善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

そろそろ更新ペースが通常に戻りそうです……が、何を更新しようか考えていたら、意外と纏まらなくて、もう少し時間がかかりそうです。もやもやと頭に浮かぶものはあるんですが、形にはなってないんですよねぇえ。

……と言うわけで(?)、リレー小説の続きをお届けします!
今回はsakiさんのターンです。ぜひぜひ、広がっていく砂漠での人間関係をお楽しみくださいv
(いつものように、ご感想は拍手からではなく、記事の最後にあるコメント欄をご利用くださるようお願い申し上げますv)


* *


オアシスの入口に立つ石門を背に片膝を付き胡座をかいて砂塵の先から来る者をザズは待つ。砂漠に出れば擦れ違う可能性が高く、確実視するなら宿から最も近いこの場所が適していた。手の中の水筒を繰り返し確認する。

「・・・手段、選べるような立場じゃないんだよなぁ。許せ、ピダム。」

ソファたちの事は父親を信じるしかないが己に課せられたこれもかなり命懸けだ。なにせ純粋な力では負ける気はしないが、生憎と剣の腕は向こうが上。

「いや、本気で向けられるとは思っちゃいないのよ、俺も。・・・・・・・あいつが正常な時ならさ。」

母と妹に『何か』遭ったと知られた時点であれの行動は計り知れない。いわばザズが持つこの水筒は保険だった。視界の端に次第に近づく影を見つけ、ザズはうんと首を伸ばす。眼を眇めそれが待ち人であるかどうかを確認し・・・。

+++

手綱を引き街を行きながらザズは首をグキグキと回し空いた片手で同じ箇所を何度もさする。首筋にうっすらと見える鬱血した跡は手の形をしていた。

「つっ~~~。お前の主人は馬鹿力だ。」

否やを唱えるように隣を歩く駱駝が鼻息荒くぶるんと首を振る。その背にはだらりと力の抜けたピダムが俵積みにのせられていた。駱駝が脚を進める度にゆらゆら、ゆらゆらと長い手足が同じ調子に揺れている。向かっているのはソファたちの宿だった。時折こちらと視線がかちあう街人たちの様子が常と違いどこかよそよそしい。ザズは胸の奥底に凝ったしこりが沈澱していくのを感じ苦く唇を噛み締めた。ピダムの家族に何が起こったのかを知らぬ者などこの街には既にない。同情、哀れみ、好奇といった視線も感じる中、共通していたのはそのどれもが腫れ物に触るかのようであること。・・・と、ザズは感じていたのだが実のところそういった態度や視線を向けている人間は半分ほど、いや、ほんの一部である。重ねていうがゆらりゆらりと駱駝の背で俵よろしく揺られているのはピダム。この街の名物、有名所な兄妹の片割れがどう見ても意識も無いような状態で友人に運ばれているのである。宿での騒ぎを知っていれば尚更心配が勝り声を掛けようとするのだが手綱を引くザズのただならぬ雰囲気に躊躇われ、声を掛けるに掛けられぬ、そんな状態なのであった。街人たちから見守られてザズが飯店の前に着くと見慣れた自警団員の男たちが次々と出入りを繰り返していた。脚のひとつ足りぬ椅子。斜めに裂けた垂れ幕。元は皿か椀か破片と成り果てた土塊。

「おっ、ザズ。ピダムは捕まえたのか?」

その中で割れた水瓶を抱えて出てきた団員仲間に問われてザズは隣の駱駝を指差す。

「これ、寝てんのか?」

「あぁ。眠剤を使ったからな。」

「眠剤ってな、お前・・・。」

「だって仕方ねぇだろ。石門とこで張ってたら開口一番トンマンと母さんはどこだ?!って。人の胸倉掴んでこっちの話しを聞きゃしねぇんだからさ。んなことより親父は?」

「まだだ。けど領主んとこ行く前に面白い奴を捕まえてってな。」

「面白い奴?」

「原因さ。今、詰め所の方で何人かに見張らせてる。」

「・・・ほぉ~。」

ザズの眼が剣呑に眇られる。『捕まえた』というからには領主の兵隊ではないのだろう。ならばこの街に来る商人かそこらにたむろしているゴロツキたちか。どちらにしてもあの領主に協力する奴などろくでもない奴に違いない。

(あとで一発殴ってやる。)

ザズは密かにそう堅く決心する。

「で、お前さんは眠剤なんてもんどっから持ってきたんだ。」

「ん?あぁ、大丈夫だって。ちゃんと薄めたやつをぶっかけたから。」

言って懐から出した水筒を見せるザズに男が苦笑をもらす。

「・・・おいおい。」

「それは私も聞きたいなぁ。薬の帳尻が合わなくて不思議だったの。ザズが持ち出してたのね?駄目よ~。自警団の人間が盗みなんかしちゃあ。」

朱い髪を背中に流し鈴を転がす声の美人。ぎょっとして振り向いた先の姿にザズは慌てた。

「あ、姉貴?!なんで此処に?!じゃ、なくて・・・いや、あれは持ち出したんじゃなくてさ!え・・・・と、ほら!借りたんだよ!うん!!」

「うふふ。じゃあ、使用料を貰えるわね。ちょうど化膿止めになる薬草が底を尽きそうだったの。あれって少し厄介な所に自生してるのよね。よろしく、ザズ。」

「・・・・了・・解。」

何時から居たのか、ふわり、笑んでザズの後ろに立っていたこの医者志望の姉がザズは苦手だった。いや、兄姉全てがそれぞれに苦手なのだが。なにせ悪友のピダム以上に食わせ者の面々なのである。

「シャーリーン、あんまりザズを虐めてくれるな。まぁ、盗みは良くないけどな。それで、どうしたい?」

「そうそう、先生に頼まれてソファおばさんに薬持ってきたのよ。でも、それどころじゃなさそう。おばさんも居ないみたいだし。それとそこで寝てるのってピダムよね?」

シャーリーンが口を開くごとに落ち込んでいくザズに助け舟をだすつもりで男が水を向けると、そうだったと彼女は両手を打ち合わせる。次いでぐるりと見回した先に認めたピダムの姿に小首を傾げた。しかし弟の返事は期待していないのか勝手にぐったりとしたピダムを突いたりその顔を覗き込んだり。やがて不思議げに首を傾げるといまだ固まっているザズの手から彼女は件の水筒を取り上げた。きゅぽんと軽い音をさせて栓を引き抜く。鼻先に持ってくると手で扇いで何かを確認し、そしてひとつ頷いた。

「ザズ、やっぱりこれ薄め過ぎだわ。これじゃあ鼠も眠らないわよ。」

「は?そんなわけないだろ?現にピダムには効いてる。」

「うん。だから・・・。」

シャーリーンの言葉が終わるその前にそれまでぴくりとも動かなかったピダムが今まで意識を失っていたとは思えぬ動きで駱駝の背から飛び降りザズたちから距離をとった。

「っおま!?振りかよ!?」

「喧しい!!お前が石門のとこで待伏せてる時点で怪しいんだよ!っんなことより何なんだ!この有様は?!」

「寝たふりしてたなら大体聞こえてたんじゃないかしら?」

「姉貴、悪いけどちょっと黙って。けど、ピダム。姉貴が言うとおり聞いてたんなら分かるだろ。おばさんたちは親父が絶対連れ戻してくれる。だから・・・!」

「・・・あの領主がそう簡単に帰すものかよ。」

ザズは言葉を操ってピダムを説得しようとするが苦々しく呟かれたその一言に沈黙した。そうだ、こいつは石門で顔を合わすなり家族の安否を問うたのだ。

「っピダム!・・・・・・砂漠で、何かあったのか?」

「・・・・怒鳴って悪かったな、ザズ。」

しかし答えることなくそれだけ告げるとピダムは踵を返す。走り去るでもない酷くゆっくりとした動きにも関わらずザズは見送るしかできなかった。それは隣の男もまた宿の片付けをしている他の団員仲間も同じらしく足を止めて少年の背を見送ってしまう。

「アル~。」

場にそぐわぬ間延びした声にそのピダムの背がぐらり傾いた。シャーリーンの声に呼ばれて飛び出てきた小さな影が飛びついたのだ。ちょうどピダムも足を踏み出しかけたところであったので折り合い悪くそのまま倒れ込み膝を着く。

「駄目よ。死にに行くような真似させちゃ。」

「シャーリーン。アル、てめぇも退け。」

「アル。そのまま体重かけておきなさい。」

「・・・。」

ザズやシャーリーンによく似た面立ちの子供は猫を思わせる瞳を瞬かせて頷いた。

「いい子。後で何か買ってあげる。何がいい?」

「・・・・・棗、干したの。」

シャーリーンに頭を撫でられてアルと呼ばれた子供は抑揚のない声でしかし嬉しそうに笑う。

「アル、お前はどこから降ってくるんだよ。」

「・・・。」

これ幸いとピダムの両手足を縛り始めたザズに呆れ半分に聞かれアルは隣家の屋根を指差した。

「・・・相変わらず猿だな、お前。でもな、あんまり危ない真似はするなよ。」

危うくピダムの雰囲気に呑まれ行かせてしまうところであったザズは内心2人に感謝しながらこの弟に注意する。ピダムが何と言おうと姉の言う通り、そして何より父アサドに命じられた事を遂行するのが今のザズの役目であったのだから。アルの下で往生際悪く騒ぐピダムの首筋にザズはとどめの手刀をいれた。
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  1. 2011.11.21(月) _00:04:28
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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