヒョンジョンの攻撃をかわすのもすごいし!)
……というわけで、サンタク犬様への敬称付け続けてゆきま~す♪

あき様、ありがとうございます。

  1. 2011/10/15(土) 21:43:30 
  2. URL 
  3. shoko 
  4. [ 編集 ] 
(緋翠さま、頭越しに失礼いたします。以前、
>コメント欄でのお返事も、ありがとうございます!これからもshoko様の作品へのコメントが記事にありましたら、遠慮なくお返事してくださいませ^^
とのお言葉もありましたので、書かせていただきます)

あき様、こんばんは。
コメント、ありがとうございます。

今回もつたない作品を読んでいただき、ありがとうございます。また、萌えポイント(笑)を教えていただき、こちらもありがとうございます。
>『元気にしているならばよい。』
 『璽主様…もうよろしいのですか?』
相変わらずあき様の文章はカッコいいですね。とくに
 『璽主様…もうよろしいのですか?』
は私の萌えポイントです(笑。実は私はソルォン公のファン)。ソルォン公は、相変わらずそんなことを言っているのでしょうか。いいなー(萌え)。

そして、犬に敬称、本家は呼び捨て;;・・・複雑な心境ですが、こちらもありがとうございます。とりあえずどっちも「サンタク」なので、サンタク・ファンでもある私には、サンタクの物語にコメントいただけたのは嬉しかったです。
あき様もまたカッコいい文章を御披露してくださいませね。(by shoko)

 いつも ありがとう ございます
 でも まだ ときどき よけられなくて なみだめ に なることも あります
 いつか せんにん(せんけん かしら) に なれる と いいなあ
 おやすみなさい(ペコリ) (by さんたく)


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